ブラッケブッシュ石グループ鉱物は、A2B(XO4)(YO4)(OH):(A=Pb,Ba,Ca,Sr、B=Fe,Al,Mn,Cu,Zn、X,Y=As,P,V,S,Cr,Mo)と示される単斜晶系の鉱物で、カルデロン石Pb2Fe(VO4)2(OH)(静岡県延明鉱山)(2002山田ら)や東京石Ba2(Mn,Fe)(VO4)2(OH)(東京都白丸鉱山)(Matsubara
et al., 2004)などが知られる。今回、福島県安積鉱山から産したカルデロン石と思われた鉱物を詳細に調べた結果、ブラッケブッシュ石グループ鉱物のうち新種の化学組成に相当することがわかった。安積鉱山は郡山市の西側、猪苗代湖の東7-8kmに位置する。鉱床は黒鉱型の石膏鉱床で天青石(SrSO4)の産地として知られる(Matsubara
et al., 2004)。標本は、安積鉱山のズリからみつかった。明るい黄褐色の粉状鉱物として石英-緑鉛鉱-ミメット鉱からなる数cmの塊に含まれた。化学組成は,PbO 62.67, Fe2O3 11.18, P2O5 7.24, V2O5 11.62, As2O5 3.22, SO3 2.82, H2O 1.31(re-calc.), total 100.06%.H2O部分以外をO=8.5として求めた実験式は,Pb1.92Fe0.96 [(V0.86P0.70As0.19S0.24)2.01O4] (OH) となりカルデロン石のVをPに置換した組成に相当する。X線粉末回折実験による主要回折値(d/I)は、8.20(25), 4.82(39), 3.65(20), 3.24(100), 2.977 (36), 2.946(48), 2.953(52), 2.745(42), 2.751(45), 2.291(25)で、格子常数:a=7.734, b=5.952, c=8.851(Å), β111.85deg.をあたえる。
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