景観生態学
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17 巻 , 2 号
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総説
  • 石松 一仁, 伊東 啓太郎, 三谷 康範
    原稿種別: 総説
    2012 年 17 巻 2 号 p. 31-41
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2013/01/09
    ジャーナル フリー
    生物多様性だけでなく我々の生活の豊かさを保つために極めて重要な都市緑地は,人工的な空間に置き換えられている.その最大の原因である急速な都市化は,都市緑地に悪影響を及ぼし続け,ヒートアイランド現象に代表される局所的な気候変動まで引き起こしている.さらに,都市域において野生動植物の生息地の断片化・孤立化は深刻であり,この変化に適応できない生物種は絶滅に追いやられている.そのため,単に緑地の総面積を増やすだけでなく,残存する緑地間のネットワーク性強化が,弱体化した生態系サービスを復元する有効な手法であると考えられる.しかしながら,都市の過密化により緑地を創出するためのスペースはほとんど残されていない.以前は緑化空間として見なされていなかった建物の屋上に近年注目が集まり,景観生態学・緑化工学分野において屋上緑化技術は次第に発展してきている.本総説は,我が国と英国の屋上緑化の事例を比較しながら今後の屋上空間の可能性について調査すると同時に,生物にとって厳しい条件下で生物多様性を保全するための緑化手法を提案することを目的とした.その結果,我が国のセダムやシバによる単一植栽による粗放型屋上緑化は,生態学的価値が低いだけでなく期待されている室内熱環境改善効果も大きくないため,英国で普及しているブラウンルーフに切り替えた方が,生物多様性保全や室内熱環境の観点から,より有益であることが示唆された.さらに,集約型屋上緑化は残存する緑地間に飛び石のように配置することで,ネットワーク性を強化することができると考えられた.しかしながら,屋上空間に到達できない生物種が存在する等の理由から,屋上と地上の緑地を同等に評価することは難しい.また,地上を覆っているアスファルトやコンクリートなどの不透水層をブラウンフィールドのような透水層に切り替えることができれば,生物多様性保全とヒートアイランド現象緩和の両方に大きく貢献できると考えられた.
  • 佐々木 剛
    原稿種別: 総説
    2012 年 17 巻 2 号 p. 43-55
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2013/01/09
    ジャーナル フリー
    1990年代以降大きく発展してきた航空機LiDAR(レーザ画像検出と測距)技術は,上空から地上に向けて多数のレーザを発射し,3次元位置情報を直接的に取得する測量技術である.森林のモニタリングにおいては林冠の表面だけでなく,林冠の隙間を透過したレーザにより,樹林内部の構造の推定が可能と期待される.本論では,航空機LiDARを用いて森林構造を推定したこれまでの研究事例について紹介し,近年の研究の動向や今後の課題について論じた.既往研究では,LiDARデータを用いて樹高や林冠高,樹冠直径,バイオマス,幹材積,植被率,葉面積指数,3次元葉群分布の推定や,樹種の分類などが行われてきた.近年の研究で関心が持たれている事項としては,LiDARの仕様の違いなどに影響を受けにくい,より頑健性の高い推定方法の開発や,光学センサなど他のタイプのデータと組み合わせた解析,野生動物のハビタットとしての森林構造の解析などが挙げられる.LiDARデータの利用にあたっては,その取得にかかるコストがしばしば問題となるが,既存のLiDARデータセットの共有化や公開が進みつつある.今後はLiDARデータの実用化に向けて,多様なタイプの森林の構造を高い精度で推定する手法の確立が望まれる.
  • 内藤 梨沙
    原稿種別: 総説
    2012 年 17 巻 2 号 p. 57-73
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2013/01/09
    ジャーナル フリー
    世界的な両生類の減少が注目されるようになってから約20年間,世界各地で両生類の減少理由や生態に関する研究が行われ,様々な情報が蓄積されてきた.減少の理由は生息する地域や種によって異なるが,主に,生息地である湿地の減少や分断化,環境汚染であると考えられている.日本においてもその例外ではなく,天然湿地や森林の開発などによる両生類の減少が進んでいる.日本の里山景観においては,湿地性生物の生息地の代替地として水田が重要な役割を果たしてきた.しかし,農業の近代化や耕作放棄地の増加に伴い水田環境が変化し,日本固有の水田生態系を代表する生物が絶滅危惧種に指定されるようになった.カエル類の多くは環境汚染に敏感であり,また生活史の中で水陸両域を必要とするため,水田環境の変化を反映する環境指標種として期待されている.その中でも絶滅危惧種IB類に指定されている日本固有種ナゴヤダルマガエルは水田環境に強く依存し,農業依存種の代表とされている.本種の生息場所は水田地域に限られているため,具体的な保全計画策定に向けて,水田における本種の生態に関する研究が求められている.本種の減少理由は水田における水管理の変化,圃場整備による乾田化,近縁種であるトノサマガエルとの交雑などが指摘されている.本種は一年を通して水田に留まり,繁殖活動や幼生の生存率などは水田の水管理に強く影響されている.また,水辺からほとんど離れない性質を持つため,成体の生息地利用は水田周辺の水辺環境(素掘りの水路や,ビオトープなど)の有無や湛水期間に影響されている.また,畦は水田地域における重要な陸域環境として利用されており,本種による微生息地利用の研究は今後の畦管理について示唆を与えるものである.本論文では,両生類の置かれている状況,水田環境とカエル類の関係,農地における生物の保全,ナゴヤダルマガエルの生活史や生態を整理し,カエルの水田における保全,特にナゴヤダルマガエルの保全に向けた提案を行った.
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