景観生態学
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19 巻 , 1 号
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特集「日本の海浜植生,その現状と将来への提言」
  • 永松 大, 松島 肇
    原稿種別: 巻頭言
    2014 年 19 巻 1 号 p. 1-3
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
  • 由良 浩
    原稿種別: 総説
    2014 年 19 巻 1 号 p. 5-14
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
    砂浜に生じる砂丘地帯には,特有の植生が成立することが知られている.しかし現在の日本では,砂浜とともに砂丘植生は消滅の危機にある.本総説では,過去から現在に至る砂丘地帯の変遷をたどりながら,砂丘植生を危機に至らしめた原因を概説する.100年ほど前の日本には,大きな砂丘のある砂浜が至る所にあったことが古い地図などから読み取ることができる.砂丘地帯に独特の植生が成立するのは,砂の移動による埋もれや傷害,潮風,貧栄養等といった物理・化学的な環境が厳しく,その厳しさに耐えられる植物しか生育できないからである.現在の日本で見られる砂浜は,ほとんどが大きな砂丘のない海岸沿いの細長い砂浜だけである.ここ40年の変化を見ても,砂浜の奥行き(汀線から砂浜の内陸側の境界までの距離)は,4分の1近くにまで減少している.消滅の主な原因は,砂浜の内陸側からの開発と松林の造成である.砂丘のある広い砂浜が,市街地やマツ林に変貌すると,環境が変わり砂丘植生は消滅する.砂浜の海側からも人為的な影響により侵食が進み,後退している砂浜は少なくない.侵食が始まるとそれを防ぐために堤防が造られて,植生だけでなく砂浜そのものがなくなっていることが見られる.最近,砂浜を温存しながら侵食を防止する工法が採用されることがあるが,その工法にも問題が見られる.堤防が造られずに残っている数少ない砂浜も,車の侵入やゴミ投棄,外来種の侵入により影響を受けているところがある.このまま,砂浜の減少が続けば,砂浜を唯一の生育地としている植物だけでなく砂浜独自の動物も絶滅の危機に陥る.
  • 永松 大
    原稿種別: 原著
    2014 年 19 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
    北鳥取砂丘は現在,国の天然記念物や国立公園に指定されており,多くの観光客を受け入れている.しかし,戦後の一時期には砂丘に全面的に植林する計画があり,今日の状態に至るには紆余曲折があった.本研究では,旧版地形図と空中写真読図,鳥取砂丘で過去に行われてきた研究報告と新たな調査をもとに,第二次大戦後の鳥取砂丘の植生変化について論じた.現在残る鳥取砂丘の面積は,100年前の面積の約12%であった.鳥取砂丘の植生は第二次大戦後から現在まで,コウボウムギとケカモノハシが最優占し,その基本構造は維持されていた.鳥取砂丘の植生配置は,A.海浜型砂丘植生地帯,B.無植生地帯,C.凹地植生帯,D.内陸型砂丘植生地帯として認識された.しかし砂丘内には非海浜生の植物が増え,毎年の除草が欠かせなくなるなどの変化が生じた.これらは社会構造の変化と関係していることを論じた.鳥取砂丘の植生と地域社会の動き,両者は強く結びついていることを認識し,これからの鳥取砂丘のあり方を考えていく必要がある.
  • 澤田 佳宏
    原稿種別: 総説
    2014 年 19 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
    環境省第4次レッドリストには「塩湿地植物」の約46%,「海崖植物」の約37%の種が掲載されているのに対し「海浜植物」では約15%しか記載されていない.一方,都道府県版レッドリストには,海浜植物は塩湿地植物と並んで数多くの絶滅(地域内での絶滅)が記録されており,海崖植物よりも危険な状況となっている.特に,大阪・神奈川・和歌山・茨城などで海浜植物の保全の必要性が高いと考えられた.また,種別では,ハマハコベ,センダイハギ,ハマベンケイソウ,ビロードテンツキ,ウンラン,イワダレソウ,ナミキソウなどは環境省レッドリストでは注目されていないが,都道府県レベルでは各地で絶滅が進行しており,保全の必要性が高いと考えられた.海浜植物の地域絶滅の進行は,遺伝的多様性の低下(特定の地域系統の絶滅)を引き起こすおそれがある.また,メタ個体群構造の崩壊を経て「絶滅の渦」へと発展することも懸念される.日本の海浜植物の遺伝的多様性の実態やメタ個体群構造は,今後解明すべき重要な課題である.
