国際保健医療
Print ISSN : 0917-6543
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[追悼 若井 晋先生]
研究報告
  • 近藤 暁子, 上林 千佳, 小泉 麻美, 二見 茜
    2021 年 36 巻 2 号 p. 39-47
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/22
    ジャーナル フリー

    目的

      日本の看護師が外国人患者をケアするときの困難感に関連する要因を探索する。

    方法

      都内の1つの大学病院および1つの総合病院に勤務する看護師全員を対象としてGoogle フォームを使用した自記式調査を実施した。調査内容は対象者の基礎情報、言語能力、国際経験、外国人患者のケアの困難に関する16項目であった。変数間の関連をパス解析を使用して分析した。

    結果

      計138名の看護師が調査に回答した(回収率11.3%)。看護師経験は平均14.1(±10.6)年で、50%が学士号を取得していた。困難感の高い項目は主にコミュニケーションに関するものであり、続いて保険または支払いに関するものであった。困難感が最も高かったのは「英語以外の言語でのコミュニケーション」であったが、関連していた要因はなかった。パス解析では、「外国語を話すことができる」が直接かつ有意に低い困難感と関連していた(β=−0.313,p=0.011)。教育学位は、「自己評価英語レベル」(β=0.282,p<0.001)と関連し、「自己評価英語レベル」は「外国語を話すことができる」(β=0.396,p<0.001)と関連していた。教育学位は、「国際経験(学習)」(β=0.161,p=0.044)と関連しており、「国際経験(学習)」は「自己評価英語レベル」(β=0.256,p<0.001)と「外国語を話すことができる」(β=0.286,p<0.001)の両者に関連していた。高い学位は「外国人患者対応研修に参加」に関連していたが、「外国人患者対応研修参加」者数は少なく、言語能力および困難感との関連は見られなかった。学位と看護師経験年数は負の関係があり(β=−0.454,p<0.001)、経験年数と「今まで経験した外国人患者の数」は正の関係があった(β=0.291,p<0.001)が、「今まで経験した外国人患者の数」は困難感と関連していなかった。「国際経験(観光)」は「国際経験(学習)」(β=0.338,p<0.001)と高い正の関連があったが、「国際経験(観光)」は「自己評価英語レベル」や困難感とは有意な関連はなかった。

    結論

      英語を含む外国語能力や学習を主とした海外経験が困難感の軽減につながる可能性がある。言語トレーニングを含む外国人患者対応研修の効果を評価する介入研究が必要である。

  • 神崎 真姫, Janak Poudel, Prakash Acharya, 河田 里奈, 小田 容子, 奥川 裕子, 木村 健司, 酒井 ひ ...
    2021 年 36 巻 2 号 p. 49-62
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/22
    ジャーナル フリー

    目的

      本研究の目的は、ネパールの同一地区内で異なる生活圏に居住する児童を対象に、居住地、カースト、保護者の健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health: SDH)、さらに児童の1日のジャンクフード摂取状況と児童の栄養状態との関連を検討することであった。

    方法

      2017年12月から2019年3月に、ネパール国カスキ郡マチャプチャレ行政区における、JICA支援活動拠点であった村とその近隣地域で、6-12歳の児童331名とその保護者を対象に調査を実施した。

      本研究では、WHOで栄養不良の評価の一つとして用いられている年齢別体格指数(Body Mass Index for age z-score: BMIZ)をUnderweightの判定基準として使用し、BMIZ<−2SDをUnderweightと定義づけた。

      児童の栄養状態を評価し、児童の保護者を対象に保護者のSDHに加え、児童の1日のジャンクフード摂取状況調査を実施し、ロジスティック回帰分析で検討した。

    結果

      調査に参加した児童のうち、Underweightであった児童は31名(9.4%)であった。

      保護者のSDH、さらに児童の1日のジャンクフード摂取状況と児童のUnderweightとの関連を検討したところ、カースト(OR=0.241、p=0.001)、母親の教育歴(OR=3.879、p=0.011)、父親のリテラシー(OR=2.790、p=0.023)に、統計学的有意差が示された。

    結論

      本研究では、児童のUnderweightには高位カースト、母親の低い教育歴、リテラシーを持たない父親に関連を示し、児童の1日のジャンクフード摂取状況は関連を示さなかった。

      子どもの栄養状態には、保護者のSDHが関連していた。子どもの健康への影響要因を把握するためには、文化、教育、就労、食生活を含む生活状況など、養育提供者である保護者の社会背景の変化を捉え直し、保護者のSDHを多角的に把握した調査が求められる。

