日本鉱物科学会年会講演要旨集
日本鉱物科学会 2010年年会
選択された号の論文の258件中101~150を表示しています
R1:地殻物質
  • 松山 寛, 篠田 圭司
    セッションID: R1-P20
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    Magnetite:Fe3O4は低温酸化に伴って,六配位席中のFe2+がFe3+へと転移し,そのFeの価数変化に伴う電荷を補償するために空孔が導入されていく.この空孔量は0~1/3の間で連続的に変化する.空孔量1/3の場合,化学組成はFe2O3となり,maghemiteとなる.したがって,magnetiteの空孔量はmagnetiteが受けた低温酸化の指標であると考える事ができる.本研究ではいくつかの産地・産状において得られたmagnetiteが受けた酸化の程度を見積もるため,Guinierカメラを用いたX線回折法を用いてmagnetiteの格子定数を測定、種々の補正を行い間接的に空孔量を精密測定した.  合成したmagnetiteとmaghemiteから得られた空孔量は,それぞれの格子定数の文献値を元に算出した空孔量とほぼ一致した.天然の試料では,産状の違いから深成岩,スカルン鉱床,砂鉄のmagnetiteの空孔量を測定したが,産地による空孔量のばらつきがあり,単純に産状により空孔量が支配される訳では無いようだ.更に議論するためにはより多くの試料を検討する必要がある.
  • 中田 麻実, 篠田 圭司, 益田 晴恵, 岡林 克樹
    セッションID: R1-P21
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    本研究ではバングラデシュの地下水ヒ素汚染の広がりを推定するため地下水中のヒ素の原因と思われる層状珪酸塩鉱物,特に緑泥石についてヒ素の定量分析を行った.Old Brahmaputra川沿い深度23.6mの完新世の砂層中の緑泥石とMeghna川沿いの砂試料中の緑泥石について,ICP-MSと原子吸光により総ヒ素濃度を測定し,どちらの地点の試料からもヒ素が検出された.またXAFSとHPLC/ICP-MSによりIII価とV価のヒ素の価数別濃度の測定を行ったところIII価のヒ素は濃度が低かったため検出できなかったが,V価のヒ素は両地点とも検出できた.これより両地点の緑泥石ともにヒ素を含んでおり,Meghna川沿いの表層およびOld Brahmaputra川沿いの地下水の帯水層である砂層にヒ素の汚染が広がっていて,汚染の原因となっているヒ素はV価である可能性が高いということが推定される.
  • 梅染 卓也, 小暮 敏博
    セッションID: R1-P22
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    緑泥石は2:1層と層間の水酸化物シートで構成されている。緑泥石を加熱すると、水酸化物シートの脱水酸基化により層間構造が変化することが知られている。Guggenheim et al.(1999)は、この構造を単結晶X線回折で決定し、その層間構造はMgとOからなる平面状の原子シートが2枚並んだものであることを示した。しかしこの結果はclinochloreに関するものであり、Feを多く含む緑泥石や2八面体型のsudoiteなどでは明らかではない。そこで本研究ではHRTEM法と粉末X線回折の底面反射のフーリエ合成により、clinochlore以外の緑泥石の脱水酸基化後の層間構造を明らかにすることを試みた。 緑泥石を加熱し、底面反射のフーリエ合成を行ったところ、Guggenheimらの結果と同様に層間は2枚の原子シート構造となっていることがわかった。またHRTEMによる原子配列の直接観察でも、層間には2つの筋状のコントラストが観察された。またその筋に沿ったコントラストの濃淡は、Guggenheimの決定した構造においてMgをFeで置換したモデルで説明することができた。
R2:鉱物合成・成長・物性・地球深部物質
  • 松井 正典, 池田 恵美, 小松 一生
    セッションID: R2-01
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    Komatsu et al.(2007a)は、川井式マルチアンビルセルを用いて、18 GPa, 973 KにおいてAl(OD)3高圧相(delta相)を合成することに成功するとともに、同相が以前にDachille and Gigl(1983)により高圧下で合成された空間群Pnamのdelta-Al(OH)3と同一であることを確認した。加えて、粉末X線回折データを用いてdelta-Al(OD)3相の結晶構造を求め、各重水素原子が、それぞれ1/2の席占有率でdisorderしているとの結果を得た。しかしながら、その後行われた、粉末中性子回折実験データに基づいて、delta-Al(OD)3相の真の空間群としては、反射の消滅則からP212121が妥当であり、重水素はorderしている可能性が示された(Komatsu et al., 2007b)。我々は今回、第一原理計算に基づいてdelta-Al(OH)3の構造とエネルギー的安定性、及び構造の圧力依存を求めたのでその結果を報告する。
  • 小松 一生, 佐野 亜沙美, 鍵 裕之
    セッションID: R2-02
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    近年、著者らが行ってきた水酸化アルミニウムの高圧相合成およびX線・中性子回折の結果から、含水鉱物に一般的な性質と考えられる対称性と水素結合の関係について議論する。
  • 栗林 貴弘
    セッションID: R2-03
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    高圧下における含水鉱物(super hydrous phase B)中の水素位置の推定のために単結晶X線回折法によるデータ収集とME解析を行った.水素を除いた構造の精密化によって決定した原子パラメータを元に観測できない反射のFcを算出し,実測のFoデータと合わせたME解析を行い,高圧下における電子密度分布の状態から水素位置の精密化を行った.その結果について議論する.
