日本鉱物科学会年会講演要旨集
日本鉱物科学会2008年年会
選択された号の論文の236件中1~50を表示しています
S1:副成分鉱物から探る地球内部ダイナミックス
  • 小木曽 哲, 鈴木 勝彦, 鈴木 敏弘, 上杉 健太朗
    セッションID: S1-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    白金族元素は、地球内部におけるケイ酸塩と金属相が関与するプロセスを理解する上で有用である。しかし、白金族元素のマントル中での挙動には不明な点が多く、そのホスト相の存在頻度や成因についても未解明な部分が多い。我々は、放射光X線を用いたマイクロビームXRF分析により、マントルカンラン岩から微小な白金族元素含有相を発見した。発見した相の産状は、いずれも、硫黄を含む流体の存在の関与を強く示唆しており、マントル中での白金族元素の挙動に流体が大きな役割を果たしている可能性が高い。
  • 苗村 康輔, 平島 崇男, Svojtka Martin
    セッションID: S1-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    近年、大陸衝突帯の深部を構成する超高圧変成岩やかんらん岩から「多相固体包有物」が発見され、それらは超臨界流体の化石だと解釈されている (Ferrando et al., 2005)。この超臨界流体こそ、沈み込みスラブからウェッジマントルへの物質移動を担っていると考えられている(Massonne, 1992)。本研究では、チェコ・ボヘミア山塊プレソビッツェかんらん岩から新たに見出した多相包有物の観察を通して、大陸衝突帯下の深部流体の性質に制約を与えたい。 チェコ・ボヘミア山塊にはかつての大陸衝突帯の深部を構成していた岩石が広く露出している。そこでは、大小さまざまのかんらん岩が地殻物質起源の高圧型クフェール・グラニュライト中に産する。我々は既にプレソビッツェかんらん岩の温度圧力経路を以下のように制約した:プレソビッツェかんらん岩は初期(Stage I)に高温(> 1020 ºC)のスピネル(±ザクロ石)かんらん岩であった。その後、かんらん岩は増圧して高圧のスピネルザクロ石かんらん岩(Stage II, 850-1030 ºC, 23-35 kbar)に変化し、後の減圧で多くのザクロ石はケリファイト化(Stage III, 730-770 ºC, 5-15 kbar)した (Naemura, 2008)。  プレソビッツェかんらん岩の主要元素はでMg, Crに富んでおり、このような性質は玄武岩質成分に枯渇したハルツバージャイト質のかんらん岩と酷似している。それにも関わらず、プレソビッツェかんらん岩には、金雲母、アパタイト、モナズ石、U-Th oxide、ハットナイト、ドロマイト、ジルコンなどが含まれている。これらの鉱物はマトリクスに単独で産することも多いが、高圧鉱物の包有物としても産する。また、クロムスピネル中には、上記の相が多相固体包有物として産する。多相固体包有物は、ホストスピネルに対して負の結晶面を示すことから、超臨界流体として取り込まれたと考えられる。構成鉱物がK, Ba, Sr, LREE, U, Thなどの可溶性元素に富んでいることも、多相固体包有物がもともと超臨界流体であったことを支持する。このような超臨界流体は、周囲のグラニュライトに代表される沈み込む地殻物質中の含水鉱物の脱水分解反応でもたらされた可能性が高い。講演では、副成分鉱物を用いたU-Th- total Pb年代測定(Naemura et al., 2008)や、超臨界流体の起源・進入時期についても論じる予定である。
  • 石川 晃, Pearson D. Graham, 丸山 茂徳, Cartigny Pierre, Ketcham Richard A., G ...
    セッションID: S1-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    エクロジャイトを母岩とするダイヤモンドの成因に制約を与えるため、南アフリカロバーツビクター鉱山から発見された明瞭な層状構造を呈するエクロジャイトに対する岩石学的・地球化学的研究を行った。本試料は8400カラット/トンに相当する高いダイヤモンド含有量を示し、その分布は母岩を構成するざくろ石と単斜輝石の相対比率の変化に認められる層状構造と強く相関していることが判明した。従って、ダイヤモンドの結晶化と母岩の形成の間において成因的関連性があるのか、すなわちダイヤモンドが“交代作用起源”もしくは“火成作用起源”なのかを決定できる可能性がある。本発表では(1)X線CT法による岩石の三次元マッピング、(2)EPMAによる鉱物化学組成マッピング、(3)FTIRによるダイヤモンドの窒素含有率―凝集率の測定、(4)ダイヤモンドの炭素同位体分析の結果を用い、母岩とダイヤモンドの形成・進化過程について議論する。
  • Daniel Joseph Dunkley
    セッションID: S1-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    Although U-Pb isotopic analysis of zircon is well established for constraining the timing of high-temperature geological events, chronological data are often open to multiple interpretations. However, dating is not the only tool in the microbeam analyst's kit; such methods have the unique ability to measure a variety of other elements (e.g. Ti, Hf and REEs), on a sub-30 micron scale, in polished sections that preserve paragenetic mineral relationships. Three unusual examples demonstrate the diagnostic value of such information. Microbeam analysis of zircon with diagnostic chemical and textural relationships to host lithologies makes the assignation of age data to geological events far from arbitrary.
