日本鉱物科学会年会講演要旨集
日本鉱物科学会 2012年年会
選択された号の論文の253件中51~100を表示しています
R1:鉱物記載・分析評価
  • 岡田 華子, 田中 賢一, 福本 辰巳, 皆川 鉄雄, 大越 悠数, 浜根 大輔
    セッションID: R1-P07
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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     ブラウン鉱を主要鉱石鉱物とする変成マンガン鉱床から産するアルカリ角閃石の化学的検討を行った。秩父帯南帯下払鉱床からはKに富むrichterite - arfvedsoniteのMn3+置換体を見出した。三波川帯の古宮鉱床からもKに富むrichterite-winchite系列に属する角閃石と、BサイトにおけるNa+Caの値がほぼ1 - 1.5の範囲を示す角閃石はottoliniiteあるいは ferri-ottoliniiteのMn3+置換体と推定される。田野畑鉱山産の黄褐色角閃石はkozulite – arfvedsonite - Na3(Mn2+, Mn3+)5Si8O22(OH)2 の3種の端成分組成からなる。
  • 浜根 大輔, 冨田 宣光, 皆川 鉄雄, 稲葉 幸郎
    セッションID: R1-P08
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    三重県伊勢市から新鉱物・伊勢鉱・Iseiteを発見したので,その概要を報告する。
  • 浜根 大輔, 大越 悠数, 皆川 鉄雄
    セッションID: R1-P09
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    大分県下払鉱山から新鉱物・宮久石/Miyahisaiteを発見したので,その概要を報告する。
  • 小林 祥一, 大谷 和磨, 安藤 珠美, 草地 功, 田邊 満雄
    セッションID: R1-P10
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    Calciboriteは岡山県布賀鉱山で、島崎石を主体とするホウ酸塩鉱物集合体近くの露頭で見出した。CalciboriteはPetrova(1956)によってウラルのスカルンタイプの銅鉱床で試錐によって得られたコア中から最初に発見された。なお、本鉱物の日本での産出は初めてである。布賀産calciboriteは乳白色で、shimazakiiteの露頭から周辺に放射状あるいはアメーバー状に広がる暗灰色から乳白色のshimazakiite, sibrskite, cuspidine, fluorite, borniteなどからなる鉱物の集合体を切る、幅2~4mmの脈の構成鉱物として産する。O=4としたときの実験式は、(Ca0.997Mn0.001Co0.001)Σ0.999B2.001O4、また格子定数はa=8.373(6), b=13.811(8), c=5.012(4) Åであった。
  • 小林 祥一, 戸田 雄大, 玉置 みさき, 草地 功, 岸 成具, 田邊 満雄
    セッションID: R1-P11
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    岡山県布賀鉱山で、島崎石を主体とするホウ酸塩鉱物集合体近くの露頭で、uralborite, bultfonteinite, fluorite, calciteなどの鉱物の集合体中に、数個の赤褐色を示すroweiteを見出した。RoweiteはCa2Mn2B4O7(OH)6組成のカルシウムマンガンの含水ホウ酸塩鉱物である。Roweiteは最初アメリカニュージャージー州フランクリンの亜鉛鉱床で、変質した層状の亜鉛鉱石中の熱水脈から見出され、Berman and Gonyer (1937)によって記載された。なお、日本ではroweiteの産出は初めてである。EPMAによって得られた分析値をもとに求めた実験式は、理想式に近く、微小部X線装置(PSPC-MDG)によって得られた格子定数は、a=9.08(5) b=13.32(6), c=8.23(4)Åであった
  • 冨田 宣光, 皆川 鉄雄, 大越 悠数, 田中 崇裕
    セッションID: R1-P12
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    NordenskiöldineとはBrögger(1887)により報告されたCaとSn4+のBoratesである。三方晶系に属する。本邦では未報告であったが、Vonsenite, hulsiteなどのboratesの産出で知られる宮崎県千軒平スカルン鉱床から見出した。Nordenskiöldineは無色透明, 葉片状あるいは板状集合体を成している。得られた実験式は(Ca0.94Fe2+0.02)Sn1.02(BO3)2であり、ほぼ端成分組成である。
  • 石橋 隆, 下林 典正, 宮島 宏
    セッションID: R1-P13
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    新潟県西部にある糸魚川世界ジオパークの橋立金山ジオサイトから見出されたラング石(Langite, Cu4(SO4)(OH)6・2H2O)は,坑内の壁面に露出する蛇紋岩の一部の表面に皮膜状に付着し,母岩の内部には存在しない.最大5mmほどのガラス光沢を呈する青緑色透明板状~柱状結晶で,塊状の孔雀石や珪孔雀石を伴う.定量化学分析はまだ行っていないが,定性的にはCu, Sの含有と,Znの未検出を確認している.橋立金山GSで発見された青緑色鉱物をラング石と同定した根拠は,X線粉末回折値がPDF 75-1258のラング石の値とよく一致したことによる.近隣の岩石には含銅硫化鉱物は見られず,坑内の壁面にのみ見られることから地下水によってCu, Sが移動し,坑内壁面に湧出して生成したものと思われる.閉山後,どれぐらいの期間で生成したものかは不明である. 
