日本鉱物科学会年会講演要旨集
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選択された号の論文の197件中1~50を表示しています
S1:火成作用の物質科学(スペシャルセッション)
  • 石橋 秀巳, 諏訪 由起子, 三好 雅也, 安田 敦, 外西 奈津美
    セッションID: S1-01
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    9万年前に阿蘇火山で発生したAso4火砕流のうち,最初で最大のユニットである4I-1火砕物中に含まれる角閃石について化学分析を行い,角閃石温度計・メルトSiO2計を適用して,共存メルトの温度・SiO2量を見積もった.その結果,温度が900-970℃,SiO2が68-57wt.%の結果を得た.ただし,950-965℃,60-63wt.%SiO2の領域にギャップがみられる.いずれの温度・SiO2量条件も,ホスト相である4I-1メルトについて見積もられた温度・SiO2量(~830℃,~70wt.% SiO2)よりも高温・低SiO2量であり,角閃石‐ホストメルト間で非平衡が生じていたと考えられる.角閃石は,個々の結晶中で均質であり,リムに成長/分解の痕跡が見られない.このことは,噴火直前に角閃石が4I-1メルト中に取り込まれたことを示唆する.高温の角閃石は,Aso4後期に噴出するより苦鉄質なマグマ中によくみられることから,その成因は苦鉄質マグマの貫入に関係する.一方,低温の角閃石は4I-1メルトだまりと隔離されたクリスタルマッシュに由来し,噴火直前にマッシュの部分崩壊が発生した可能性がある.
  • 上木 賢太, 乾 睦子, 岡本 直也, 松永 健太
    セッションID: S1-02
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    本研究では、草津白根山の溶岩に含まれるシンプレクタイトに着目して、マグマ混合プロセスを論じた。殺生溶岩全体から試料を採取し、斑晶の記載および化学組成分析を行った。斑晶は、両輝石、斜長石、オリビン、磁鉄鉱、そして、輝石と磁鉄鉱で構成されるシンプレクタイトからなる。平均組成やストイキオメトリーから、このシンプレクタイトはオリビンが起源であることが分かる。シンプレクタイト化の度合いおよび元素の拡散プロファイルから、シンプレクタイト化反応は、オリビン→オリビン+輝石反応縁→オリビン+シンプレクタイト+輝石反応縁→シンプレクタイト+輝石反応縁の順序で進行したことが分かった。シンプレクタイト化は、マグマ混合による、苦鉄質端成分マグマ内での酸素雰囲気の上昇によって生じたと考えられる。様々な反応進行度のオリビンが共存していることから、草津白根山地下では安山岩マグマだまりへの繰り返しの玄武岩質マグマの注入があったことが示唆される。
  • 奥村 翔太, 松野 淳也, 土`山 明, 三宅 亮, 無盡 真弓
    セッションID: S1-03
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    新燃岳2011年噴火噴出物からOpx層にAugが(100)面で接合する複合輝石が発見された。しかし詳細な記載は十分でない。本研究では、複合輝石の詳細な記載を行い、形成過程を解明し、粒子形状と噴火様式の関連を明らかにすることを目的に研究を行った。新燃岳2011年噴火噴出物に対し、SEM-EDS、EBSD、放射光X線CTを用いた複合輝石の詳細観察の後、異なる噴火様式の軽石についてSEM観察で輝石粒子の形状・粒径分析を行った。結果、全サンプルで複合輝石が観察された。複合輝石は同心状のAl-累帯構造を持ち、Opx層が突出または離溶とは考えにくい厚さの粒子が存在した。従ってOpx粒子の(100)面にAugがエピタキシャル成長したと推測される。その組成は輝石斑晶のリムと類似した。さらにMg/Fe 及びAl濃度の複数回の増減を示す粒子が存在し、複数回マグマ混合を経験したと考えられ、複合輝石はマグマ溜りでも晶出し得ると推測される。また噴火様式によって晶相が異なり、その違いはサブミクロンの粒径で顕著に現れた。この違いは停滞時間だけではなく、他のパラメータの噴火様式による差異を反映していると考えられる。
  • 無盡 真弓, 中村 美千彦
    セッションID: S1-04
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    火山の噴火ダイナミクスにとって重要であるとともに鉱物学的にも未踏の領域であるマグマからの核形成・初期成長過程を明らかにするために,FE-SEM(JEOL JSM-7100F, Protochips Aduro加熱ステージ)を用いてその場観察実験を行い,Fe-酸化物の結晶化過程を観察した.出発物質には石基にほとんどマイクロライト・ナノライトを含まない桜島の大正噴火の軽石を用いて,10°C/sで加熱し,950°Cで温度一定に保ちながら,含水ガラスの脱水結晶化を観察した.その結果,粒子の合体とその後の形状変化において,これまでに水溶液系で観察されたものと類似する非古典的な核形成・成長過程が観察された.ケイ酸塩メルトにおいても,多様な結晶成長経路で結晶化が起こっていると考えられる.
  • Ekky Reno Priyambodo, Mayumi Mujin, Michihiko Nakamura, Sarina Sugaya ...
    セッションID: S1-05
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    In volcanic rocks, amount of magnetite chiefly changes their magnetic susceptibility behavior. The modal composition of magnetite presumably decreases in post-magmatic processes such as high-temperature oxidation and hydrothermal alteration. This study suggests that magnetic susceptibility is a possible indicator to identify post-magmatic processes and increased proportion of juvenile components when a pure eruption magmatic phase is approaching, on condition that the modal compositions of magnetite phenocryst are constant.
