景観生態学
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13 巻 , 1_2 号
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特集:景観生態学的手法による自然再生―丹沢大山総合調査の事例から―
  • 原 慶太郎, 山根 正伸
    原稿種別: 特集
    2009 年 13 巻 1_2 号 p. 1-4
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
  • 山根 正伸, 田村 淳, 内山 佳美, 笹川 裕史
    原稿種別: 特集/原著
    2009 年 13 巻 1_2 号 p. 5-13
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    丹沢山地におけるブナ衰退機構を検討するため,2002年から2004年にかけてマクロ,メソ,サイトの3つの空間スケールでブナ林を現地調査し,林分構造および衰弱と枯死の両方を含んだブナ衰退の現状についてGISを用いて定量的に解析した.マクロスケールの調査から,ブナ林のブナ混交率は大半が30%以下であり,樹高,平均胸高直径および立木密度を基準におおむね3つの地域に区分できることを示した.ブナの衰退は,東丹沢から丹沢中央の標高が1400 mを越える主稜線部にかけて進み,西丹沢や東丹沢の北側に位置する地区などで少なかった.衰退が進行する地区には,高標高地や平坦地のブナ林が多かった.また,平均日射指数が高いほど,もしくは土壌水分指数が低いほど,衰退が進んでいた.衰退が進行する丹沢山と檜洞丸の山頂一帯におけるメソスケールの調査からは,南から西向き斜面でブナの衰退が進む傾向が示された.また,林分調査の調査から,衰退が進む地点では,ブナ以外の樹種の樹勢低下やブナ高木の集団的な衰退を認めた.以上の衰退現況を踏まえた,丹沢山地のブナ衰退要因の空間階層的な関係を検討し,今後の研究課題を整理した.
  • 笹川 裕史, 鈴木 透, 山根 正伸
    原稿種別: 特集/原著
    2009 年 13 巻 1_2 号 p. 15-22
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    森林における景観パッチの空間パターンは,生物の生息状況に大きな影響を与えることが明らかになっており,生物多様性の維持には景観的な視点からの解析が要求されている.近年,私有の人工林では管理放棄が広範囲に認められ,パッチの質の低下に加えて生物の生息に好適とはいえない空間パターンの形成が進み,人工林景観における生物多様性の低下が懸念されている.本研究では,人工林管理政策の違いが将来的なランドスケープ構造にどのような影響を与えるのか,生物多様性保全の観点から評価を行うことを目的とした.森林管理ランクが明らかな神奈川県丹沢山地の民有人工林を材料として,異なる3つの間伐方針をシナリオとしたシミュレーションを行った.シナリオごとに時系列的に創出されるランドスケープの変化について,手入れランクの異なる林分パッチの形状,パッチ密度,近接性,分断度を測定し,生物多様性への有効性を検討した.その結果,現行の2種類の間伐方針に沿った森林管理はいずれも生物多様性の保全に効果的だと考えられたが,どちらがより効果的かは断言できなかった.
  • 森 康二, 多田 和広, 伊藤 洋, 鈴木 透, 山根 正伸
    原稿種別: 特集/調査研究報告
    2009 年 13 巻 1_2 号 p. 23-28
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
  • 鈴木 透, 山根 正伸, 笹川 裕史, 原 慶太郎
    原稿種別: 特集/原著
    2009 年 13 巻 1_2 号 p. 29-37
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    生物多様性の保全対策を検討するためには,ホットスポットの抽出・分析は有用な手法である。そこで,豊かな自然を有する一方でブナ林の衰退やニホンジカの過密化など生物多様性の危機に瀕している丹沢大山地域において,生物多様性のホットスポットの抽出とその空間パターンの分析を行い,生物多様性の保全対策の検討を行った.本研究では,集約的な調査によりデータベースが作成されている植物を対象として,生物種の分布と生息環境の変化の2つの観点から4種類のホットスポットの抽出を行い,MoranのI統計量による空間的自己相関とホットスポット間の重複率を算出することによりホットスポットの空間パターンを分析した.さらに現行の保全対策地域と抽出されたホットスポットを重ね合わせるGap分析を行った.その結果,生物種に関する3つのホットスポット(種数・希少種・固有種)と生息環境に関するホットスポットについて,空間的自己相関は見られなく,明確な空間パターンは認められなく,生物多様性の価値が高い地域は全体的に分散している一方で,生物多様性の悪化が懸念される地域も全体的に分散していることが示唆された.また,ホットスポット間の重複率を算出した結果,生物種に関する3種類のホットスポットに関しては,すべてのホットスポットが重複している割合が12.3%と低く,ホットスポットの抽出には多様な指標を用いて評価し,保全対策を検討する必要があると考えられた.さらにGap分析の結果,特別保護地区は生物種に関するホットスポットが多く分布している一方,生物種のホットスポットは特別保護地区ではない地域にも多く分布しており,特別保護地区は生物多様性の保全に有用な対策であると考えられるが,現在の設定地域だけでは十分でなく,現在設定されている地域についても生息環境の悪化が進んでいる地域が周辺にあるため注意が必要であることが示唆された.このように丹沢大山地域の生物多様性について様々な視点で評価した結果,ホットスポットは地域全体に分散しており,評価する指標により場所も異なることから,1つの観点からの対策ではなく,多様な対策を行う必要があると考えられた.