  • 大浜 多喜, 山田 隆, 門馬 綱一, 宮脇 律郎, 松原 聰
    セッションID: R1-P14
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    静岡県河津鉱山からカルコメン石CuSeO3・2H2Oと宗像石Pb2Cu2(SeO3)(SO4)(OH)4の2種の亜セレン酸塩鉱物を確認した。空隙の多い石英塊の割れ目や晶洞内に最終的な生成を示すべく晶出し、近くには緑鉛鉱がみられる。カルコメン石は、0.5mmほどのガラス光沢、鮮青色の柱状結晶としてみられる。EDSによる半定量化学分析ではCu:Se比はおよそ1:1、ガンドルフィーカメラによるX線粉末回折実験では、主要回折値d(I):5.761(24), 5.395(82), 4.953(100), 4.356(23), 3.781(62), 3.422(44), 3.365(86), 3.046(49), 2.887(45), 2.824(37), 2.534(54), 2.167(31)をしめす。宗像石は、淡青色、微細な繊維状集合で石英の表面を覆う。化学組成は、Pb:Cu:Se:S比がおよそ2:2:1:1。X線粉末主要回折値d(I):4.880 (52), 4.498(55), 3.544(60), 3.197(100), 3.163(87), 3.115(82), 2.840(30), 2.724(31), 2.408(23), 2.117(16)。両鉱物は、産状からみて、銅、鉛、セレンを含む各種鉱物の分解による二次生成鉱物とうかがえる。原稿物の候補には方鉛鉱があり、本鉱山に産出する方鉛鉱には、しばしばセレンを含むもの(clausthalitePbSe成分を含む)が知られる。
  • 古本 里菜, 福本 辰巳, 皆川 鉄雄, 浜根 大輔
    セッションID: R1-P15
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    愛媛県岩城島のエジリン閃長岩中に,新鉱物であるsugilite [KNa2(Fe,Mn,Al)2Li3Si12O30]、kataya-malite[KCa7(Ti,Zr)2Li3Ca7Si12O36(OH,F)2] 等が(Murakami et al., 1976 ; Murakami et al., 1983)nにより発見されている.今回、本邦初産であるekanite(K0.27Na0.08Ca0.17)∑0.52(Ca1.94Ce0.06)∑ 2.00(Th0.99 U0.04)∑1.03(Si8 Al0.04) ∑ 8.04O20 ,Sogdianite  K1.03(Na0.570.43) ∑2.00 (Zr1.47Fe3+0.49Al0.14Th 0.01)∑2.01 Li3(Si12O30 )が発見されている.Ekaniteは, aegirine中に観察される. Sogdianiteはzirconと密接に共生している.Pectoliteの格子定数a = 7.74(3), b = 6.89(4), c = 7.07(5), α = 83.8°(7), β= 96.2°(4), γ = 101.0°(6)に基づくとNa が Liに置換されたと考えられる.
  • 大越 悠数, 皆川 鉄雄, 浜根 大輔
    セッションID: R1-P16
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    広島県三原スカルン鉱床に分布する含蛍石アプライトからgadolinite group mineralsを見出した。組成は
    ガドリン石、ヒンガン石に相当する。またベスブ石-ざくろ石-蛍石-灰重石スカルンから、本邦初産の
    gittinsiteを見出した。これらの鉱物学的特徴について報告する。
  • 川崎 雅之, 加藤 睦実, 廣井 美邦, 宮脇 律郎, 横山 一己, 重岡 昌子, 鍵 裕之, 砂川 一郎
    セッションID: R1-P17
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    奈良県天川村洞川(どろがわ)にある五代松(ごよまつ)鉱山(接触交代鉱床)から黄色に着色した水晶が産出し、レモン水晶と称されて標本市場に流通している。この水晶は高過飽和条件下での樹枝状成長とそれに続く低過飽和条件下での層成長という二つの過程を経ていること、樹枝状水晶が種子となり、多面体水晶の形成を規制していることから、トラピッチェ・クオーツと呼べるものである。
  • 松井 智彰, 荒川 洋二, 木股 三善, 西田 憲正, 星野 美保子, 越後 拓也
    セッションID: R1-P18
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    Anorthite megacrysts of about about 1 cm in maximum diameter are found as phenocrysts in the basaltic lavas from Take-shima, Kagoshima Prefecture, Japan. The anorthite megacrysts show slight optical zoning. BSE image, compositional mapping, and line analysis by electron probe microanalyzer clearly show compositional oscillatory zoning. Anorthite content of the megacryst is about 94 mol% at the most. Presence of the compositional oscillatory zoning implies the oscillation in pressure, temperature or vapor pressure occurred at a certain narrow range around the melting point of anorthite. The textural feature seems to be consistent with chemical zonation observed in BSE image and compositional mapping.