  • 井村 匠, 大場 司, 堀越 賢太
    セッションID: S1-06
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    本研究では吾妻火山完新世火砕堆積物中の非本質火山灰について岩石学的観察を行った.分析試料はそれぞれ,Az-JPA,Az-JPB,Az-OA,Az-JPC,Az-JP7から採取した.バルクXRD分析では,Az-OA以前の試料はスメクタイト,カオリン鉱物の明瞭なX線ピークを示し,Az-OA以降の試料は斜長石,輝石,角閃石族鉱物の強いX線ピークを示した.SEM-EDSによる試料観察から以下のことが明らかになった.Az-OAの試料は酸性変質した火山灰粒子に富み,多くは珪化岩およびシリカ鉱物,カオリン鉱物,パイロフィライトを伴う高度粘土化変質岩である.イライト,セリサイト,黒雲母,緑泥石,カリ長石を伴う中性熱水変質岩も産する.対して,Az-JP7の試料は極めて結晶度の良い未変質な安山岩片を多く含む.石基は石英およびアルカリ長石を伴うインターサータル組織を示す.以上より次の進化モデルが考えられる.Az-OA噴火以前には地下に累帯する変質帯が発達していた.そしてAz-OA噴火時に貫入したマグマが地下浅部で固まり溶岩プラグを形成し,この後の噴火ではプラグが破壊されて半深成岩的な岩片が放出された.
  • 南 一輝, 上木 賢太, 飯塚 毅, 榎本 三四郎, 田中 宏幸
    セッションID: S1-P01
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    近年地球ニュートリノを用いて核・マントル中のウラン・トリウム(U-Th)量を推定する研究が急速に進展している (The KamLAND Collaboration, 2011) 。ただし、現在推定されるU-Th量は大幅な不定性を持つ状況であり(Takeuchi et al., in preparation)、原因のひとつとして、単一の岩体内での化学組成のばらつき度合いが定量的には理解されていないことがある。そこで、このようなばらつきを様々な空間スケールで理解するために、単一の岩石サンプル内での元素分布や化学組成のサンプルサイズ依存性の検討を行った。
    調査地域は茨城県笠間市に分布する稲田花崗岩である。分析手順として、約500gの岩石サンプルを、一辺約2 cm(約25g)の立方体に細分して、全岩化学組成の分析を行った。 
    分析結果から、例えばSiO2では単一の岩石ブロックを分割した9個の立方体試料間で、73~77 wt%の幅が見られた。この結果から、10cm程度といった非常に小さな空間スケールで組成のばらつきが存在することが分かった。
  • 萩原 雄貴, 山本 順司
    セッションID: S1-P02
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    本研究ではCO2のラマンスペクトルの2つの大きなピークの波数差 (Δ) が常温で密度に依存することを利用した.この手法では±0.001 g/cm3の精度で密度を測定可能であるため本研究に最適である.しかし,Δの温度依存性に関して対立した主張が存在するため高温条件下では利用できない.そこで本研究ではマントルゼノリス中のほぼ純粋なCO2流体包有物を利用してΔ の温度圧力依存性を調査し,以下の3つの知見を得た.1) CO2のラマンスペクトルの温度依存性に関する対立する2つの主張は,CO2の密度の違いを考慮に入れると統一的に説明可能である.2) 波数分解能が0.1 cm-1程度のラマンシステムでは少なくとも1%の流体密度の変化を測定可能である.3) CO2流体が高密度である程より正確に流体の密度変化を測定できるということである.更にこのラマン分光分析に基づく手法とマイクロサーモメトリーを組み合わせれば密度変化の測定精度は0.01%オーダーにまで向上するため,このその場密度測定手法により流体包有物の再平衡過程に関して更に高度な議論が可能となる.
  • 黒田 みなみ, 橘 省吾
    セッションID: S1-P03
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    ケイ酸塩ガラス中の水の拡散について,任意ガラス組成に応用可能な水の拡散モデルを,pre-exponential factorのガラス組成依存性に注目して構築した.水の拡散係数のpre-exponential factorは,主に水分子の振動数・水分子のジャンプの距離に依存し,ガラス組成によらず似通った値になると予測される.本研究では,このpre-exponential factorの組成依存性は,水の拡散に必要な活性化エネルギーが,ガラス構造に依存するために生じると考えた.ガラスに含まれる水や修飾体イオンは,ガラスの構造を変化させ,水の拡散に必要な活性化エネルギーを下げると予測される.ガラス中の水の拡散モデルに,このガラス構造変化の効果を考慮すると,pre-exponential factorのガラス組成依存性は小さくなり,任意ガラス組成中の水の拡散係数は,同一の分子メカニズムで説明可能であることが示唆された.
S2:岩石—水相互作用(スペシャルセッション)
  • 土屋 範芳, 宇野 正起, Fajar Amanda
    セッションID: S2-01
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    超臨界地熱貯留層を形成する流体は,主としてスラブの脱水によると推定されるが,スラブの脱水が最終的に地殻に対してどの程度の流体の供給をしているかは,沈み込み帯全体での水の循環(物質収支)から考える必要がある

    下部地殻においては,珪長質メルトの貫入に伴う被貫入岩体の変成作用の結果生じた加水作用から,メルトから供給される流体量と,被貫入岩体をとりこんだ(加水した)量を求め,より上部の地殻に供給可能な流体量を予測した.東南極 セールロンダーネ山地のグラニュライト相での解析からメルト中のH2O含有量(5.6-5.0 wt %)のうち,3.7wt%が被貫入岩でトラップされ,残りの1.9-1.3wt%が系外に排出される(Uno et al., 2017).

    上部地殻においては,火山とカルデラを対象に,カルデラ充填物の中のメルト包有物の解析から,マグマの減圧に伴いマグマ系外に排出される流体量を見積もり,カルデラ内に供給される流体量を,15 ton/year/meterと推定している.