  • 外田 智千, Dunkley Daniel, Harley Simon, 横山 一己
    セッションID: S1-05
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    ジルコンやモナザイトなどの副成分鉱物中のサブグレイン(~5-20μm径)のU-Th-Pb年代測定は高温~超高温変成岩中に記録されている複雑な熱史に時間軸を入れるための信頼性の高い解析手段として広く用いられている。こうしたジルコンやモナザイトなどの年代値を解釈する際に、希土類元素の含有量や主要変成鉱物との間の元素分配値などは、ジルコン中のTiやルチル中のZr溶解度などとともに、結晶形態や内部構造による年代解釈を補完しつつ、より具体的に温度や圧力などの物理条件に結びつくデータとして注目を集めている。本講演では、高温変成岩中でのジルコンやモナザイトの挙動を共存するザクロ石との間の希土類元素分配その他の情報を用いて、放射年代値をザクロ石の形成ステージと結びつけつつ議論をおこなう。
  • 河上 哲生
    セッションID: S1-06
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    大陸地殻の岩石、特に花崗岩質岩中においては、副成分鉱物が微量元素の貯蔵庫として存在する。貯蔵庫鉱物のうち、微量元素が鉱物の構造上主要な位置を占める(濃度がストイキオメトリーによって決まる)場合は特に重要である。その存在が、共存する他の鉱物中の当該微量元素濃度をバッファーする可能性があるからである。貯蔵庫鉱物が分解する場合、以下のような元素の再分配パターンが考えられる。(i)新たに生成した副成分鉱物が、当該微量元素の貯蔵庫として機能する。(ii)新たな貯蔵庫となる副成分鉱物は生成しないが、主要造岩鉱物に再分配される。(iii)いかなる鉱物にもほとんど分配されず、流体やメルトに分配される。副成分鉱物の利用により、従来見えなかった現象や制約条件が得られることが多々ある。副成分鉱物と、それに濃集する微量元素の挙動を取り込んだ議論が重要である。
  • 小林 記之, 平島 崇男, 河上 哲生, Martin Svojtka
    セッションID: S1-07
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    ボヘミア地塊南部には、粗粒なザクロ石を含む泥質片麻岩が産している。泥質片麻岩のマトリクスの鉱物共生は、Qtz+Kfs+Crd+Sill+Bt+Grt±Pl±Splである。粗粒ザクロ石はCaに富むコアとCaに乏しいリムに区分され、コアがKyと共存していたとすると600℃, 14kbar、900℃, 22kbarが見積もれる。リムからマトリクスは、約850℃、約11kbarから5kbar以下に等温減圧している。粗粒ザクロ石のコアはCa, Yに富みMg, Pに乏しい。リムは逆の組成累帯構造を示す。リムはKyを含み、ややPに富むInnerリムと、Sillを含み、最もPに富むOuterリムに区分できる。コアには多数のアパタイト、モナザイトが包有されている。Innerリムには少量のアパタイト、モナザイトが存在している。Outerリムにはアパタイト、モナザイトが認められない。つまり、Outerリム が成長するまでに、リン酸塩鉱物は十分に溶融したと考えられ、最もPに富むOuterリムを形成したことが示唆される。この様なPの組成累帯構造は、Bt+Sill+Na Pl+Kfs+Qtz+phosphate±H2O=melt+Grt+Ca Pl +Rtの反応により形成されたと指摘されている。
  • 飯塚 毅, Malcolm McCulloch, 小宮 剛
    セッションID: S1-08
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    西オーストラリア ナリヤー岩体の堆積岩(30億年前)には、冥王代ジルコンが含まれている。本研究では、その堆積岩中(5試料)のモナザイトの年代分析をレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法を用いて行うことにより、堆積岩の起源をより詳細に知る事、及び堆積岩形成後の変成履歴に制約を与える事を試みた。その結果、これらの堆積岩が27-26.5億年前にかけて変成を被っている事、そして、堆積岩の起源に36億年前及び33億円前の花崗岩が含まれている事が分かった。また、これらの試料中で確認された最古のモナザイトは36億年前で、冥王代のモナザイトは確認されなかった。この結果は、冥王代ジルコンの母岩が花崗岩質ではなく、玄武岩-中性岩質であったために、モナザイトを含んでいなかったこと、または、花崗岩質でモナザイトを含んでいたが、36億年前以降の変成作用によって、それらが再結晶化したことを示唆する。
  • 星野 美保子, 木股 三善, 西田 憲正, 清水 雅浩
    セッションID: S1-09
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    日本列島産のジルコンは、花崗岩に産出するHREE-Th-U-poorタイプと分化が進んだ花崗岩や花崗岩質ペグマタイトに産出するHREE-Th-U-richタイプに分けられ、これは高温形成(700℃以上)と低温形成(500℃以下)という生成温度の違いに起因する(星野他、2007:講演要旨)。一方、日本列島に特徴的に産出するHREE-Th-U-richジルコンは、変質したジルコンもしくは微小包有物を誤って分析してしまったことが原因と、Hoskin & Schaltegger (2003)により、指摘されている。そこで、本研究の目的は、希土類元素を多量に固溶したジルコンの化学組成分析と単結晶構造解析を行い、低温型ジルコンの存在を証明することである。研究試料としては、福島県石川町塩沢字竹之内の花崗岩質ペグマタイトに産出するジルコンを用いて、EPMAによる化学組成分析と単結晶四軸自動回折装置による結晶構造解析を行った。ジルコンの単結晶構造解析は、(Zr0.768, Hf0.055, Sc0.009, Y0.086, Dy0.005, Er0.005, Yb0.007, Th0.005, U0.022) (Si0.946, P0.054) O4という化学組成式に基づいて行われ、R因子は4.1%まで精密化された。本研究により、希土類元素が確実にジルコンの結晶構造中に固溶されていることが明らかになった。そのため、日本列島の花崗岩質ペグマタイトに固有的に産出するHREE-Th-U-richジルコンは、変質作用により生成されたのではなく、一連の火成作用下の500℃以下の低温条件で生成されたことが立証された。
S2:岩石-水相互作用
  • 土屋 範芳
    セッションID: S2-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    花崗岩に対して人工的に単一き裂を作成し,封圧下(<100 MPa)での流体流動実験を行い,封圧の上昇にともなう透水係数の変化を検討した.その結果,常圧下で10-11 [m2]程度の透水係数を示し,封圧が生じることにより,透水係数は急激に減少し,40 MPa程度では約10-13 [m2]となる.しかしながら,それ以上の封圧環境においては,透水係数は漸減となり,100 MPaの封圧下でも,40 MPaと同様に10-13[m2]程度の透水係数を示した.この花崗岩のいわゆるマトリックス透水係数は10-18 [m2]程度なので,100 MPa(地下数千m)の環境下でも,き裂が主要な流体流動場として機能していることを示している.さらに,透水係数の漸減傾向を外挿すると,下部地殻に対応する封圧環境でも,き裂の透水係数はマトリックス透水係数よりも高いことが予測される.地殻内部の流体流動は,き裂内流動が主体となる可能性がある.
  • 廣野 哲朗, 藤本 光一郎, 谷川 亘, 三島 稔明, 石川 剛志, 谷水 雅治, TCDP HoleB 研究グループ
    セッションID: S2-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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     1999年台湾集集地震(M7.6)では,台湾中軸部を南北に走るチェルンプ断層が約100kmにもわたり破壊され、約2500人にもおよぶ人命が亡くなる台湾史上最も大きな被害となった.震源は台湾中央部に位置する集集(Chi-chi)市地下約8kmで,主な被害はこの市に集中している.この地震に伴う滑りは,北方,台中市北東部へも伝播し,滑り速度4.5m/s,滑り変位12m(ベクトル成分)に達した.しかし,激しい揺れが生じず,ここでは断層面直上以外の構造物の被害はほとんどみられなかった.これは,地震波の伝搬過程において,加速度と変位の増大にもかかわらず短周期成分が減少したことを意味し,さらに,これは断層面沿いの摩擦係数の低下によるものと考えられる.  地震波の伝搬過程において,”なぜ断層面沿いの摩擦係数が低下したのか” について,実際に地震のときに滑った岩石の採取およびその分析を通して,その謎を物質科学的側面から解明することが重要である.そこで,台湾チェルンプ断層掘削プロジェクト(TCDP)が立ち上がり,2004 年より開始された.TCDP では2 本の掘削が行われ,そのうちの2 本目(HoleB)の全掘削コア試料(深度950-1350m)が高知コアセンターに運び込まれ,一連の非破壊連続物性計測が実施された.さらに,断層コアから採取した試料を用いて,元素・同位体分析,炭素量分析,磁性鉱物分析,粘土鉱物分析などが実施された.本発表では,このプロジェクトによる成果の概要を報告するとともに,地震時の摩擦発熱により瞬間的に引き起こされる化学反応について,反応速度論的解析の成果についてもお話する予定である.