  • 黒澤 正紀, Shin Ki-Cheol, 笹 公和, 石井 聡
    セッションID: R1-P19
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    島弧の花崗岩起源流体の組成と挙動の解明のため、長崎県対馬花崗岩体の晶洞・石英脈と周辺鉱脈の石英中の流体包有物を粒子線励起X線分析法で分析した。今回は分析結果の総括である。石英中の主要な流体包有物は岩塩を含む多相包有物と気相包有物で、2相包有物がそれに次ぐ。分析の結果、全包有物からK・Ca・Mn・Fe・Ba・Zn・Pb・Br・Cu・Rb・Sr・Geが検出され、一部からはTiも認められた。殆どの元素濃度はCl濃度に正比例し、多相包有物で著しく高い。晶洞の包有物から推定した初生流体の遷移金属元素濃度は、数百〜数万ppmである。大陸のアルカリ花崗岩の晶洞の初生流体と比べ,KとRbが少なく、Geに富む。各石英の2相包有物と気相包有物のBr/Cl比は海水値より低く、多相包有物の値はCl濃度に比例して値が変化し、非常に高い値も観察された。多相包有物の傾向はBrとClの分配の温度圧力依存性で説明できる。
  • 岡本 真琴, 上野 禎一
    セッションID: R1-P20
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    本研究は、岡本他(1998)により発見された高松クレーター内に産出するゼオライトの鉱物記載をさらに発展させ、近年の農道開発で明らかとなった自然露頭での詳細な調査結果と、分布する岩石及び鉱物の産状について検討するものである。今回は新たに確認されたゼオライトを福岡教育大の走査型電子顕微鏡(日本電子社製JSM-6510)により観察し、結晶形態や表面構造の特徴をまとめたものを中心に報告する。今回改めて検討を行った地域は、日山北西部にある幅50m、高さ10m以上の白い露頭であり、中心部分に熱水変質作用により生成したゼオライトが分布する。XRFによるバルク組成分析では、Siや Caが中心部に多く、周辺部にはKやFe が多い事が判明した。また、肉眼で白く見える鉱物は、clinoptiloliteやcowlesite等のCa成分に富んだ単斜晶系の結晶構造を持つゼオライトである事が判った。
  • 池田 瑛, 石田 清隆
    セッションID: R1-P21
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    我が国のマンガン鉱床からは主にXIIBaIVAlXIIK-1IVSi-1のイオン置換の金雲母(Phl)―木下石(Kns)系の雲母鉱物を産することが知られている。このようなTrue micaとBrittle mica間の連続固溶体は極めて珍しい。その赤外OH伸縮振動バンドは、3780 cm-1付近のKnsの吸収と3720 cm-1付近のPhlの吸収のtwo modesのバンドが観測される。他の中赤外領域の吸収バンドはone modeの変化で、とくに800-620 cm-1の弱い4-5本のバンドが、660 cm-1付近のSi-O-Al変角振動バンド1本に合する。170-50 cm-1の遠赤外領域では、one modeの四面体面内捩れ振動バンドと、two modesのI-Oinner伸縮振動バンド、I-Oouter伸縮振動バンドが観測され、Kns成分の増加につれて高波数側にシフトする。
  • 十川 視, 篠田 圭司
    セッションID: R1-P22
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    本研究では大隅石の六員環構造がつくるチャネルと呼ばれる空洞中の水分子の存在様式を赤外線吸収スペクトルを用いて推定した.緑柱石や菫青石も同様のチャネル構造をもちtypeⅠとtypeⅡの水分子の存在が広く知られている.緑柱石や菫青石のチャネル中の水分子の伸縮振動域の赤外線吸収スペクトル測定では, 水分子の吸収ピークは4本観察されると考えられているが, 実際に観察されているピークは3本のみである. 従って3本のうち1本のピークは2パターンの水分子のピークが重なりあったものであると考えられていたが, そのことは証明されていなかった.今回水熱処理を行いチャネル中に水分子を拡散させた大隅石の赤外線吸収スペクトル測定の結果,チャネル中に水分子の存在を示す明瞭な4本のピークが観察された. これは緑柱石や菫青石で観測される3本の吸収ピークのうち1つのピークは2本の吸収ピークの重ね合わせであることを示唆する.
  • 三宅 亮, 池田 都, 吉田 健太, 𡈽山 明, 瀬戸 雄介, 藤 昇一
    セッションID: R1-P23
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    近年、集束イオンビーム装置の発達により、数nmの分解能での精密な加工ができるようになり、FIBを用いた透過型電子顕微鏡の試料作製法が一般的になりつつある。そこで、本研究ではFIBを用いた試料加工と様々な観察・分析手法を組み合わせることにより、従来行われていた鉱物表面上だけでなく、包有物全体および断面の観察・分析を行う手法の開発を行った。
  • 加藤 丈典
    セッションID: R1-P24
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    EPMAを用いたCHIME年代測定において、X線発生領域を小さくするには電子のエネルギーを小さくすることが有効である。電子のエネルギーが通常の15~25keVよりも小さい場合に正確な年代が得られるか検証するため、閃ウラン鉱および方トリウム鉱のCHIME年代測定を、加速電圧15kVと5kVの条件で行った。閃ウラン鉱からは、15kVで1124Ma、5kVで1122Maの年代が得られた。方トリウム鉱からは、15kVで558Ma、5kVで555Maの年代が得られた。いずれの鉱物においても、15kVと5kVで得られる年代に大きな差はない。したがって、加速電圧を5kVにしてもCHIME年代測定を行うことが可能であることが明らかになった。
  • 細川 真人, 大場 慶成, 三浦 裕行
    セッションID: R1-P25
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    鉛の炭酸塩であるPbCO3(Cerussite)は、温度や雰囲気、圧力等の条件により熱分解時に複数の中間物質が生成されることが報告されている。本研究では中間物質3PbO・2CO2の構造解析を行い、Pb炭酸塩がそのような中間物質を作る理由を解明することを目的とした。 実験:PbCO3粉末とK2CO3粉末を撹拌し、その後Kを取り除くことによりPb3(CO3)2(OH)2;Hydrocerussite を合成3PbO・2CO2はHydrocerussiteの脱水により合成した。結果:粉末X線回折実験の結果、目的の3PbO・2CO2および微量の2PbO・CO2の存在が観測された。指数付けの結果はa=5.34Å、c=13.89Åのhexagonalである。3PbO・2CO2と2PbO・CO2の2相でリートベルト解析を行った結果右のような結果を得た。さらに中間物質を作る理由も考察した。
R2:結晶構造・結晶化学・物性・結晶成長・応用鉱物
  • 藤野 清志
    セッションID: R2-01
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    分析透過電顕による極微細領域の化学組成についての定量分析は,今日広く行われるようになったが,測定に伴う問題点についてはあまり議論されておらず,それらに対する対策も,人によりまちまちである.講演では,それらの問題点を明らかにするとともに,その対策についての認識を広く共有することを目指す.
