景観生態学
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18 巻, 2 号
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特集「人工林景観における自然林化計画論」
  • 山川 博美, 日置 佳之, 鎌田 磨人, 伊藤 哲
    原稿種別: 巻頭言
    2013 年 18 巻 2 号 p. 79-81
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
  • 河野 裕之
    原稿種別: 技術情報
    2013 年 18 巻 2 号 p. 83-88
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
  • 千布 拓生, 日置 佳之
    原稿種別: 原著
    2013 年 18 巻 2 号 p. 89-108
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    2009年の自然公園法改正で同法の目的に「生物多様性の確保に寄与すること」が明記され,自然公園が生物多様性の保全に大きく貢献していくことが期待されている.そのため,今後は各自然公園において生物多様性の保全・再生に関する面的計画の立案と実行が求められる.本研究では大山隠岐国立公園大山蒜山地域の奥大山地区を事例として,GISを用いて生物多様性の保全・再生に必要な多種類の情報を併せ持った植生データベ-ス(DB)の構築を試みた.この植生DBはベクター型電子地図とその属性情報によって構成されている.植生DBのポリゴンの境界線は,基本的には林野庁または鳥取県が作成した森林基本図の小班の境界線をもとに描き,森林簿が有する属性情報を取り入れた.また,各小班は必要に応じて現況の土地被覆・植生に合わせて細区分し,これを『植生パッチ』として植生DBの最小単位とした.本研究で作成した植生DBは以下の特長を有している.①縮尺1/5000で,詳細な土地被覆や植物群落の情報を含み,植生管理などに用いることができる.②過去4時期(1958年・1974年・1996年・2012年)の土地被覆履歴に関する情報を有し,植生遷移や土地被覆の変遷を把握できる.また,それをもとに将来の植生遷移の動向を推定することができる.③土地所有や国立公園の保護規制計画などの情報を有し,地域性の自然公園の管理に有用である.
  • 鎌田 磨人, 三幣 亮, 岡 和樹
    原稿種別: 原著
    2013 年 18 巻 2 号 p. 109-122
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    徳島県全域の人工林を対象とし,土地の生産性と山地災害リスクに基づく森林ゾーニングを広域的に行っていくための手法を提示した.1)まず,Mitscherlich式を用いて地位階級を決定した.そして,地形・気象因子から地位階級を推定する順序ロジットモデルを構築し,それを用いて土地の生産性評価地図を作成した.生産性評価地図と作業の効率性に係る評価地図とオーバーレイすることで人工林としての持続性評価地図を作成した.2)斜面崩壊が生じた地点記録と地形,降水量,植生から,Maximum Entropy Model(Maxent)を用いて斜面崩壊確率を推定し,斜面内における宅地,道路・鉄道,農耕地の有無とあわせて山地災害リスク評価図を作成した.徳島県によって示された自然林を拡大していくための方針図とオーバーレイすることで,自然林への誘導優先度に係る評価地図を作成した.Maxentの結果から,自然林面積を多くすることで斜面崩壊確率を下げられることが判明したので,人工林から自然林に転換することで生態系修復と山地災害リスクの低減を同時に達成することができる.3)最後に,人工林としての持続性評価地図と自然林への誘導優先度評価地図をオーバーレイして,a)経済林として人工林を維持する領域,b)自然林に誘導していくべき領域,c)経済林として人工林を維持するか自然林に転換するかでコンフリクトが生じる可能性がある領域,d)新たな投資を行わず現状維持とすべき領域に区分して提示した.ゾーニングのための閾値設定の際には意思決定が必要であるが,本手法では,個々の閾値が決められさえすれば修正は容易で,合意形成の過程で順応的にゾーニング案を作成することができる.また,ゾーニング過程での空間モデルに用いた情報は,国や自治体によって蓄積・公開されているものであり,どの自治体でも適用可能である.
  • 光田 靖, 伊藤 哲, 家原 敏郎
    原稿種別: 原著
    2013 年 18 巻 2 号 p. 123-137
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    人工林から自然林への再転換を考慮した森林の再配置戦略を設計するための手法として,モントリオール・プロセスの基準・指標に対応した持続的な森林管理に向けた広域ランドスケープデザインのための地域スケールゾーニング手法を提案した.提案したコンセプトに基づいて,茨城県北茨城市および高萩市にまたがる約18,500 haの流域を対象範囲として,実データを用いたゾーニングの実践を試行した.木材生産機能と生物多様性保全機能に着目し,対象流域を構成する80の小集水域に対して森林管理目的(木材生産,生物多様性保全および両者の調和)を設定するゾーニングを行った.木材生産機能に対して林地生産力および台風災害危険度を,生物多様性保全機能(特にγ多様性保全)に対してブナ優占林成立適性に基づく植生タイプを,それぞれ自然立地条件から各小集水域について評価してゾーニングの基準とした.試行をとおして,提案した地域スケールゾーニング手法が合理的かつ効率的な森林配置を設計するための意志決定支援ツールとして有効であることが確認された.
