多孔性陰イオン交換体中における錯イオンのイオン交換挙動を検討するために, その内部のFe
3+塩化物錯イオンの配位数およびイオン交換特性の測定を行った。その結果, 吸着している錯イオンは [FeCl
4]
-であり, 陰イオン交換体内のドナン領域にのみ存在していることが示された。さらに, 吸着している錯イオン種である [FeCl
4]
-および [UO
2Cl
4]
2-について, その塩化物イオン (Cl
-) を基準とする吸着ポテンシャル△μ
0r, を求めた結果, それぞれ14.3および15.8kJ/molと極めて大きな値をもつことが示された。これを熱力学的平衡定数Kを用いて検討した結果, 錯イオン種間の交換反応においては浸透圧項が, また錯イオンとCl
-との交換反応においては, 活量係数項の寄与が大きい事が示された。この結果は, 電子交換反応において, 吸着した錯イオンが水溶液中に比べて大きな反応速度をもつ現象と同様に, 吸着した錯イオンの特殊性を示すものと考えられる。
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