  • 川本 竜彦, 辻森 樹, 進士 優朱輝, ソフィア アヤノ
    セッションID: S2-02
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    蛇紋岩体中に炭酸塩岩化した部分が存在することがある。主な構成鉱物は炭酸塩鉱物、滑石、石英で、岩石名リストヴェナイトと呼ばれる。Sophiaたち(2017 IGR) は、エチオピア西部の新原生代の変成堆積岩に伴う蛇紋岩とリストヴェナイトを報告し、付加体中の超苦鉄質岩体が広域変成作用を被る前に、炭素を含む熱水流入により炭酸塩岩化したと提案した。そのマグネサイト中には気相と液相からなるprimaryな流体包有物が多く存在する。顕微ラマン分光法により、流体相は塩水と同定した。さらに、マイクロサーモメトリー法と呼ばれる顕微鏡下で加熱冷却ステージを用いて流体包有物中の氷の融解温度を決定する手法で、流体中の塩濃度を推定し(2.3% NaCl)、気相と液相の均質化温度を209℃と求めた。その結果、蛇紋岩と海水が反応し炭酸塩岩化する仮説を提案する。海水程度の炭素含有量を持つ熱水と反応し、蛇紋石がマグネサイトと滑石、さらに滑石がマグネサイトと石英になりうる(Falk & Kelemen 2015 GCA)。付加体に取り込まれた蛇紋岩が210℃程度の条件で、海水起源の熱水と反応し炭酸塩岩化したと推定できる。
  • OTGONBAYAR DANDAR, ATSUSHI OKAMOTO, MASAOKI UNO, NORIYOSHI TSUCHIYA
    セッションID: S2-03
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    Hydration and metasomatism of mantle wedge are thought to cause drastic changes of mechanical properties of plate interfaces. In this study, we report outstanding alteration textures of orthopyroxene as an evidence for significant Ca-metasomatism from the ultramafic bodies in the Khantaishir ophiolite, the Chandman area, western Mongolia. Microstructures and mass-balance calculation suggest (1) Ca and water are gained, and (2) Ca could be derived from the external sources. We will discuss the relationship between the eclogite bodies and the mantle wedge in the Chandman area.
  • Nurdiana Astin, Atsushi Okamoto, Masaoki Uno, Kenta Yoshida, Noriyoshi ...
    セッションID: S2-04
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    In this study, we report novel pores that are developed within plagioclase in the hornblende schist of Kinkasan Island. In the matrix, the original plagioclase grains (An48Ab52) are replaced by patchy grains of albite (An4Ab94) and alkali feldspar (Ab1Or99), yielded a large number of porosities with the throat size of ~0.1 - 5 μm. These pores formed along the grain boundaries of newly-produced albite formed 3-D pore networks and increased the porosity of the rock up to ~2%. They suggest the self-generation of porosities during replacement induced by infiltration of reactive fluids.
  • 笠原 久夢, 宇野 正起, 岡本 敦, 土屋 範芳
    セッションID: S2-05
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    蛇紋岩化作用などの吸水反応において熱力学的に予測される応力は、岩石の引張強度を大きく超える(Kelemen and Hirth, 2012)。一方、天然では、同じ体積膨張反応にもかかわらず、岩石破壊を伴うものと伴わないものの両方が確認されている。こうした極端な力学応答の違いは、熱力学的平衡論では説明できない。以上より、本研究では、吸水反応に伴う反応誘起応力の直接測定及び速度論的な支配要因の解明を目的として実験を行った。反応誘起応力の最大値は40 ~ 65 MPaに達し、最大応力到達時間は温度上昇に伴い短縮した。応力-時間曲線では、低温側で観察されなかった応力緩和が、高温側で観察された。同試料に対して、反応速度と変形速度の温度依存性を測定した結果、反応速度と変形速度の大小関係が入れ替わることが分かった。従って、反応誘起応力は反応速度と変形速度のバランスにより決定すると考えられる。このような反応誘起応力の反応速度・変形速度依存性を定量的に理解するため、本発表では、温度と粒径を変化させて応力-時間曲線を観察した。以上の結果から、反応誘起応力に対する反応速度及び変形速度の依存性について議論する。
  • 藤本 光一郎, 深沢 結衣, 萬年 一剛
    セッションID: S2-06
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    2015年噴火口と近接した場所で掘削された大涌谷52号井の深度10mから470mまで10mおきに採取されたカッティング試料の解析を行い,地下の変質鉱物の分布を明らかにするとともに,2015年噴火の噴出物との関係を考察した.深度100m以浅のA層は白色を帯びミョウバンや石膏を多く含み,石英を含まないことから比較的低温の酸性変質帯と考えられる.B層(深度100m~360m)は,ミョウバン産出せず石英やが産出するのが特徴であり,比較的低温の中性変質帯である.一方,C層(深度360m~430m),D層(深度430m~470m),E層(深度4470m以深)は緑色を帯びて粘土鉱物としてスメクタイトと緑泥石,イライトを含むことから中性のやや高温の変質帯と考えられる.一方,2015年の噴出物には石膏・ミョウバン・黄鉄鉱を主体として石英が含まれていないことが特徴であり,噴出物は深度100m以浅のA層に由来することが示唆される.
  • 根津 勇介, 岡本 敦, 平野 伸夫, 宇野 正起, 土屋 範芳
    セッションID: S2-07
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    本研究では、超臨界条件下における玄武岩と斑レイ岩の流通式反応実験を行い、物質移動と反応プロセスを明らかにすることを目的とする。実験試料は中央海嶺玄武岩と斑レイ岩を用い、反応流体は純水および、玄武岩溶解溶液を用いた。実験は400 ℃、35 MPaの超臨界点付近の温度圧力条件で行った。玄武岩実験では、上流部分ではAn80の斜長石のNa成分が溶脱しAn95以上の組成を持つ多孔質の斜長石及びグロッシュラーが生成した。斑レイ岩実験では、下流に黒雲母の生成が少量見られた。溶液組成を基にした主成分分析と溶存種の化学平衡解析から、玄武岩システムにおいては、実験初期にガラスの溶脱がおこり、斜長石の溶解及びCa斜長石およびCaザクロ石の析出が起こったことが示唆される。一方、同様の全岩化学組成であっても、斑レイ岩は玄武岩にくらべ反応が顕著におそい。すなわち、玄武岩質地殻における超臨界の流通系において、進行する主な反応が、鉱物やガラスの反応速度の違いとそれによるpH変化よって、時間的、空間的に大きく変化することが示唆される。
  • 石井 貴大, 小暮 敏博, 菊池 亮佑, 湯口 貴史
    セッションID: S2-08
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    熱水変質による花崗岩中の黒雲母の緑泥石化機構について、両鉱物の結晶構造と化学組成を詳細に調べることにより再検討した。その結果、調べた試料では2つの緑泥石化機構(黒雲母から2:1層を引き継いだものと完全な溶解-再析出)がひとつの黒雲母粒子中で同時に起きていることが考えられた。これは、変化した緑泥石中の積層構造とTiの有無の違いとして現れている。
  • 東 佳徳, 伊藤 正一, 坂口 勲
    セッションID: S2-09
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    含水リン酸塩鉱物であるアパタイトを水-岩石相互作用の記録媒体として、その水素同位体組成から反応した水の起源を探るためには水素拡散挙動の理解が必須である.本研究ではアパタイト結晶中での水素拡散挙動を明らかにすることを目的に重水の水蒸気雰囲気下での拡散実験(400-600°C)を行った.先行研究であるHigashi et al. (2017)からの改良点として、拡散実験前に水蒸気雰囲気下でのプレアニールを行なっており、結晶中の欠陥を除去した拡散係数を求めることを試みた.拡散プロファイルの取得には二次イオン質量分析法を用いた.拡散プロファイルから、アパタイト結晶中での水素拡散の拡散種は、OH-ではなくH+であることが明らかになった.得られた拡散係数は、Higashi et al. (2017)で報告されている値よりもおよそ1桁小さく、Higashi et al. (2017)の値は結晶中に残ったダメージの影響を受けている.アパタイト中の水素拡散係数は、結晶軸のc軸に平行方向と鉛直方向で類似しており、酸素やフッ素・塩素の拡散で見られていた大きな結晶方位依存性は認められなかった.