  • 伊藤 哲, 木崎 巧治, 光田 靖, 平田 令子, 山川 博美, 三枝 直樹
    原稿種別: 原著
    2013 年 18 巻 2 号 p. 139-147
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    小集水域スケールでの自然林再生候補地の科学的な選定手法を提案することを目的として,九州の低山帯で針葉樹人工林が卓越する小集水域を対象に,木材生産,水土保全,生物多様性保全の3つの管理目的の観点から立地評価を行った.この立地評価結果に基づいて自然林再生の候補地を抽出するとともに,小集水域をさらに分割した下位集水域単位で自然林再生優先度を設定した.この手法により,10 m×10 mの高解像度で対象地内の自然林再生候補地を示すことができた.また,立地評価にAHP法を用いたことにより,異なる管理目的の重要度に応じた自然林再生候補地の設定が可能であり,閾値を変化させた代替案の提示によって,より有効な意思決定支援情報を提供できると考えられた.さらに,小班面積と同等面積の下位集水域に分割して自然林再生の優先度を設定することで,科学的に抽出された自然林再生候補地と,実際の森林管理・計画制度との整合を図れる可能性が示された.
  • 佐藤 妙, 伊藤 哲, 宗円 典久, 光田 靖
    原稿種別: 原著
    2013 年 18 巻 2 号 p. 149-157
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    暖温帯の山地河畔域を対象に,ハルニレとハナガガシを指標として自然林再生優先度を段階的に決定する手法を提示した.優先度決定の第一段階では,樹種特性の異なる2樹種の潜在的分布域を微地形および土地被覆から推定することで,潜在的な共存場所およびそれぞれのハビタットを抽出した.第2段階では指標種2種の潜在的なハビタット適性が高く,かつ現状での個体群の劣化の度合いが大きな場所を抽出することで,対象河畔域の中で河畔林の再生の必要度が高い場所を選定した.第3段階では,種子散布が個体群維持・拡大の制約となるハナガガシについて種子源を考慮した再生優先場所を抽出し,自然のハビタットの分布が著しく制約されるハルニレについては調査地全体でのハビタットの連続性を重視した修復優先区間を抽出した.このような手法を用いることにより,具体的な再生手法を考慮した再生優先場所の設定が可能であり,また河畔林のどのような機能を優先するかといった再生目的の検討においても有効な、包括的支援情報を提供できると考えられた.
原著
  • 望月 翔太, 村上 拓彦, 芝原 知
    原稿種別: 原著
    2013 年 18 巻 2 号 p. 159-171
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    近年,野生鳥獣による農作物被害が増加している.本研究では,新潟県新発田市に生息する,農作物に依存したニホンザルの1群れを対象に,季節による生息地利用と農作物被害発生要因の変化を評価した.2006年から2008年の間に,ラジオテレメトリーによって取得された群れの位置情報を使用した.また,生息地の土地被覆を抽出するため,ALOS/AVNIR-2画像を用いた.両データから,まず群れの季節ごとの生息地利用をManlyの資源選択性指数を用いて明らかにした.また,時期ごとの農作物被害発生要因を評価するため,100 m×100 mメッシュを用いて環境要因を抽出し,ロジスティック型の一般化線形混合モデルを用いて被害発生に関係する環境要因を明らかにした.その結果,生息地利用に関しては,月によって異なり,8~11月に農地への選好性が高まった.群れは農地を採食地として利用しており,群れの利用地域はその時期の利用資源の位置に影響を受けると推察された.8月は森林への選好性が低く,11月は住宅への選好性が見られたことから,森林資源が少なくなる夏期と冬期には特に農地への依存が高まると考えられた.季節ごとの被害の有無と,被害地と資源との関係を推定した一般化線形混合モデルの結果,時期ごとに最適モデルに選択される変数は異なった.森林からの距離は全時期において選択され,重要な被害発生要因であるといえた.森林からの距離以外では,それぞれ時期ごとに利用可能と考えられる資源が選択され(春期:トウモロコシ・畑地・草地,夏期:トウモロコシ・畑地,秋期:カキ),利用資源の空間分布が被害発生に影響すると考えられた.季節ごとに被害発生要因は変化することから,季節ごとの被害に対応した対策を行うことで被害軽減につながる事が推察された.