  • 山口 飛鳥, 木村 学
    セッションID: S2-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    断層帯における鉱物沈殿現象は、1. 断層帯の強度回復、2. 浸透率減少に伴う流体圧の増加-有効応力の減少-新たな破壊の誘発、という相反する2つの現象の要因であり、地震サイクルを考える上で重要な要素と考えられている (e.g. Sibson et al., 1988; Cox, 1995)。しかしその機構や時間スケールには不明な点が多く、地球化学的もしくは実験的アプローチに基づいた制約が望まれる。沈み込み帯の陸上アナログと考えられる過去の付加体中の断層近傍には多量の鉱物脈が観察され、地震時の活発な流体移動・鉱物沈殿が示唆される。本研究ではこのような付加体の大規模衝上断層沿いに見られる鉱物脈の微細組成分析から、沈み込み帯における断層運動と鉱物沈殿の関係、および断層帯内部で起こる地震時の化学反応について考察する。
  • 岡本 敦, 平野 伸夫, 土屋 範芳
    セッションID: S2-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    石英脈の組織発達の支配要因を明らかにするために、流通式水熱反応実験を行った。シリカの析出条件は温度が400-430度、圧力が31MPaである。Siに過飽和な溶液は350-370度で石英、アモルファスシリカ、または花崗岩を溶解させて作成し、その溶液を花崗岩を敷き詰めた反応管に流して析出様式を観察した。析出物の種類(石英、クリストバライト、アモルファスシリカ)、またその析出の仕方は溶液の濃度と反応場所(石英表面、長石表面、流体中)によって異なることが明らかとなった。特に、低濃度(C/Ceq < 1.5)では花崗岩上の石英表面にのみ石英は析出し、ほかの表面では析出は起こらない。このことは、石英脈の組織は脈形成時の溶液濃度(Si)に対して制約を与えることを示唆している。
  • 大内 智博, 中村 美千彦
    セッションID: S2-05
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    粒界移動が進行する多結晶体では,粒界(GB)によって掃かれた領域において,鉱物-流体間の同位体平衡化が結晶内拡散のみによる場合に比べて素早く進行することが実験的に確かめられている(Nakamura et al., 2005; McCaig et al., 2006).このGB sweeping過程は,メタソマティズムや部分溶融体などにおける岩石-流体間の化学輸送の速度過程を支配している可能性がある.そこでダナイト-Niの系を例として最上部マントル条件で高温高圧実験を行い,適合元素の化学交換における上記過程の効果を検証した.実験時間内に粒界に掃かれた部分の体積は最大約50 %であり,このとき試料の平均NiO濃度は,粒界移動が起こらない場合の計算値の約4倍に達する.本発表では2次元拡散モデル(Mishin and Razumovskii, 1992)を用いた,定量的な解析結果を示す.
  • 吉武 直哉, 荒井 章司, 石田 義人, 田村 明弘
    セッションID: S2-06
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    海洋リソスフェア内の熱水循環は、地球表層と地球深部を結ぶ物質循環の媒体として非常に重要である。北部オマーン・オフィオライト上部地殻、等方ガブロ露頭にて、熱水変質によって形成されたと考えられる黒褐色の岩石を確認した。ガブロ、ドレライトの構成鉱物のほぼ全てが脈状に非選択的に緑泥石に置換された岩石(ここではクロライト岩と呼ぶ)であり、強い熱水との関係を示している。壁岩では単斜輝石が角閃石、斜方輝石が角閃石と緑泥石の混合鉱物集合体によって一部交代されている。クロライト岩本体の全岩組成は壁岩に比べ異常にFeOに富み、SiO2、CaO、Na2O、K2Oが大きく減少する。また、REEパターンでは、壁岩はN-MORB型であるのに対してクロライト岩は同様のパターンでEuのみに大きな負の異常を示す。これらの元素収支の相互反応の詳細な条件を、文献の情報との比較などによって絞り込み、海洋リソスフェア内の熱水循環の全貌を推測する。
  • 柳澤 教雄
    セッションID: S2-07
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    相平衡計算ソフトSOLVEQ-CHILLERを用いて、山形肘折高温岩体地熱実験における地熱流体とカルサイト、硬石膏、石英との化学平衡の経時変化を求めた。循環の初期では生産井HDR-2aにおいてカルサイトの平衡温度は100℃、硬石膏や石英は250℃であった。しかし、HDR-2aの急速な温度低下後は、石英と硬石膏の平衡温度は急低下し、カルサイトの80度における平衡定数は急速に増加し、過飽和状態となった。このことは地上配管部においてカルサイトスケールの沈殿が急速に増加することと対応した。また、この急速な沈殿は、流体からのCO2の離脱も大きく関与した。
  • 磯部 博志
    セッションID: S2-08
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    地熱/火山活動に関連する噴気活動は短時間で変動する場合があり,その痕跡が変質生成物の構造に現れる。大分県伽藍岳山麓の塚原鉱山では,強酸性の熱水/噴気活動による変質作用が進行し,岩石中心部の未変質部から,クリストバライトからなる周辺の白色強変質部へ,数mm~数cm幅の成層構造が観察される。各層は,肉眼観察でさまざまな色調を示す。ただし,各層の出現順序は試料により一定ではない。酸性熱水流体による変質段階は,クリストバライト存在度の増加によって代表される。一方,各変質層には,明礬石,カオリナイト,黄鉄鉱,針鉄鉱,赤鉄鉱などが認められる。これらは,熱水流体の地球化学的条件によってその産状が規定される。成層構造の順序変動は,熱水流体に時間的,空間的変動が起こったことを示している。特に,酸化還元条件の変動は,S及びFeを含む鉱物種に強い影響を与えたと思われる。
  • 徂徠 正夫, 佐々木 宗建, 奥山 康子, 當舎 利行
    セッションID: S2-09
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    帯水層へのCO2貯留のリスク評価では、貯留岩鉱物の溶解速度が重要なパラメータとなる。本研究では、帯水層中で最も普遍的かつ難溶性の鉱物である長石について、溶解速度に及ぼす飽和度(ギブス自由エネルギー変化:ΔG)の効果を検証した。そのために、10MPa、50℃の種々の飽和度溶液中で反応させた灰長石結晶のへき開面について、位相シフト干渉計により、ナノスケールでの表面形状変化に基づいた溶解速度の計測を行った。その結果、溶解速度のΔG依存性の関数は、直線形よりもむしろシグモイド曲線に従うことが示された。一方、帯水層へのCO2地中貯留を模した数値シミュレーションからは、溶解速度の関数形の違いにより溶液組成の変化に顕著な違いが生じ、二次鉱物の生成速度にも影響が及ぼされる様子が示された。このことは、CO2挙動の予測においては、長石溶解速度の飽和度依存性の関数形が重要であることを意味している。
  • 佐々木 宗建, 徂徠 正夫, 奥山 康子
    セッションID: S2-10
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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     炭酸塩沈殿物を比較的多量に伴う鉱泉/温泉において,水質と沈殿物の調査を行った.鉱泉/温泉水はNaとCl濃度が比較的高かった.流下に伴う水質変化は,温度の低下,pHの増加,CaとHCO3濃度の低下であった.沈殿物中に同定された鉱物は主に含鉄水酸化物と炭酸塩鉱物(方解石,霰石)であった. 本研究は,CO2地中貯留のナチュラルアナログとして,また,温泉/地熱開発における炭酸塩スケール問題に,役立つと思われる.