  • ミンダリョワ ディアナ, 宇野 正起, 東野 文子, 岡本 敦, 土屋 範芳
    セッションID: S2-10
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    Time-scales of fluid infiltration events in the crust and mantle remain largely unknown, suggesting a wide range of uncertainties. This study aims to clarify Cl-bearing fluids infiltration at crustal conditions by multiple trace elements profiles in apatite from fluid-rock reaction zones in the mafic granulite and amphibolite samples from Mefjell, Sor Rondane Mountains (SRM), East Antarctica, collected in JARE-51. Mafic granulite and amphibolite are partially hydrated along veins at 750-620 MPa and 650-500 °C, and associated with mm-sized hydration reactions zones.
  • 高橋 菜緒子, 中谷 貴之, 辻森 樹, 中村 美千彦
    セッションID: S2-11
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    We experimentally studied the equilibration mechanism of jadeite (Jd: NaAlSi2O6) and spodumene (Spd: LiAlSi2O6) at 700°C for 72 hours and 800°C for 48 hours at 2 GPa. Our obaservations indicate that the mineral replacement via dissolution-reprecipitation rather than a diffusive Na-Li exchange occurred. Moreover, even trace amount of water may work as a solvent and enhance rapid mineral replacement at subsolidus conditions.
  • 纐纈 佑衣, 柿畑 優季, 清水 健二, 道林 克禎, Wallis Simon
    セッションID: S2-P01
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    地質学・鉱物学の研究分野において、赤外分光法は鉱物中の水を検出するのに有効な分析手法の一つであるが、試料準備に手間がかかるなどのデメリットがあった。本研究では、通常の岩石研磨薄片を用いた分析が可能なATR法 (全反射測定法:Attenuated Total Reflectance method)という新しい顕微赤外分光測定法を用いて、非含水鉱物中に含まれる微量な水の検出可能性について検証した。カンラン石やざくろ石中の数~数百ppmオーダーの水は検出されなかったが、水の含有量が未知のウルトラマイロナイト中のカンラン石ポーフィロクラストでは、3700 cm-1付近にOH基と考えられるシャープなピークが観察された。ppmオーダーの鉱物中の微量な水をATR法によって検出するには、分析における更なる工夫・改良が必要であるが、水の多い環境下で形成されたと考えられるカンラン石中のOHが検出できたことから、今後ATR法は有用な分析手法として発展することが期待される。
  • 新部 貴理, 岡本 敦, 天谷 宇志, 土屋 範芳
    セッションID: S2-P02
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    シリカ鉱物の変化は断層強度や透水性に大きく影響すると予想されるが、その速度論的な解析は十分でない。本研究はアモルファスシリカがより安定な相へ変化する過程について、亜臨界、超臨界条件で水熱実験を行い、速度論的解析を行うことを目的とする。
     実験は、ステンレス製圧力容器にアモルファスシリカと蒸留水を封入し、温度と圧力を上昇させて相変化させた。P-T条件は250℃-4MPa、350℃-16MPa、400℃-25MPa、450℃-25MPaで、5日おきにサンプリングし、実験は60日間行う予定である。固体試料に対してX線粉末回折とSEM観察、溶液に対してpH及びICP-AESによるシリカ濃度の計測を行った。その結果、350℃、400℃共に5日目の時点でクリストバライトに変化していることを確認したが、28日目の時点でも相変化は示さず、クリストバライトのままだった。また、溶液のSi濃度は400℃の実験においては11・15日目の時点でアモルファスシリカの溶解度と概ね一致する結果を得た。今後、定期的なサンプリングを重ね、シリカ析出の速度論的解析を行い、シリカ粒子の相転移の時間発展を明らかにする。
  • 秋藤 哲, 野坂 俊夫, 阿部 なつ江
    セッションID: S2-P03
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    中央海嶺周辺の下部地殻における熱水変質作用の実態を明らかにするために,アトランティス・バンクIODP Hole U1473AとODP Hole 735Bから採取された斑れい岩類の岩石学的研究を行った結果,黒雲母と黒雲母-緑泥石混合層が広く分布していることが明らかになった。735Bの斑れい岩試料からは普通の緑泥石よりもSiとCa + Na + Kに富む,緑泥石-スメクタイト混合層が報告されているが,それらはKに乏しく,かんらん石の残晶や仮像をクロスカットする点で,黒雲母-緑泥石と識別できることが明らかになった。
     黒雲母および黒雲母-緑泥石の多くは角閃石と共存し,かんらん石残晶をコロナ状に取り囲んで産する。このコロナは珪長質脈の近傍で多産する傾向がある。コロナ状黒雲母の一部は,相当量のフッ素を含有している。さらに黒雲母と共存する角閃石と斜長石の平衡温度は630℃~830℃と見積もられる一方,珪長質脈の石英のTi含有量は620℃以上の生成温度を示唆する。これらの結果から,黒雲母およびB/C混合層は,角閃岩相の条件で珪長質マグマ起源の流体と母岩のかんらん石が反応して生じたものと考えられる。
  • 杉沢 直樹, 東野 文子, 宇野 正起, 岡本 敦, 土屋 範芳
    セッションID: S2-P04