  • 清水 晶平, 望月 翔太, 山本 麻希
    原稿種別: 原著
    2013 年 18 巻 2 号 p. 173-182
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    イノシシ(Sus scrofa)による農業被害が近年深刻な社会問題となっている.被害の地理的発生要因を解き明かすことは,被害対策を効率的に実施するうえで重要である.本研究の調査地である新潟県上越市柿崎地区では,被害地域が大きく拡大した後,電気柵を設置したことにより,被害地域の縮小に成功している.そこで本研究では,新潟県上越市柿崎地区におけるイノシシ由来の農業被害に対し,被害の拡大前期(2004年~2007年),拡大期(2008年),そして,減少期(2009年~2010年)の3期に分け,3つの期間における被害地点とその周辺の地理的要因との関係を明らかにすることを目的とした.本研究では,「水稲共済損害評価に係る獣害(イノシシ)申告データ」と,現地踏査により作成した土地利用図を使用して分析した.被害地点と被害のない地点について,林縁や河川からの距離など,被害地点の景観構造を示す変数を説明変数としたロジスティック回帰分析を行った.また,電気柵を張る前と後の被害地点についても,同様にロジスティック回帰分析を行った.この結果,林縁,沢,耕作放棄地に近いほど被害が増加する傾向が認められた.河川,道路,都市部に関しては距離が遠いほど被害が増加する傾向が認められた.また,電気柵を設置したことにより,被害の分布が都市部に近づいていることが判明した.イノシシによる被害は見通しの悪い林縁や耕作放棄地の周辺で発生していることが明らかになり,イノシシによる被害対策には,林縁の刈払いや耕作放棄地の管理と個体数調整を同時に考慮した対策を見出す必要性があることを示した.電気柵を設置する場合は,十分な捕獲計画と併用するか,被害がまだ起きていないエリアも全体的に電気柵で一気に囲ってしまうなどの配慮が必要であろう.
短報
  • 阿野 晃秀, 今西 純一
    原稿種別: 短報
    2013 年 18 巻 2 号 p. 183-188
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    近年,生物多様性の保全における企業の果たす役割に期待が高まっている.しかし,多くの企業は生物多様性の保全に着手したばかりであり,企業の生物多様性保全活動の現状を把握した研究は少ない.そこで,企業による生物多様性の保全を効果的に促進する手がかりを得ることを目的に,世界の主要企業を9業種から計180社を選定し,CSR報告書を用いて企業の生物多様性保全活動を分析した.その結果,例えば,業務内容が仕入れならば認証調達,融資ならば融資の意思決定が取り組み易く,メーカーは工場という比較的大きな土地を保有しているために土地利用の改善が取り組み易いなど,業種によって企業を取り巻く条件(業務内容や保有する土地)等が異なるため,企業が取り組み易い活動は業種ごとに異なる傾向があることが明らかとなった.そして,取り組みを促進する条件として「基準や評価指標の明快さ」や「本業との関わりにおける取り組み易さ」,「強制力」の3つが重要であることがわかった.
調査研究報告
  • 金子 是久, 明星 亜理沙, 長谷川 雅美, 宮下 直
    原稿種別: 調査研究報告
    2013 年 18 巻 2 号 p. 189-199
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    In this study, we aimed to investigate the habitat of grassland plants which flower in the spring, compared to the difference of the long-term mowing management of semi-natural grasslands in the Shimousa plateau in the Chiba Prefecture of Japan. In grassland plants which flower in the spring, Ranunculus japonicus and Lathyrus quinquenervius were found in the section mowed 1 time per year according to the May survey. However, the appearance frequency and presence of Potentilla freyniana, Potentilla fragarioides,and Polygonatum odoratum were high in the sections mowed 3~4 times per year. We considered that in Ranunculus japonicus and Lathyrus quinquenervius, their germination and growth are suppressed gradually, their roots decline, and plants will not grow soon. Potentilla freyniana, Potentilla fragarioides,and Polygonatum odoratum have grown under good sunshine with low-medium herbaceous conditions, and have adapted repeating seed dispersal and vegetative propagation in the environment of mowing 3~4 times per year for more than 20 years. Many Luzula capitata and Ixeris dentate were found in the environment that conducted excessive mowing of 10 times or more per year for more than 10 years. These species have developed repeating seed dispersal and vegetative propagation under the environment of intense mowing pressure for a long time, not being suppressed. On the other hand, Pteridium aquilinum, Potentilla fragarioides, Potentilla freyniana, Chaenomeles japonica, and Imperata cylindrica have grown, adapting to the cover of tall herbs.
    We considered that the appearance of grassland plants which flower in the spring has been affected by the differences of continuous mowing frequency for a long time and the presence or absence of the inhibition of high-stem herbaceous plants by mowing frequency after blooming and fruitage.
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