LD研究
Online ISSN : 2434-4907
Print ISSN : 1346-5716
27 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 東俣 淳子
    2018 年 27 巻 2 号 p. 192-199
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/12/03
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,5歳児における文字の読みに関する基礎的な認知発達の状況を把握すること,および客観的な評価方法として,保育士が簡便に行うことが可能なチェックリストの作成を目的とした。試作したチェックリストの評価結果と専門家による個別評価の結果との関連性について分析して考察した。その結果,チェックリストと個別評価間で一致率の高い項目とそうでない項目が確認でき,いくつかの指標を得ることができた。音韻認識に関する項目では,先行研究で示されているしりとりの可否は他の項目に比べて一致率が高かった。文字の読みに関する項目では,文字種類別(特に濁音や拗音)の読みに関する項目は一致率が低かった。今後は,チェックリストを有効に活用するために,また保育実践への可能性を高められるように,チェックリスト項目を再検討すること,そして文字の読みだけでなく書字に関する項目を取り入れることなどいくつかの課題が残された。
  • トークン・エコノミーとレスポンスコストの要素を含む物理的手がかりを用いて
    岡本 邦広
    2018 年 27 巻 2 号 p. 200-212
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,自閉スペクトラム症児の手伝い及び買い物時に見られた行動問題に対して,教師が保護者に行動コンサルテーション(BC:behavioral consultation)を行い結果に基づく記録を依頼した。この支援により,対象児の買い物時の行動問題が低減し,手伝いが自発するかの検討を第1目的とした。保護者による支援が標的以外の場面に般化するかを第2目的とした。BCは9カ月(合計13回)行われた。保護者は,物理的手がかりを用いた機能的アセスメントに基づく支援を行った。物理的手がかりは,トークン・エコノミーあるいはレスポンスコストの要素を含んだ。支援の結果,買い物時の行動問題は見られず,対象児は手伝いを継続した。さらに,保護者は支援対象外の場面にも物理的手がかりを用いて支援を行った。これらから,BCを定期的に行い,物理的手がかりを活用した支援を保護者に提供する方法は有効であったことが示された。
  • 永冨 大舗, Noro Fumiyuki
    2018 年 27 巻 2 号 p. 213-223
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では家庭場面における宿題の取り組みに困難のある通常学級に在籍する小学校3年生の男児に対して,セルフモニタリングの介入の効果を検討した。課題には学校から出される宿題を用い,対象児に1分間ごとに課題従事行動のセルフモニタリングをさせた。ABAB反転デザインを用いたところ,セルフモニタリングを用いたB条件で課題従事行動が増加し,非課題従事行動が減少した。また,セルフモニタリングの手続きを除去したA条件においても,課題従事行動が高いまま維持され,セルフモニタリングが課題内容や難易度,量が日によって異なる宿題に対しても効果が示された。対象児と保護者はセルフモニタリングの手続きに対して,効果があり,続けていきたいという評価をした。一方,対象児は学校では用いたくないという評価を行った。今後,学校場面における社会的妥当性の高い,効果のある実践の必要性が示された。
  • AQを用いたA大学での質問紙調査から
    末吉 彩香, 柘植 雅義
    2018 年 27 巻 2 号 p. 224-235
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,大学生の自閉症指数(AQ)と進路選択に対する自己効力,進路成熟度,アルバイト・インターンシップ経験の関連を検討し,大学に在籍する自閉スペクトラム症(ASD)傾向のある学生へのキャリア支援の資料を得ることである。大学生602名を対象に質問紙調査を実施し,AQ得点の結果を基に学生をAQ高群・低群に分け検討した。結果,進路選択に対する自己効力,進路成熟度共にAQ高群がAQ低群より有意に低い傾向が示された。またAQ低群の進路成熟度は4年生で有意に上昇するが,AQ高群では4年生の得点の上昇は見られなかった。アルバイト経験はAQ高群の未経験率がAQ低群より有意に高く,AQ高群ではアルバイト等の経験が進路選択の諸側面の育成に必ずしも作用していない可能性が示された。今後はASD傾向のある学生を対象に,これら進路選択に対する諸側面にも着目した具体的な支援方策の検討と有効性の検証が必要である。
  • 松本 くみ子
    2018 年 27 巻 2 号 p. 236-244
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,校内支援体制のPDCAサイクルを評価,改善するためのツールである「校内支援体制PDCA促進シート(以下,PDCA促進シート)」を開発することであった。まず,PDCA促進シートを試作し,改善すべき点を探るため,特別支援教育コーディネーター(以下,コーディネーター)64名を対象に質問紙調査を行った。その結果,配点基準を見直す必要があることが明らかとなったため,8名のコーディネーターを対象に,2度の面接調査を行い,新たに配点基準を作成した。また,項目と質問文の修正,説明文の追加についても検討した。これらの過程を経て,コーディネーターの業務6項目のPDCAサイクル(実態把握:Research,計画:Plan,実行:Do,評価:Check,計画の修正:Act)の各段階を,「実施していない」「個人レベルで実施」「組織レベルで実施」の3つの基準で得点化するPDCA促進シートを完成させた。
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