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    【背景】Apatite[Ca5(PO4)3(OH, F, Cl)]は、岩石-流体間相互作用により三成分固溶体をつくる。東南極のセール・ロンダーネ山地に産する角閃岩とグラニュライトからは、450-650℃、0.2-0.6GPaにおいてFluorapatite (F-Ap)がChlorapatite(Cl-Ap)に置換されている鉱物脈が観察された。本研究では水熱反応実験により、地殻条件下でのF-Ap置換反応の実験的再現を試みた。
    【方法】本研究ではバッチ式熱水実験装置を用いて350-450℃、40-50MPa、F-Ap+10wt%NaCl溶液、OH-Ap+100ppm、1000ppmNaF溶液で水熱実験を行った。これらを160時間反応させ、FE-SEMを用いて表面観察、組成分析を行った。
    【理論】以上の実験に対して、SUPCRT92のデータにアパタイトとHClの熱力学データを追加し反応を検討した結果、アパタイトのF-OH-Cl置換は流体/岩石比および溶液のpHに影響を受けることが示唆された。以上実験結果よりアパタイトと流体間で一価のハロゲン、水酸基が置換される温度、圧力、溶液条件について議論する。
R1:鉱物記載・分析評価
  • 篠田 圭司, 小林 康浩
    セッションID: R1-01
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
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    エジリン単結晶の定方位薄片を用いてメスバウアースペクトルを測定し、エジリン結晶のM1席を占めるFe3+の四極子分裂ダブレットピークの強度異方性を求めた。強度異方性からM1席のFe3+の電場勾配テンソルを求めた結果、電場勾配テンソルの非対称パラメーターはほぼ1で、Vxx成分はb軸方向に向いていることが分かった。
  • 加藤 丈典, Skrzypek Etienne, 河上 哲生, 陳 美呈
    セッションID: R1-02
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    EPMA定量分析における補正計算及び質量吸収係数がCHIME年代測定の確からしさにどのように影響するか評価した。評価には、同位体年代既知のNMQL (Knoper, 2000)及び44069(Aleinikoff et al., 2006)を用いた。補正計算モデルは、conventional ZAF, Armstrong (1991)のSurface-center Gaussian, PAP, XPP及びXPhiを比較した。Conventional ZAF, Surface-center Gaussian及びXPPについては、Heinrich (1966)の質量吸収係数とChantlaer et al. (2005)の質量吸収係数の違いも比較した。NMQLではPAP, XPhi及びXPPで誤差が1%以内となった。また、44069では、PAP, XPhi及びXPP (Heinrich, 1966の質量吸収係数を除く)で誤差が1%以内となった。他のモデルでは、いずれも系統的に年代が古くなった。
  • 伊神 洋平, 三宅 亮
    セッションID: R1-03
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    局所的な格子歪の定量評価を目指して、汎用TEM装置を利用した電子回折マップデータの天然試料からの取得を試みた。また、組織観察との比較により、当手法の鉱物の分析における有用性を検討した。試料には、浅間火山にて採取された珪線石-ムライト共存粒子(Igami et al., 2018)、および奈良県天川村産の離溶ラメラ組織を持つレインボーガーネット(下林ら2005)を用いた。これらは、異なる二相がコヒーレントな界面を持って共存している試料である。電子回折マッピングには、汎用TEMとCCDカメラを用い、細く平行に絞った電子線を試料上で走査しつつ電子回折像を自動取得した。得られた電子回折マップデータセットにおいて、任意の回折を用いた明視野像・暗視野像の構築が可能であることを確認した。次に、回折スポット間距離から面間隔マップを作製したところ、浅間山試料では珪線石-ムライト境界が可視化でき、~数%の格子定数の差が明示できることが分かった。一方、ガーネット試料の面間隔マップでは、高次ラウエ帯の反射を用いた解析により、ラメラ/ホストの識別に加え、ラメラ近傍の歪分布も可視化することに成功した。
  • 北脇 裕士, 江森 健太郎, 久永 美生, 山本 正博, 岡野 誠
    セッションID: R1-04
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    LPHT処理が施されたCVD合成ダイヤモンドの分析を行った。赤外領域の分光スペクトルによる3124、3030、2948、2937、2901、2870、2812、2726cm-1のピーク、PL分析による737nmピークの検出およびDiamondViewTMによる積層成長の痕跡はCVD合成を示唆するものである。しかし、一般的なマルチプロセスのピンク色CVD合成に見られる1450 cm-1 (H1a)、741.1nm (GR1)、594.3nm、393.5nm (ND1)などの照射に関連したピークは検出されなかった。赤外領域の7917、7804 、1374 cm-1と可視領域の667nmと684nmの吸収ピークが検出され、これらはLPHT処理された特徴である。
  • 江森 健太郎, 北脇 裕士, 三宅 亮
    セッションID: R1-05
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    マダガスカル、ディエゴ産のBe含有ブルーサファイアをLA-ICP-MS、TEMで分析、観察した結果、長さ20-40nm、幅5-10nmサイズのナノインクルージョンが存在し、そのナノインクルージョンはBe、Ti、Nb、Taからなる鉱物であった。
  • 白勢 洋平, 上原 誠一郎
    セッションID: R1-06
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    電気石超族鉱物は,花崗岩をはじめとする多くの岩石中に副成分鉱物として含まれている。繊維状電気石については,化学組成の多様性が報告されているが,その形態的特徴や形成過程は明らかにされていない。今回は,日本列島の産状の異なる繊維状電気石について分析を行った。いずれの電気石もX席はNaと空位に富むが,Caの含有量は産状により異なる(0-0.16 apfu)。Y席については田上山,崎浜産電気石はFeに富むが,西南日本外帯の花崗岩及びペグマタイト,スカルン鉱床中のものはMgも多く含む。単結晶の端面にエッチピットが確認できるものがあり,組成累帯構造からも溶解・再成長組織が観察された。繊維状電気石は単結晶とc軸を共有しホモエピタキシャル成長したと考えられる。一方で,田上山産の晶洞中の細毛状の電気石は,他の繊維状電気石とは大きく異なり,細いものでは直径100 nm,長さ50 μm程度(軸比500)の湾曲した繊維状結晶の集合からなる。このナノ繊維状電気石は六角柱状であり,TEM観察の結果からc軸方向に伸長しており結晶性が高いこともわかった。ナノ繊維状電気石は気相成長によって形成されたと考えられる。
