LD研究
Online ISSN : 2434-4907
Print ISSN : 1346-5716
34 巻, 1 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 木原 陽子, 石川 信一
    2025 年 34 巻 1 号 p. 55-67
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/25
    ジャーナル フリー
    自閉スペクトラム症(ASD)がある者はQOLの低さ,二次障害や併存症のリスクが問題となっている。そこで本研究では,教育と疑似体験による介入(Inclusion Program through ASD Simulation: I-PAS)の,ASDに対するスティグマ軽減の効果を検討した。介入は,大学生54名(実験群26名,統制群28名)を対象とした。実験群はASDがある者と健常者との類似点や支援方法についての講義と,視覚鈍麻,聴覚過敏,触覚鈍麻状態での作業による疑似体験を組み合わせたI-PASを,統制群は実験群と同じ講義と通常の感覚状態での作業を実施した。結果,I-PASによる,ASDがある者と関わる場面に対する嫌悪感情の低下,場面後のASDがある者への今後の接近欲求の改善が示唆された。合理的配慮が義務付けられた現状を踏まえると,本研究の大学における有用性が示唆される。
  • 渡邊 由季, 末田 慶太朗, 橋本 竜作, 柳生 一自
    2025 年 34 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/25
    ジャーナル フリー
    ディスレクシアの評価・診断には標準化された検査を用いることが必須であり,KABC-Ⅱ読み尺度と稲垣ら(2010)のガイドラインの音読検査(単音連続読み,有意味語と無意味語の単語速読,単文音読の4検査;以下,速読検査)が有用である。適切な心理検査バッテリーの検証を目的とし,読み書きの苦手さを有する小中学生50名を対象に,KABC-Ⅱ読み尺度と速読検査の音読時間との関連を検証した。結果は,速読検査の有意味語,単文のみ読み尺度と負の相関が認められた。さらにKABC-Ⅱ読み尺度が正常である70以上と正常範囲内であっても,速読検査の音読時間が学年平均の+2SD以上の遅延が,単音80%,有意味語81%,無意味語91%,単文71%に見られた。両検査とも読みの正確性の評価ができ,加えてKABC-Ⅱでは読解力を,速読検査では流暢性を評価できることから,各検査の特性を理解し評価に用いることが重要である。
  • 荻布 優子, 川﨑 聡大, 岡野 由美子
    2025 年 34 巻 1 号 p. 74-85
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,大学生の大学適応感および学業成績に対する基礎的な読み書きスキル,主観的な学修困難感の影響を検討した。教育系大学生88名に基礎的な読み書きスキルとしてRaWF(高橋・三谷,2022)黙読課題・視写課題を集団実施,学修困難尺度(LDSP28;高橋・三谷,2022)・大学生用適応感尺度(大久保・青柳,2003)・累積GPAはGoogleフォームにて回答を求めた。結果,学業成績に対する読み書きスキル,学修困難感の影響は見いだされず,適応感は学修困難感の有無により有意な差がみられた。大学では目指すキャリアにより学修困難感は異なると考えられ,今回の結果にはカリキュラム特性も反映されていると考える。少なくとも大学生では学修の問題が顕在化してから直接検査の結果をもとに支援を検討するだけでなく,入学後から学修困難感を把握し,学生支援の一環として大学適応を見据えた予防的介入も有益である可能性が示唆された。
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