日本鉱物科学会年会講演要旨集
日本鉱物科学会 2017年年会
選択された号の論文の197件中1~50を表示しています
S1:火成作用に関する物質科学の新展開(スペシャルセッション)
  • 松本 恵子, 中村 美千彦
    セッションID: S1-01
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    桜島大正噴火の軽石と火砕成溶岩中に,はしご状(ladder type)の組織をもった磁硫鉄鉱(Po)の酸化分解生成物(magnetite,Mt;hematite,Hm)を見出した.この組織はPoの加熱実験でも観察され(Thornhill and Pidgeon, 1957),Po-気体間の反応を示唆する.先行研究(e.g., Dunn and Chamberlain 1991)からladder type酸化組織の形成メカニズムを推定した:(1)Poが気体O2と反応しMtと気体SO2を生成(2) SO2はPoの結晶構造に沿って空隙を形成(2’)MtはO2と反応しHm生成.(2)において,大気のような気体O2存在環境下では,空隙を通してSO2排出と気体O2の供給が瞬時に行えるので,Po-Mt境界の表面反応律速過程となり,反応開始点から瞬時にMtが生成する.これは,大気接触を経験している両噴出物にladder typeの酸化組織が見られたことと整合的である.Poのladder type酸化組織は噴出物の大気接触の有無を判定する指標となるため,破砕マグマへの大気の混合過程の理解に繋がる.
  • 黒田 みなみ, 橘 省吾, 坂本 直哉, 圦本 尚義
    セッションID: S1-02
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    火山の脱ガス過程や噴火様式は,気泡とメルト中の水との間でおこなわれる同位体交換反応を通じ,水素同位体比に記録される.水素同位体の挙動は,脱ガス様式の違いに加え,拡散や同位体交換反応によっても変化する可能性があり,素過程からの理解が重要となる.本研究では,ケイ酸塩ガラス中の水の同位体交換反応を理解するために,ケイ酸塩ガラスの骨格構造を形成するSiO2組成をもつ石英ガラスに対し,H2OとD2Oを用いた水素同位体交換反応をおこない,水素同位体プロファイルを二次イオン質量分析計で測定した.
    同位体交換実験で得られたH,Dの濃度プロファイルは誤差関数でフィッティング可能であり,拡散係数一定の拡散により,含水ガラス中の水素同位体交換反応がおきていることが示唆された.また,得られた拡散律速の同位体交換速度は,全温度範囲でH2OのほうがD2Oよりも1.5~2倍ほど速いことがわかった.
  • 中田 亮一, 佐藤 雅彦, 潮田 雅司
    セッションID: S1-03
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    天然の斜長石中には離溶マグネタイトがしばしば含まれている事が知られている.離溶マグネタイトは深成岩中にミクロンサイズ以下のマグネタイトを晶出する特異なプロセスであり,古地磁気情報の記録媒体,地殻深部に存在する磁気異常ソースとして注目を集めている.しかし,離溶マグネタイトに関する研究は少なく,その晶出メカニズムは未解明である.本研究では,マグネタイト離溶条件決定を目指し,複数の分析手法による斜長石単結晶試料の鉄科学種分析を行う.
  • 浜田 盛久, 木村 純一, 常 青, 羽生 毅, 牛久保 孝行, 清水 健二, 伊藤 元雄, 小澤 恭弘, 岩森 光
    セッションID: S1-04
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    現在,我々は同一のメルト包有物から多元素・多同位体比の情報を得ることにより,地球内部の物質循環を解明する研究を進めている.この研究の一環で,南太平洋のクック・オーストラル諸島にあるラロトンガ島の玄武岩中のカンラン石メルト包有物の鉛同位体比を高精度に局所分析したので,ここに予察的な結果を報告する.分析は,フェムト秒レーザーを用いたレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICP-MS)によって行われた.この分析法では,濃度<10 ppmという鉛濃度の低い試料の鉛同位体比を,クレーター径・深度約30 μmで高精度に分析することが可能である.このため,同一のメルト包有物から更に主要元素や微量元素の分析を行うことが可能である.