  • 延寿 里美, 上原 誠一郎
    セッションID: R1-07
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    本研究地である熊本県八代市下岳はorthochrysotile及び、類似した構造をもつortho-type PSに非常に富んでおり、産状ごとに異なる繊維状蛇紋石の組み合わせを持つ。本研究では片状蛇紋岩中の蛇紋石のTEM観察等を行うことで脈中の繊維の配向等の三次元的な産状を明らかにし、その形成過程の推察を行った。蛇紋石脈のほとんどは幅2,3 mm程度の直線的な脈で、Ortho-type PSに富む。それに対し、一部にはclino-及びortho-chrysotileに富むより太い脈がみられ、肉眼的に二相に分かれていた。TEMの観察結果より前者はランダムな配列のortho-type PS及びchrysotileにより構成され、後者は鱗片の伸長方向に配列したchrysotileによって構成されていた。両者の境界は直線的で、境界部において幅数百nmほどの鱗片の伸長方向に直角に配向したchrysotileからなる細脈がみられ、繊維方向に沿う形で亀裂が生じていた。このような産状は脈内における、静的な環境での形成から、動的な環境における剪断破壊と配向を伴う形成への変化を反映していると考えられる。
  • 坂野 靖行, 門馬 綱一, 宮脇 律郎, 山田 滋夫
    セッションID: R1-08
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    Ferri-ghoseite(フェリゴース閃石)が和歌山県飯盛鉱山より見出された.X線実験に使用された部分はEPMAにより分析され,その化学式は,A(Na0.16K0.02)Σ0.18B(Na0.83Ca0.09Mn2+1.08)Σ2.00C(Mg3.78Mn2+0.52Fe3+
    0.66Al0.04)Σ5.00T(Si7.95Al0.05)Σ8.00O22W[(OH)1.90F0.10] Σ2.00である.単結晶X線回折実験により得られた格子定数は, a = 9.6389(7), b = 18.0534(10), c = 5.3138(3) angstrorm and beta = 102.896(2) degreeである.
  • 松原 聰, 宮脇 律郎, 門馬 綱一, 加藤 昭, 重岡 昌子, 清水 正明, 興野 喜宣, 小原 祥裕, 原田 明
    セッションID: R1-09
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    群馬県萩平鉱山から産出したマンガン鉱石中に、グラシャン鉱を確認した。これは世界で2番目の例であり、原産地のものより、理想化学組成に近く、粒が大きいため、反射率の測定もおこなった。産状、共生鉱物、化学組成、結晶学的諸性質などについて報告する。
  • 門馬 綱一, 浜根 大輔, Mills Stuart, 下林 典正, 宮脇 律郎, 稲葉 幸郎
    セッションID: R1-10
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    三重県山田鉱山からウエリン石の産出を確認し、その結晶構造を検討したので報告する。ウエリン石はMn2+6(W6+,Mg)2(SiO4)2(O,OH)6という組成式が提案され、a = 8.155, c = 4.785 A,空間群P63またはP3が報告されている。山田鉱山産のウエリン石は√3 × 3の超構造を示し、a = 14.074(3) and c = 14.455(3) A, 空間群R3である。単結晶X線構造解析の結果、先行研究で提示された平均構造に対して、Wサイトの1/3が周期的に空孔となった超構造であることが判明した。
  • 大川 真紀雄, 安東 淳一, 富岡 尚敬, 兒玉 優
    セッションID: R1-11
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    アメリカ合衆国ユタ州アイアン郡に産するⅠ型天然磁石について,EPMAによる化学分析,SQUID磁束計を用いた磁化測定,分析電子顕微鏡による微細組織の観察を行った。磁鉄鉱中の不純物元素としてSi, Mg,Al,Caが挙げられ,低倍率の反射電子像ではSi成分の多寡による累帯構造が認められるが,高倍率では1ミクロン以下のケイ酸塩鉱物粒子が磁鉄鉱中に多数含まれていることが確認できる。さらにTEM像ではホストの磁鉄鉱とSi含有磁鉄鉱との連晶組織が観察された。EDSによる組成分析から,ホストの磁鉄鉱にはSiがほとんど含まれていないことがわかった。また,Si含有磁鉄鉱の組成はXuら(2014)によって提案された[□0.5Fe3+Fe2+0.5]VISiIVO4が妥当であると考えられる。今回の結果はこれまでの定説であった“低温酸化による磁赤鉄鉱化”とは整合しない。よってⅠ型天然磁石についての低温酸化説は再検討すべきであると考えられる。
  • 市村 康治, 小暮 敏博
    セッションID: R1-P01
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    電界放出型電子線マイクロアナライザを用いたflank-methodを用いて磁鉄鉱を含む鉄酸化鉱物のFe3+/ΣFeの較正を行った。磁鉄鉱へのビームダメージの影響は見られなかったため,サブマイクロメートルビームでの磁鉄鉱中のFe3+/ΣFeの測定が可能となった。
  • 三宅 亮, 伊神 洋平, 前田 凌
    セッションID: R1-P02
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、DENS solutions社の高温加熱ホルダー(Wildfire D6)およびMEMS chipを用いて、相転移温度が決められている鉱物(石英、SiO2)、セラミックス材料(Ca2SiO4)、および融点がわかっているCu, Siの高温その場TEM観察を行い、と設定温度との違いについて検討を行った。
  • 長瀬 敏郎, 門馬 綱一, 石橋 隆, 浜根 大輔, 栗林 貴弘
    セッションID: R1-P03
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    シリカ鉱物では,比較的温度の低い熱水からはさまざまなシリカ鉱物の準安定相が晶出することが知られている。このような,準安定相は安定相へと変化する。この際,多くの準安定相はその外形を保ちながら,石英に変化していることが多く,準安定相の仮像(仮晶)を呈する。このような仮像の内部には,様々な組織が認められる。準安定相として晶出したシリカ多形から石英への相転移過程を明らかにするため,仮像組織について結晶学的な解析をおこなった。
  • 黒澤 正紀
    セッションID: R1-P04
