原子力工学分野では,核分裂・核融合に係わらず,種々の化学的な操作が必要とされており,これら原子力工学分野における化学は原子力化学(Nuclear Energy Cheimistry)と総称されるが,その中で核種分離や同位体分離は,核燃料サイクルや炉化学等で欠かせないものである。著者はイオン交換の技術を原子力化学分野における核種分離および同位体分離への応用した研究を行っており,本論文では,これら研究成果について解説する。
著者は元々化学工学・触媒反応を専攻し,会社に入ってからイオン交換技術に関係する仕事に長年従事して来た。有機性高分子のいわゆるイオン交換樹脂を使用した純水製造がその代表例だが,技術開発をするにつれ,純水製造とは裏腹に繰り返し利用するために大量の再生廃水が発生することに問題意識をもつに至った。折から米国で再生廃水の出ない電気脱イオン技術が開発されたのを機に,1988年に世界で初めて再生廃水の出ない「電気脱イオン技術」を使ったクリーンな純水製造システムを商品化し,現在では産業界に広く普及するに及んだので,本技術について述べる。