  • 小野 重明
    セッションID: R2-04
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    本研究では、シリカとスズ酸化物を試料として用い、それぞれの二次の相転移を、高温高圧条件下で観察することを目的とした。どちらの試料も、高圧下では、ルチル型構造からCaCl2型構造への構造相転移が報告されている。高圧実験では、ダイヤモンドアンビルセルを用いた。二次の相転移にともなう結晶構造の変化の観察については、シリカに関しては放射光X線利用し、スズ酸化物に関してはラマン分光法を用いた。初めに、スズ酸化物の構造相転移の観察を試みた。ルチル構造の実験出発物を加圧し、目的の圧力に到達した後、ヒーター加熱によって試料をアニールし、ラマン分光法によってデータを取得した。その結果、二次の相転移に伴う、ラマンピークのシフトの変化を観察する事に成功した。しかしながら、そのデータから精密な相転移境界を見積もることはできなかった。なぜならば、注目していたラマンピークの変化が、期待していたほど明瞭ではなかったためである。次に、シリカの構造相転移の観察を、放射光X線の粉末X線回折データを用いて行った。その結果、二次の相転移境界を精密に決定することに成功した。本研究で見積もられた相転移境界の温度圧力の傾きは、過去に、第一原理計算で見積もられた値と比べて、大きな矛盾はなかった。一方、過去の高圧実験のデータより、傾きはやや小さいことが確認できた
  • 藤野 清志, 濱根 大輔, 桑山 靖弘, 佐多 永吉, 村上 さやか, Whitaker Matthew, 篠崎 彩子, 大藤 弘明, 小島 ...
    セッションID: R2-05
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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     X線発光分光法により,アルミを含むポストMg-ペロブスカイト中の3価鉄のスピン状態を,室温で165 GPaから35 GPa にかけて減圧しながら測定した.測定結果は,ポストMg-ペロブスカイト中の3価鉄が165 GPa から95 GPa 付近まではlow spin 状態であり,95 GPa 付近から35 GPa の間にほぼhigh spin 状態になることを示した.このことから,下部マントルにおけるアルミを含むポストMg-ペロブスカイト中の3価鉄のほとんどは,ほぼlow spin 状態であると思われる.
  • 糀谷 浩, 赤荻 正樹
    セッションID: R2-06
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    カルシウムフェライト型CaAl2O4は、海洋玄武岩が下部マントルに沈み込むことにより現れると考えられているカルシウムフェライト相の端成分である。本研究では、このカルシウムフェライト型CaAl2O4について、ダイアモンドアンビル高圧発生装置を用いた高圧下での顕微ラマン分光測定を行った。26個のラマン活性な格子振動モードにおいて、室温下0から37 GPaの圧力範囲でラマンピーク位置の圧力依存性を測定し、モードグリューナイゼン定数を決定した。さらに、それらのモードグリューナイゼン定数の平均値から、熱力学グリューナイゼン定数は1.44と決定された。得られた熱力学グリューナイゼン定数を使って、熱膨張率を用いることなく定圧熱容量の計算を行ったところ、計算値と実測値は不確実さを考慮するとよい一致を示した。また、このグリューナイゼン定数から、カルシウムフェライト型CaAl2O4の熱膨張率は約2.5x10^-5 1/Kと見積もられた。
  • 赤荻 正樹, 大畑 円佳, 糀谷 浩, 川路 均
    セッションID: R2-07
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    スティショバイトの定圧熱容量を熱緩和法により2-311Kで測定し、標準エントロピーを24.0JK-1mol-1と決定した。このデータと、コーサイトの標準エントロピー、コーサイト-スティショバイト転移のエンタルピーの文献値などを用いて、コーサイト-スティショバイト転移の平衡相境界線を計算した。計算されたこの境界線は、高圧X線回折実験で決定された境界線にほぼ重なるが、その勾配dP/dTは高圧実験の境界線よりやや大きい結果となった。
  • 大谷 栄治, 境 毅, 鎌田 誠司, 村上 元彦, 福井 宏之, Baron Alfred
    セッションID: R2-08
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    内核の構成を地震波情報に基づいて解明するために、X線非弾性散乱法によって、常温で高圧の条件において、縦波速度の測定を行った。本研究では、内核の候補である純鉄Fe およびFe0.83 Ni0.09Si0.08 alloyの縦波速度を高圧下で測定することを目的とした。 実験は、西播磨の高輝度光科学研究センターSpring8の精密非弾性散乱ビームラインBL35XUにおいて行った。高圧発生には、キュレットの直径が0.3mmから0.15mmのダイヤモンドアンビル高圧装置を用い、入射X線および散乱X線は、高圧装置の圧縮軸方向で測定を行った。 レニウムガスケットには、直径約0.1mm程度の孔をあけこれを試料室にとした。圧力媒体としては、NaClやMgOを用い、圧力媒体を使用しない直接加圧についても試みた。 音速測定は50GPaから135GPaの範囲で行った。その結果、この合金の縦波速度と密度にはバーチの関係が成り立つ。FeNiSi合金のバーチの式はVp (m/sec) =1.50(±0.17) d(kg/m2)- 6570(±1690)と表すことができる。
  • 上野 禎一, 川原 沙織
    セッションID: R2-09