  • 亀形 菜々子, 野口 直樹, 鍵 裕之, 阿依 アヒマディ
    セッションID: R2-02
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    サファイア中の鉱物包有物周辺において、サファイア(Al2O3)に微量に含まれるCr3+由来の蛍光スペクトルを5-10μm間隔で三次元的にマッピング測定し、圧力較正曲線(Mao et al., 1986) を用いて蛍光線のピークシフトから各測定点の残留圧力を得た。試料にはオーストラリアおよびタイで産出された2種類のサファイアを用い、包有物として100μm程度の自形を持つジルコン、曹長石、ルチルが確認できる。タイ産サファイア中の曹長石とオーストラリア産のジルコン周辺の最大残留圧力はそれぞれ0.25GPa、0.60GPaであり、局所的に高い残留圧力が分布する。このメカニズムとして、曹長石に関してはホストのサファイアと包有物の線熱膨張率の違いや方位に依存する異方性が考えられる。また、ジルコンに関しては上記の理由では説明できず、包有物の形状や、両鉱物の変形メカニズムも考慮にいれる必要がある。
  • 野尻 博美, 奥野 正幸, 水上 知行, 荒井 章司, 真下 茂, OMURZAK Emil, CHEN Liliang, 奥寺 浩樹
    セッションID: R2-03
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    衝撃圧縮によりアルカリ長石(Or77Ab23)を、最大44GPaまで圧縮し、その回収サンプルの構造変化を解析し、ボールミル粉砕による構造変化や従来のサニディン・アルバイト結晶での衝撃圧縮実験結果 (Kitatani, 2004)と比較した。X線回折測定の結果、衝撃圧力の増加に伴い、回折ピークの強度は減少し、44.3GPaでほぼ非晶質化した。002と131反射におけるOr及びAb成分のピーク強度変化を図1に示した。Ab部分の回折強度の減少はOr部分より緩やかであった。これはサニディンやアルバイトのみの衝撃圧縮結果と調和的であるが、同一長石の粉砕実験結果とは異なる。これらの結果は、アルカリ長石結晶ではパーサイト組織があっても同様の圧縮挙動を示すが、粉砕による構造変化とは異なる。
  • 大藤 弘明, 山下 智治
    セッションID: R2-04
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    六方晶ダイヤモンドは,炭素の準安定多形として古くから知られ,隕石中や隕石衝突孔など,自然界においても産出が報告されている.これまでの高圧実験によって,結晶性の良いグラファイトを~18 GPa以上まで加圧すると,六方晶ダイヤへとマルテンサイト様プロセスにて相転移することが知られている.本研究では,相転移に伴う両相の格子間の共軸関係を詳しく検討し,相転移モデルを構築し,出発物質のグラファイトの結晶性と加圧時の静水圧性が相転移プロセスに及ぼす影響について考察を進めた.観察の結果,相転移前後でのグラファイト-六方晶ダイヤ間の共軸関係は,①Gr(001)// H-dia(100)と②Gr[001]// H-dia[001]の2タイプに分類されることが分かった.この相転移プロセスには,出発物質に用いるグラファイトの結晶性が強く影響し,逆に周囲の応力環境(静水圧性)はほとんど影響しないことが分かった.
  • 興野 純, 西宮 ゆき
    セッションID: R2-05
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    我々は,粒径サイズ変化に伴うヘマタイト‐フェリハイドライト相転移メカニズムについて研究を行った.フェリハイドライトは,75℃に加熱した硝酸鉄水溶液の加熱時間を変えて合成した.XRDの結果,硝酸鉄水溶液の加熱時間4時間でフェリハイドライトのピークに混ざってヘマタイトのピークが出現した.その後,加熱 24時間で完全にヘマタイトに変化した.PDF解析の結果,加熱時間の増加に伴い,フェリハイドライトの単位格子は,b軸方向に単調増加して,a軸方向に単調減少し,体積は連続的に減少した.2つのFeの六配位席の平均結合距離は,一方は単調減少し一方は単調増加した.また,Feの四配位席の平均結合距離はほぼ一定を保ち,それぞれの結合距離は1.970Åに相近していった.ヘマタイトの結晶構造は,Feは1つの六配位席に占有される.そのため,これはフェリハイドライトからヘマタイトに相転移しつつある構造変化である.
  • 興野 純
    セッションID: R2-06
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    本研究では,第一原理量子化学計算を用いて,As-S分子構造の多様性と階層性について予察的研究を行った.構造最適化計算の結果,orpimentと同じ組成比を持つAs4S6分子が安定に存在できることが明らかになった.また,As4S3分子として,既知のdimorphiteだけでなく新たに2種類のAs4S3分子構造が存在し得ることが判明した.また,2種類のAs4S2分子の存在の可能性と,As4S分子の存在も示され,構造未決定であるduranusite(As4S)の分子構造も示唆された.そして,本研究の結果から,As-S分子構造には全10種類の存在が示唆され,As4S6分子からAs4S分子までの構造階層性が示された.
