LD研究
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31 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 幼稚園年長時から小学校1年生7月・12月までの縦断的検討を通して
    深川 美也子
    2022 年 31 巻 1 号 p. 2-16
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/28
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    本研究の目的は,幼稚園年長児の音韻意識(以下,PA)の発達と成績が小学1年生のひらがな書字成績にどのように関係するか縦断的方法を用いて明らかにすることにある。調査時期1で,幼稚園年長児に対しPA検査(分解,抽出,抹消,逆唱の4種類×2,3,4モーラ単語各3題)を行い,調査時期2で,1の対象児が小学1年生になった7月と12月の2時点でひらがな聴写書字課題を行った。分析対象は69名(男子33,女子36)である。結果,PA検査課題の種類やモーラ数の違いにより難易度が異なり,ひらがな書字成績への影響も異なった。直音文字や直音単語の成績には「分解」が影響し,特殊拍文字や特殊拍単語には「逆唱」が強く関係した。PA検査の成績の合計が低位でかつ「分解」の成績の低位群は12月時書字成績も低位であった。以上から,1年生の書字成績の関係では,年長時のPAタイプとPA4課題全体の発達が重要であることが明らかになった。
  • 玉木 宗久, 海津 亜希子, 榎本 容子, 伊藤 由美, 廣島 慎一
    2022 年 31 巻 1 号 p. 17-33
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/28
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    本稿では発達障害のある児童生徒を対象とした通級(発達障害通級)における自立活動に相当する指導の主成分を検討することを目的とした。47都道府県の発達障害通級の担当教員に調査を行い,その中で児童生徒1名の実際の指導と自立活動の内容27項目との関連性を評定してもらった。最終的に小学校874名,中学校564名,高等学校147名の発達障害のある児童生徒のサンプルを得た。主成分分析の結果5成分が抽出され,各成分への負荷が高い項目からその意味を検討した。成分1–5はそれぞれ「指導全体」「社会的コミュニケーションの指導」「生活基盤の指導」「自己効力感の指導」「言語コミュニケーション・学習習慣の指導」と名付けた。各成分得点は,児童生徒の学校種と障害種の要因の影響を受けていることが示唆された。これらの結果は,発達障害通級での自立活動に相当する指導の内容や専門性をより良く理解するために役立つと考えられる。
  • 大西 正二, 小菅 英恵, 熊谷 恵子
    2022 年 31 巻 1 号 p. 34-45
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/28
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    漢字書字が困難な学習障害児61名において,見本の漢字を視写(見本を見て書き写す)するまでの6つの工程(①注視点の移行,②形の記憶,③画要素,④筆順,⑤書字運動,⑥視写結果)におけるつまずきの傾向について,10検査(13項目)の結果から階層的クラスター分析を行い,4群に分けられた。4群の集団的特徴を把握するため,Kruskal-Wallis検定を行った結果,第1クラスターは①注視点の移行,②形の記憶,⑤書字運動,第2クラスターは①注視点の移行,③画要素,第3クラスターは②形の記憶,③画要素,④筆順,⑤書字運動,第4クラスターは①注視点の移行の工程に問題がみられる群であることが示唆された。漢字書字が困難な児童の苦手な工程を補い,それぞれの特徴に合わせた学習支援が重要である。しかし,通常学級に存在することが多い学習障害児に対する視写の工程の詳細な評価が困難な学校現場においては,視写の工程のすべてを補う学習支援が必要だろう。
  • 児童自身が主体的に参加することを通して
    黒瀬 圭一, 野田 航
    2022 年 31 巻 1 号 p. 46-57
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,小学校5年生学級において,学級規模ポジティブ行動支援を実施し,その効果を検証することであった。学級規模ポジティブ行動支援では,学級目標をもとに学級担任と児童が共同でポジティブ行動マトリクスを作成し,目標行動を決定した。その後,特に集中的に改善に取り組む目標行動として,学級担任が話し出したときにきりかえて話を聞く行動(きりかえ行動)と児童同士で教え合う行動を選定した。その後,これらの目標行動に対して行動支援計画表を作成し,介入を実施した。介入実施中にも,児童と取り組みの経過を確認しながら介入方法を修正していった。介入効果を検証するために,きりかえ行動の回数および教え合い行動をしたことを報告するカードの枚数を測定した。また,日本版SLAQ(大対ら,2013)も実施した。介入の結果,目標行動が増加し,学校肯定感も有意に向上したことが明らかとなった。
  • 「教科の内容を取り扱いながらの自立活動の指導」の全国調査結果から
    海津 亜希子, 玉木 宗久, 榎本 容子, 伊藤 由美, 廣島 慎一, 井上 秀和
    2022 年 31 巻 1 号 p. 58-74
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    発達障害を対象とした通級での自立活動において教科の内容を取り扱いながらの指導の実態を調査した。通級担当者に任意の1名について回答を求め小学校952名,中学校613名,高等学校173名の児童生徒の回答を得た。教科の内容を取り扱いながらの自立活動の指導の実施について「有り」と回答した割合は,小学校70.3%,中学校76.3%,高等学校25.4%であった。指導の内容は小・中学校のLD,ADHD,ASDいずれの障害種でも「基礎的な学習スキル」,次に「授業への参加の不安を取り除き参加意欲を促すための振り返りや先取り」が高かった。一方「特定の代替手段の使い方」「定期試験,テスト等を受ける際に必要なスキル」は40.0%に満たなかった。自立活動の区分において,50.0%を超えたのはいずれの障害種においても「心理的な安定」であった。また自由記述で求めた課題では「通常の学級との連携」に関するものが24.5%みられた。
  • A県の結果から
    村瀬 公胤, 武田 明典, 池田 政宣, 北島 善夫
    2022 年 31 巻 1 号 p. 75-86
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/28
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    本研究の目的は,2019年から教職課程に特別支援教育に関する科目が新設されたことを受けて,現職教員の意識調査を行い,当科目の充実に貢献する資料を提供することである。そのために,「教職課程コアカリキュラム」が示した当科目の8つの到達目標に基づく質問紙を作成し,小・中・高等学校および特別支援学校の教員472名を対象に調査分析を行った。選択回答の結果および自由記述回答のテキストマイニングの結果から,学校種ごとの特別支援教育の意識として,小学校では個別の指導計画を中心に連携支援体制を構築して児童の発達を促すこと,中学校では支援方法を幅広く知って生徒の学習に最善の対応を模索すること,高等学校では言語や貧困等の困難も含めて生徒の多様な問題を捉えること,特別支援学校では発達特性や学習過程の理解を通して子どもに寄り添いながら将来に応えていくこと,という像が抽出され,教職科目への示唆を得られた。
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