地域日本語教室での読解支援に役立てるため,学校お便り文書における行為要求文から行動主や行動内容を回答する調査を,日本語非母語話者(JSL)31人と日本人保護者(JJ)46人を対象に行った.JSLの正答率は行動主判断で7割弱,行動内容記述で5割程度でありJJに比べ有意に低かった.ふりがなや翻訳語が添えられた場合であっても,JSLにとり読解困難であった.漢字圏と非漢字圏の得点に有意差は見られなかった.JSL5群を比較すると,習熟度が高いクラス程得点が高いものの,上位群は大意取りの結果詳細を読み落とす傾向が見られた.読解困難な文は,述部に長いひらがな部がある文,書き手が主語の文,言い切り文である.読解困難点は長いひらがな部から語の区切りを見つけられないこと,数字への過剰注目から助詞や語彙の読み落としが生じること,動詞の活用の知識が不足していること,主語省略文や書き手が主語の文から行動主を類推できないこと,既知語からの意味の類推の失敗等であった.JSLは持てる知識を総動員し,既知語や既習文法の知識から読み進めるボトムアップの読みと,背景知識を使って予測しながら読み進めるトップダウンの読みを駆使するが,判断の根拠は個人により様々で読み誤りが生じる.よって,読解支援への要望に応えるためには,行為要求文に頻出する語や文法知識に加え,文章の形式や日本の学校に関する背景知識を補う活動が有用であろう.
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