  • 雨宮 有
    原稿種別: 特集/調査研究報告
    2009 年 13 巻 1_2 号 p. 39-44
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
原著
  • 岡 浩平, 大熊 麻実子, 吉崎 真司
    原稿種別: 原著
    2009 年 13 巻 1_2 号 p. 45-54
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    神奈川県湘南海岸の東町地区は,汀線の伸張および海浜植物群落の面積の拡大が認められており,今後,海浜植物の重要な生育環境になることが期待される.そこで,東町への種子の供給源となりうる範囲を明らかにするために,海流散布による種子の移動距離と漂着種子・地上植生の種組成について調査を行った.種子の移動距離の把握は,ツルナ種子を5地点から放流することによって調べた.漂着種子の種組成は,東町への漂着物に含まれる漂着種子から把握した.その結果,東町周辺で種の豊かな海浜植物群落が残存する“こゆるぎの浜”および“辻堂西海岸”からの放流では,種子の移動距離が短かった.そのため,この2地点からは,短期間しか海流散布ができない種の東町への供給は困難であると推測された.一方,花水川河口から放流した場合は種子の移動距離が最大1180 mであり,他の地点と比べて長距離移動していることが確認された.そのため,花水川河口周辺の海浜からは,短期間しか海流散布できない種も東町への供給が可能であると推測された.このことから,東町への種子の供給源となりえる海浜は,各海浜植物の種子の浮遊能力によって異なると考えられた.また東町への漂着種子は56種が確認され,そのうち海浜植物はハマヒルガオやコウボウムギなど5種が確認された.これらの5種は長期間の海流散布が可能であり,さらに地上植生にも確認された.このことから,周辺からの海流散布による種子の供給が東町の海浜植物群落の形成に貢献していると考えられた.
  • 鈴木 弘之
    原稿種別: 原著
    2009 年 13 巻 1_2 号 p. 55-69
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    鳥類を指標として河川流域の環境評価を試みるため,鳥類群集構造と景観要素としての河川の地形と土地被覆がどのような関連があるのか解析した.また,この結果から河川環境の保全のためには何が必要であるのかを検討した.調査対象地域を植生などの土地被覆と高水敷などの微地形で構成される景観要素の連続した空間をまとまりととらえて55区域に分類し,この区域毎の鳥類群集構造を多変量解析を用いて分析すると夏期は5つに,冬期は水鳥群集と陸鳥群集にわけるとどちらも4つに類別化される傾向が見られた.区域毎の鳥類群集と環境要因において相関をみると,水際から堤防表法尻(先)までの陸地横断距離が長いほど,自然被覆要素数が多いほど,水際から堤防表法尻(先)までの勾配がゆるやかなほど種数が多い傾向がみられた.また,陸地横断距離が長いほど,自然被覆要素数が多いほど鳥類の多様度が高くなる傾向がみられた.類別化されたグループのうち,鳥類の種数および多様度との間で有意差が見られた環境要因の数値について,最も相関値の高いグループから,該当地域河川環境における鳥類多様性の保全指標となる鳥類種をギャップ分析の結果も含め抽出した.この結果夏期については9種を,冬期の山野性鳥類においては2種を対象種とした.全国各地の河川において,ダムや堤防の構築,河川改修や拠水林の伐採など過去から現在に至るまで河川環境の改変が続いている.やむを得ず堤防を構築するなどの改変が必要な場合には,砂礫地から河畔林までの自然被覆要素を多く残せるように,水辺から堤防まで少なくとも100 m以上の陸地横断距離と,陸地横断距離方向の勾配をなるべく緩く確保することが鳥類を指標とした河川環境の保全のために必要である.
