白金族元素の内, ルテニウム (Ru) , ロジウム (Rh) , 及びパラジウム (Pd) を用い, 塩素イオン錯体のイオン交換挙動を調べた。塩酸液中での紫外可視領域の吸収と報告されている錯形成定数から, Ru
3+, Rh
3+は0.1mol/dm
3から9mol/dm
3まで塩素イオン濃度の増大と共に錯形成が進行し, Ru (Cl)
3-6, Rh (Cl)
2-4等の高次の錯体の存在の可能性もあるが, Pd
2+では1mol/dm
3以上の塩酸濃度での可視部の吸収の変化が少なかった。ν-K軌跡交点法によってイオン交換体内の錯イオンの価数を求めたところ, 塩素イオン濃度が0.1mol/dm
3~6.0mol/dm
3の範囲でRu
3+では-1.4~-1.9, Rh
3+では-1.4~-1.8, さらにPd
2+では-1.6~-1.7であった。Ruは溶液内の錯形成が進むことによって, RuではClに対する選択性が, 1.7から612と増大するのに対して, Rhでは1.2から31になるに過ぎなかった。またPdは溶液内の錯形成が進行していないにもかかわらず選択性は240から360程度と高かった。特にPdに於いて溶液内の平均価数に対してイオン交換体内の平均価数が小さいと言う結果を得た。
以上の結果からPd-Cl錯イオンのイオン交換では, イオン交換基との錯形成反応を伴う可能性がある。
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