廃地熱水中の希薄な溶存砒素の分離・除去を目的に, ジチオール基を有するキレート樹脂 (RES樹脂) が開発された。本研究は, その可能性を検討するため, RES樹脂への砒素の吸着平衡を測定し, 分離特性を調べた。
平衡関係は通常のバッチ法により測定し, 吸着平衡に及ぼす温度, 砒素溶液の濃度, 溶液のpH及び共存成分の影響を調べた。この結果, 砒素の平衡等温線は, Langmuir式で表現できることを示すとともに, 吸着容量は室温より高温において若干増加し, 平衡定数は温度が高まるほど減少する傾向が見られ, 368Kにおいても高い値を示した。等温線に及ぼす砒素の濃度の影響は殆ど見られなかった。吸着容量は溶液のpHが10以下で一定値を保持したが, 10以上では著しく低下した。この理由は砒素の溶存形態に及ぼすpHの影響に依ると思われる。また, pH>10のアルカリ溶液が溶離剤として有効であることも示唆した。
廃地熱水中の高濃度の共存成分として, NaCl及びシリカを選び, 平衡関係に及ぼす影響を調べた。吸着平衡は, これらの影響を受けず, RES樹脂が廃地熱水の溶存砒素を選択的に分離・除去できることを示した。
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