国際保健医療
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総説
  • 山本 あかね, 中野 久美子, 原 ゆかり
    2026 年41 巻2 号 p. 65-81
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー

    目的

      日本および世界各国における父親を対象とした出産前教育に関する介入研究を体系的にレビューし、出産前教育プログラムの内容と効果に関して検討することで、グローバル化する育児環境のニーズ把握や効果的なプログラム開発の一助とする。

    方法

      医学中央雑誌Web版、Pub Med、Web of Science において、「父親」「出産前教育」「antenatal education」などを意味する日英キーワードを用いて文献検索を行った。対象となった文献から結果に関する記述を抜き出し、内容ごとにコードを抽出した。次にそれらのコードから有意な効果の有無を分類し、共通性に従ってサブカテゴリ・カテゴリを形成した。さらに、各コードに対して、実施された教育内容を記述した。実施時期については各文献中の記述をもとに妊娠時期ごとに区別し、表にまとめた。実施方法についても各文献中の記述から分類を行った。

    結果

      包含基準に従い文献選択を行った結果、23件が分析対象となった。研究実施国は、主に日本(約22%)、欧米(約43%)、その他アジア(約22%)であり、2020年以降文献数は増加傾向にあった。効果を種別に分類した結果、3つのカテゴリ【精神的側面】【出産・育児に対する態度と行動】【社会的側面】と19のサブカテゴリ、66のコードが抽出された。うち、有意な効果を示すコードは34、有意差を示さないコードは17、著者の効果についてのナラティブから形成されたコードは15であった。教育実施時期は妊娠中期から後期が多く含まれていた。教育実施方法については23件の文献のうち19件が対面実施、インターネットメディアを使用した実施もみられた。

    結論

      本研究において、日本および諸外国で実施されている、父親を対象に含めた出産前教育プログラムの内容と効果を体系的に整理し、精神面、出産・育児態度と行動、社会面の効果に大別された。今後は、実施時期や方法も含め、国・地域・文化間の共通点/相違点を更に検討し、異文化環境で育児を行う家族のニーズの把握や、より効果的なプログラムの実用化が期待される。

研究報告
  • 増田 美智世, 野口 真貴子
    2026 年41 巻2 号 p. 83-93
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー

    目的

      今後、急速に高齢化が進むことが予測されるルーマニアにおいて、来る超高齢社会を高齢者として過ごすであろう中年期にあるルーマニア人が、ヘルシーエイジングについてどのように考え、どのように取り組みたいと考えているかを明らかにすることを目的とした。

    方法

      2024年1月~3月に、ルーマニアの首都ブカレストにある2か所の医療施設の関係者である10名の中年期にあるルーマニア人を対象に半構造化インタビューを行い、質的に内容を分析した。

    結果

      本研究参加者は全員女性で、年齢は40代から50代だった。参加者のうち、ヘルシーエイジングという言葉を知っている参加者は1名、詳しく知らない参加者は7名、全く知らない参加者は2名であった。

      参加者の語りを分析した結果、12のカテゴリーと55のサブカテゴリーが帰納的に抽出された。カテゴリーは意味内容から3つのテーマ、「中年期にあるルーマニア人の高齢者観」、「中年期にあるルーマニア人が望む自己の高齢者像」、「健康な高齢期への備え」が得られた。

      研究参加者は、ヘルシーエイジングという言葉そのものは理解されていない場合もあるが、ヘルシーエイジングの概念について認識していた。参加者の高齢者観は、自己の望む高齢者像のイメージから、健康的に年をとることの意欲へ繋がり、健康な高齢期への備えとなっていた。さらに高齢期を意識した備えは、機能的能力の発達に寄与するだけでなく、現在の生活の質も高めていたと考える。

    結論

      中年期にあるルーマニア人には、ヘルシーエイジングという言葉そのものは、普及していないが、ヘルシーエイジングの概念は理解されていた。来る超高齢社会を高齢者として過ごすであろう中年期にある人が、ヘルシーエイジングに取り組み、健康寿命を伸ばすことは、高齢期の幸福だけでなく、社会全体の医療費や福祉の負担の軽減にも繋がるといえる。

資料
  • 宮本 純子, シュレスタ ジョシ アルチャナ, 神原 咲子, 那須 ダグバ潤子
    2026 年41 巻2 号 p. 95-102
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー

      近年、日本に在留するネパール人は急増し、2025年6月時点で約27万人に達し、在留外国人全体の6.9%を占める。人口動態の変化、社会資源の減少、災害リスクの増大、在留外国人支援の必要性などにより、多文化背景をもつ住民を含めた地域づくりと健康支援が喫緊の課題となっている。本報告は、ネパール人コミュニティを含む地域住民が、平時・災害時に健康と生活を守るために必要な「多文化共生」「コミュニティ・レジリエンス」の視点から行われた第40回日本国際保健医療学会学術大会自由集会の概要を報告する。

      自由集会には47名が参加し、異文化理解と文化的能力、地域内の顔の見える関係性、ピアサポーターの活用、橋渡し型社会資本の重要性が指摘された。討論では、在留ネパール人におけるリプロダクティブ・ヘルスとメンタルヘルスが主要課題として挙げられた。避妊や中絶へのアクセス困難、制度とニーズの乖離、家庭・共同体による支えの弱体化、孤立やストレス増幅などが背景にあることが明らかとなった。総合討論では、日本の制度は未だ多様な背景を十分に包摂できていない画一的な制度に対し、多様な人々が尊重され能力が発揮できるようになる前提として多様な文化背景をもった人々の受容が不可欠であることが示された。また、地域における「声かけ」「見守り」といった日常的な関係性の再構築が困難な状況に対する適応や乗り越える力の向上に寄与することが提言された。本自由集会は、在留外国人と日本人が共に支え合う多文化共生社会の構築に向けた実践的示唆を提供した。

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