  • 奥山 康子, 佐々木 宗建, 徂徠 正夫, 戸高 法文, 阿島 秀司
    セッションID: S2-11
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    大気中のCO2増加を抑制する即効性ある対策として,CO2地中貯留,なかでも地下深部の地層中に貯留する帯水層貯留が注目されている.帯水層貯留では,圧入したCO2と貯留層岩石及びその場に存在する深部地下水の地化学的相互作用が,CO2を閉じ込める働きに貢献する可能性が高い.われわれは,詳細な地質情報のある東京湾岸をモデル・フィールドに,帯水層貯留でおきる可能性のある地化学的変化を相平衡論的および反応論的手法により検討した.
  • 藤本 光一郎, 乙幡 直, 松村 昌紀
    セッションID: S2-12
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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     箱根火山周辺の根府川と宮下で掘削された深部坑井の試料を対象にX線回折法によって変質鉱物の組合せや深度分布を解析した.根府川坑井で検出された鉱物は,斜長石,カリ長石,かんらん石,石英,スメクタイト,緑泥石,イライト,緑簾石,沸石類(モルデナイト,アナルシム,ワイラカイト),方解石,黄鉄鉱である.また,宮下坑井で検出された鉱物は,スメクタイト,緑泥石,石英,斜長石,方解石,イライト,緑簾石,黄鉄鉱であり,沸石類が見られない.変質鉱物の組合せは深度とともに変化し,根府川坑井ではスメクタイト,膨潤性緑泥石,緑泥石,緑泥石+緑簾石+ワイラカイトと,また,宮下坑井ではスメクタイト,緑泥石,緑泥石+緑簾石と変化した.二つの坑井での変質の相違は主として二酸化炭素分圧が原因と考えられる.
  • 古川 善博, 関根 利守, 大庭 雅寛, 掛川 武, 中沢 弘基
    セッションID: S2-13
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    生命誕生前の地球における有機分子の出現は化学進化の第一段階と考えられてきた。しかし、二酸化炭素、窒素を主成分とする弱酸化的大気を原料として、有機物生成は非常に困難であることが分っている。 本研究では隕石の海洋衝突を作業仮説として、その模擬実験により生体有機分子が生成し得るかどうかを検証する。実験は一段式火薬銃を用い、衝突回収実験を行い。出発試料は鉄、ニッケル、炭素(13C)の混合粉末に水を加えたものをステンレス製の試料容器に窒素ガスと共に封入した。衝突後の試料は水に抽出し、LC/MSによるアミン、アミノ酸の分析を、GC/MSによるカルボン酸の分析を行った。 この結果、13Cから構成された種々のカルボン酸、アミンの生成を確認した。さらに、アンモニアを含む試料においてはグリシンの生成も確認した。 この結果、初期地球において隕石の海洋衝突が生体有機物分子生成としての有効な機構であったことが示唆される。
  • 掛川 武, 関根 利守, 古川 善博, 中沢 弘基
    セッションID: S2-14
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    初期地球環境を特徴付ける現象として隕石後期重爆撃がある。およそ42億年前から海洋が存在し地球表層を覆っていたことは広く受け入れられている。すなわち後期重爆撃時の隕石の主要な衝突対象が海洋であった可能性を意味している。そうした環境では、隕石(岩石)と海水の高エネルギー下での反応が促進されることが期待されるが、その初期地球環境に対する影響に関しては未知であった。そこで本研究では衝撃圧縮実験を行い後期隕石重爆撃を模擬し、その初期地球環境への影響を評価した。
S3:大規模珪長質マグマシステム
  • 工藤 崇
    セッションID: S3-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    八甲田-十和田カルデラ群は東北日本弧を代表する後期新世代カルデラ群の1つである.本カルデラ群の活動は3.5 Maに最も背弧側のカルデラで開始した.本カルデラ群以前の火山活動はフロント側では5 Ma,背弧側では7 Maまで遡るため,両者の間には長期の活動休止期が想定される.この休止期によって冷えた地殻がマグマの結晶分化と低溶融度地殻メルトの同化を促進した結果, 初期では地殻成分の寄与の大きな高カリウム系列珪長質マグマが生成されたと考えられる.その後2 Ma前後には活動領域がフロント側へと拡大し,カルデラ形成と成層火山群が共存する活動が開始した.その後,徐々に背弧側の火山活動が止むと,0.9 Ma以降はフロント側に活動が限定された.全体を通して見ると主な活動領域は背弧側から徐々にフロント側へと移動する傾向がある.本カルデラ群の火山活動時空変遷の要因は,Honda and Yoshida (2005) によるマントルウェッジの小規模対流モデルにより説明できる可能性が高いと考えられる.
  • 伴 雅雄, 廣谷 志穂, 若生 文香, 菅 琢朗, 井合 穣, 加々島 慎一, 周藤 賢治, 加々美 寛雄
    セッションID: S3-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    先行する大カルデラ火山に関連していると考えられる、東北日本中部域の3つの成層火山;青麻、高松、月山の珪長質マグマの成因を検討した。3火山とも安山岩主体であり、岩石的解析の結果、それらは玄武岩質とデイサイト質の2端成分マグマの混合によってもたらされたと考えられる。苦鉄質端成分マグマのK2Oなどの液相濃集元素量は青麻、高松、月山と火山フロントから背弧側に向かって高くなり、それに同調して珪長質端成分マグマのそれも高くなる。Sr同位体比は、全岩SiO2量によらず各火山内で一定の値を示す。これらの特徴は両端成分マグマが同源であることを示している。微量元素組成のモデル計算を行ったところ、珪長質端成分は苦鉄質端成分マグマからの結晶分化作用では導きえず、同火山の苦鉄質端成分マグマが地殻内で一旦固結し、角閃石斑レイ岩を溶け残り岩とする再溶融によって生成可能であるとの結果が得られた。
  • 大竹 正巳
    セッションID: S3-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    赤倉カルデラの火山活動史は,次の4つのステージに区分される。 (1)珪長質マグマの上部地殻への集積により,基盤岩の隆起が生じた。これは,向町-赤倉-中山平のカルデラクラスターを包有する広域的隆起であった。 (2)3Ma頃に直径約5kmの環状割れ目から総体積11km3以上の珪長質火砕流が噴出し,上部地殻が垂直深度1,400m以上陥没した。重力的に不安定となった急峻なカルデラ壁が斜面崩壊を起こし,基盤砕屑物が火砕流と共に陥没盆地内に堆積した。 (3)陥没盆地がカルデラ湖になった頃,カルデラ南東部では,安山岩質マグマが噴出し,水底を溶岩流として流動した。噴出したマグマは水冷・破砕によって角礫化しハイアロクラスタイトを生成させ,水中火山体が形成された。 (4)マグマ溜まりの圧力増加により,一度陥没した上部地殻ブロックが隆起し,カルデラ中央部に直径約5kmの再生ドームが形成された。
  • 山元 孝広
    セッションID: S3-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    白河火砕流群は更新世前期に福島県南部の脊梁山地内で起きた一連のカルデラ形成噴火の堆積物である。火砕流群は、下位から隈戸(1.4Ma;小野カルデラ給源)、芦野(1.3Ma;塔のへつりカルデラ給源)、南倉沢(1.2Ma;塔のへつりカルデラ給源)、西郷(1.1Ma;成岡カルデラ給源)、天栄(1.0Ma;未詳伏在カルデラ給源)の各堆積物から構成される。これらのカルデラ群は下郷町~天栄村の20×20kmの範囲に重複・集中している。この中では塔のへつりカルデラが直径14kmで最も大きく、顕著な再生ドームを持っている。各火砕流は比較的結晶片に富み、化学組成の垂直変化に乏しい特徴がある。それぞれの火砕流の本質軽石の全岩SiO2含有量は、隈戸が68-70 wt%、芦野が67-70 wt%、南倉沢が68-69 wt%、西郷が72-74 wt%、天栄が69-70 wt%である。これらは、中カリウム系列に属すが、それぞれの火砕流の他主要成分は同じSiO2レンジで異なるトレンドをなしており、化学組成の違いが明瞭である。従って、これらの火砕流は単一の親マグマから単純な結晶分化作用で導くことは難しい。一方、微量成分の含有量パターンは各火砕流でよく似ており、Nb、Ta、Tiの負異常、高いLREE、平坦なHREEで特徴付けられる。しかしながら、Zr/Nb、Ba/Th、K/Laに明瞭が違いがある。同様にNd-Sr同位体比についても各火砕流で明らかに異なっている。これらの特徴は、白河火砕流群のマグマ供給系ではその起源物質が、微量成分的には似かよっているものの、同位体的には不均質なものに噴火の度に入れ替わっていたことを示していよう。近年、珪長質マグマは下部地殻の部分溶融で生産され、上部地殻でさほど留まることなく噴火へと至ることが明らかになりつつある。白河火砕流群の化学組成時間変化を説明するためには、カルデラ噴火の度に下部地殻内のマグマ生産場(ホットゾーン)から溶融物質が抜けきるとともに、組成の類似した地殻物質が次の噴火の起源物質としてホットゾーンへと落ち込む過程が必要である。