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    主成分としてMgO, Al2O3, 着色剤としてCr2O3, フラックスとしてPbO, PbF2を用い、スピネルの単結晶および多結晶の合成に成功した。 Cr2O3の量により、着色の程度を制御でき、最高加熱温度、加熱時間、昇温率、降温率、主成分とフラックスの量比により、結晶の大きさを制御できることが判明した。
  • 山田 明寛, 井上 徹, 亀卦川 卓美
    セッションID: R2-10
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    アルミノ珪酸塩メルト中のAl3+の高配位数化は地球内部におけるマグマの物性変化に大きな影響を与えると推測される。本研究では、圧力によるメルトの構造変化を高温高圧下で直接調べるため高温高圧X線その場観察実験を行った。解析の結果、動径分布関数中の局所構造に対応するT-O(T=Si, Al)ピークは、無水のもので約3 GPaから長距離側へとシフトを始めることがわかった。この長距離化はAl3+の配位数変化に伴うものと予想される。一方、含水のものは同様の圧力領域でT-Oピークの長距離側に新たなピークが出現し、圧力とともに強度が増加した。このピークは高配位数状態のAl3+に起因するものと考えられ、無水のものより局所構造が大きく変化していることを示唆している。
  • 浜根 大輔, 八木 健彦, 藤田 尚行, 岡田 卓
    セッションID: R2-11
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    高圧下におけるXe-Fe系およびXe-Ni系の振る舞いを,レーザー加熱式ダイアモンドアンビルセルおよび放射光X線回折によって調べた。どちらの系においても,新しい物質は合成されず,Xe-Fe系においては155GPaに至ってもhcp鉄へのXeの固溶は確認できなかった。
  • 大藤 弘明, 片桐 政人, 小竹 翔子, 角谷 均
    セッションID: R2-12
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    レーザー加熱ダイヤモンドアンビルセルを用い,3種類の低結晶性炭素物質を出発物質からアモルファスダイヤモンドの合成を25 GPa, <2000Kの条件で試みた.その結果,特に出発試料として微粉黒鉛を用い,比較的低温で合成した場合に,高い透光性を示す長距離周期性を持たないアモルファス用のダイヤモンドの合成に成功した.本講演では,合成法の実際と回収試料の物性について紹介する.
  • 入舩 徹男, 磯部 太志, 新名 亨, 西山 宣正, 田幡 論史, 田渡 正史
    セッションID: R2-13
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    愛媛大学地球深部ダイナミクスセンターでは、2009年に現在世界最大となる川井式マルチアンビル超高圧合成装置を導入した。本発表では、この装置の概要を報告するとともに、圧力および温度発生の現状について報告する。また、この装置を用いた研究の例として、大型超硬硬度ナノダイヤモンド(NPD=ヒメダイヤ)合成の現状と、今後の課題についても述べる予定である。
  • 大内 智博, 川添 貴章, 西原 遊, 西山 宣正, 入舩 徹男
    セッションID: R2-14
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    本研究では、deformation-DIA型変形装置を用い、無水の上部マントル条件下(P = 2.1−7.6 GPa, T = 1493−1673 K)における、かんらん石多結晶体試料の単純せん断変形実験を行った。低圧(≤ 5.2 GPa)においては、(010)[001]すべり系によって発達するA-typeファブリックが支配的であった。一方、7.6 GPaにおいては、(010)[001]すべり系によるB-type的なファブリック、及び (hk0)[001]すべり系によるB/C-typeファブリックがそれぞれ低温、高温において発達することが確認された。高圧下(7.6 GPa)で確認されたこれらのファブリックは、同じ歪量をもつA-typeのものと比較した場合、弱い地震波速度異方性を示す。そのため、これら二種類のファブリック遷移により、上部マントル深部の弱い地震波速度異方性が説明されるほか、VSH/VSV比が大陸地域と海洋地域の上部マントル深部とで異なる(Montagner, 1998; Gung et al., 2003)ことも説明可能である。
  • 東 真太郎, 片山 郁夫, 平内 健一, 山下 茂
    セッションID: R2-15
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    本研究では、地殻・マントル境界でのレオロジー変化を流動則の外挿によるのではなく、高圧変形実験によって、含水条件下のモホ面付近における斜長石とカンラン石の強度を直接決定する実験を行った。実験条件は圧力1GPa、温度400~800℃の条件で斜長石とオリビンの出発物質を同時にアルミナピストンに挟み、相対的な強度を決定する。実験後の変形微細組織から、斜長石とオリビンはどちらも格子選択配向を示し、転位密度からも斜長石とオリビンは転位クリープに対応する塑性変形をしていることが確認された。実験結果としては、400℃においてオリビンは斜長石より強度が低いが、一方で800℃においては、オリビンより斜長石の方が柔らかくなった。結果として、斜長石とオリビンの強度比は温度に依存することが示された。そして、地球のモホ面に対応する温度圧力条件では斜長石よりオリビンの方が強度が低い、もしくは、ほとんど強度に差がないという結果が得られた。この結果から、地球の大陸リソスフェアの地殻とマントルのレオロジー層構造のモデルとして適切であるのは「クレームブリュレモデル」であることが考えられる。
  • 安東 淳一, 浦田 義人, 曽田 祐介
    セッションID: R2-16
