イオン交換樹脂対イオンの局所構造と分離選択性との関係を明らかにするために, 筆者らが用いているX線吸収微細構造 (XAFS) について概説し, さらにイオン交換系に適用して得られた結果を議論した。XAFSの解析の結果, 陰イオン交換樹脂対イオンの水和が十分に進んでも, イオン交換基と対イオンの結合がある程度の割合で残っていることがわかった。陰イオン交換樹脂内のハロゲン化物イオンの局所構造と水の吸着等温線を総合的に説明するためには対イオンに3分子程度の水が吸着した後に, 一部の対イオンが完全水和しイオン交換基との直接結合が解離すると考える必要があり, 最終的に解離する対イオンは40%程度であることがわかった。また, 対イオンが部分的に脱水和し, イオン交換基上に結合している構造は, イオン交換樹脂内だけではなく, 気液界面の単分子膜上でも維持されており, ハロゲン化物イオンでは普遍的な局所構造である可能性が高い。陰イオン交換では陽イオン交換に比べて水和エネルギーによるイオンの識別が強く働くが, このような部分脱水和がその機構の起源になっていると考えられる。
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