  • Jun-Ichi Kimura, Nagahashi Yoshitaka
    セッションID: S3-05
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    The 1.75 Ma Chayano-Ebisutoge Pyroclastic Deposits (PD) is a large(300 km3 volume) eruptive unit consisting of ignimbrite, coignimbrite ash fall and pumice fall located in the central portion of the North Japanese Alps. The Chayano-Ebisutoge PD covered all central Japan, including the Osaka, Kyoto, Nagoya, Tokyo, and Niigata areas, distributed over a radius of >300 km. The tephra was erupted after a dacitic ignimbrite Nyukawa Pyroclastic Flow Deposit (PFD) at 1.76 Ma, and is regarded as the effusive phase of the Takidani Granodiorite, which is now exposed at the surface due to extremely rapid uplift in the area. The Chayano-Ebisutoge rhyolitic tephras have high K2O characteristics, and feature iron enrichment relative to magnesium, combined with low oxygen fugacity. The major element composition of the Chayano-Ebisutoge PD is similar to silicate melts produced experimentally from pelitic gneiss and granites at upper crustal pressures, suggesting a crustal melt origin. Neodymium and Sr isotopic compositions of the Chayano-Ebisutoge PD match those of the basement granitoids and gneiss. Assimilation-fractional crystallization of contemporaneous Ueno Basalts magma in the same area cannot account for the compositions of the Chayano-Ebisutoge PD. However, mixing between Chayano-Ebisutoge rhyolite magma and evolved Ueno basalt can generate the dacitic magma responsible for the Nyukawa Pyroclastic PFD and the Takidani Granodiorite, judging from major, trace, and isotope compositions. All the geochemical evidence above strongly supports a crustal melt origin for the Chayano-Ebisutoge PD. Accumulation of a voluminous basalt magma caused extensive melting of the crust, thus producing the huge volume of the Chayano-Ebisutoge PD.
  • 金子 克哉, 小屋口 剛博, 高橋 俊郎
    セッションID: S3-06
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    阿蘇火山の15万年前から9万年前の3つの大規模噴火活動に関して,主として,地球化学的データをもとに,珪長質および苦鉄質マグマの成因を調べた.各大規模噴火活動において,珪長質マグマと苦鉄質マグマは,直接の分化関係は持たないが,同一の期限物質より生じたことが明らかになった.阿蘇火山の,珪長質および苦鉄質マグマの成因は,下部地殻ハンレイ岩が,マントル由来の高温マグマが貫入したことにより,部分溶融し,その部分溶融度の違いにより生じたものとして考えられる.高い部分溶融度のメルトが生じ,その後分化したものが,苦鉄質マグマであり,低い部分溶融度のメルトが分離して珪長質マグマになった.この2種類のマグマ生成は,各大規模噴火毎に起こった.
  • 前野 深
    セッションID: S3-07
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    7.3 ka鬼界カルデラ噴火のダイナミクス解明,およびマグマ溜り像の明確化を目的として,噴火堆積物の層序・構成物・堆積構造の詳細を明らかにした.噴出物の層厚変化及び粒径分布データと,テフラ拡散モデルを用いて推定したプリニー式噴火の継続時間は,28時間以上である.噴煙柱崩壊ステージでは,火道の拡大に伴い海水とマグマが接触し大規模なマグマ水蒸気爆発が発生した痕跡が見出された.大規模火砕流噴出の初期にはマグマと海水の接触があったものの,その後はマグマティックな噴火が継続した.マグマ組成は流紋岩質で大きな変動はないが,終盤には安山岩質マグマが混入する.さらに,カルデラ形状,マグマ噴出量,マグマ溜り深度3~7 kmという地質学的に妥当な初期条件を用いて,このカルデラ陥没で発生したと考えられる津波の数値計算を行った結果,地質痕跡を十分に説明し得るカルデラ崩壊の時間スケールは,6 時間以内と推定された.
  • 三浦 大助, 和田 穣隆
    セッションID: S3-08
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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     西南日本,紀伊半島の中新世珪長質火山地域(MFVK)において,圧縮応力場のテクトニック・ローカル応力の変化に呼応した大規模珪長質火山システムの形成過程を検討した.岩体の放射年代測定値から,MFVKではおよそ1500km3を超えるマグマが10万年~160万年以内に噴出した.長期の平均噴出率は10-2 to 10-3 km3/ka km2に達し,世界のLFVFsの中でも最も大きな部類に入る.この高い噴出率と巨大なマグマ溜りの存在は,テクトニック応力との関係から以下のように説明できる.シル状のマグマ溜りには圧縮応力場が好都合であり,巨大化するには高いマグマ供給率が不可欠である.MFVKでは,強い圧縮応力場と高いマグマ供給率が,活動初期にマグマの蓄積を助長し,巨大マグマ溜りを形成した.マグマ溜りは,過剰圧を溜め込み,テクトニック応力を緩和した結果,マグマが地表に達することが可能となった.