活動報告
  • 佐伯 壮一朗, 柳澤 沙也子, 小笠原 理恵, 安田 直史, 中村 安秀, 関西グローバルヘルスの集い運営委員会
    2021 年 36 巻 2 号 p. 63-72
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/22
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    背景

      新型コロナウイルス感染症(Novel Coronavirus Disease 2019, COVID-19)の影響を受け、各種イベント開催が自粛され、人が物理的に集まらないオンラインセミナーの開催の需要が高まっている。しかし、オンラインセミナーの開催経験を豊富に有するグローバルヘルス関連の学術団体はまだ少なく、ノウハウの蓄積は不十分である。そのような状況の中、公益社団法人日本WHO協会は一般市民に開かれた公開講座「関西グローバルヘルスの集い」を「COVID-19とSDGs」をテーマに2020年3月から企画し、5月より3回オンラインにて開催した。この経験に基づきオンラインセミナーを開催する際の主催者への注意点をまとめる。

    開催概要

      関西グローバルヘルスの集いを開催するにあたりオンラインで参加者の募集、登録受付を行った。その際Google Formsを利用し、参加者の属性に対するアンケート調査を実施した。本番はオンライン会議ソフトウェアZOOMを使用し、動画サイトYouTubeにて生配信した。視聴者動向の解析はYouTube Analyticsによる自動解析を利用し、セミナー終了後、参加登録者にGoogle Formsを利用したアンケートでフィードバックを依頼した。

      3回の参加者はのべ2,083名だった。大半は日本在住であったが、海外在住の参加者はのべ69名で、欧米諸国やチュニジア、ザンビアなどであった。参加者の属性は医療者のみならず大学教員や学生、会社員も参加した。満足度について、5段階評価で4以上を回答した参加者は85.7%であった。記述回答では内容への肯定的な意見の他、開催前から当日にかけての運営の不手際を指摘した意見が寄せられた。

    教訓

      オンラインセミナーでは、講演内容のみならず運営の手際でも満足度が変化することが分かった。運営の不手際は具体的に、セミナー開催前には一部の参加者に対し配信用URLが届かない例があり、セミナー中には画面の切り替えの不手際、画面共有で投影していたスライドの動作不全が生じたこともあった。これらは運営側の取り組み次第では予防あるいは早期発見し修正する余地があり、不具合が生じた際の対応を事前に検討することが重要である。

    結論

      オンラインセミナーを開催することで視聴者のみならず登壇者は世界中から参加可能となったのは大きな利点である。一方、綿密な準備が必要で、運営者の経験を蓄積し円滑な運営を行うことは議論活性化の最低条件である。今後、国際保健医療分野での活用のためにはオンラインセミナーの運営のみならず内容の質も問われることとなるだろう。

資料
  • 笹川 恵美, 春名 めぐみ, 三砂 ちづる
    2021 年 36 巻 2 号 p. 73-87
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/22
    ジャーナル フリー

      目的

      2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」は、2030年までの持続可能な実現に向けて、グローバルなパートナーシップの重要性を強調した。出産のヒューマニゼーションは、ブラジルで1996~2001年に実施された「家族計画母子保健プロジェクト(光のプロジェクト)」の根幹となる概念である。ラテンアメリカでは、その概念は、各国の関係法規の中で示されるようになっている。本研究の目的は、出産のヒューマニゼーションの概念が、ラテンアメリカ各国の出産のヒューマニゼーションに関連する関係法規の整備、およびその概念の地域的拡大や持続可能性に、どのように寄与してきたかを明らかにすることである。

    方法

      ラテンアメリカ地域20ヵ国の政府や保健省のウェブサイトを検索し、「humanization of childbirth」、「humanized care」等のワードが使われている、母子保健分野の関係法規と国際技術協力プロジェクトについて調べた。次に、関係法規によって、ラテンアメリカ各国で出産のヒューマニゼーションが、どのように捉えられているかを分析した。

    結果

      2001〜2019年を対象としたインターネット検索の結果、16ヵ国で出産のヒューマニゼーションに関連した関係法規が成立し、4ヵ国で国際技術協力プロジェクトが実施されていた。出産のヒューマニゼーションそのものに焦点を当てた法律は5ヵ国であり、その概念を、包括的ケアの一環として、各国の保健・社会福祉サービスに取り入れることを義務付けていた。

    結論

      ブラジルにおける光のプロジェクト以降、この概念の法令化は、ラテンアメリカ全域に広がりをみせた。出産のヒューマニゼーションの概念は、人間の尊重と尊厳を保障する文脈で語られ、結果として法令化されていた。各法律条項の中で、母子保健分野の包括的なケアやサービスの中に、出産のヒューマニゼーションの概念を組み込むことを明確に意図して整備されたことで、この概念の持続可能性が強化されたと示唆された。

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