  • 永井 隆哉, 佐野 亜沙美, 飯塚 理子, 鍵 裕之
    セッションID: R2-07
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    米国オークリッジ国立研究所の実験用原子炉で中性子回折実験を行い、リートベルト解析によって得られた結晶構造パラメーターから、ポートランダイトの熱膨張のメカニズムについて報告し、昨年行った同形構造を持つブルーサイトとの違いについて議論する。
  • 丸山 浩司, 小松 一生, 鍵 裕之, 吉野 徹
    セッションID: R2-08
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    炭酸カルシウムの準安定相の1つであるファーテライトの圧力下における構造変化を、X線回折およびラマン分光測定を用いた高圧下その場観察により調べた。高圧発生にはダイヤモンドアンビルセルを使用し、0~14GPaの圧力範囲で段階的に圧力を変化させた。また、静水圧性を保つためにヘリウムを圧媒体として用い、ルビー蛍光の波長シフトを用いて圧力を測定した。X線回折の結果から、5GPaまでの圧力ではファーテライトのみが存在し、圧力による格子定数の変化が見られた。一方で、5GPa以上の圧力では、ファーテライト以外の相の出現が確認された。また、相転移後に常圧へ下げることで、5GPa以上で現れた相はカルサイトに変化することが確認されたこと。これらの結果から、ファーテライトは圧力によって不可逆の相転移を示すことが明らかとなった。
  • 栗林 貴弘, 佐野古川 亜沙美, 長瀬 敏郎
    セッションID: R2-09
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    本報告では,昨年度報告した相転移の挙動が観察された圧力付近で改めて単結晶X線回折実験を行い,相転移の確認とδ相の高圧下における結晶構造の精密化を試みたので,その結果について報告する.
  • 志村 玲子, 杉山 和正
    セッションID: R2-10
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    結晶構造中の原子席の特定は、天然鉱物の成因環境を理解するために重要である。X線異常散乱を利用した結晶構造解析は、FeとNiのような原子番号が近接する原子を両方含む結晶の構造解析に有用である。本研究では、原子番号の隣接するSrとYを含む結晶( Sr3YB3O9)の単結晶を合成し、その結晶を利用して、回折強度を高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリーBL-10Aの4軸回折計を使用して測定を行った。測定データを用いて構造解析を行った結果、SrとYの原子席を明らかにすることができた。
  • 仲谷 友孝, 平床 竜矢, 奥部 真樹, 武田 隆史, 吉朝 朗
    セッションID: R2-11
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    数十GPaを超える超高圧の環境(マントル内部)では、ペロブスカイト構造は非常に一般的な構造である。TiO6八面体と金属Rで構成されており、 TiO6 八面体は金属Rとの相互作用により容易に歪み、対称性の低い斜方晶や正方晶に相転移する Ti原子が局所的に歪む(オフセンター)ことで分極し、強誘電性を持つものもある。この時の歪みのモデルには二つの歪みのモデルがあり、ひとつはオフセンターによる歪みと、もうひとつが 格子振動による歪みである。 常誘電体におけるTi原子の歪みについてと、強誘電性メカニズムにおいて、温度変化、圧力変化による歪みの変化について議論の余地があるXANESを用いた広い温度範囲で強誘電性ぺロブスカイトの局所的な歪み、電子構造を解析し、これまでの研究結果と比較することで、強誘電性の温度変化と圧力変化の関係、Ti原子の歪みについて再検討を行う
  • 永嶌 真理子, Armbruster Thomas
    セッションID: R2-12
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    ガーネット構造を持つヒ酸塩およびバナジン酸塩鉱物(一般式NaCa2Y2+2Z5+3O12)である天然のパレンツォナ石(X = Mn2+, Z = V5+),ベルゼライト(X = Mg, Z = As5+),マンガンベルゼライト(X = Mg, Z = As5+)の結晶化学的研究を行った。X線単結晶構造解析の結果(R1 = 1.36-2.42%),<Z-O>および<Y-O>は各サイトの平均イオン半径と正の相関を示すが,<X-O>はNa/Ca比が変化するにも関わらず相関はない.このことはヒ酸塩およびバナジン酸塩ガーネットにおいて,Xサイトの大きさはそこに存在する陽イオンに支配されないことを示している.またYサイトにMg,Mn2+のような2価の陽イオンが存在することで,Na, Caが存在するXO8との共有稜と非共有稜の長さの差が小さくなり,結晶構造の歪みが減少することも明らかとなった.
  • 赤坂 正秀, 平田 みお, 濵田 麻希, 永嶌 真理子, 牧野 州明, 小山内 康人
    セッションID: R2-13
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
    会議録・要旨集 フリー
    X-ray single-crystal and infra-red spectral studies of vanadium-bearing garnets from the Menipa mountain mass, central part of the Sør Rondane Mountains, East Antarctica were carried to determine crystal structures and examine existence of OH-group. Three modes of occurrences of V-bearing garnet are recognized: 1) large porphyroblast (type-1); 2) fine crystal (type-2) in kelyphite rim around type-1 garnet; 3) fine-grained porphyroblast (type-3) in matrix. The structure refinements of type-1 and type-3 garnets with the space group of Ia-3d were reduced with R1 of 0.0278 and 0.0689, respectively. The site occupancies determined using both X-ray diffraction data and electron microprobe analysis data are:VIII[Ca0.976Mg0.017M0.007] and VI[Al0.930V0.040Cr0.01Ti0.015 Fe0.005] for type-1 garnet, andVIII[Ca0.885Mg0.027M0.057Fe0.030] and VI[Al0.315V0.520Cr0.10Ti0.015 Fe0.05] for type-3 garnet.    Mean interatomic distances are Type-1  <X-O> = 2.407(1) Å, <Y-O> = 1.931(1) Å, <T-O> = 1.651(1) Å, andType-3  <X-O> = 2.426(2) Å, <Y-O> = 1.989(2) Å, <T-O> = 1.655(2) Å. The increase of <Y-O> distances is caused by the substitution of V3+ for Al3+. By the expansion of the octahedral site with this substitution, the unit-cell parameters increase from  a = 11.8686(8) Å of type-1 garnet to a = 11.9694(6) Å of type-3 garnet. The mean <T-O> distances of 1.651-1.655 Å are longer than ordinary Si-O distances in silicates. It has been known that the substitution of OH in garnet structure results in an expansion of the tetrahedral and a corresponding increase in the unit-cell parameter (Cohen-Addad et al. 1967). In fact, OH absorptions in the wavenumber regeion 3500-3700 cm-1 were confirmed in the infrared spectra of type-1, -2 and -3 garnets.
