日本イオン交換学会誌
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24 巻, 2 号
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学会賞受賞論文
  • 斎藤 恭一
    2013 年 24 巻 2 号 p. 21-28
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/23
    ジャーナル フリー
    放射線グラフト重合法は,さまざまな形状や材質をもつ既存の高分子材料を改質できる有力な方法である。私たちはこれまで,この方法を適用して,ポリエチレン製の多孔性中空糸膜や多孔性シートに官能基を付与してきた。イオン交換基をもつ高分子鎖が多孔性高分子の全体に均一に接ぎ木された。多孔構造にグラフト鎖を閉じ込めることによってグラフト鎖の特性を評価できるようになった。グラフト鎖は,孔に向かって孔表面から出ているポリマーブラシと,高分子マトリクスに侵入するポリマールーツとに区分できる。ポリマールーツは多孔性高分子の全体を膨潤させ,孔の体積の減少を緩和した。一方で,ポリマーブラシは多点かつ多層でタンパク質を捕捉した。ポリグリシジルメタクリレートのグラフト鎖中のエポキシ基に,グラフト鎖のコンホメーションを収縮させて,ジオール基を導入することによって,グラフト鎖の先端にサイズ排除層を与えることができた。イオン交換基導入反応での溶媒を選ぶことによってポリマールーツに対するポリマーブラシの割合を決定できるようになった。
功績賞受賞記念論文
  • 城 昭典
    2013 年 24 巻 2 号 p. 29-39
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/23
    ジャーナル フリー
    地下水のヒ素と硝酸イオンによる汚染が健康上の問題となっているほか,リン酸イオンと硝酸イオンによる湖沼河川の汚染は富栄養化による環境問題を起こしている。このような有害性及び環境汚染性の陰イオンを高速で選択的に捕集可能な有機系吸着剤の探索と開発を行った。先ず橋かけポリアリルアミン球状樹脂がリン酸イオンとヒ酸イオンを迅速かつ選択的に吸着できることを見出した。次にこの成果を参考に,電子線前照射グラフト重合法によりポリオレフィン繊維にビニルホルムアミドをグラフト重合した後グラフトされたポリビニルホルムアミド鎖のホルムアミド部位をアルカリ加水分解してポリビニルアミンを官能基とする弱塩基性陰イオン交換繊維を合成した。この繊維もヒ酸イオンを高速度で選択的に吸着した。さらに,電子線前照射グラフト重合法によりクロロメチルスチレンをグラフト重合したポリオレフィン繊維をトリアミルアミン,トリへキシルアミンで四級化して合成した強塩基性陰イオン交換繊維は,塩化物イオンや硫酸イオンの共存下でも硝酸イオンを高速で選択的に吸着した。以上の陰イオン交換体はいずれも吸着・溶離・再生の反復が可能であった。
技術賞受賞論文
  • 河野 典生, 佐藤 嘉久, 小貫 政将
    2013 年 24 巻 2 号 p. 40-45
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/23
    ジャーナル フリー
    クラフトパルプ製造における蒸解薬品回収工程において,原料チップより混入する塩素,カリウムが,徐々に蓄積,濃縮されることが知られている。黒液を燃焼し蒸解に有用なナトリウム分,および硫黄分を回収する回収ボイラー内において,黒液中に濃縮された塩素,およびカリウムは,黒液を燃焼し蒸解に有用なナトリウム分,および硫黄分を回収する回収ボイラー内において,燃焼灰の溶融温度を低下させ,燃焼ガスに同伴し,過熱管等に付着し,燃焼ガス通路を閉塞させ,ボイラーの操業を阻害すると共に,熱効率の低下や,高温部位の腐食速度を増進させることが問題提起されている。
    本稿では,北越製紙株式会社新潟工場殿と弊社により共同開発した,回収工程内に蓄積,濃縮される塩素,カリウムをイオン交換樹脂法によって除去する「脱塩素脱カリウムシステム」を紹介する。本システムは,北越製紙株式会社新潟工場殿にて平成 16 年に稼動以来 9 年を経過し,導入効果,省エネルギー効果御評価を頂いている。
特集記事
一般論文
  • 小川 剛, 新井 剛, 永山 勝久, 渡部 創, 佐野 雄一, 野村 和則
    2013 年 24 巻 2 号 p. 52-59
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/23
    ジャーナル フリー
    軽水炉及び高速増殖炉(FBR)から発生する使用済核燃料において,高レベル放射性廃棄物(High-Level radioactive Waste; HLW)の処理・処分法の確立は極めて大きな開発課題である。特に放射性廃棄物を地層処分するためには,環境負荷軽減や処分場の占有面積低減等の観点から,HLW に含まれる長半減期核種であるマイナーアクチノイド(MA)の分離が重要となる。現在,HLW からの MA の分離回収には抽出クロマトグラフィーが検討されているが,放射性分解ガスや溶解スラッジによるカラムの通液阻害等が懸念されている。そこで,本研究ではカラムの下方から通液し,充填層を粗に保ちながらクロマトグラフィーの操作を行うエクスパンデットベッドカラムクロマトグラフィー(Expanded bed Chromatography: EBC)に着目した。本研究では,MA 分離用に開発された含浸吸着材を用いて,EBC の動的吸着・溶離特性を検討した。本研究の成果から,EBC によっても良好なクロマトグラムを得られることができ,ガス・スラッジの影響を抑制可能であることが示された。
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