人間間距離のスタンダードが新型コロナの全世界蔓延により大きく変化したために,今後人間同士のコミュニケーション行動にもその影響があらわれる可能性がある.コロナ以前の分類であるcontact culture(コミュニケーション時の対人距離が近い文化)やnoncontact culture(同,遠い文化)の特徴がみられる地域において,コロナ後の実態を調査することにより,人々の対人距離感覚,つまりどれくらい他者から離れていれば快適に感じ,コミュニケーションが円滑に行われるのか,コロナ以前の人々が共有する近接域数値に戻るのかという点を明らかにできるが,それには今後継続的な調査が必要となる.本稿では,ホール(Hall, 1966)のプロクセミクス研究で距離感に有意な差がみられた2か国,すなわち日本とアメリカ合衆国のコロナ収束直後(2023年)におけるフィールド調査結果から,いかなる環境条件がコミュニケーション行動の変化に影響を及ぼすのか,人々の親密度の差と屋外空間の活用法に着目する.また,人々が快適で適切だと感じるような空間デザインを建築分野と連携して探る.
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