社会言語科学
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最新号
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追悼
巻頭言
研究論文
  • 関崎 博紀
    2022 年 24 巻 2 号 p. 5-20
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/05/21
    ジャーナル 認証あり

    自身を肯定的に評価する言語行動は,避けるものとされている.そのため,実際の会話で観察されるにもかかわらず,そのやりとりの特徴は解明が進んでいない.これを受けて,本研究は実際の会話での自己肯定的評価にともなう相互行為を分析する.そして,そこに通底する志向性の一端を解明する.そのために,親しい日本人大学生二者間で交わされた話題提示会話から,得意なことについて話す場面をデータとして分析した.その結果,自己肯定的評価には,根拠となる事実や記録,実際の行動,または経緯などの具体的な情報が交換されること,その交換を通して,自己肯定的評価の発話者が当該の評価に見合うか否かを,会話参加者が確かめ合っていることが分かった.また,それに続いて,相互に了承可能な評価の調整として,ほめに対して特徴的に見られる各種の応答や自己否定的評価が行われることも明らかにした.これらの結果に関して,先行研究との異同,及び,話者間での評価の均衡の観点から考察を加え,他言語との異同の解明に寄与する可能性を指摘した.

  • 佐藤 茉奈花, 夏 雨佳, 中井 陽子
    2022 年 24 巻 2 号 p. 21-36
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/05/21
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,日中初対面接触場面において,母語話者と非母語話者が互いに積極的に会話に参加し,理解を深めていくためにどのような参加調整を行っているのかについて,二者会話①②と三者会話③の3つのデータをもとに比較分析した.特に話題開始の発話に焦点を当て,大話題,中話題,小話題の話題開始者と話題開始の発話の発話機能,話題保持者,話題展開の仕方を分析することにより,会話参加者が言語ホスト・ゲストとして,どのような参加調整ストラテジーを使用しているのか,双方の歩み寄りの姿勢について考察した.その結果,二者会話①②では母語話者によって参加調整の仕方に違いが見られたものの,母語話者と非母語話者が互いに参加調整を行っている様子が見られ,非母語話者の理解や参加も高かった.しかし,三者会話③では母語話者の参加調整への意識が薄れ,非母語話者の理解や参加が低くなる話題もあった.このことから,二者会話だけでなく,三者会話でも母語話者と非母語話者の参加調整がより必要であることが明らかになった.また,母語話者には見られたものの,非母語話者には見られなかった話題開始の発話機能があったことから,日本語教育への提言も行った.

  • ボイクマン 総子, 根本 愛子, 松下 達彦
    2022 年 24 巻 2 号 p. 37-50
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/05/21
    ジャーナル 認証あり

    本研究の目的は,プレースメントのためのスピーキングテストの妥当性検証の一環として,状況対応タスクに対する判定者要因を分析することで,判定方法を改善する基礎資料を得ることにある.本研究では,10年以上の日本語教師経験のある教師(10年以上教師)33名,経験年数が3年から10年の教師15名(10年未満教師),非日本語教師(非教師)64名の計112名を対象に状況対応タスクの判定実験を行い,教師と非教師で信頼性に差があるか,教師経験の違いによってテストの判定方法が異なるか,及び,判定の観点が異なるかを検討した.結果,教師と非教師でテスト判定の信頼性に大差は見られなかったものの,非教師の方が中級から上級レベルの弁別に難があった.そして,10年以上教師は非教師より音声サンプルを重視する傾向があった.また,非教師はレベルによって判定の観点を変えることはないのに対し,教師はレベルによって注目する観点を―初級前半は「流暢さ」,初級後半は「テキストの型」,中級前期と中期は「表現の豊かさ」,中級後期と上級は「対人配慮」と「流暢さ」―と変えていた.なお,この傾向は,10年以上教師に,より強く見られた.以上のことから,非教師が判定者となる場合,教師より入念なトレーニングを実施する必要性があることとレベルごとのベンチマークとなる判断基準を判定者トレーニングでは強調する必要があることが示唆された.