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    アンチゴライト蛇紋石の塑性変形メカニズムを明らかにする目的で、天然で塑性変形したアンチゴライト蛇紋岩中に発達する変形微細組織を、主に透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した。観察した試料は大分県の佐賀関半島に露出しているアンチゴライト蛇紋岩である。この蛇紋岩には、面構造と線構造が明瞭に発達しており、岩石を構成しているアンチゴライト蛇紋石は[010]が線構造に平行に、[001]が面構造に垂直な方向に集中する格子選択配向(LPO)を有している(Soda and Takagi, 2010)。TEM観察の結果、本試料を構成しているアンチゴライト蛇紋石の塑性変形は以下の2つのメカニズムによって進行したと考えられる。1)(001)面の変形双晶、2)(001)面をすべり面とし[010]方向に変位成分を有する“らせん転位”の運動。この“らせん転位”の運動は、上述したLPOパターンを形成しうる。
  • 長瀬 敏郎, 山田 亮一, 掛川 武
    セッションID: R2-17
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    準安定相として晶出する鉱物には不規則型積層欠陥を伴うドメインがしばしば観察され、このようなドメインは準安定相の形成に大きな役割を果たしていると考えられる。準安定相である白鉄鉱にも同様にこのドメインが認められている。このドメインが白鉄鉱の特有な組織かどうかを確かめるために、同様の条件下で晶出した黄鉄鉱の組織について、TEMを用いて観察した。観察試料は、堆積岩中や黒鉱鉱床から産出したものである。観察の結果、黄鉄鉱中の欠陥の多くは、{100}面に平行な反位相ドメイン境界とそれに伴う転位、そして、様々な大きさの包有物である。花岡産球状黄鉄鉱の中から不規則型積層欠陥ドメインを伴う黄鉄鉱が見いだされた。不規則型積層欠陥ドメインは結晶の中心部に存在し、高分解能TEM像の解析から、その構造は白鉄鉱と一致する。このドメインの基本構造は白鉄鉱であることから、白鉄鉱の特有の組織と考えられる。
  • 石橋 秀巳, 小竹 翔子, 櫻井 晴子, 鍵 裕之, 大藤 弘明
    セッションID: R2-18
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    中央アフリカ共和国産の天然多結晶ダイヤモンド、カルボナドの2試料について、フォトルミネッセンス(PL)スペクトル分析と岩石組織観察を行った。今回、測定した2試料では、大きく異なるPLスペクトルパターンが得られた。試料Aは、3Hセンターがみられ、575nmのN-Vセンターを欠くのが特徴である。一方、試料BではH3センターと575nmのN-Vセンターが顕著に見られる。試料AおよびBは、Kagi et al. (1994, 2007)のグループAおよびBにそれぞれ相当する。これら2試料では、岩石組織的特徴も大きく異なる。例えば、試料Aでは比較的大きな空隙が至る所に分布するのに対し、試料Bではより大きな空隙が局在する。これらの観察事実に基づき、カルボナドの放射線被曝のメカニズムとタイミングについて議論する予定である。
  • 中牟田 義博, 藤 昇一
    セッションID: R2-19
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    Goalparaユレイライト隕石中よりgraphiteの仮象をなす50ミクロン大の粒子を研磨薄片中より取り出し、ガンドルフィカメラによるX線分析後、FIB法により3枚の定方位TEM試料を作成し、graphiteにユニークな3方向より高分解能電子顕微鏡(HRTEM)観察を行うとともに電子線回折パターンを撮り、転位に伴うgraphiteからdiamondへの構造変化過程を検討した。これらの結果から、graphiteからdiamondへの転位は、グラファイト層が一方向に滑ることによりABC積層を持つ3層構造とAB'A積層を持つ2層構造が並行して出来た後、puckeringとbucklingが起こることによりdiamondとlonsdaleiteが共存しながら生成したことが分かった。
  • 小畑 正明, 小澤 一仁
    セッションID: R2-20
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    ケリファイトの微細構造、特にEBSDによって得られた結晶方位の知見を基づいて、ざくろ石のケリファイト化のプロセスを鉄鋼のパーライトの形成過程の考えを参照して解釈を試みた。ざくろ石が不安定化するとき、恐らく最初に斜方輝石がざくろ石―かんらん石境界面上にできるだろう(不均質核形成)。成長する斜方輝石の中でスピネルの核形成と成長が繰り返し起こることで、シンプレクタイト構造が発達する。スピネルと輝石間の方位関係はこの核形成のステージで決まると考えられる。スピネル成長場とかんらん石が斜方輝石化する場の間でMg とSiイオンの交換が粒界拡散を介して継続的に起こる点がパーライトと異なる点である。
  • 奥村 晴香, 中村 美千彦
    セッションID: R2-21
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    本研究では,曹長石(Ab)–石英(Qtz)–H2O系の結晶化実験を行い,不均質核形成の効果や結晶成長速度,珪酸塩成分の輸送経路を調べた.実験はピストンシリンダ型高温高圧発生装置を用い0.8 GPaにおいて行った.出発物質はAb,Qtzの粉末を用い,組成は共融点組成(Ab69)と非共融点組成(Ab26–36,51,80)とで行った.非共融点組成では平衡な結晶化により,約5 μmの等粒状組織が得られた.Ab69では,過冷メルトから形成したと考えられるコロフォーム状Ab–Qtz共晶組織と急冷ガラス,流体から溶解沈殿反応で晶出したと考えられる空隙中の粗粒(~200 μm)で自形の結晶が見られた.以上のことから,等粒状の花崗岩は,不均質核形成が容易な斑晶を多く含むマグマから,ペグマタイトは,そのようなマグマから分離した流体相,及び結晶数密度が小さい共融点組成メルトからそれぞれ形成したと考えられる.