  • 曽根原 崇文, 原山 智
    セッションID: S3-09
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    濃飛流紋岩(> 5000-7500 km3)および関連花崗岩類(半深成ストックと苗木-上松バソリス)は,後期白亜紀(ca. 85-68 Ma)のユーラシア大陸縁辺における大規模珪長質マグマシステム(LSMS)の一つを構成していた。このLSMSは次のように特徴づけられる。(1)非常に大規模なシステムで,106年オーダーの期間で形成された。(2)均質な珪長質組成で,高K・Iタイプ・イルメナイト系列のデイサイト-流紋岩質岩からなり苦鉄質岩を伴わない。(3)結晶に富む噴出物を伴う(火山灰流堆積物の本質岩片の斑晶量は30-45 vol. %)。このことはマグマはマッシュ状になり水に飽和したときに噴火することができたことを示す。濃飛火成区に関する更なる研究はLSMSの課題に貢献しうる。例えば,高精度年代測定による,超大規模なマグマシステムの活動率の解明が挙げられる。
  • 藤本 幸雄, 山元 正継, 佐藤 誠, 加々美 寛雄
    セッションID: S3-10
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    白神・太平山地の白亜紀-古第三紀花崗岩類は主に花崗閃緑岩からなる.白神山地菱喰山岩体の定置は86Ma,白神岳東部岩体は98Maまで,西部岩体が92Ma,中央部岩体の約300℃への冷却は66Maで,西部岩体の左横ずれマイロナイト帯は92~66Maまで活動し,各岩体の定置上昇と共に変形構造を形成した.一方太平山東部岩体の定置は97Ma以前,西部岩体は85Maと推定される.北上花崗岩類の年代は各測定法とも135~100Maで比較的速い冷却を示し(御子柴,2002),阿武隈花崗岩類はRb-Sr法が125~100Ma,HbK-Ar法が120~110と105~95Ma,BtK-Ar法が95~90Maと緩やかな冷却(田中ら,2000)を示す.Sr同位体比初成値は北部北上で最も低く,II→IV帯と増加し,南部北上はVIb,V帯ともやや高い.阿武隈花崗岩類はより高く年代と共に緩やかに増加する.Sr・Nd同位体比初生値の関係は,白神・太平山地花崗岩類は加々美ほか(2000)の北帯の領域に入る.
  • 土谷 信高, 木村 純一, 加々美 寛雄
    セッションID: S3-11
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    北上山地の前期白亜紀火成岩類は多様な岩石化学的性質を示すが,様々なアダカイト質岩を産出することが特徴である.アダカイト質累帯深成岩体中心相のアダカイト質マグマは,チリ海嶺玄武岩の様な,一般のMORBよりもLILにやや富む海洋地殻を源岩とし,溶け残りがルチル含有エクロジャイトとなる条件で部分溶融したとするモデルで説明可能である.アダカイト質累帯深成岩体の成因は,スラブメルトとマントル~下部地殻が反応したマグマが早期に貫入し,その後初生的なスラブメルトに近いマグマが貫入したことになる.以上の説明は,アダカイト質岩と非アダカイト質岩の共存する他の岩体の成因にも一般化できる可能性がある.それらの岩体の生成は,地球史において大陸地殻全体の化学組成をより珪長質なものに変化させるのに重要な役割を果たしたと考えられる.
  • 斉藤 哲, Korhonen Fawna J., Brown Michael, Siddoway Christine S.
    セッションID: S3-12
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    西南極マリーバードランド、フォード山脈に分布するフォスディック花崗岩ミグマタイト複合岩体は、ミグマタイト化した片麻岩類とそれに伴う花崗岩類からなり、中~下部地殻相当の変成圧力条件(約6~10 kbar)が見積もられている 。フォスディック岩体の花崗岩類は、珪線石を含みSrとBaに乏しいもの(低Srタイプ)と珪線石を含まずSrとBaに富むもの(高Srタイプ)に区分される。ジルコンU-Pb年代測定の結果、これらの花崗岩類はデボン紀~石炭紀の陸弧火成活動と白亜紀のゴンドワナ大陸分裂に伴う複変成作用が引き起こした深部地殻の融解により形成したと考えられる。白亜紀の高Sr花崗岩類は、マリーバードランドに広く分布する白亜紀の浅部貫入岩体であるバードコースト花崗岩とジルコンU-Pb年代・Sr-Nd同位体組成が類似しており、浅部地殻に珪長質メルトを供給したフィーダー帯に相当すると考えられる。
R1:マグマプロセス・サブダクションファクトリー
  • 草野 哲也, 藤巻 宏和, 大場 司
    セッションID: R1-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    青麻-恐山火山列・脊梁火山列・森吉火山列・鳥海火山列における安山岩質マグマの温度は, それぞれ1050℃,1090±35℃,1050±35℃,1080±35℃(1σ) と見積もられた. 青麻火山の斜長石(An64-74)からは含水量4.6wt.% 圧力1.9kbar が見積もられた.脊梁量火山列栗駒火山の斜長石(An75-78)からは含水量4.5wt.% 圧力1.5kbar, 蔵王火山の斜長石(An76-80)からは 含水量4.8wt.% 圧力1.9kbar,秋田駒ヶ岳の斜長石(An65-70) からは含水量5.6wt.%, 圧力2.6kbarが見積もられた.森吉火山列岩木火山の斜長石(An50-55) からは含水量5.5wt.%, 圧力は2.6kbarが見積もられた. 鳥海火山列鳥海火山の斜長石(An69-76)からは含水量4.9wt.% 圧力2.0kbar が見積もられた.
  • 氏家 治, 真下 礼奈
    セッションID: R1-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    白山火山の岩石(マグマ性包有岩を含む)の化学組成を蛍光X線法で調べ,次の結果を得た。白山においては,火山活動の休止期(約30万~10万年前)にマグマの成因が変化したものと考えられる。すなわち,加賀室火山のマグマが太平洋プレートの脱水反応によって誘発されたのに対し,古白山と新白山のマグマの成因には若いフィリピン海プレートの溶融作用が重要な働きをした(しつつある)と思われる。また,珪長質端成分マグマは下部地殻由来の非アダカイト質なものだと推測される。
  • 柴田 知之, 芳川 雅子, 輿水 達司
    セッションID: R1-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    甲府盆地北縁に分布する火山岩類の、主要元素・微量元素・同位体組成を分析し、地球化学的時間変化を検討した。その結果、これら火山岩類は典型的な島弧マグマの特徴をしめし、Zr/Nb比がほぼZr/Nb = 25 – 35でMORBと類似することから、当地域直下のマントルウェッジはMORB型のである。さらに、Sr/Y比などから、後期中新世から鮮新世には太平洋プレートのslab dehydrationによる火成活動が、第四紀になるとフィリピン海プレートのslab meltingによる火成活動に移行したと考えられる。また、Sr・Nd・Pb同位体組成から、前者のたマグマは、フィリピン海プレート由来物質の汚染を受けている。これらのことから、フィリピン海クレートは、新第三紀に当地域下近傍にまで達していて、その後さらに沈み込み、第四紀には当地域直下にまで到達した。
  • 石塚 治, 湯浅 真人, Taylor Rex N.