  • 濵田 麻希, 赤坂 正秀, 大藤 弘明
    セッションID: R2-14
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
    会議録・要旨集 フリー
    島根県浜田市産のメリライトカンラン石霞岩中からネフェリンを4試料採取し,X線粉末回折及び電子線回折測定を行った.結晶構造は直接法で決定し,SHELXS-97で精密化を行った.空間群はP63でメロヘドリーによる双晶の割合は23-40%である.平均T2-O,T3-O原子間距離は1.602 - 1.623 Å,T1-O,T4-O原子間距離は1.707 - 1.738 Åであることから,T2席及びT3席はSi,T1席及びT4席はAlで満たされており,ネフェリン構造中でSiとAlは秩序配列をしている.またO1原子のシフトがNep2,Nep3,Nep4の試料において確認された.これは変調構造の存在を示している.しかしNep1の試料ではO1原子のシフトは確認できなかった.また電子線回折でNep3の変調構造の有無を確認したが,ネフェリンが電子線に弱いため,変調構造を示す衛星反射は確認できなかった.
  • 越後 拓也, 山田 裕久, 田村 堅志, 鈴木 達
    セッションID: R2-15
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    Cancrinite [(Na, Ca)6-8(SiAlO4)6(CO3)1.0-1.7• 2H2O] は準長石族の一種であり、3次元フレームワーク構造を持つアルミノ珪酸塩鉱物である。Cancrinite族鉱物の結晶化学的研究は数多く行われているが、陽イオンとしてNaイオンのみを含む結晶 (Na-cancrinite) の構造解析結果は報告されていない。そこで本研究では、Na-cancriniteの良質な単結晶を育成し、単結晶X線回折法による結晶構造の精密化を行った。結晶構造解析の結果、炭酸イオンは動的無秩序分布を示し、水分子は静的無秩序分布を示すことが明らかになった。この結果は、cancrinite構造において、陽イオンの種類と量が陰イオンおよび水分子の挙動にも影響を与えることを示唆する。
  • 長瀬 敏郎, 栗林 貴弘, 山田 亮一, 門馬 綱一
    セッションID: R2-16
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    水晶には産地ごとに、晶相・晶癖の違いが認められ、多くの結晶外形が観察・報告されてきた。このような外形はさまざまな成長段階を経た後の産物であり、成長の環境変化に伴って結晶形態は変化する。このため、形態的特徴を捉えるには、外形だけではなく、各成長段階での形、すなわち、成長縞を観察する必要がある。本研究では、様々な産地・産状の違いによる形態の特徴を捉えることを目的として、水晶の成長縞ならびに内部組織をカソードルミネッセンス(CL)法、エッチング法、および偏光顕微鏡観察法観察し、比較・分類した。内部組織の解析ならびに比較によって、その成長パターンならびに成長組織は4つのタイプに大別した。このようなタイプのちがいは成長時の温度の違いが強く関係していると考えられる。
  • 阿部 利弥
    セッションID: R2-17
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
    会議録・要旨集 フリー
    ここ数年,Li2OやB2O3を添加したCaO-V2O5系のフラックスを使用したアノーサイト合成を行ない,約10x5x2mmのサイズの結晶を得ている.比較的良質の結晶が得られるフラックスは,難水溶性で実験後の結晶回収が困難であった.この問題解決のため,2,3の方法を試行した結果,圧力容器を使用した温水処理が有効であることがわかった.しかしながら,このような処理は時間的なロスが大きい.しかも,結晶成長時間等も考えると,フラックス法以外の合成を検討する必要もあるように思われる.時間的なメリットや加熱温度等を考慮すると,ゾル-ゲル法による合成は魅力的である.本研究では,フラックスとあわせて, TEOSを使用したゾル-ゲル法によるアノーサイト合成の試行を開始した.