  • 今井 悠太, 小池 千代枝, 茅原 弘毅, 野口 高明, 土`山 明
    セッションID: R2-22
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    赤外線天文観測から、星周領域において結晶質シリケイトの存在が確認されている。これらの結晶は非晶質物質が何らかの加熱を受けることにより結晶化したものと考えられる。このような非晶質からの結晶質シリケイト形成過程を調べるために、我々は、エンスタタイト組成(Mg/Si =1/1) 及びフォルステライト組成(Mg/Si =2/1)の非晶質シリケイトを、高周波誘導熱プラズマ法(日清エンジニアリング) によって作製し加熱結晶化実験を行った。その結果、Mg/Si = 1 の試料ではクリノエンスタタイトが、Mg/Si = 2 の試料ではフォルステライトが結晶化した。これらの試料について赤外吸収スペクトルから結晶化率を推定し、結晶化の時定数,キネテックパラメータを求め、アレニウスプロットすることにより、結晶化の活性化エネルギーEaを求めた。これらの結果をこれまで行われてきた非晶質シリケイトの加熱実験の結果と比較し議論する。
  • 川嶋 道久, 奥野 正幸, 奥寺 浩樹
    セッションID: R2-23
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    GeO2-SiO2系ガラスの200時間までの機械的粉砕による構造変化を、粉末X線回折法、赤外分光法及び電子顕微鏡観察を用いて解析した。電子顕微鏡観察から、粉砕したガラスは100時間までの粉砕で粒径がほぼ1μm以下まで減少し、それ以上の粉砕では粒径は大きく変化せず、粒子の再凝集が見られた。粉末X線回折測定から、粉砕に伴って、ガラス構造中にGeO4及びSiO4四面体から成る3及び4員環構造の増加、リング構造より大きな2次構造の出現、そしてGeO4及びSiO4四面体の歪みの増加がみられた。また、赤外分光測定からGe-OH結合の増加及びGe-O-Ge角の減少がみられた。200時間粉砕したガラスは500℃の温度での加熱処理により構造緩和が見られた。
  • 赤坂 正秀, 浜田 麻希, 永嶌 真理子, 大橋 晴夫
    セッションID: R2-24
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    Ca単斜輝石の6配位席と4配位席における3価の陽イオンの分布と陽イオンのイオン半径比の関係を解明するために、合成の(CaFe3+GaSiO6)90(CaGa2SiO6)10-単斜輝石 (FeGaTs90GaTs10-Cpx)の結晶構造解析を行い、Fe3+とGa3+の分布を決定した。6配位席におけるFe3+とGa3+の席選択率を精密化した結果、6配位席(M1)と4配位席(T)における原子数(O=6)は[Fe3+0.67(1)Ga0.33]M1[Si1.0Fe3+0.23Ga0.77]Tであった。この結果は、Akasaka et al. (1997)がメスバウアー分光法によって決定したFe3+M1:Fe3+T=0.59(2):0.32(2)に近い。
  • 永井 隆哉, 小林 沙和
    セッションID: R2-25
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    沈み込むスラブ内に存在する含水鉱物の脱水反応は、マントルへの水の供給に関与する重要な反応である。脱水反応が起こる温度近傍での水素のダイナミカルな運動を原子レベルで研究するため、現在、茨城県東海村J-PARCに高温高圧中性子回折装置(略称:PLANET)が建設されつつある。中性子回折実験では、水素の非干渉性散乱の寄与が大きいことから、水素化物が試料の場合、重水素置換して実験を行うことが常套手段である。しかしながら、重水素置換が脱水反応のカイネティクスやダイナミクスにどのような影響があるのかについてはあまりよく調べられていない。そこで本研究では、熱重量測定によるCa(OH)2と重水素置換体Ca(OD)2の脱水反応の速度論的解析を行い、カイネティクスへの同位体効果を検討した。
  • 阿部 利弥
    セッションID: R2-26
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    Li2OやB2O3を添加したCaO-V2O5系のフラックスを使用して,アノーサイト(CaAl2Si2O8)結晶の育成を開始した.結果,Li2Oフラックスにおいて,約10x5x2mmのサイズの結晶が得られている.これ以外のフラックスでも数ミリ大の結晶が得られている.これらの結晶は,灰色や淡黄色を帯びたものや白濁したものも多く,クラックが顕著なものや多結晶状態のものも多く見られた.ただし,1~2mm大の結晶もしくは同程度の領域では,透明かつ単結晶状の結晶も得られている.また,XRD結果では,両者とも顕著な回折線のシフト等は認められない.
  • 中沢 弘基, 谷口 尚, 栗林 貴弘
    セッションID: R2-27
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    粘土鉱物モンモリロナイト(以下MT)は、卑近な鉱物でありながら未だに結晶構造解析の果たされていない稀有な鉱物である。最近鈴木啓三(北大・院・工)によって天然スメクタイトから超高純度のMTが精製されたので同粉末を原料に単結晶化を試みた。
    かつてスメクタイト近似組成のガラスから電顕レベルの単結晶合成に成功した方法を踏襲し、含水量の異なる(25-75 wt%H2O)超高純度MTを5.5GPa、1700 ℃で1時間保持した後、さまざまの冷却過程で処理した。試料回収後、OM, SEM, XRD、および一部をX線単結晶法により調べた。
    急冷(〜1000 ℃/min)では針状および不定形のMT結晶が得られたが、徐冷および室温急冷後再加熱(>400 ℃)では無水珪酸塩(複数種)に分解したので、MTは低温でも準安定であるが、構造解析可能な単結晶は生成し得ることが示唆された。
  • Hayato So, Takashi Yoshino, M Satish-Kumar, Mutsumi Kato, Yoshikuni Hi ...