  • 高澤 栄一, 谷 雅史, 田村 芳彦
    セッションID: S1-05
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    V/Sc比およびZn/Fe比はアセノスフェアの酸化還元状態を凍結する指標として有効である。マントルが酸化的な状態下で部分溶融をすると,還元的な場合よりも溶け残りかんらん岩のV/Sc比は小さくなり,Zn/FeT比は大きくなる。オマーンオフィオライトのマントルセクションのハルツバージャイトのV/Sc比は2.5-5.5で,Zn/FeT比は7-10であった。V/Sc比とZn/FeT比は,各岩石のdelta logfO2 (FMQ) とそれぞれ負および正のよい相関を示し,酸化還元状態の傾向は一致する。さらに,V/Sc比とZn/Fe比はお互いに負の相関を示し,高V/Sc & 低Zn/Feのものは酸化的,低V/Sc & 高Zn/Feのものはより還元的な傾向を示す。これらのかんらん岩全岩のREE量は,酸化的なものほどLa量は高く,Yb量は低くなる傾向を示す。この関係は,マントルウェッジ内のフラックス溶融の結果を反映している可能性が考えられる。すなわち,沈み込んだスラブから酸化的な流体がもともと還元的なマントルウェッジに流入し,フラックス溶融を引き起こし,溶け残りかんらん岩に酸化的な状態を記録した。
  • 松井 智彰, 丸本 啓介, 中村 美勇, 戸髙 京介
    セッションID: S1-P01
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    本研究では,桜島の火山灰を採取して主要な構成鉱物である斜長石の構造状態の長期モニタリングをおこない,桜島火山直下でのマグマの活動に関してより精密に議論するための基礎データを蓄積し,鉱物科学的に火山灰構成鉱物の結晶構造から火山活動を監視するための効率的な調査方法を確立することを目的とする.火山灰試料は,桜島南岳昭和火口の南西約4 kmに位置する鹿児島市立東桜島中学校にて採取した.採取期間は平成25年5月4日から約2年2ヶ月間で,火山灰試料から磁石を用いて磁性鉱物を取り除いた後,粉末化した試料について,粉末X線回折装置(CuKα線)を用いて2θが21˚~33˚の範囲をより精密な条件で測定し,斜長石の構造状態を推定するために必要な回折線データを得た.その結果から,Scheidegger (1973)に従って面指数 (1-11),(-201),(131),(220),(1-31)に対応する回折線の角度(2θ)から ΒとΓを求めた.斜長石は時間変化とともに全体的に灰長石成分に富む方向に化学組成が変化している傾向が確認され,秩序度は以前より狭い範囲に収まる傾向が窺える。
  • 越後 拓也, 西間木 志野, 星野 美保子, 木股 三善, 清水 雅浩, 齋藤 静夫, 西田 憲正
    セッションID: S1-P02
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    An成分(CaAl2Si2O8端成分) に富むCa-rich斜長石で、粒径が1cm以上の粗粒な斜長石斑晶は「灰長石巨晶」と呼ばれ、日本列島の玄武岩~安山岩に多数産出する特徴的な鉱物である。今回、日本列島の背弧に位置する佐渡島小木半島に産する灰長石巨晶から揮発性成分に富むメルト包有物を発見したので、その分析結果を報告する。メルト包有物をFE-EPMAで分析した結果、SiO2量は48–56%の範囲を示し、Cl量は0.01–0.12%の範囲を示した。また、メルト包有物中のSiO2量とCl量は正の相関を示していた。塩素に富むメルト包有物は沈み込み帯の火成活動を特徴づける存在であり、その起源は沈み込むスラブからマントルウェッジに供給されたものと考えられている (e.g., Wallace 2005)。本研究の分析結果から、佐渡島小木半島に算出する灰長石巨晶は、沈み込むスラブから離脱した揮発性成分に富む環境で結晶化した可能性が示唆された。
  • 吉村 俊平
    セッションID: S1-P03
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    To understand the controls on the fluid compositional distribution in the crust, a thermodynamic model, which simulates the most stable distribution under pressure and temperature gradients, was established. NaCl solution was used as the representative of the crustal fluid. The model showed that the salinity increases with depth, and the salinity gradient is positively dependent on the temperature gradient. The calculation result was compared with natural salinity distribution of sedimentary fluids, and the calculated profiles are roughly consistent with natural data.
