国際ビジネス研究
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巻頭言
統一論題
  • 安室 憲一
    2017 年 9 巻 1-2 号 p. 5-18
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    本稿では、中国のアフリカにおける資源・エネルギー開発戦略を中心に考察し、その特徴を明らかにするとともに、OECD先進国とのアプローチの違いを指摘する。また、アフリカの資源国に「中国式」の改革が持ち込まれた結果、公平な雇用制度が解体され、雇用の「非正規化」(casualization)が進み、労働条件や賃金が著しく低下している状況も明らかにしたい。確かに、中国による「アフリカ開発」により、一部の資源国の経済は活況を呈したこともある。しかし、2013年以降の資源・エネルギー価格の下落により、アフリカの資源国だけでなく、中国の国営企業もまた財政難に直面していると推察される。(1)はたして、「中国式」経済外交は中国政府が自賛するような「ウィン・ウィン」の成果をもたらしているのだろうか。ここでは、国際ビジネスの観点から「中国のアフリカ戦略」の具体的内容を吟味したい。ここでは、客観的な視点からアフリカにおける中国企業の活動を分析している国際機構の調査報告書や欧米の論文を中心に文献研究をおこなう。中国人(本国の)研究者の文献も参照しているが、往々にしてナショナリズムによるバイアスが見られる。また、中国政府は経済援助や対外直接投資に関する詳細な資料を公開していない(グロスの数字は提示しても、年度、地域、目的などの細目は不開示)。したがって、政府公刊の資料も参考程度にしか使えない。ただし、外国の大学に所属する中国人研究者の論文や資料は信頼性が高く、客観的な考察が見られる。また、アフリカ人の研究者やジャーナリストの論考に優れたものが見られる。参考にさせていただいた。

研究論文
  • 古沢 昌之
    2017 年 9 巻 1-2 号 p. 19-34
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    本国人の海外派遣と現地人の登用(現地化)を巡る諸問題に直面する中、多国籍企業の経営においては、「駐在員 vs. 現地人」という二分法的発想を超克した新たな人材オプションが模索されるようになってきた。その1つが「現地採用本国人」(self-initiated expatriates: SIEs)の活用である。先行研究によれば、SIEsには、従来型の本国人駐在員(assigned expatriates: AEs)に比して「人件費が低廉」であるほか、「異文化への強い関心」を有し「長期の海外勤務」を受容する用意があること、さらには本社所在国の文化と現地の文化の橋渡し役(「バウンダリー・スパナー」)として期待できることなどの魅力がある。

    そこで、本論文では、在外日系企業が最も多く所在する中国における実態調査に基づき、①現地採用日本人の雇用状況、②現地採用日本人の属性、③自社の現地採用日本人の働きぶりに対する日本人駐在員の評価に関して考察する。

    調査の結果、上記のリサーチクエスチョン①の「現地採用日本人の雇用状況」については、全体で現在雇用している企業は26.6%で、過去に雇用したことがある企業を加えると42.6%となった。また、日本人SIEsを雇用する理由としては「日本人の考え方・マナーに対する理解」や「日本語能力」など「日本人性」に関わる項目が上位に来た。そして、「非製造業」「中国内の主要顧客として日系企業・日本人を抱えること」「日本人駐在員比率」「日本生まれの日本人総経理」「日本語能力を重視した中国人経営幹部・管理職の採用・登用」が日本人SIEsの雇用に影響を及ぼしていることが分かった。次に②の「現地採用日本人の属性」に関しては、日本人SIEsの39.7%を女性が占めた。一方、日本人SIEsが「中国での在住・勤務・留学経験」や「中国語能力」において日本人駐在員を大きく上回ったことは、彼(彼女)らが日中間の「バウンダリー・スパナー」としての可能性を秘めた人的資源である旨を物語っていると言えよう。最後に、リサーチクエスチョン③の「現地採用日本人の働きぶり」を巡っては、回答企業は自社のSIEs社員に「勤勉・誠実・時間に正確」といった日本人性を見出すとともに、「取引先の日系企業・日本人への対応面」での貢献も高く評価している。また、日本人駐在員・日本本社・中国人社員との「信頼関係」の面でも高いスコアが示された。他方、先行研究で散見された「強い転職志向」や「思考・行動の過度の現地化」といった事項に対する企業側の不満は大きくないことが分かった。

  • 加藤 敦, 立本 博文
    2017 年 9 巻 1-2 号 p. 35-54
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    本論文では戦略的提携の企業業績への効果を実証した。多国籍企業は、新規市場への進出の際に、既存パートナーとの関係を重視する繰返し提携戦略を採用するか、ローカルアクセスを重視して新規パートナーを現地で開拓するか、という「パートナー選択のジレンマ」に直面する。本研究では、火力発電インフラ産業における国際的提携データを対象にして、傾向スコアマッチング法による共変量調整を用いて、重回帰分析を行った。実証分析の結果、繰返し提携の重要性が明らかになった。また、火力発電インフラ産業では、ローカルアクセスの確保よりも既存パートナーとの関係を重視する繰返し提携戦略の効果が大きいことが明らかになった。