    セッションID: R2-P01
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    We present here results of high pressure experiments in the Fe-C system at 5GPa, 1200 to 1500 C. We have observed Fe3C, Fe7C3 and graphtie as stable phases in the run products. Based on the results obtained, we speculate the amount of carbon presentin the core.
  • 福井 宏之, 平岡 望
    セッションID: R2-P02
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    加圧したMgSiO3ガラスに対してマグネシウムL端およびシリコンL端のX線ラマン散乱を行い、電子構造を測定した。その結果からMgSiO3ガラスの局所構造の圧力に伴う変化を考察した。得られた結果から、約17GPaではシリコンの局所構造に変化が生じていることが分かった。
  • 町田 真一, 平井 寿子, 川村 太郎, 山本 佳孝, 八木 健彦
    セッションID: R2-P03
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    水分子と水素分子との間で働く分子間相互作用を浮き彫りにするため、重水素置換の水素ハイドレートの高圧実験を行い、その振動状態変化を調べた。  高圧発生装置にはダイヤモンドアンビルセルを用い、圧力測定はルビー蛍光法によった。実体顕微鏡観察、X線回折実験、Raman分光によって評価を行った。  高圧実験の結果、水素ハイドレートのfilled ice Ic構造内で、ゲスト水素分子の水素原子と、ホスト水分子の水素原子とが交換することが明らかとなった。また、ホスト水分子の振動状態を調べた結果、水素結合対称化を示唆する振動状態変化が観察された。
  • 古田 昂大, 王 玲, 奥部 真樹, 武田 隆史, 奥寺 浩樹, 吉朝 朗
    セッションID: R2-P04
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    テクタイトとは大きな隕石が地球に衝突したことで形成される天然ガラスである。テクタイトの局所構造をX線吸収微細構造(XAFS)分光法により研究した。私たちはFeのK吸収端のEXAfS測定を、異なった場所、大きさ、色を有するHainanite、Indochinaite、Philippinaite、Australite、Bediasite、Moldaviteのそれぞれのテクタイトについて、局所構造とFe原子の化学状態についての情報を得るために行った。 この研究はFeの局所構造は隕石の衝突時と降下過程によって変化するということを指し示している。Feの局所構造はその時の温度、圧力、急冷率、衝突した隕石や降下するメルトの大きさに関係している。結果として、Fe原子の結合構造や近接する酸素原子の配列に違いが生じている。
  • 仲谷 友孝, 平床 竜矢, 奥部 真樹, 武田 隆史, 村井 啓一郎, 吉朝 朗
    セッションID: R2-P05
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    PbTiO3は強誘電性特性を持ち、優れた機能材料である。これまでの構造研究やXANESによる研究では、強誘電性相転移のメカニズム等に幾つかの提案があるが他の化合物との比較研究は不十分であった。PbTiO3についてXAFS解析を使って吸収端近傍の局所歪みの温度依存を決定し、pre-edgeの特徴について総合的な解釈を得るための比較研究が必要である。pre-edge強度がチタン原子近傍の歪みや電子軌道混成、A原子を介した酸素の原子軌道変化、圧力等に大きく依存する。今回に研究では様々なチタン酸基のTi K-edge XANESスペクトルを18Kから1100Kまでの範囲で測定し、組成、相転移、温度の変化に伴うXANESスペクトルの詳細変化を述べる。
  • 平床 竜矢, 仲谷 友孝, 奥部 真樹, 中塚 晃彦, 村井 啓一郎, 吉朝 明
    セッションID: R2-P06
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    BaTiO3,SrTiO3,TiO2のTi K端XAFSスペクトルを様々な温度で測定した。特に相転移において調べた。Ti K端XAFSスペクトルの測定は筑波のKEKフォトンファクトリーのビームラインで行った。18Kから1000Kの温度範囲のX線吸収係数の測定はヘリウム中にて行った。TiO2のXAFSスペクトルは成分が同じでもアナターゼとルチルの間では違う。たとえ、構造相転移が起きても、それぞれの合成物においてXAFSスペクトルの温度依存は小さいTi K端XAFSスペクトルは違う組成によって大きく異なる。SrTiO3とBaTiO3はこの測定の温度範囲で構造相転移を起こした。ペロブスカイトの構造相転移はTio6八面体の回転や歪みによって引き起こされる。SrTiO3は菱面体晶-正方晶-立方晶 BaTiO3は三方晶-斜方晶-正方晶-立方晶。プレエッジのピークは5個識別でき、それぞれのプレエッジのピークで温度変化に伴い、X線吸収係数に大きな変化が見られた。