  • 石井 慶佑, 高澤 栄一, 田村 芳彦
    セッションID: S1-P04
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    オマーンオフィオライト南部Wadi Tayin岩体のマントルセクションかんらん岩を用いて鉱物化学組成を検討した。かんらん岩に含まれるクロムスピネルのCr# [=Cr/(Cr+Al) atomic ratio]をWadi Tayin岩体の地質図上にプロットすると,ハルツバージャイトでは基底部側からマントルセクション最上部に向かって大局的に増加する傾向が見られる.ダナイトは基底部やマントルセクション内部の剪断帯付近の一部にCr#>60の高い値を示す試料が存在する.また,単斜輝石の微量元素組成のCe/Yb存在比は,かんらん岩のフラックス溶融の傾向を示している.また,微量元素のC1コンドライト規格化パターンから,高いスピネルCr# (=0.68) を示すダナイトのCpxには,NbやTaのようなHFS元素に負の異常が見られる.これはマントルウェッジを上昇した流体は基底部からもたらされたスラブ脱水流体である可能性を示唆している.
S2:岩石—水相互作用(スペシャルセッション)
  • 河上 哲生, Harley Simon
    セッションID: S2-01
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    東南極リュツォ・ホルム岩体明るい岬では角閃岩と角閃石片麻岩の境界や角閃石片麻岩中のレンズとして、コーネルピン―斜長石―コランダム岩が産する。同レンズ中のコーネルピンとプログレード電気石、レトログレード電気石のB同位体組成をSIMSで決定した。プログレード電気石のδ11B値は白雲母の脱水にともなって形成された変成電気石の値よりも少し高い。一方、MORBやマントルの値と矛盾はなく、世界各地でみられる高圧変成岩の減圧時に形成されたblackwallの電気石が示す値に近い。したがって、同レンズへのホウ素の濃集には、海洋プレートの脱水によって放出された流体が関与していた可能性がある。
  • 最首 花恵, 岡本 敦, 大坪 誠
    セッションID: S2-02
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    Quartz dissolution-precipitation could control spatial and temporal change of permeability in the Earth’s crust. However, the relationship between the Water-Rock Interaction and the seismic cycle is still unclear. In this study, our “CRACK model” reveal that the timescales of the formation of a quartz vein and the recovery of permeability correlate to the extensional stress period and the recurrence interval of mega-earthquakes in the Nankai Trough, respectively.
  • 土屋 範芳, 清水 正太, 山田 亮一
    セッションID: S2-03
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    超臨界地熱貯留層は,従来型の地熱貯留層よりもより高温(より深部)での地熱貯留層であるため,花崗岩-斑岩とこれに認められる熱水活動の痕跡について検討を行ってきた.花崗岩-斑岩システムは,超臨界地熱貯留層のナチュラル・アナログ研究として考えることができ, 完晶質岩(花崗岩)や斑岩内に認められる鉱物充填脈の産状を観察して,超臨界地熱貯留層で想定されるき裂形成とそこでの流体流動について検討することができる.
    本発表では,野外調査と室内実験から,高温珪化(超臨界珪化作用)の実態について明らかにし,地殻の透水性が地下学反応により制約されている実態を野外の検討から明らかにする.
  • 大柳 良介, 岡本 敦, 土屋 範芳
    セッションID: S2-04
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    Hydrothermal experiments were carried out in olivine–quartz–H2O system. By using unique tube-in-tube type hydrothermal experiments vessel, spatial and temporal data were obtained.
    The observed mineral distribution was modeled by reaction-diffusion equation. To model our experiments, we set eight unknowns. However, this optimization problem on such many parameters would have several local minimums or broad minimum. Here, to overcome this problems, we use an optimization algorithm of the exchange Monte Carlo method rate law during serpentinization will be discussed.