  • 磯部 博志, 権藤 貴明
    セッションID: R2-18
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
    会議録・要旨集 フリー
    急冷されたメルト内で成長した磁鉄鉱は,特徴的な樹枝状または骸晶組織を示すことが知られている。本研究では,高温炉中を上昇するガス流によって微粒子に数秒以内での急加熱/急冷却を実現し,特徴的な樹枝状組織を示す磁鉄鉱を含む微粒子を得た。それら磁鉄鉱を含む粒子について,SEM観察及び反射電子線回折法(EBSD)による結晶方位解析を行った。樹枝状磁鉄鉱には,一連の結晶だけではなく,ほぼ一定間隔を隔てて存在している定方位結晶が粒子内のある領域を占めるドメイン構造を形成しているものも存在する。このドメインは粒子全体を占める場合もある。また,粒子表面に規定された方位を示す結晶も存在する。これらは,微粒子の急冷過程においてメルト内に何らかの遠距離相互作用を持つ核形成過程が生じ,それによって一定の周期性と結晶方位を示す一連の樹枝状結晶が成長したことを示すものと考えられる。
  • 吉野 徹, 丸山 浩司, 鍵 裕之
    セッションID: R2-19
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
    会議録・要旨集 フリー
    本発表ではアモルファス炭酸カルシウムの従来知られていなかった結晶化プロセス、圧力による結晶化、「圧力誘起結晶化」について報告する。
  • 牲川 菜月, 北村 雅夫
    セッションID: R2-20
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
    会議録・要旨集 フリー
    オストワルド段階則に従う結晶化を5つの過程に分類して考察した。準安定相の結晶が生じた場合、その結晶表面に安定相が不均質核形成することにより、対称的な立体構造をもつ多結晶ができることがある。準安定相の成長と安定相の核形成とのどちらが起こるかの決定には両相の二次元核の端エネルギーや表面エネルギーの大小関係が関与していることが分かった。また、安定相の核形成は、準安定相の安定相への相転移における核形成と同じ働きをする場合がある。 一方で炭酸カルシウムの合成実験を行い、得られた結晶から結晶化過程を議論した。
  • 北村 雅夫
    セッションID: R2-21
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
    会議録・要旨集 フリー
    多くの原子を含む単位胞からなる現実結晶のキンクはコッセル結晶のものとは異なる性質もつ。平衡濃度は本研究で定義される部分キンクへの脱着から与えうる。部分キンクでのカイネティックな過程についても考察した。
  • 中村 友梨江, 栗林 貴弘, 長瀬 敏郎
    セッションID: R2-P01
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
    会議録・要旨集 フリー
    マリ産の黒色ガーネットを試料とし,薄片観察,化学組成分析,赤外分光,および単結晶X線回折実験を行った.薄片観察の結果,{110}成長分域と{211}成長分域が観察され,どちらの分域も複屈折を示す.化学組成分析の結果,Fe,Al,Tiの組成比が異なる3つの領域がみられた.{211}成長分域は{110}成長分域に比べてFe,Ti含有量がわずかに多く,Al含有量は少ない.赤外吸収スペクトルは構造中のOH-1基の量が3つ領域で異なることを示した.{110}成長分域の単結晶X線回折実験では,空間群Ia3dの消滅則を破る反射(0klkl = 2n+1)が観測され,その対称性は空間群I-1であると推定した.空間群I-1での構造精密化の結果,八面体サイトにおいてFe3+とAlの部分的なorderingがみられ,マリ産ガーネットの低対称化に影響していると考えられる
  • 中村 佳博, 豊島 剛志, Madhusoodhan Satish Kumar, 赤井 純治
    セッションID: R2-P02
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
    会議録・要旨集 フリー
     角閃岩相低温部の変成作用を被った岩石に含まれる低結晶度炭素の生成過程について鉱物学的検討を行った.この低結晶度炭素は,日高変成帯上部相の黒雲母-白雲母片岩から黒雲母片麻岩中の微小破砕帯に分布しているのに対し,変成岩組織中には高結晶度炭素が分布している.分析の結果,低結晶度炭素は最高被熱温度を履歴した結晶度の変化とは異なる特徴を示す.また石墨の結晶構造に変化は確認されず,結晶子サイズが微小になり相対的なエッジ量が増え,ラマン分光の値が変化したと示唆される.これらの結果より,低結晶度炭素の起源は後期の脆性的な変形によって石墨の結晶子サイズが機械的に粉砕され形成されたと示唆される.
  • 小河原 孝彦, 赤井 純治
    セッションID: R2-P03
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
    会議録・要旨集 フリー
    新潟県糸魚川市金山谷産の黒ひすいメランジュブロック境界断層粘土に含まれるGraphiteにGrapgite-2Hの多形であるGraphite-3Rが最大20wt%程度含まれていることが明らかになった。  Graphite-3RはGraphite-2Hをボールミル等で機械的に粉砕すると形成されるとされる。よって、天然環境における断層活動による粉砕メカニズムによって、Graphite-2HがGraphite-3Rへと変化していると考えられる。Parthasarathy et al. (2006) によれば、天然環境でのGraphite-3Rの記載例は片麻岩中で3例あるのみであり、本報告は4例目となる。片麻岩や断層岩中にGraphiteが含まれる地域は国内にも多数あり、現在、Graphiteの結晶化度や形成温度以外として、ポリタイプを含めた結晶構造の変化について検討を進めている。
  • 山崎 悠子, 磯部 博志
    セッションID: R2-P04
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
    会議録・要旨集 フリー
    オパールは、直径数100nmという微小なシリカ粒子が規則的積層構造を作っている。STOBER法によって生成されたシリカ微粒子から、肉眼的スケールでの規則的積層構造を作り、安定した構造体として固定することは難しい。本研究では、飽和水蒸気雰囲気においてシリカ粒子集合体が示す反応について解明を試みた。実験は、100 ºC - 250 ºCにおいてシリカ粒子沈殿物を飽和水蒸気雰囲気に保持することで行なった。シリカ粒子懸濁液を石英ガラス基盤上または一端を閉じた石英ガラス管内に沈殿させ、液相の熱水に触れぬように保持した。実験期間は7日~30日である。、石英ガラス管を用いた実験では、白色懸濁液から肉眼スケールのドメイン構造を持つ遊色組織が得られた。SEM観察により、遊色部に連続した規則的積層構造を確認した。また、シリカ粒子粒間にセメント物質による接続構造が発達しつつあることが確認された。
  • 針生 剛, 有馬 寛, 杉山 和正
    セッションID: R2-P05
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
    会議録・要旨集 フリー
    chrysocollaは潜晶質であるにも関わらず,天然では定比の化学組成を持つ.しかしながら,chrysocollaの生成プロセスについては明らかになっていない.本研究では,出発物質比を変化させたchrysocolla類縁物質をゾルゲル法で合成し,その生成物の構造から天然での生成プロセスについて考察した。ゲルのCu/Si比をICP-AESにより決定し,含水量の推定にはTG-DTAを用いた.構造解析にはXRD,XAFSにて行った.本研究で合成したchrysocolla類縁物質は,Cu/Si≒1で沈殿するプロセスを有しており,余剰成分との混合物として生成されたと言える.天然chrysocollaも同様にクラスターを液相中で形成し,定比の化学組成で沈殿すると考えられる.余剰成分は液相中に取り残され,Cu系鉱物やSiO2 ガラスとして晶出することが考えられる.
