本研究の目的は,外国人留学生のための対話型キャリア教育の構築に向けて,エージェンシーの育成を目指した共創的な対話活動の意義と課題について検討することである.研究課題は,外国人留学生のためのキャリア教育について,(1)キャリア教育が目指す人材像とは何か,(2) 対話の意義とは何か,(3) 対話をいかにデザインすべきかという3点である.研究課題(1)では,外国人留学生に対しても,VUCA (Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)の現代には,個人のWell-beingと社会貢献を実現するエージェンシーの育成が必要であることを指摘した.(2)では,(1)における対話の重要性を示した.(3)では,対話型キャリア教育における対話活動の一例を取り上げ,繰り返し,パラフレーズ,共同発話といった言語現象と発話数,話題数,話題展開,SCT (Student Critical Turn),学習者意識に関わる質的・量的分析により,対話の拡張と深化,参加者の参加の様相を明らかにした.最後に,対話をデザインする場合は,対話前には,①対話の意義に関する理解,②質に関する理解,③目的の共有,④グラウンドルールの共有,⑤テーマに対する問題意識・興味の活性化,⑥異質性が担保されたグループ構成,⑦参加者役割を含む参加の在り方に関する理解とメタ認知の活性化,⑧対話を拡張・深化できる日本語能力,⑨進行管理に関する意識づけ,対話後には,⑩振り返りの徹底等が重要であることを示唆した.
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