  • 奥山 康子
    セッションID: S2-05
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    深成岩体に伴う接触変成帯にて,固結するマグマからの流体浸透と熱輸送がなかったかを,田野畑累帯深成岩体(北部北上山地)に伴う接触変成帯にて検討した.地質構造上岩体側面に当たる接触帯では,泥質変成岩の全岩酸素同位体比は非変成泥質岩と同様の値で,深成岩体からの距離に応じた変化もなく,広範な流体浸透は起きなかったと考えられる.岩体上部のルーフペンダントでは,最高温部の鉱物帯(ざくろ石 - 菫 青 石帯)で全岩酸素同位体比の低下が認められ,深成岩起源の流体の関与が考えられる
  • 奥地 拓生, プレジャブ ナランゴー, 富岡 尚敬, 柴田 薫
    セッションID: S2-06
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    地球の水は海洋に加えて、地殻やマントルにも含水鉱物として多量に存在する。これらの含水鉱物には、一定量のOH基があって初めて安定な構造と、既存の陽イオンとH+が不定比で交換する構造がある。前者は浅い場所、後者は深い場所で安定な場合が多い。この二種の構造内の水素の配置と輸送を、原子スケール空間分解能で観察することで、それぞれの内部での吸水反応、脱水反応、水素イオン輸送の過程と速度を決定し、さらには予言したい。そのために中性子回折と準弾性散乱を組み合わせた解析を進めている。我々はこれまでに、550 Kまでの温度におけるブルーサイト(前者)、高密度含水マグネシウムケイ酸塩・phase E(前者)、含水ワズレアイト(後者)の準弾性計測に、いずれも初めて成功した。これらの結果を各含水鉱物の水素配置とも比較検討しつつ議論する。
  • 天谷 宇志, 岡本 敦, 平野 伸夫, 最首 花恵, 土屋 範芳
    セッションID: S2-07
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    地殻流体の減圧沸騰は、鉱脈鉱床やシリカスケールを形成する。Weatherley and Henley(2013)は、断層形成による流体急減圧(Flash vaporization)での金鉱化説を提案しているが、急減圧による高過飽和状態でのシリカの析出と鉱脈形成との関係は研究されていない。研究目的は、Flash Vaporizationによるシリカ析出メカニズムと熱水鉱床との関係を実験的に明らかにすることである。オートクレーブにシリカ過飽和流体を入れ、30MPa, 250℃~450℃からバルブを開け急減圧させた。流路上のアルミナフィルタで析出物を回収し観察した。流体は、数秒で液相・超臨界から気相へ変化する。析出物は1-3 µmほどの非晶質シリカの球状粒子で、これは結晶成長時間の欠如の結果と思われる。減圧後の溶液のシリカ濃度は、気相の溶解度ではなく、飽和蒸気圧曲線上の溶解度の範囲にプロットされるが、超臨界状態からの減圧では、シリカ濃度は超臨界状態での濃度から変化しない。この結果は、非晶質シリカ粒子が流体急減圧で形成され、鉱脈やシリカスケールの形成をもたらし、析出には水の相変化が重要であることを示す。
  • 藤本 光一郎
    セッションID: S2-08
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    粘土‐水系のコンシステンシー特性は地盤工学の分野では重要な指標となっている.特にモンモリロナイトは雲母やカオリナイトなどに比べて高い含水比まで,水を保持して塑性体で存在しうる.本研究ではモンモリロナイトを対象に含水比と粘度,非晶質化のされやすさの関連を考察する.含水比の増加とともに降伏応力,粘性係数が低下し,降伏応力が1 kPa程度で液状化した.これはコンシステンシー特性と調和的である.また,塩濃度が2%を超えると液性限界が200%程度に大幅低下し,わずかな塩濃度変化,含水比変化で強度弱化の可能性が示唆された.また,遊星型ボールミルを用いた粉砕実験を行い,粉砕前後のX線回折と電顕観察,赤外分光分析を実施した.含水比が0%および25%の場合は数時間の粉砕で非晶質化が進行したが,それ以上の含水比になるとほとんど非晶質化が進行しなかった.さらに600%以上になると再び非晶質化がみられた.この変化もコンシステンシー特性の変化や粘度,降伏応力の変化とも調和的である.含水比とコンシステンシー特性はモンモリロナイトを多く含む断層ガウジの力学特性を考えるうえで重要な視点である.