  • 矢野 裕美, 木股 三善, 清水 雅浩, 越後 拓也, 星野 美保子
    セッションID: R2-P06
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
    会議録・要旨集 フリー
    含水希土類-有機酸塩鉱物の生成条件と、結晶構造の違いによる希土類元素の選択性の解明は、有機分子の存在環境下での希土類元素の挙動を予測するために、必要不可欠と考えられる。本研究では結晶構造の違いによる希土類元素の選択性の解明を目的として、希土類-シュウ酸塩鉱物の結晶合成とその単結晶構造解析を行った。現在、水熱合成法でLa, Ce, Nd, Sm, Gd, Tb, Dy, Y等の含水シュウ酸塩結晶の合成に成功し、このうちLa-シュウ酸塩(La2(C2O4)3•10H2O)では、約100ミクロンの良質な単結晶が生成された。本結晶の室温での結晶構造は水分子の位置が未決定である(Huang et al., 1991)ため、水素の熱振動を抑制するために低温でのその場観察単結晶構造解析を行った。その結果、室温測定では決定できなかった結晶構造中の3つの水素と5つの水分子を構成する酸素の占有席が解明された。


  • 眞岩 幸治, 中村 博昭, 木村 秀夫
    セッションID: R2-P07
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
    会議録・要旨集 フリー
    水溶液成長するNiSO4·6H2Oの多形(6β, 6α相)をその場観察し、組織形成に対する成長・溶解速度の影響を明らかにした。二多形と包晶関係にあるNiSO4·7H2O(7相)の分解溶融を利用して二相に対して過飽和状態を部分的に作り出し、多形転移温度上下での二相の成長を観察した。転移温度以上では二相同時成長するが、安定な6β相の成長は準安定な6αより速く、前者が後者を包有物として取り込む。一方転移温度以下でも二相は成長するが、接触すると準安定な6β相が部分的に溶解し、安定な6α相だけとなる。二相の成長表面が飽和濃度に等しいとすると、接触部分はそれらの中間濃度、つまり安定、準安定相に対してそれぞれて過飽和、不飽和となる。この時安定相の成長速度>準安定相の溶解速度であれば、安定相は準安定相を包有物として保持し、逆の場合は多形間でのライプニングが進み、安定相単相となると考えられる。
  • 川野 潤, 寒川 義裕, 永井 隆哉
    セッションID: R2-P08
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
    会議録・要旨集 フリー
    結晶成長における原子レベルでの素過程を考察するための有効な手法として、成長表面の第一原理計算がある。本発表においては、このような計算手法を紹介するとともに、実際の応用例を報告する。結晶成長時に現れる表面は、バルク結晶をある平面で単純に切断した構造になるとは限らず、原子が移動して再配列した構造が安定になることが多い。そのため、本研究ではまずある成長条件下で安定な表面構造を解析したのち、出現可能な表面に存在するサイトに原子を置換してそのエネルギーを計算することで、結晶への原子・分子の取り込み過程を考察した。さらに、結晶中における種々の欠陥の安定性を考慮すれば、不純物元素の取り込み/凝縮過程を示すことができる可能性がある。
  • 大藤 弘明, 竹田 侑平, 鍵 裕之, 福良 哲史
    セッションID: R2-P09
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
    会議録・要旨集 フリー
    バラス(ballas)は,中心から放射状に伸びた柱状結晶により構成される球状の多結晶ダイヤモンドである.結晶成長理論に基づくと,そのバラスの形態そのものが,高い成長駆動力下での急速生成を示唆しているが,その成長環境や生成のメカニズムは未知である.そこで発表者らは,地球深部におけるバラスの起源に迫るべく, EBSDを用いた結晶方位解析とTEMによる微細組織観察,包有物の記載を中心に研究を進めている.結晶方位分析の結果,バラスにおける多結晶の集合状態には,[110]へ慎重した柱状結晶の放射状集合から,単結晶様のものまで,様々なバラエティがあることが分かった.バラスにおけるこれらの結晶集合組織のバラエティは,生成環境中での成長駆動力の大きさを反映したものと推測される.
  • 下林 典正
    セッションID: R2-P10
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
    会議録・要旨集 フリー
    天然に産する水晶の形状は、主に錐面(r:{10.1},z:{01.1})と柱面(m:{10.0})で囲まれており、底面(c:{00.1})の出現は極めて稀である。例外的に、米国アリゾナ州Four Peaks産のアメジストなど、限られた産地から底面をもつ水晶の産出が知られており、当地のアメジストについてはカソードルミネッセンス(CL)観察により、溶解によって底面が生じたことが示されているが(Kawasaki et al, 2006)、このような観察例は極めて乏しいのが現状である。本研究では、大阪府長谷産の高温石英のCL観察の結果、溶解ではなく成長の過程で底面が出現している組織が確認されたので報告する。
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