  • 吉﨑 真司
    原稿種別: 調査研究報告
    2014 年 19 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
  • 松島 肇, 有田 英之, 内藤 華子, 菅原 峻
    原稿種別: 総説
    2014 年 19 巻 1 号 p. 41-49
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
    北海道中西部の石狩湾奥に位置する石狩海岸は,石狩市と小樽市にまたがる延長約25kmの砂浜海岸である.1982年に石狩市と小樽市の行政界上に建設された石狩湾新港により汀線方向の連続性は2つに分断されているが,自然度の高い石狩海岸の海岸景観では多様な生態系が維持され,特に植生景観としては汀線から海岸林まで明確な成帯構造を維持している.自然草原と自然林で構成される石狩海岸の成帯構造は,他地域の自然度の高いと言われる砂浜海岸と比較しても高い自然度を有し,85%の植生が植生自然度8以上であった.このような砂浜海岸は周辺人口220万人にも及ぶ札幌圏のような大都市圏においては皆無であった.しかし,1970年代以降,食用に供されるハマボウフウの乱獲や,ORV(Off-Road Vehicle)を中心とした車両の乗入れなどの無秩序なレクリエーション利用により,海岸砂丘上の植生破壊や地形そのものの改変が顕著に見られるようになった.このような背景のもと,石狩市(当時石狩町)は1978年に石狩川河口の河川区域16.5haを石狩川河口海浜植物等保護地区に指定し,一部の海岸砂丘についても市民からの強い要請により,1992年より杭とロープによる車乗り入れ防止対策を行なうなど,その保全に取り組んできた.2000年には石狩浜海浜植物保護センターを開設し,海浜植物の保護・増殖と保全意識の普及啓発活動に行政・市民・研究機関が協働して取り組み,砂丘植生の保護区は約40haに拡大された.しかし,保護区以外の大部分の区域ではORVなどの乗入れが後を絶たず,海浜部でもごみや排泄物の放置など,安全・衛生面からも適正な管理が求められるようになった.行政レベルでは,海岸管理者で構成される石狩浜環境保全連絡会議が2009年に設置され,石狩海岸の保全対策を管理者間で検討し,市民レベルでは海岸清掃,カントリー・コードの策定,フットパス・ルートの設置など,利用者マナーの啓発や魅力の発信を行ってきた.2013年には,多様な主体による石狩海岸の保全と利用管理を目指し,石狩海岸フォーラムが開催された.新しい公共を形成する多様な主体による,自律的な海岸管理の確立が求められている.
  • 石川 真一
    原稿種別: 総説
    2014 年 19 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
    海岸砂丘植生・植物は,すでに1980年代から全国的に衰退が著しい.その保全のためには,以下の3点に留意する必要がある.第一に,海岸砂丘植物の研究は100年以上の歴史のある領域であり,また環境省の分類では「自然草原」に入り,植生自然度10という最も自然度の高い植生であるなど,学術上・保全上貴重な自然植生帯である.第二に,日本の海岸砂丘は様々な開発行為により,そのほとんどがすでに失われ,今後地球温暖化により海面が1m上昇すると,日本の砂浜面積の90%が消失すると予測されている.しかし海岸砂丘植物はレッドリストにほとんど掲載されておらず,社会的・学術的認知度が非常に低い.東日本大震災による地盤沈下・大津波が沿岸域の自然植生に及ぼしている影響をモニタリング調査し,レッドリストにおける海岸砂丘植物のランク評価をやり直す必要がある.第三に,海岸植物図鑑の復活など,研究成果・教育普及活動を推進し社会的理解を深める必要がある.また海岸法の改正で「海岸環境の整備と保全」が必須となり,その計画は各自治体が策定することとなったので,工学系・実学系の研究者および国土交通省と関連機関・自治体と生態学分野の共同研究・共同事業を実施していくことが,海岸砂丘植生・植物の保全に不可欠である.
原著論文
  • 稲飯 幸代, 四宮 隆司, 河口 洋一, 鎌田 磨人
    原稿種別: 原著
    2014 年 19 巻 1 号 p. 57-68
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
    アカテガニは,汽水域や海域で幼生期を過ごした後,稚ガニへと変態して陸に上がり,森林等を生活の場とする.その生活史段階における環境利用特性を利用して,徳島市の都市公園内に存在する緑地,人工水路,石垣,水域―陸域との接続性といった景観構成要素の生息地としての機能を評価した.アカテガニは,1)都市公園内の森林沿いにある人工水路周辺を選択的に利用し,裸地状態の平地は全く利用しないこと,2)森林内では石垣の空隙を選択的に利用すること,3)人工水路では植栽や水路内の岩影を選択的に利用すること,4)放仔の際には,練り石で護岸された水際よりも,空石積みで護岸された場を利用していることが明らかになった.これらは,人工水路による水分供給機能と,森林の気候緩和機能がアカテガニの生息を支える上で重要であること,石垣や人工水路の植栽,岩が採餌を行う活動期のアカテガニの隠れ場所として重要であること,逆に“親水性”向上を目的として最近に改修された練石積み護岸はアカテガニの利用に適していないことを示す結果であった.人への修景・親水性のための構造物であっても,生物の生息環境の維持・向上に繋げられること,一方で,景観構成要素が持つ機能を様々な生物の視点から多面的に評価し,デザインに活かしていく必要があることが示された.
  • 岩渕 翼, 増澤 直, 三輪 隆, 小黒 芳生, 横山 潤, 中静 透
    原稿種別: 原著
    2014 年 19 巻 1 号 p. 69-82
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
    生物の生息域が大きく縮小・分断化された都市域生態系では,企業緑地が重要な役割を果たす可能性がある.企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)は,地域の生物多様性に貢献できる企業緑地を推進するために,生物多様性に貢献する土地利用を推進するためのガイドライン,土地利用を数値評価する土地利用通信簿®,専門知識がなくとも簡便な生物調査ができる生物モニタリングシートの3つのツールを開発した.これらのツールは生態学の知見を基に作られているものの,通信簿で高得点の緑地は実際に生物多様性が高いのか,非専門家がモニタリングシートを用いて得た調査データはどの程度の質・信頼性を持つのか,という2点は別途,検証する必要があった.今回,業種の異なる5社に協力してもらい,全国8事業所において専門知識のない事業所の社員によるモニタリングシートを使った調査と,環境調査会社の生物専門家による調査を同日・同時間帯に実施し,得られたデータを比較した.その結果,通信簿点数とα多様性,また社員による調査と専門家による調査のα多様性およびβ多様性の間にはそれぞれ正の相関関係があることが明らかとなり,α多様性やβ多様性といった生物相の概況を評価する上では,地域の生物多様性に貢献する企業所有地の土地利用を推進するツールとしての妥当性が確認された.
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