    セッションID: R1-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    伊豆小笠原弧背弧地域での、四国海盆拡大停止後に活動した2つの異なるマグマティズムの成因について検討する。
  • 田村 芳彦, Shaw Alison, 石塚 治, 宿野 浩司, 川畑 博
    セッションID: R1-05
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    NW Rota-1火山はマリアナ弧南部の活動的な島弧火山である。JAMSTECのROVハイパードルフィンによりふもとから山頂にかけて試料を採取し、主要元素、微量元素全岩組成、Sr, Nd, Pb同位体組成、EPMAによる鉱物組成分析をおこない、同時に溶岩およびスコリア中のかんらん石のメルトインクルージョンの測定をおこなった。メルトインクルージョンは玄武岩から安山岩(無水)の組成を持つ。含水量は1-6%の幅を持ち、5-6 %の含水量を持つものはマグネシアン安山岩組成である。全岩組成とメルトインクルージョンの組成を比較し、また鉱物組成分析からかんらん石と全岩との関係を明らかにし、NW Rota-1火山におけるマグネシアン安山岩マグマの役割と成因を議論する。
  • 荒川 洋二, 松井 智彰, 木股 三善, 新村 太郎
    セッションID: R1-06
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    日本列島の火山フロントからやや背弧よりの地域には、火山噴出物に特徴的に灰長石巨晶(アノーサイトメガクリスト)が包有されている。この巨晶はそれを取り込んでいる母岩の中では非平衡な結晶であり、その起源、生成(物理化学)条件、時期、などに関しては明確にされていない。この研究では、従来実施した伊豆弧のソレアイト質火山岩中の灰長石巨晶と比較のために、ソレアイト、カルクアルカリ両岩系が存在する九州ー琉球弧の火山産の灰長石巨晶の鉱物化学的、Sr同位体組成に関する研究を行った。灰長石巨晶の化学組成はAn mol. %が90~93で、それ以外に微量端成分の存在が明らかになった。また、X線回折によりc=7Aタイプの結晶であることが判明した。Sr同位体組成は北は阿蘇から南は悪石島まで系統的に0.7044から0.7055程度まで高くなり、この傾向は母岩の変化傾向と一致する。ここでは、Srデータの多い阿蘇と姶良火山について比較検討する。
  • 栗谷 豪
    セッションID: R1-07
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    マグマ溜まり内においてマグマは,マグマ溜まり主要部に存在する結晶の重力分別による分化(均質分化)と,マグマ溜まり主要部と固液境界層間のメルト交換による分化(境界層分化)の両方の過程によって組成進化する.そこで,多成分系熱力学や質量保存則を考慮したモデルを構築して,これら2つの分化過程の相互作用について検討し,マグマの組成進化に及ぼす影響について考察した.その結果,含水量が高いマグマが地下の比較的深部でマグマ溜まりを形成した場合,固液境界層から主要部マグマへのメルトの輸送(境界層分化作用)が活発になり,さらに主要部マグマのリキダス温度の降下を引き起こして均質結晶分化作用を妨げるのに対し,地下の比較的浅部のマグマ溜まり内では,固液境界層から主要部マグマへのメルトの輸送が起こりにくいため,マグマは主に均質分化作用で進化することが明らかになった.
  • 平賀 岳彦, Kohlstedt David
    セッションID: R1-08
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    マントルゼノリス中の不適合元素分布について明らかにした。
  • 川本 竜彦, 神崎 正美, 三部 賢治, 松影 香子, 小野 重明
    セッションID: R1-09
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    私達はSPring-8の放射光X線を高温高圧実験装置の内部に引き入れて、水とマグマの間の関係のその場観察を行ってきた。その間、Sr斜長石メルトと水(Mibeほか 2004 GCA)、ペリドタイトと水(Mibeほか 2007 JGR)、玄武岩と水(準備中)などを報告してきた。中でも、ペリドタイトと水の臨界終端点は3.8GPa、玄武岩と水のそれが3.4GPaという圧力は、これまでの予想値よりもだいぶ低いものである。さらに、高Mg安山岩と水や、堆積岩と水の間のそれは、それぞれ2.9GPa、2.6GPaで、火山弧の下のスラブ由来の流体は超臨界状態になっているはずだ。 一方、スイス工科大学のシュミット教授とウルマー教授のグループも、この問題に関して複数の論文を公表している(Kesselほか 2005 EPSL、Melekhovaほか 2007 GCA)。私達は彼女らの実験は臨界終端点を決定するのに役にたっていないと判断する。 私達はすでに臨界終端点がこれまでにほぼ決定されているアルバイトー水系を用いて、X線ラジオグラフィーで臨界終端点の決定を試みた。その結果は1.7±0.3GPaで、Shen and Keppler (1997 Nature) とStalder et al (2000 Am Min)と一致した。私たちの臨界終端点の結果は、従来の実験で推定される同程度の精度で決定できていると判断する。また、Melekhovaほか(2007)はMgO-SiO2-H2O系で実験を行っているので、私たちもMgO-SiO2-H2O系での実験も開始した。結果は、1.5Mg/Si系で臨界終端点は4.1GPa、2Mg/Si系で3.3GPaという、Melekhovaほか(2007、2.9Mg/Siで11.5GPa)に比べたいへん低い圧力条件を得た。 スラブの脱水反応によりマントルウェッジに供給される超臨界流体に含まれるケイ酸塩成分の多寡は温度に依存する。そして、それらはマントルウェッジを上昇する際に、水にとむ流体と水に飽和したメルトに分離することが予想できる。その際、元素の分配が起こる。例えばAyers and Eggler(1995 GCA)は1.5GPaと2GPaで水流体と安山岩メルトの間の元素の分配を報告しているが、1.5GPaでは、SrはYよりもフルイドにより分配され、2GPaではSrはYよりもメルトにより分配されている。分配係数はメルト(と流体)の化学組成と圧力により変化すると予想される。今後、メルトと流体の分配係数をよりよく理解することが求められる。
  • 三浦 保範, 田野崎 隆雄, 高取 祐貴, 末吉 祐貴
    セッションID: R1-10
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    1.はじめに
    地球上の炭素(C)と塩素(Cl)を含む物質の状態変化の観点から、本研究では微粒子固体形成移動循環する地球科学的観点から考察する。
    2.炭素と塩素の状態変化と含有物質の特徴
    主要四元素(C,H,O,N)は3状態(気体・液体・固体)間を移動で、炭素からの鉱物を生成するため、地球環境制御する有用資源である(三浦,2007)。地球上で炭素を含む鉱物結晶384種で、鉱物固体中の炭素はCaと結合するのが最多で、Na、Mg・Fe、Si・Alの順である。地球上で塩素を含む鉱物結晶315種で、塩素も三状態間を変化し、炭素と同様に気体は有害物で、液体固体は無毒な岩塩結晶などを形成する。
    3.微粒子の形成と循環
    三状態間を迅速に効率よく物質循環するために、炭素と塩素を含むミクロな電子顕微鏡サイズの微細物質が地球上(衝突孔、地質境界等)と地球外(隕石、惑星間塵など)で形成され、循環的な状態変化による物質形成である事を示している。
  • 高田 悠志, 小澤 一仁
    セッションID: R1-P01