  • 杉山 智治, 須崎 純一, 田村 正行
    原稿種別: 原著
    2009 年 13 巻 1_2 号 p. 71-85
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,希少猛禽類クマタカの保全・保護対策のために,クマタカの生息適地推定モデルを構築し山形県内における生息適地分布図を作成した.本モデルでは対象地域をグリッドで分割し,個々のグリッドに対して周辺の地形・植生状況を表現する各種指標値を与えて生息地としての適否を推定した.従来の研究では,約5 km×5 kmのグリッド内の,平均標高・平均傾斜・最低標高等の地形指標が主に用いられていた.しかし本研究では,クマタカの生息環境をより的確に表現するため,クマタカの生息に重要とされる谷地形の分布状況を表現する指標等,全部で13種類の地形・植生指標を対象とした.また,詳細な生息適地分布図を作成するためグリッドサイズを50 mとした.なお,各指標が集計対象とする周辺範囲の広さによって指標の環境説明力が変化するため,既往の研究を参考に,集計対象範囲を各グリッドから半径0.5 km,1 km,1.5 km,3 kmの円内の4通りに設定した.各指標値の算出には国土地理院の数値地図50 mメッシュ(標高)および環境省の現存植生図(1/50,000)を用いた.最適モデルの選択においては,ロジスティック回帰分析を用いて各地形・植生指標を組み合わせたモデル式を作成し,各々の適合度や推定精度等を比較した.その結果,周辺半径1 kmの谷地形の分布状況を表す指標と周辺半径3 kmの樹林地の面積割合を表す指標を組み合わせたモデルが最適モデルとして選択された(Overall accuracy 91.8%).さらに,最適モデルにもとづいて作成した生息適地分布図を5 kmグリッド化したものとクマタカ確認情報分布図を比較すると,概ね高い精度(Overall accuracy 89.0%)で一致し,推定された生息適地の大部分においてクマタカの確認情報が存在していることが判明した.以上より,本研究で作成したモデルは高い精度で生息適地を推定できており,クマタカの生息適地推定には谷地形の分布と樹林面積に着目することが重要であるといえる.
  • 松林 健一, 日置 佳之, 長澤 良太
    原稿種別: 原著
    2009 年 13 巻 1_2 号 p. 87-104
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    効率的かつ正確な現存植生の推定図化を目的として,データ処理方法の検討と作成した図の精度評価を行った.事例研究地は,ブナクラス域とヤブツバキクラス域上部の自然植生と代償植生が分布する鳥取県と兵庫県の県境域に位置する6 km×6 kmの正方形の領域とした.衛星データから作成した土地被覆分類図と,標高,斜面形状,累積日射量,最大積雪深等のGISデータから作成した潜在自然植生推定図をオーバーレイして現存植生推定図を作成した.作成した図の精度評価のためκ係数を算出したところ,現存植生推定図はκ係数精度が0.21以上となる範囲が,図化対象域の89%を占めた.こうした領域では推定結果と現地確認した植物群落分布との対応が比較的良く,一定の図化精度で現存植生推定図を作成することができた.
  • 金澤 洋一, 上村 真由子, 福井 美帆
    原稿種別: 原著
    2009 年 13 巻 1_2 号 p. 105-111
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    アベマキ・コナラを中心とする里山薪炭林からの薪による家庭へのエネルギー供給量を推定した.兵庫県宍粟市の中山間地域に位置する集落において,聞き取り調査から「分け柴」と呼ばれる薪の採取システムを明らかにし,現地林分の伐倒による現存量調査から「分け柴」に必要な面積を計算した.またこれらの結果にもとづいて,「分け柴」によるエネルギー供給量を推定した.その結果,毎年,20~30 GJ程度が薪により供給されていたことがわかった.この量は,現在日本の一般家庭で消費されるエネルギー量である43 GJの半分あるいはそれ以上に相当し,現在でも「分け柴」によって日本の一般家庭が必要とするエネルギー量のかなりの部分を供給できることがわかった.「分け柴」として利用されていた面積は集落が利用してきた土地のごく一部で,本集落50世帯でも14 ha程度と推定され,現在残されている広葉樹林でも十分に足りることがわかった.
短報
  • 森本 淳子, 竹位 尚子, 佐藤 弘和, 金子 正美, 中村 太士
    原稿種別: 短報
    2009 年 13 巻 1_2 号 p. 113-121
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    洪水や水質への対策が求められる北海道白老町のウヨロ川流域を事例地として,北海道の「森林機能評価基準」の検証を行った.戦後の復興期,高度経済成長期後,そしてバブル経済崩壊後の3つの年代を取り上げ,3小流域の水土保全機能の評価点と,社会的背景とそれに伴う植生変化との整合性を調べた.その結果,一斉皆伐により,一時的に水土保全機能の評価点が大きく低下すること,森林が採石地に転換された場合は,長期的に水土保全機能の評価点が低下する要因になりうること,水土保全機能のなかでも,渇水・洪水緩和機能の評価点が森林開発に対してもっとも敏感に反応すること,水質保全機能の評価点は,急傾斜地の渓畔域が広く開発された場合に大きく低下することがわかった.3小流域の水土保全機能の評価点は,社会的背景とそれに伴う土地利用変化からは概ね解釈可能なものであった.一方,他の小流域の評価点との比較から課題も浮かび上がった.評価点算出の手順の単純化と,最終的な評価点に対する判断基準の明示が,より市民にとって分りやすい評価基準とするために必要である.
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