LD研究
Online ISSN : 2434-4907
Print ISSN : 1346-5716
28 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 佐囲東 彰
    2019 年 28 巻 4 号 p. 446-458
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,幼稚園の年少組,年中組,年長組において「めあて&フィードバックカード」を実施し,各組における目標設定及び自己評価が標的行動に及ぼす効果を比較,検証した。研究計画デザインは,ABABデザインにフォローアップを付けた。私立幼稚園の年少組,年中組,年長組の教室において,年少組(17名),年中組(12名),年長組(8名)の園児が本研究に参加した。標的行動は遊びに行く前に,「イスを机の中に入れる」であった。介入方略は,「めあて&フィードバックカード」の机上への貼付による目標設定及び自己評価により標的行動を達成させようとした。結果は,標的行動達成率,自己評価一致率は,年少組,年中組,年長組と年齢が上がるにつれ高くなった。結論としては,「めあて&フィードバックカード」の効果は年中組から効果が認められはじめ,年長組では明確になった。
  • 教師2名による指導を通して
    岡本 邦広, 武内 清恵
    2019 年 28 巻 4 号 p. 459-473
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,岡村ら(2007)を参考に自閉スペクトラム症児の兆候行動の機能を分析した上で機能的アセスメントに基づく指導計画を立案し,教師2名が共通の約束カードや評価表を用いて2場面で指導を行った。これらの指導により,兆候行動の生起率を低減させ機能的なコミュニケーションを形成した上で学習活動を遂行できるかを検討した。兆候行動は,課題の間違い指摘時や修正を要求された時に生起し,逃避の機能が推定された。指導では学習課題の開始前に約束カードを提示し,兆候行動の非生起時は強化子を提示した。また,課題がわからない時は要求言語行動を教示した。結果,2場面の兆候行動は低減し,文脈に応じた要求言語行動が増加した。結果から,岡村ら(2007)による方法は対象児の兆候行動の低減に有効であったことが示された。また要求言語行動と兆候行動の生起率の機能的な関係,教師2名による指導の効果の観点から考察された。
  • 長山 慎太郎, 岡部 帆南, 柘植 雅義
    2019 年 28 巻 4 号 p. 474-483
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,小学校通常の学級において,学級全体の児童を対象としたコンサルテーションの効果を検討することを目的とした。クライアントは,3年生26名,4年生39名,コンサルティは2名の担任教師,コンサルタントは特別支援教育を専攻する大学院生であった。X年4月からX年12月にかけて,2名の担任教師にそれぞれ1回ずつ30分間のコンサルテーションを行った。その結果,学級全体の児童の授業準備行動の達成率が上昇し,コンサルテーションの効果が示された。また,コンサルタントはコンサルティから本研究における社会的妥当性と介入手続きの受容性について高い評価を得た。今後の課題として,コンサルテーションの学校全体への波及効果やコンサルテーションの方法や評価を客観的に検証することが示された。
  • 通常の学級に在籍する小中学生を対象にした評価と構造方程式モデル分析を中心に
    金 彦志, 矢野 夏樹, 梅田 真理, 韓 昌完
    2019 年 28 巻 4 号 p. 484-493
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    限局性学習症(Specific Learning Disorder : SLD)の児童生徒において早期発見と学習支援についての関心が高まっている。SLDの児童生徒を評価するためには学習困難に影響を与えている要因を明らかにし,その要因を教育的対応によって取り除いた上で彼らの学習を改めて評価する必要がある。本研究では児童生徒の教育的ニーズを評価するための尺度であるInclusive Needs Child Record(ICR)の評価データを分析することで,SLDの可能性のある児童生徒の学習に影響を与える要因を明らかにすることを目的とする。研究の結果,ICRにおけるSLDモデルとして読む,書く,計算する,推論するの4領域を含むモデルにおいて良好な適合度が検証された。また,そのモデルに影響を与える要因として,身体の状態,姿勢・運動・動作,不注意,自己肯定感が明らかになった。
  • 半田 健
    2019 年 28 巻 4 号 p. 494-503
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,日本における自閉スペクトラム症児を対象としたソーシャルスキルトレーニングに関する研究を展望した。データベース検索と6つの選定条件によって,分析対象となる18編の論文が選定された。選定された論文に関して,「指導場面」「標的スキル」「指導方法」「研究デザイン」「指導効果の般化・維持」について分析し,その現状と課題を明らかにした。また,先行研究より,指導効果の統計による前後比較の未実施や統制群の未設定,指導効果の般化・維持の検証不足といった課題が指摘されていた。本研究は,それらの課題の進捗について検討したところ,近年の研究によって解消されつつあるものの,いまだ十分でないことを指摘した。今後,日本における研究動向をより広く把握し,信頼性の高い研究知見をもたらすためには,論文選定にハンドサーチを用いることや複数名による分析を行うことが必要である。
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