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    地殻内マグマ溜まりでの冷却に伴う主要なマグマの分化メカニズムとして、結晶核形成・成長・重力分離による均一分化と組成対流を伴った固液境界層分化が考えられる(Jaupart and Tait, 1995; Marsh, 1996)。どちらのメカニズムがどのような条件(マグマの組成、圧力、マグマ溜まりの大きさ等)で支配的かということに関する統一的な理解にはまだ至っていない。本研究では厚さ約100mの中規模ドレライト岩体を対象に、マグマ溜まりの冷却に伴う分化メカニズムの解明を試みる。  本研究では山形県に分布する青沢ドレライトを対象とする。青沢ドレライト(Fujii, 1974)は日本海の拡大時期の火成活動で、中新世の泥岩中に貫入した厚さ数10m~100数十mの板状貫入岩体群である。これらの岩体のうち、本研究では平板性の良い厚さ約100mの岩体の解析をおこなった。
R2:深成岩及び変成岩
  • 西上原 航, 鳥海 光弘
    セッションID: R2-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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     ザクロ石は広い変成条件で安定な鉱物であり、変成岩を特徴づける鉱物である。高圧変成岩に含まれるザクロ石は化学組成累帯構造を示し、経験した温度-圧力条件を反映して形成される。そのため、累帯構造を分析することにより、変成岩が被った温度・圧力条件を推定する研究が行われてきた。  本研究では、変成岩の形成条件を推定する上で欠かすことができないザクロ石について形態学的視点から考察した。結晶形の多様性は、結晶面の相対成長速度によって決まる。形態は成長環境を反映するため、鉱物の成長速度や変成作用中の物理化学的変化(もしくはその変化速度)を説明する有用なツールとなりうる。かたちを定量的に表すことができれば、岩石形成の理解の手助けとなる。  Kretz(1973)の方法により,緑簾石-角閃岩のザクロ石を熱抽出した.最大粒径は10mmであり,{110}結晶成長面を保持しているが,偏平形を呈している.これらのことより異方的な成長が示唆される.アスペクト比が1.83であり,形態学的解析より,小さな面の相対成長速度は1.29であることが算出される.  累帯構造の形変化から「hkl区分図」を描くことができ,正確な成長量を見積もるためには等しいミラー指数をもつ領域で測定を行わなければいけないことが分かる.これはどの鉱物でも同様のことが言え,成長量を求めるときには考慮しなければいけないことである.
  • 芳川 雅子, 新井田 清信
    セッションID: R2-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    北海道に産する幌満かんらん岩体下部のハルツバージャイト中には、その層状構造と斜交するダナイトチャネルが複数発見されている。私達は、ダナイトチャネルとその壁岩であるハルツバージャイトを構成する鉱物の主成分・微量元素組成・Rb-Sr同位体組成を求めた。その結果、ダナイトチャネルと壁岩中の単斜輝石-斜方輝石がサブソリダスでの化学平衡状態を保持しており、ダナイトチャネルの固結年代が約50Maであることがわかった。さらに、単斜輝石の微量元素組成とSr-Nd同位体組成からダナイトチャネルは、沈み込み帯での海嶺沈み込みで生じたメルトの通過で生じたとした。
  • 星出 隆志, 小畑 正明
    セッションID: R2-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    層状貫入岩体はマグマ溜りでのプロセスを観察するための「天然の実験室」と捉えることができる。層状貫入岩体には様々な規模でレイヤー構造が発達し、その成因について結晶沈積をはじめとした様々なプロセスが見出されてきた。 今回我々は室戸岬斑れい岩において見られるModal layeringが、マグマ溜りの冷却固結に伴い内側へと進行する「固液境界層」内部での水の移動によってできたことを示唆する証拠を見出したので報告する。 室戸岬斑れい岩体(シル状貫入岩体、層厚~220 m)は、Ol、Pl、Augからなる細粒~中粒のLower Zoneと、Olが存在しない粗粒のMiddle Zone、再びOl、Pl、Augからなる、Plに富んだ細粒~中粒のUpper Zoneの3つのゾーンに分けられる。さらにLower Zoneは、貫入時既に存在したOl斑晶の沈積でできた「結晶集積部」と、基本的にその場での結晶成長に伴いOlモードが増加した「結晶成長部」に分けられる(Hoshide et al., 2006a)。「結晶集積部」が露頭スケールで均質であるのに対して、「結晶成長部」の母岩(かんらん石斑れい岩)中にはModal layering、ペグマタイト脈、斜長岩脈などの顕著なレイヤー構造が発達する。 結晶成長部の母岩のPlは、組成均質で自形のAn-richコアを持ち、コアからリムへAn値が連続的に減少する。コアの最外縁部にはよりAn-richな細い帯(High-Anエッジ)が認められる。 一方、レイヤー構造部のPlは、組成均質なAn-richコアを持つが、それはAn値の高い薄い「エッジ」に取り囲まれ、さらにその周囲をAb-richマントルが取り囲む(Fig. 1)。母岩のPlとの重要な違いは、(1)コア-マントル境界で、An値で10-20程度の組成ギャップがあること (2)コアは虫食い状を呈し、虫食い状の部分には角閃石や緑泥石などの含水鉱物が普遍的に認められること、である。(2)から、レイヤー構造のPlは、コアと高エッジの形成後に融食したと考えられ、それは水に富んだ環境で起きたと考えられる。 Di-Fo-An系に水が加わると、各鉱物のリキダス降下が起こるが、Di、Foに比べAnのリキダス降下の程度が大きいため共融点がAn側にシフトする(Yoder, 1967, McBirney, 1987)。即ち、この系への水の添加により、Plが選択的に溶け出すことでPl成分に富んだメルトが生成し、その後の温度低下によってOlの結晶成長が起こると考えられる。実際、全岩化学組成とモード測定から推定された、Plコア融食時の間隙メルト組成は、無水Di-Fo-An系の相図の共融点からAn側に大きくずれており、上のことと調和的である。また結晶成長部のOl中には、Prg、Bt、Opxなどからなる多結晶包有物(「角閃石クロット」)が多数認められる。角閃石クロットは、産状や化学組成から、水に富んだメルトが、成長するOlに取り込まれたものが結晶化したものと考えられる。これはOlの結晶成長が水に富んだ環境で起きたことを示唆する。 また、Modal layering部の平均モード組成は、同層準のlayeringが未発達な部分に比べると、Plに乏しくOlに富む。従ってModal layering部では、単にその場での結晶とメルトの分離ではなくて、水の添加によってできたPl成分に富んだメルト(±Pl結晶)がマグマ溜り上方へと抜けたのだろう。
  • 宮本 知治, 小山内 康人, Nguyen Thi Minh, 中野 伸彦, 大和田 正明, Tran Ngoc Nam
    セッションID: R2-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    ソン・マ縫合帯に産する角閃岩の微量元素組成について考察する。角閃岩は、緑色片岩∼角閃岩相の変成作用を被っているが、エクロジャイト相から高温グラニュライト相の変成作用を被った岩石も産する。 微量元素組成は、HFS元素にあまり富まないという特徴を示す。また希土類元素のパターンは、おおよそフラットである。Nd同位体組成は高く、枯渇マントル由来であることを示唆する。まれに、軽希土類元素にやや富む角閃岩も産する。そのNd同位体組成は、やや低い。角閃岩の源岩は海洋地殻でその上に生成した海山を一部伴うと思われる。
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