著者は学生時代から有機合成・高分子科学を専門分野としており, 企業に入社後も主に有機合成関連の仕事に従事してきた。日本イオン交換学会と大きく関わりのあったプロジェクトとしては, 化学反応向け新規酸化剤として開発した次亜塩素酸ナトリウム5水和物「ニッケイジアソー®5水塩(SHC5)」がある。ここでは改めてSHC5を紹介し, その特徴と幾つかの応用事例についても報告する。
糖分子やアデノシン三リン酸(ATP)といった生体関連分子をターゲットにした, より効率的なイオン・分子認識系の構築を目的として, 各種の超分子分子認識法を開発した。これらの系はジピコリルアミン-遷移金属錯体によるリン酸誘導体との結合と, フェニルボロン酸による糖のシスジオール基とのエステル形成をモチーフとして, 環状オリゴ糖であるシクロデキストリンの利用と分子間の弱い相互作用の組み合わせにより分子認識能を発現している。さらにはこれらの分子認識部を各種のナノ粒子に修飾することで, 蛍光あるいは電気化学的に細菌検出できる系も開発したので, それらについても報告する。
原子力発電プラントでは, 水質を高純度に維持するためにイオン交換樹脂によって浄化し, 設備構成材料の腐食を抑止している。原子炉水中には水の放射線分解によって発生した過酸化水素が存在しており, これがイオン交換樹脂の酸化分解を促進し, 樹脂寿命を短くする原因となっている。そこで著者らは, 過酸化水素を分解する技術としてPd担持樹脂の適用を検討した。イオン交換樹脂にPd担持樹脂をオーバーレイもしくは混合し, 原子炉水中に含まれる過酸化水素を分解することで, イオン交換樹脂の酸化劣化を抑止することが可能であることを確認した。これらの試験結果について報告する。
As an adsorbing material for recovering cesium from radioactive contaminated water, a sponge-like compound was synthesized using sodium-form synthetic mica (Na-TSM) as an ion exchanger which does not contain lithium and is inexpensive and readily available. The cesium adsorption ratio from aqueous solutions was 80% or higher in low cesium concentration region and the desorption ratio was less than 5%. It suggests that synthesized sponge-like material is much adapted as cesium adsorbent.