  • 迫田 夜空, 山本 貴史, 安東 淳一, 富岡 尚敬, 芳川 雅子
    セッションID: S2-09
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    1991年に噴火したピナツボ火山から噴出した、ピナツボカンラン岩ゼノリスの微細組織観察を行い、ピナツボ火山下の上部マントルでの変形条件を推定した。結果は含水条件であった。
  • 矢野 実, 磯部 博志
    セッションID: S2-P01
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    olivineは熱水流体に対し高い反応性を示す。特にfayaliteは酸化還元条件に規定される鉄の挙動と熱水条件におけるSiの挙動によって多様な溶解/溶脱組織を示す。C及びCO2が存在する硫酸酸性熱水条件下でfayaliteが溶解する際に粒子表面に形成される組織と, その形成条件を解明することを目的とする実験を行った。
    fayalite粒子は表面から概ね粒子の形状に沿った反応層/不均質な溶脱層を形成していた。反応層では,fayaliteの結晶方位に依存していると思われる繊維状の構造が観察された。この組織を示す部分には,出発物質と同程度のMnを含む部分とMnをほとんど含まないFeに富んだ組成の部分が存在する。pH1の硫酸酸性溶液を用いた実験では, 特徴的な生成物としてgoethiteであると考えられる針状のFe-oxide微粒子が生成された。硫酸に富むpH1の条件では, graphiteが存在していてもgoethiteが形成されるが, それ以外の条件では表面層の形成過程においてFe2+の酸化が妨げられていると考えられる。
  • 原田 英和, 安東 淳一, Das Kaushik
    セッションID: S2-P02
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    北九州市小倉南区に露出する平尾石灰岩層の詳細な露頭観察を行った。接触変成作用により粗粒化した方解石の粒径は、接触変成作用の熱源と考えられる、東部に露出する平尾花崗閃緑岩に近いほど大きくなるという傾向が明確に認められた。調査地域北部の露頭では、周囲の粒径分布(約2 mm)と不連続な局所的な粒成長領域が確認でき、粗粒な方解石(3-4 mm)で構成される脈が多く存在していた。この領域では、地殻流体の影響による局所的な粗粒化が生じていると考えている。
  • 山下 誠矢, 向井 広樹, 鍵 裕之, 鈴木 庸平
    セッションID: S2-P03
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    海洋地殻上部の玄武岩溶岩は海水との反応により元素循環に大きな影響を与えている.我々の研究グループは,自由水の存在を示唆する微生物が約100 Maの玄武岩溶岩の空隙中に生息していることを発見した.本研究では、微生物細胞の周辺の粘土鉱物が存在を明らかにし,その粘土鉱物の同定を目的とした.形成年代84-120 Maの玄武岩基盤のコアのうち,微生物細胞が見つかった2試料の薄片から微生物細胞近傍の超薄片を切り出し,エネルギー分散型分光装置(EDS)搭載の透過電子顕微鏡(TEM)で化学組成と回折パターンを測定した結果,微生物周辺の二次鉱物はKを含みFeに富む粘土鉱物であることがわかった.亀裂中の粘土鉱物をコア試料から水ひで回収し,粉末X線回折法でd001d060の値を測定した結果,両試料の粘土鉱物はノントロナイトであることがわかった.両試料のノントロナイトの化学組成をTEM-EDSで測定すると,微生物細胞近傍の粘土鉱物と近い組成を示した.以上の結果から,微生物が生息する玄武岩の亀裂中で現在でも海水との反応が進み,>10 Maの海底玄武岩溶岩が元素の地球規模の挙動に影響を及ぼしている可能性が示された.
  • 永冶 方敬, 岡本 敦, ウォリス サイモン, 大柳 良介, 武藤 潤, 宇野 正起
    セッションID: S2-P04
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    変泥質片岩と含アンチゴライト蛇紋岩の境界に産する滑石片岩に対してEBSD による滑石の方位マッピングを行った結果、 (001)面の法線が面構造に垂直な方向に強く集中する滑石のCPOが得られた。また[100]は線構造に平行な方向に最も強く集中し、また[010]方向が面構造に平行かつ線構造に垂直な方向に最も強く集中する。
  • 秋藤 哲, 野坂 俊夫
    セッションID: S2-P05
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    南西インド洋海嶺近傍のAtlantis BankにおいてIODP Expedition 360で採取された斑レイ岩類の変質鉱物のうち,今回新たに発見したMg-Fe雲母(biotite/aspidolite)の産状と化学組成について報告する。この雲母の多くは,初生カンラン石の周囲に生じたコロナ状の緑色および淡緑色~無色の角閃石と共存しており,緑泥石との混合層を形成している可能性がある。その分布と鉱物組み合わせから,Mg-Fe雲母の成因は,珪長質脈と関連した交代作用にあると考えられる。
S3:放射光X線と中性子線の鉱物科学への応用(スペシャルセッション)
R1:鉱物記載・分析評価
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