  • 新納 美加, 奥寺 浩樹, 奥野 正幸
    セッションID: R2-P07
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    モロッコ、ミブラーデン産のバナジナイトPb5(VO4)3Clについて構造精密化を行った。空間群はP63/m、格子定数はa = b = 10.317(1) A, c = 7.336(1) Aであった。構造精密化はR(F) = 3.76%に収束した。V席の異方性温度因子がPb席のそれよりも小さいことと、酸素イオン席の温度因子の異方性から、VO4四面体が構造中で剛体として振舞うことが示された。また、Cl陰イオンチャンネル中のCl席の熱振動楕円体は [001] 方向にそって伸びている。このことはPb(2)3正三角形 (z = 1/4) 中の空隙が大きいことによって説明される。
  • 中塚 晃彦, 下川 真美, 中山 則昭, 大高 理, 有馬 寛, 奥部 真樹, 吉朝 朗
    セッションID: R2-P08
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    パイロープは、上部マントルの主要構成鉱物の一つである。半径比則によればMgは6配位をとると期待されるが、パイロープ中のMgは8配位席を占有している。この異常とも言える配位環境のため、パイロープ中のMgにおいて、大きな熱振動とともに、静的変位の可能性がこれまで示唆されてきた。実際、パイロープ中のMgの温度因子は他の珪酸塩ガーネットにおける8配位イオンのものよりもかなり大きな値をもつことがよく知られている。しかし、パイロープにおいて、Mgの静的変位が存在するか否かは未だ解決されていない。この問題を解決すべく、本研究において、原子の平均二乗変位の温度依存性と低温におけるMg位置近傍の電子密度分布の詳細を明らかにすることを目的とし、96.7-972.9 Kの20温度点において、合成パイロープの単結晶X線構造解析を行った。
  • 宮下 千尋, 奥寺 浩樹, 奥野 正幸
    セッションID: R2-P09
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    FZ法で育成されたルチル単結晶(TiO2)は、青色を呈するが加熱によって淡黄色へと変化する。青色の原因は、酸素イオンの欠損によって生じるTi3+の存在と言われてきた。本研究ではFZ法で育成したルチルについて、色と酸素欠損量の相関について熱重量分析と単結晶X線回折法によって調べた。熱重量分析(大気中800℃)では、色が青色から白色へと変化し、0.3%の重量減少が観測された。四軸自動回折計で得た格子定数は青色結晶(as-grown)と淡黄色結晶(大気中で加熱)ともにa = 4.5937(4)Å,c = 2.9585(2)Åであり、違いは見られなかった。精密化の結果、Oの席占有率は淡黄色試料では誤差の範囲内ではあるが僅かに低くなった。青色結晶と淡黄色結晶の色の違いは、酸素イオンの欠損量ではなく着色心の違いで説明できると思われる。
  • 門馬 綱一, 泉 富士夫
    セッションID: R2-P10
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    X線・中性子回折データに対する最大エントロピー解析の収束アルゴリズムと各種重み付け法について、計算構造因子に誤差を加えた疑似観測構造因子を使用して評価を行った。ゼロ次元単一ピクセル近似とケンブリッジアルゴリズムの差は通常は無視できるが、格子面間隔dの小さな反射を使用すると明瞭な差が出ることがあった。また、dの小さい反射を解析に含める場合、電子密度の解析では適切な重み付けが不可欠であるのに対し、d値に基づく重み付けは核密度の解析には適していないことが明らかになった。
  • 伊神 洋平, 大井 修吾, 高谷 真樹, 兒玉 優, 三宅 亮
    セッションID: R2-P11
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、珪線石のムライトへの分解温度を推定することを目的としている。そのためには、角度分解能の高い装置によるHT-XRDを行い、ムライト核形成におけるTTT-diagram を得ることが効果的である。本研究では、XRDでムライトのピークが見られない天然の珪線石を加熱・等温保持してHT-XRDを行い回折パターンを観察した。それぞれの試料の珪線石の210反射強度(Is)とムライトの210反射強度(Im)の割合を求め、Im/(Is+Im)>=2%のときムライトが存在しているとした。この基準でムライト核形成におけるTTT-diagramを描くと、この曲線から常圧でのムライト核形成温度はTc=1150±50Cと外挿できた。また、1470C・140.5h以上保持の試料についてのみ、珪線石、ムライトのピークに加えてクリストバライトの最強線が検出された。
  • 永吉 麻衣子, 久保 友明, 加藤 工
    セッションID: R2-P12
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,スピネル‐ガーネットかんらん岩相転移カイネティクスを解明することを目的として,スピネル単結晶を輝石粉末中に埋め込み,ガーネットかんらん岩安定領域(3.2 GPa, 1000-1200°C, 1-20 hours)での相転移実験を行った.結果,スピネル単結晶と輝石多結晶体との間にガーネット反応縁が形成され,その幅は時間の1/2乗に比例して増加しており,拡散律速成長則に基づいた解析を行った.
