電着塗装用の電極室は, 平膜のイオン交換膜を箱型のフレームに挟み込んだ電極室が主流である。この電極室は重量が重い, あるいは塗膜の厚みを更により均一に, また塗膜品質をさらに向上させたい等のニーズがあり, そこでこの用途向けの新イオン交換膜と電極室の開発に取り組んだ。種々の開発トライの結果, 押出し成形による管状イオン交換膜の開発に成功した。
これは従来の平膜のイオン交換膜に比較して, 管状としての形状に自己支持性があり, 電着塗装用電極隔膜に要求される機械的強度を十分に満足し, かつ電気化学的性質においても平膜のイオン交換膜と同等以上の性質を持つものである。次いでこの管状イオン交換膜を用いた電着塗装用管状イオン交換膜電極室を開発した。この電極室は従来の箱型電極室と比較すると, 重量が格段に軽くなりまた十分な強度があることから, 取り付け, メンテナンス時の扱いが飛躍的に向上した。また塗膜の平滑性に影響するブツの発生が箱型では避けられないが, 管状イオン交換膜電極室では完全に解消した。また管状イオン交換膜電極室の密閉浸漬型を用いることで塗装膜の厚みをより均等にすることができ, かつこれは塗料の使用量の削減と電力の削減という経済的効果が出ることが確認された。
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