  • ジャヴァンマルディ パリーマ
    2022 年 24 巻 2 号 p. 51-66
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/05/21
    ジャーナル 認証あり

    本研究では移動事象を取り上げ,英語から日本語とペルシア語への翻訳ストラテジーを考察し,ペルシア語と日本語の“rhetorical style”の共通点と相違点を明らかにすることを目的とする.分析データとしてはJ.K. Rowling (1999)の“Harry Potter and the Philosopher’s Stone”とその対訳コーパスを通して,図の場所が変更する移動事象を表す222文を抜粋した.移動様態ストラテジーに関しては日本語がペルシア語より移動様態をコード化する,すなわち,ペルシア語は移動様態を省略するケースが日本語を上回ることが分かった.そして,移動経路に関しては,両方の言語はほぼ同様に,移動経路をコード化するが,英語の移動経路を省略する傾向が見られた.最後に,両言語で直示動詞の使用頻度が高いことが分かった.

  • 高木 智世, 森田 笑
    2022 年 24 巻 2 号 p. 67-82
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/05/21
    ジャーナル 認証あり

    本稿では,フィラー的形式の「まあ」について,日常会話の様々な行為連鎖環境における相互行為上の働きを会話分析的視点から分析する.「まあ」は,話者が,今ここの相互行為における何らかの出来事を問題性を孕むものとして捉え,その問題への対処あるいは対処の結果として現行の行為を産出しているというスタンスを標示することを明らかにする.ターン冒頭に用いられる場合は,先行状況や先行発話に何らかの問題を見出しそれに対処した結果としての行為を産出しているというスタンス,また,ターンの内部で用いられる際には,自身の直前の発話部分に問題性を捉え,それに対処する発話を導入したり,一般的期待から逸脱するような発話を産出する際の問題性の認識を標示する.このように,「まあ」は,進行中の相互行為のある部分を対象化し,問題性を孕むものとして捉えた上で後続行為を産出することを標示するという意味において「メタ相互行為的」な標識であることを明らかにする.

ショートノート
  • 稗田 奈津江
    2022 年 24 巻 2 号 p. 83-90
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/05/21
    ジャーナル 認証あり

    本稿の目的は,SNSを用いた勧誘談話における「形式面」の特徴を,日本語母語話者(以下JNS)とマレー語母語話者(以下MNS)の比較を通して明らかにすることである.本研究では,JNSとMNSを対象にSNSを媒体としたロールプレイを通して収集された談話データを,「メッセージの送信形式」及び「文末絵記号類の使用」の観点から,定量的に分析した.その結果,JNSは「話題の並列性」を優先し,「電子メール形式」で長いメッセージを送る一方,MNSは「即時性」を優先し,「チャット形式」で短いやりとりを頻繁に繰り返す傾向があることがわかった.また,上述の形式選択の違いに伴い,JNSは読みやすさを考慮して,頻繁に「文改行」を行うが,MNSは「リプライ」機能を多用したり,「文末絵記号類」を省略したりする傾向があることが明らかとなった.これらにより,メッセージの「形式面」もまた,異文化間の規範意識を色濃く反映していることが示された.

  • 吉田 敬
    2022 年 24 巻 2 号 p. 91-98
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/05/21
    ジャーナル 認証あり

    近年ではWebを中心に,「うれC」や「かわE」など,言うならば「送りアルファベット」のように,語の一部をアルファベットに変えた特殊な書き方も現れている.これらは,一般的なローマ字の用い方から逸脱したものであり,従来の交ぜ書きや当て字,送り仮名とも異なるものである.そこで,本稿では,主として形容詞に見られるアルファベット交じりのそうした表記語を取り上げ,その表現効果を考察するとともに,ことば遊びにおけるスキーマ化や事例化などの認知的な枠組みを援用し,こうした表記法が生じる過程について考究した.

  • 楊 眞淑
    2022 年 24 巻 2 号 p. 99-106
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/05/21
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,英語のイマージョンをメタディスカーシブ体制として捉え,教師と生徒の間の教室での談話の語用論的構造を明らかにする.特に,メタディスカーシブ体制を構成する英語イマージョンの教室での談話が,成績不振者の疎外を合理化および正当化するためにどのように機能するかを検証する.分析対象は,韓国の公立中学校で15か月のエスノグラフィーを通して得たデータである.調査結果は次のとおりである.第一に,韓国語の教師と生徒の両方ともネイティブの教師の授業に興味や必要性を認識していなかった.第二に,学習者中心の学習方法は,英語成績不振者のフィードバックへの依存をもたらしていた.ネイティブのような英語を学ぶことへの学生の抵抗は,ネイティブのような英語と韓国語のアクセントのある英語の間の逆の評価を意味している.本研究結果は,英語のイマージョン研究への社会的転換をよびかけるものであり,学生間の成績格差を広げる根底にあるイデオロギーに注意を向けることの重要性を示している.

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