社会言語科学
Online ISSN : 2189-7239
Print ISSN : 1344-3909
ISSN-L : 1344-3909
21 巻, 2 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
巻頭言
寄稿
研究論文
  • 小玉 安恵
    2019 年 21 巻 2 号 p. 18-33
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/04/23
    ジャーナル フリー

    本稿では,山口(2009)により日本語の引用で最も重要かつ基本的選択とされる引用助詞ッテとト及び無助詞の機能を明らかにすべく,44の芸能人の体験談をLabov (1972)のナラティブ分析の時間的節構造とThompson & Hunston (2000)の評価の枠組みを用い量的かつ質的に分析した.量的分析では,杉浦(2007)のッテを発話引用専用とする説と,山口のッテを対立的,トを中立的とする説に加え,トをフォーマル,ッテをインフォーマルとする従来の説を検証した.結果,一人称ナラティブではッテと無助詞が発話引用に,トが思考引用に使用される傾向が最も顕著であることが判明した.次に,その例外である思考引用のッテと無助詞,発話引用のトを含んだ場面の質的分析を行ったところ,思考でも知覚したことに対し継起的に語られる即時的反応にはッテが,状況的に相手に言えない登場人物「私」の思考には無助詞の裸の引用が,語りの導入部と事件の発端となる発話や一連の会話の区切りには発話でもトが使われることから,本稿ではッテが登場人物「私」の物語世界で知覚感知した引用を,無助詞が物語世界の引用当事者視点からの引用を,トが語り手の今の視点から語られた引用であることを示す標識であると主張する.

  • 柴田 香奈子
    2019 年 21 巻 2 号 p. 34-49
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/04/23
    ジャーナル フリー

    本稿は,厳律シトー会で使用されている修道院手話を研究対象とし,従来の修道院手話研究や言語学分野における手話研究と比較検討して,修道院手話に備わる言語的な側面と文法化について議論する.これまで修道院手話は,概して「身振りのようなもの」として理解され,社会言語学や言語学などにおいて注目されることが少なく,未だその実像は明らかにされていない.本稿ではこういった現状を踏まえ,現在でも修道院手話の使用が残るドイツ,オランダ,日本の厳律シトー会においてフィールドワークを実施した.そこで収集した発話データを分析した結果,疑問表現に関して,(a) Wh疑問文に見られるWhマーカー,(b) Yes/No疑問文に見られるQuestionマーカー,(c) Yes/No疑問文を変化させた依頼表現,という3点が観察された.(a), (b)では,疑問文にみられる文法化について検討し,(c)では,なぜ疑問表現を依頼表現に変化させるのかについて,修道士間の序列や地位といった内的な社会構造と関連付けて分析する.そして修道士が修道院手話を介して,どのように他者と関わりコミュニケーションを成立させているかについて考察をおこなう.

  • 簡 月真
    2019 年 21 巻 2 号 p. 50-65
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/04/23
    ジャーナル フリー

    本稿は,日本語を上層(語彙供給)言語とする「宜蘭クレオール」の指示詞について論じるものである.「東岳村」で得たデータをもとに考察を行った結果,次のようなことが明らかになった.まず,宜蘭クレオールの指示詞は,日本語由来の形式が取り入れられているが,アタヤル語と同じく近称と非近称の二項対立をなしている.次に,日本語と同様,指示代名詞・指示形容詞・指示副詞にわけることができるが,基層言語であるアタヤル語からの影響や傍層言語である華語からの影響,習得の普遍性からの影響を受け,日本語とは異なる用法に変化している.そして,世代間変異の様相から,変化のプロセスを捉えることができた.

書評
報告
feedback
Top