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    多金属型鉱床を伴う花崗岩の熱水流体の化学的特徴を明らかにするため、小規模な多金属型鉱床を多数伴う長野県佐久穂町の花崗岩体の石英脈に含まれる多相流体包有物の析出結晶をSEM-EDSで分析した。その結果、従来の銅・鉛・亜鉛鉱床を随伴する花崗岩からの熱水流体とは異なり、酸性かつやや硫黄に富む酸化的な熱水流体の特徴を示す析出結晶が確認された。この酸化的酸性熱水流体が多金属型鉱床の形成に重要な役割を果たしていると推定された。
  • 志村 俊昭, 宮脇 律郎, 門馬 綱一, 亀井 淳志, 束田 和弘, 大和田 正明, 柚原 雅樹
    セッションID: R1-P05
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    ジルコノライトは理想構造式CaZrTi2O7で表される希少な酸化鉱物である.東南極,セール・ロンダーネ山地から,イットリウムに富むジルコノライトを発見した.このジルコノライトを含む岩石は,グラニュライト相変成作用を受けた,Mg-Alに富みSiに乏しいスカルンである.このスカルンには様々な種類のZr, Ti, REE, U-Thを含む鉱物がみられる.それらはウラニナイト,ポリクレース(Y),ジルコン,バデレイ石,ゲイキ石,ルチル,マグネシオヘグボマイト2N4Sなどである.このジルコノライトは非常にCaに乏しく,REE・U・Th・Nbなどに著しく富んでいる.Caのサイトの8割以上をREEが置換しており,その化学構造式は(REE, U, Th) (Zr, Hf) (Ti, Al, Fe, Mg)2 O7で表される.
  • 湯浅 愛美, 小林 祥一, 草地 功, 岸 成具, 田邊 満雄
    セッションID: R1-P06
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    岡山県布賀鉱山で、島崎石を主体とするホウ酸塩鉱物集合体から、島崎石とその周囲の晶出石灰岩との間に, priceite, uralborite, calciborite, kurchatovite などとともに,粒状あるいは脈状として、やや灰色を示すvimsiteを見出した。VimsiteはCaB2O2(OH)4組成のホウ酸塩鉱物である。VimsiteはCaB2O2(OH)4組成のホウ酸塩鉱物で,ロシアのウラル山脈で初めて発見され,Shashkin et al. (1968)によって示された。なお、日本ではvimsiteの産出は初めてである。EPMAによって得られた分析値をもとにO=6として求めた実験式は、(Ca0.992 Mg0.009Fe0.003Mn0.001)Σ1.005 B1.995 O1.993 (OH)4.007であり、粉末X線回折によって得られた格子定数は、a=10.021(10), b=4.434(7), c=9.618(15)A,β=91.205(2)°であった。
  • 金城 真奈未, 小林 祥一, 草地 功, 岸 成具, 田邊 満雄, 市橋 好紀
    セッションID: R1-P07
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    岡山県高梁市布賀鉱山のスカルン中で,shimazakiiteを主体とするホウ酸塩鉱物集合体付近で,日本新産となるfedorovskiteを見出した.Ca2Mg2B4O7(OH)6組成のfedorovskiteは最初ロシアのSolongoのホウ素鉱床で発見され,sakhaite, frolovite, uralboriteと共に,あるいは細脈や晶洞中に単独で見出され,Malinko他(1976)によって記載された.EPMAによって今回得られた分析値から求めた実験式は,Ca2.063(Mg1.948Fe0.073Mn0.023Zn0.002Co0.001Ni0.001)Σ2.048(B3.949
    Si0.107)Σ4.056O7.499 (OH5.501F0.591)Σ6.092で,Solongo産と異なりBの位置にSiが,OHの一部をFが置き換えていることが特徴で,BとSiとの間には負の相関関係が認められる.粉末X線回折によって得られた格子定数は、a=8.913(8),b= 13.089(18),c= 8.275(16)Aであった
  • 川崎 雅之, 斉藤 俊一, 佐野 貴司, 門馬 綱一, 草場 陽子, 宮脇 律郎, 松原 聡
    セッションID: R1-P08
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    群馬県南部地域の洞窟より採取された鍾乳石がシュベルトマン石で構成されていることがわかった。
  • 浜根 大輔, 鈴木 保光
    セッションID: R1-P09
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    福島県御斎所鉱山からは多種の含水ヒ酸塩鉱物が産出することが知られるが、一部はそのデータが引用できる形で公表されておらず、実体が不明となっている。また近年になり海外で含水ヒ酸塩鉱物の新種が報告される例が増えてきたことから、多種の含水ヒ酸塩鉱物を産出する福島県御斎所鉱山においても再検討が望まれる。1990年代後半に御斎所鉱山から採集された試料を調査したところ、カステラロ石(Castellaroite)、コラロ石(Coralloite)、ミゲルロメロ石(Miguelromeroite)、パラブランド石(Parabrandtite)を新たに確認できたのでここに報告する。いずれの含水ヒ酸塩鉱物もケイ酸塩を主体とするマンガン鉱石に生じる裂傷の隙間および鉱石を切る脈として生じている。
  • 山田 隆, 大浜 多喜, 石橋 隆, 藤原 卓
    セッションID: R1-P10
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    鹿児島県大和鉱山から本邦で初めてレッピア石を確認した。濃褐赤色半透明の最長1.5mmの柱状結晶で産し、化学組成もX線粉末回折実験結果も既知のものに一致する。
  • 永嶌 真理子, 森下 幸菜
    セッションID: R1-P11
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    山口県美祢市には長登銅山,大和鉱山などの銅スカルン鉱床が存在する.本研究は,長登銅山と大和鉱山の鉱石鉱物およびスカルン鉱物の特徴と特異性を明らかにするために,長登銅山烏帽子坑のズリから採取された鉱石の鉱物組み合わせとそれらの化学組成を検討した.烏帽子坑鉱石からは輝コバルト鉱,黄銅鉱,黄鉄鉱,キューバ鉱,銅藍,自然蒼鉛,斑銅鉱,閃亜鉛鉱,輝蒼鉛鉱,錫石,含Ag鉱物,含Te鉱物,魚眼石などが同定された.岩石組織より,早期に輝コバルト鉱,早期~中期に黄鉄鉱,黄銅鉱,含Bi鉱物,黄銅鉱晶出後の中期~後期にかけて斑銅鉱が産し,その後含Ag・Te鉱物が晶出し,最末期にK,Fに富む流体により魚眼石が形成されたと考えられる.大和鉱山産鉱石で主要である黄銅鉱や黄鉄鉱は,烏帽子坑鉱石では少量かつ限定的である.両鉱床の相違性は於福花崗岩と花の山花崗斑岩に由来する熱水化学組成の違い反映している.
