LD研究
Online ISSN : 2434-4907
Print ISSN : 1346-5716
最新号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 大谷 康太, 三盃 亜美, 福田 有美
    2024 年 33 巻 1 号 p. 56-69
    発行日: 2024/02/25
    公開日: 2024/02/25
    ジャーナル フリー
    日本の大学生・大学院生39名を対象として英語と日本語の読み書き検査および音韻能力,自動化能力,視覚認知能力,語彙力を評価する認知・語彙検査を実施し,英語を苦手とする学生の認知能力と日本語の読み書き能力との関連性について検討した。その結果,外国語としての英語であっても,読み書きと英語の音韻能力の間には強い関連性が示されたと同時に,英語を苦手とする学生は,特に音素単位での音韻認識を必要とする課題で低成績を示した。一方で,英語または日本語,あるいはその両方を苦手とする学生それぞれにおいて,低い認知能力の種類や程度には乖離がみられた。また,日本語では問題がなく英語のみで読み書き成績が低く,認知面でも弱さがみられた対象者が複数存在したことから,今後,環境要因や学習量では説明できない外国語としての英語の読み書き困難について知見を蓄積し,そのアセスメントや合理的配慮について検討していく必要性が見出された。
  • 共感性の自己指向・他者指向および障害児者とのかかわり経験に着目して
    澤山 郁夫, 高橋 彩, 丹治 敬之
    2024 年 33 巻 1 号 p. 70-80
    発行日: 2024/02/25
    公開日: 2024/02/25
    ジャーナル フリー
    近年の研究から,ADHD特性を有する児童は,学習に集中するために身体運動を行ったり,課題に無関係な刺激を欲したりしている可能性が示唆されている。本研究では,このような背景の下,これらに関係すると思われる子どもの諸行動が授業中に見られた場合にどの程度やめるよう強く介入するかといった小学校教員の介入意識の規定因について検討した。その結果,(1)対象児にADHD特性の情報がある場合には,特性情報がない場合と比較して介入意識が弱まること,(2)「視点取得」や「他者指向的反応」といった他者指向的な共感性の高さは,ADHD特性を有する児童の無意識的行動に対する介入意識を弱める一方で,特性情報のない児の意識的行動に対する介入意識を強める可能性,(3)重度重複障害児者とのかかわり経験は,「自己指向的反応」の抑制を通じて,特性情報のない児の意識的行動に対する介入意識を弱める可能性等が明らかとなった。
  • 当事者・親への聞き取り
    松本 敏治, 橋本 洋輔, 野内 友規
    2024 年 33 巻 1 号 p. 81-91
    発行日: 2024/02/25
    公開日: 2024/02/25
    ジャーナル フリー
    近年,ASDの方言不使用という印象が全国で見られるとする報告がなされており,解釈の一つとしてメディアからの言語習得を指摘する意見があるが,否定的見解も存在する。この解釈が妥当であるなら,自然言語とメディア言語に乖離がある国や地域では類似の現象が生じる可能性があり,アイスランド・北アフリカからはこの解釈を支持するような報告がある。本論文では,4名のアイスランドのASD青年・成人に関して,本人および母親に行った聞き取りの結果を報告する。4名とも初期はアイスランド語を話していたものの現在は英語が主要言語となっている。本人・親ともに,興味をもった英語メディア・コンテンツの繰り返し視聴によって英語習得が行われたと認識していた。これらの聞き取りとアイスランドにおけるアイスランド語と英語の使用状況の情報に基づいて,ASDのメディアからの言語習得の可能性とその成立条件を検討した。
  • 吉村 匡, 相羽 大輔, 飯塚 一裕
    2024 年 33 巻 1 号 p. 92-102
    発行日: 2024/02/25
    公開日: 2024/02/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,高等学校教員が,ディスレクシア生徒に合理的配慮を提供する際に抱く負担感を明らかにし,負担感なく支援するための方策を考察することである。そのためA県の全県立高校151校に郵送法による個別質問紙調査を実施し,110校868名から回答を得た。分析の結果,教員の負担感は考査,授業,教材の多次元からなることが明らかになった。さらに,各負担感に関連する個人要因をχ²検定により検討した。考査では教科が有意傾向で実技系教科に負担感の軽い者が多いことが示された。授業では,研修受講歴に有意差が認められ,有群に軽く無群に重く感じる者が多かった。教材では,教科・体制・配慮実績に有意差が認められ,教科では実技系に軽く理系に重く,体制整備群に軽く不備群に重く,実績有群に軽く無群に重く感じる者が多かった。これを踏まえ負担感低減には,研修内容の見直しや教材の共同制作・アーカイブ化等の方策が提案できる。
  • Keiko Nogami, Takahiro Yamane
    2024 年 33 巻 1 号 p. 103-113
    発行日: 2024/02/25
    公開日: 2024/02/25
    ジャーナル フリー
    Background: Anxiety symptoms are common in children with developmental disorders(CDD), such as autism spectrum disorder (ASD) and attention deficit hyperactivity disorder (ADHD). Studies have indicated that maternal anxiety and overprotective parenting are associated with the anxiety of children with typical development (CTD); the same factors might influence CDD’s anxiety. Methods: The hypothetical model of the influence of maternal factors, adding subscales of Sense of Coherence (SOC), on anxiety symptoms in CDD and CTD was examined. Mothers of CDD (n = 76) and CTD (n = 292) aged 6 to 15 were participants in the survey in Japan. Results: Multi-group path analysis indicated negative paths from SOC subscales to maternal anxiety and positive paths from maternal anxiety and overprotection to child anxiety in both groups. However, there were differences in the associations among maternal anxiety, overprotection, and SOC subscales between CDD and CTD mothers. Limitations: Limitations of this study are the assessment methods and the disproportionate group size. Conclusions: Our results indicated the similarities and differences within the models of maternal factors-based anxiety mechanisms in CTD and CDD.
feedback
Top