  • 柴原 友範
    2017 年 9 巻 1-2 号 p. 55-71
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    本稿は、大企業に比べて内部資源の乏しい中小企業が、長期の国内経験ののちにM&Aなどの特定のインシデントがなくても急速に国際化しているという、特に近年の日本において散見される現象のうち、強力な国際的起業家精神がみられないにもかかわらず急速な国際化を果たしているという既存研究で解明されていない現象について、質的、量的手法を組み合わせた混合研究法(Mixed Method Research)により明らかにする。

    具体的には、まず、上記のような現象として長田廣告の事例を分析した結果、そのような急速な国際化の背景にある新たな成功要因として、外部資源としての「外部専門家の活用」が浮かび上がった。次に、そうした外部専門家がどのような役割を果たすと国際化のスピードが増し、急速な国際化を実現できるのかについて、定性的に分析したところ、「文脈に沿った情報提供」、「ネットワーク紹介」、「精神的支援」、「学習支援」という4つの役割要因を抽出した。その上で、それらの役割について日本貿易振興機構(ジェトロ)の質問紙調査結果データを使って定量的に検証し、一般化を図った。さらに、4つの要因を「国際化のスピードに影響を与える諸力のモデル」(Oviatt & McDougall, 2005)に加筆し、提示した。

  • 周 楊華, 青木 英孝, 邱 宏仁
    2017 年 9 巻 1-2 号 p. 73-90
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    グローバル経済環境の中、多国籍企業と海外派遣者は重要な役割を担っている。しかし、日本の派遣者の中には、派遣期間中もしくはその後に、転職してしまう者がいる。あるいは、予定通りに帰任したとしても、結局派遣企業に相応しい仕事がない状況にある者もいる。こうした海外派遣後の転職と帰任後の未活用はしばしば起きることであり、本国でのキャリアと業務が中断されることで、日本人派遣者本人や家族および日系多国籍企業に損失をもたらしている。

    本研究は先行研究に基づき、日系多国籍企業と日本人派遣者との心理的契約履行と帰任成功の測定尺度を作り上げ、OLS回帰モデルと実証データを使い、仮説を提起し、それを検証する。81名の日本人派遣者を対象としたアンケート調査(2015年3月実施)と回帰分析を行ない、日本人派遣者と日系多国籍企業との間の心理的契約履行と帰任成功との関係を検証した。先ず、日系多国籍企業と日本の派遣者との間で心理的契約が履行されている程度は、個人(帰任者)の帰任成功に有意な影響を与えている。次に、日系多国籍企業本部による心理的契約の履行は組織の帰任成功に決定的な役割を担うが、海外派遣者個人の心理的契約の履行は組織の帰任成功に有意な影響はみられなかった。

    心理的契約と多国籍企業の国際ビジネスについて、本研究による貢献は、以下の通りである。先ずは、心理的契約による海外派遣の帰任成功ヘの影響を定量的に検討したことは、心理的契約理論に新しい知見を加える。心理的契約についての先行研究は主に一般従業員に限られており、日本の派遣者の心理的契約による帰任成功への影響についての検証はまだなされていなかった。Yan et al.(2002)によると、個人と組織との間の心理的契約は派遣と帰任成功の度合を決定する。彼らの研究は、心理的契約理論を使って海外派遣者の帰任成功を分析する最初の研究の一つである。しかし、これらの命題はまだ実証研究で検証されておらず、日本人派遣者を対象とした研究でもない。そこで次に、本研究は日系多国籍企業とその日本の派遣者を対象とした心理的契約の測定尺度を作った。これは将来のこの分野における研究の参考になると考える。心理的契約理論を使い、日本の派遣者の帰任成功を分析することは、日系多国籍企業の派遣者についての理論と実証研究との間のギャップを埋める新たな試みである。

研究ノート
  • 小野 香織
    2017 年 9 巻 1-2 号 p. 91-102
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、多国籍企業の企業文化にホームカントリーの文化がどのような影響を与えているかということを、先行研究の国の文化フレームワークを用いて明らかにすることである。とりわけ日本企業特有の企業文化に対する考察を通じ、多国籍企業における異文化マネジメントの重要性を、国の文化の影響性という独自の視座から論じるものである。

    企業文化に対する国の文化の影響の度合を検証する方法として、経営理念・価値観といった各企業が公開している情報を使用し、それらを定量的・定性的に分析することで数値化し、国の文化の先行研究であるHallのコンテクスト理論、HofstedeとGLOBE Projectの国の文化のフレームワークにあてはめる手法により、企業文化における国の文化の影響度を把握することを試みた。

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