立地条件の異なる二つの地域を選定し,主要な外出場所とこれへの遂行を阻害する外出阻害要因を明らかにすることで,良好な生活圏の形成に有用とされる基礎的知見の提案を目的とした。対象は都市型居住男女271名(69.2±5.3歳)と郊外型居住男女141名(69.1±5.8歳)であり,方法は事前の調査協力に快諾された方への郵送アンケート方式とした。域内の交通機関は郊外型がJR2路線のほかはバス便だけに対して,郊外型の半分以下の面積でしかない都市型では鉄道だけでも14路線にも達した。施設数では日用品・飲食施設,病院,神社,教養・娯楽施設が都市型に多く,公園やスポーツ施設が郊外型に多い特徴にあった。外出希望場所と実際の外出場所との間には,一応の対応関係が成立したものの,文化的あるいは娯楽的な施設への外出希望は実際の外出頻度よりも少ない反面,病院や銀行・郵便局等の訪問を余儀なくされる外出先は多くなる特徴を呈した。外出での不満内容は,歩道関連に関わる要因が両地域で共通したが,周辺環境関連が都市型で,距離関連が郊外型で高い申告率を示す等,地域的な特異性に基づく外出阻害要因の違いを認めた。心身の負担が少し感じる歩行距離は,直線距離に換算して男性が900m,女性が600m程度と推察され,高齢女性はもとより男性の歩行能力を基準としても1kmを越えることのない生活圏の確保が望まれる。
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