  • 大井 修吾, 兒玉 優, 伊神 洋平, 三宅 亮
    セッションID: R2-P13
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    輝石は主要な造岩鉱物であり、古くから研究が行われてきた。代表的な端成分であるエンスタタイト(En; MgSiO3)は大気圧下において、低温型斜方輝石(LT-Opx; 空間群Pbca)・低温型単斜輝石(LT-Cpx; 空間群P21/c)・高温型単斜輝石 (HT-Cpx; 空間群C2/c)・高温型斜方輝石 (HT-Opx; 空間群Pbca)プロト輝石 (Ppx; 空間群Pbcn)の5つの多系が存在することが知られている。En端成分では、高温から順番にPpx、LT-Opx、(LT-Cpx)の安定領域が報告されており、HT-OpxやHT-Cpxの安定領域については報告されていない。しかし、Ppx領域におけるHT-Cpxの晶出や、その領域においてLT-Opx・LT-CpxからHT-Opx・HT-Cpxへの相転移、PpxからLT-Cpxへの急冷中の相転移など、上記5相の相関係は複雑であり、未だに不明な点が多い。 本研究では、Enの多形の相関系を解明することを目的とし、LT-Opx・LT-CpxからHT-Opx・HT-Cpxへの相転移に着目して実験を行った。
  • 三宅 亮, 高谷 真樹, 兒玉 優, 大井 修吾
    セッションID: R2-P14
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    高エネルギー加速器研究機構放射光科学研究施設(KEK-PF)のビームラインBL-4B2に設置されている高分解能粉末X線回折装置を用いて、フォルステライト(Mg2SiO4)、コランダム(Al2O3)、白金(Pt)の約1700 Kまでの熱膨張率を決定したので報告を行う。測定結果はRIETAN FP (Izumi 2009)を用いて、全パターンフィッティングにより求めた。解析の結果より、300K, 1atmにおいてそれぞれの格子定数は、Pt: a = 3.92317(1) Å、コランダム: a=4.75854(2) Å, c = 12.98992(5) Å、フォルステライト: a = 10.19566(2) Å, b = 5.98085(1) Å, c = 4.75486(1) Å の値を得た。
  • 伊東 洋典, 大熊 洋平, 小松 隆一, 秋重 幸邦
    セッションID: R2-P15
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    μ-PD法による化学量論組成からのKNbO3ファイバー育成について育成条件等を検討し、再現性あるKNbO3結晶ファイバー育成について検討し、併せて育成ファイバーの評価を行った。底部にノズルを付けた円筒白金坩堝を用いて、抵抗加熱型μ-PD育成炉を用いてKNbO3ファイバー育成を行った。原料はTSSG法で育成したKNbO3結晶またはKNbO3セラミックスを用いた。育成ファイバーは、X線回折、顕微鏡観察等を行い、誘電率の温度変化も測定した。温度勾配を緩やかにすることにより、KNbO3結晶単相ファイバーが育成出来た。ファイバーには成長速度変動に起因する成長縞が観察され、成長速度変動がドメイン発生にも影響すると推定された。また誘電率測定からは、ニオブ酸カリウムに特有な225℃と435℃程度の相転移が確認された。今後はドメイン構造の制御を検討したい。
  • 三宅 亮
    セッションID: R2-P16
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    ペリクレース(MgO)中の陽イオン、陰イオン空孔がそれぞれ独立に存在するuncoupled vacancy(いわゆるSchottky vacancy)と互いに隣接して空孔を作るcoupled vacancy、それぞれの空孔形成エネルギーについて、空孔形成エネルギーおよび空孔移動の活性化エネルギーを電子密度関数(DFT)計算により求めた。具体的には、計算セル中に4種類の空孔、すなわち (1) Mgを1原子抜いた (2) Oを1原子抜いた (3) 最近接にあるMg, Oを1分子(すなわちcoupled vacancy)抜いた (4) 計算セルの中で最も遠くにあるMg, Oを1分子分抜いた、異なる4種類の状態を作り計算を行った。Schottky vacancy の計算は(1)と(2)の計算結果を用いて、電荷の補正計算を行った上で求めた。  計算の結果、セルサイズが小さいときには補正したSchottky vacancyの形成エネルギーが最も小さいが、セルサイズが最も大きい系ではcoupled vacancyの形成エネルギーが最も小さくなった。このことは、ペリクレース中の空孔は、エントロピーの効果が小さい低温ではcoupled vacancyの状態である可能性を示唆している。高温では、空孔の配置のエントロピー項が効いてくるため、Schottky vacancyとして存在すると考えられる。
  • 古川 登
    セッションID: R2-P17
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    円石藻類の石灰質殻を透過した光が,どのような行路をたどるのかを,シミュレーション的な手法を用いて,解析した.Florisphaera属などのように, 殻が内側に湾曲した形状の場合,殻の内側に向かって収束する光路を取ることが分かった
  • 林 宏樹, 赤井 純治
    セッションID: R2-P18
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    ジルコン内部組織からAタイプ花崗岩である足摺岬環状複合岩体のマグマ発達史について議論する。本岩体のジルコンには3種の異常組織が観察され、それぞれRD・LD・HDとした。RDとLDはともにY2O3・UO2濃度の低下が見られ、それぞれ融食-沈澱作用・局所再結晶作用に成因を求めることができる。HDは非常に高いHfO2濃度と低いY2O3・ThO2濃度をもつにもかかわらずUO2濃度が変化せず、このため0.1を下回るTh/U比をもつ。火成組織はRDを境界としてコア側でHfO2・UO2濃度が低くリム側でそれらの濃度が高い。SEM観察より、(1)火成的または熱水性のコア、(2)LD1、(3)RD、(4)火成的リム、(5)LD2、(6)結晶表面を含む火成的リムという組織形成順序が得られた。これらの異常組織の形成順序と化学的特徴を踏まえ、ジルコン粒子の成長環境の変遷について考察する。
  • 中村 佳博, 小河原 孝彦, 赤井 純治
    セッションID: R2-P19
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    行者山接触変成岩について炭質物の構造的特徴と結晶子サイズについてラマン分光法・粉末X線回折法・透過型電子顕微鏡を用いて詳細に研究をおこなった.これによって新しい結晶サイズ・形態の変化を発見した.これらの特徴を使い,新しい地質温度計のパラメーターとして使えるか議論した.
  • Kubat Kenzhebaev, Masahide Akasaka
    セッションID: R2-P20
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    Ore minerals and mineralization stages of the Chaarat gold-bearing antimony deposit,Middle Tien-Shan, Kyrgyzstan Kenzhebaev Kubat, and Masahide Akasaka Department of Geoscience, Graduate School of Science and Engineering, Shimane University, Matsue, Japan Corresponding author:ikubich@yahoo.com. The gold-bearing Chaarat deposit is located at the Chatkal district of the Jalal-Abad region, Kyrgyz Republic. Chatkal valleys considers have a numerous placers and ore occurrences and deposits . The Chaarat deposit is one of these occurrences, but it has not been studied in detail yet. The aim of study is to define the physical and chemical conditions, and the stages of mineralization.
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