  • 上野 禎一, 中武 俊郎, 北風 嵐
    セッションID: R1-P12
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    福岡県宗像市神湊にある草崎半島を調査したところ、硫化鉱物鉱化作用の痕跡を見い出した。
    黄鉄鉱、黄銅鉱、斑銅鉱、閃亜鉛鉱、赤銅鉱等の金属鉱物と銅藍、珪孔雀石等の二次生成鉱物、忍石及び少量のエレクトラムを確認した。これらの鉱物について記載する。
  • 田中 崇裕, 濱根 大輔, 寺島 克仁, 高橋 春雄, 橋本 成弘
    セッションID: R1-P13
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    河津鉱山は,kawazuliteの模式産地であるが,本鉱山に産するtetradymite族鉱物の化学組成については詳しく調べられていない.本研究では,SEM-EDSによる分析により,それらの化学組成の範囲を明らかにすると共に,今回新たに見出されたBi-Se-Te-S系鉱物について検討する.河津鉱山のtetradymite族鉱物の組成範囲は、バラエティーに富んでおり,tellurobismuthite,tetradymite,kawazulite,skippenite,paraguanajuatiteに相当する.また本鉱山のtetradymite族鉱物は,しばしばビスマスの一部が鉛によって置き換えられていることが確認された.今回新たに見出されたBi-Se-Te-S系鉱物は,大沢2号ヒ,桧沢1号ヒ上盤脈,鶴ヶ峰ヒで確認された.定量分析の結果,鶴ヶ峰ヒのものはrucklidgeiteであると考えられる.しかしながら,桧沢ヒ及び大沢2号ヒのものは, rucklidgeiteのセレンアナログ,若しくはニュータイプとなる可能性がある.
  • 白勢 洋平, 延寿 里美, 鶴田 憲次, 下林 典正
    セッションID: R1-P14
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    京都府和束町石寺地域の領家変成岩類に貫入する石英脈中からは,多様なタングステン酸塩,リン酸塩鉱物が産する。今回は,この石英脈から新たに自然蒼鉛及び二次ビスマス鉱物を見出したので,その産状及び鉱物学的性質を報告する。自然蒼鉛は石英中に1 mm以下の粒状でホセ鉱を伴い,蒼鉛土,塩化蒼鉛土-水酸化蒼鉛土,泡蒼鉛からなるリムを持つ。その周囲には石英の割れ目に沿って厚さ100 μm以下の黄色の二次ビスマス鉱物脈が形成されている。この鉱物脈のXRDパターンは合成ラッセル石Bi2WO6を示すが,EPMA分析の結果Bi:W = 3:1となりBiが過剰であった。ウェイランド石,塩化蒼鉛土-水酸化蒼鉛土を密接に伴う。XRDパターンは131反射がきわめてブロードで,反射強度も低く高角側にシフトしている。b軸方向へのBi2O22+層とWO42-層の積層不整が顕著なためと考えられる。ラッセル石様鉱物についてTEM観察を行ったところ,電子線損傷が顕著であり,10 nm程度の六角板状結晶の形成とその粗粒化が生じた。天然のラッセル石については化学組成や構造が不明瞭であり,より詳細な検討が必要である。
  • 白勢 洋平, 下林 典正, 高谷 真樹, 石橋 隆, 豊 遙秋
    セッションID: R1-P15
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    京都大学総合博物館では,京都帝国大学の教授であった比企忠が蒐集した国内では最大級の貴重な鉱物・鉱石標本を所蔵している。その標本整理の過程で「比企標本」は,「和田標本」,「若林標本」,「高標本」といった20世紀初頭の日本の「三大鉱物標本」に勝るとも劣らない標本であることがわかった。比企は1894年に帝国大学を卒業ののち,1898年に京都帝国大学理工科大学の助教授に任じられ,開設されたばかりの採鉱冶金学教室で教鞭をとった。その後,採鉱学第三講座(鉱床学)の初代教授となり,1926年に定年退職するまでの間に,1万点以上の鉱物・鉱石標本が陳列する鉱物標本室を作り上げた。比企は亡くなる直前に鉱物標本の行く末を案じ,後進に「標本の志るべ」なる手引書を遺した。「標本の志るべ」の中には蒐集した鉱物標本ひとつひとつの解説と共に,教育熱心さが窺える文言が記されている。比企標本は,国宝級とも形容される,質・量ともに優れた選りすぐりの標本であるが,同時に我が国の鉱物学の黎明期に多くの研究者や学生を育ててきた貴重な標本でもある。
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