景観生態学
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20 巻 , 2 号
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特集「海浜植物群落の保全・復元に向けた取り組み-景観生態学からの展望」
原著論文
  • 楠瀬 雄三, 村上 健太郎, 岡 浩平, 押田 佳子, 瀬戸口 喜祥, 木村 賢史
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 20 巻 2 号 p. 101-115
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー
    東京湾では古くから埋立てが行われていることから自然海岸が少なく,自然再生によって海岸植物の新たな生育地を創出する必要性が高い地域である.自然再生事業では自然の回復力を活用することが重要視されていることから,漂砂の堆積を促進させて海浜を形成させる工法が効果的と考えられる.そのような工法によって1976年に東京都葛西海浜公園が造られた.本公園には東なぎさと呼ばれる海浜があり,そこには植生が形成され,海岸植物の新たな生育地として機能している.しかし,漂砂を堆積させて海浜を造る工法と海岸植物相についての研究は極めて少なく,その特性について十分な知見は得られてない.そこで本研究では,東京湾における自然海岸,河口干潟,砂を投入して造られた人工海浜など,様々な海岸の植物相を記載した文献を収集し,それらと葛西海浜公園の海岸植物相を比較することで,本公園における海岸植物相の形成過程を明らかにすることを目的とした.1986年,1996年,2001年に葛西海浜公園で行われた植生調査の資料を収集し,2008年に植生調査を行った.これらから,海浜面積,群落や海岸植物相の変遷を調べた.また,東京湾の海岸植物相を記載した7つの文献を収集した.以上の文献から海岸植物を抽出し,解析に用いた.その結果,葛西海浜公園では年数の経過にともなって,種数,植被面積,群落数が増加した.Bray-Curtis ordinationの結果,葛西海浜公園の海岸植物相は年数の経過にともない,自然海岸に近づく変化を示した.それは,年数の経過にともない海浜面積が増加したことで種数が多くなったことと,自然海岸以外では少ない,タイトゴメ,ハマエノコロ,ハマウド,ハマヒサカキなどの海崖生植物や海岸草原生植物が確認されたためと考えられた.これら4種が確認された要因の1つとして,消波堤が漂砂を捕捉・堆積させることにより変化に富んだ地形が形成され,海崖生植物や海岸草原生植物の生育可能な環境が生じたと考えられた.また,種数と海浜面積との間に有意な相関関係が得られた.これにより,今後,再生させる海浜の面積に対する海岸植物の種数を推定することが可能になると考えられた.さらに,東京湾の海岸植物相を構成する基本的な種群が明らかになった.このように,本研究によって得られた結果は海浜の自然再生に活用できると考えられた.
  • 寺島 佑樹, 柳井 清治, 堀内 美緒, 粟野 秀, 岩井 紀美子, 中村 浩二
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 20 巻 2 号 p. 117-129
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー
    能登半島中部の里山地帯を流れる河川において,高度経済成長以前からの里山景観と魚類相の変遷を明らかにし,河畔景観の変化が魚類に与える影響を評価した.研究対象地として,石川県七尾市の典型的な里山地帯を流れる熊木川流域を選定した.熊木川本流とその支流4河川に調査区を合計15ヶ所設定し,各調査区において魚類調査(投網,電気ショッカー使用)と生息環境調査(計測項目:水深,川幅,流速,河床構造,カバー面積,カバー水深)をおこなった.次にこれらの調査から得られたデータをもとにデータ解析(現存量及び種数:一般化線形モデル)をおこない,淡水魚類にとって重要な生息環境要因を抽出した.また過去の魚類生息状況とその河川環境については,1963,1975年撮影の航空写真および地元の高齢者(60歳以上)を対象とした聞き取り調査を実施し,圃場整備前の魚類相と河川環境を推定した.この結果,魚類調査では,流域全体において計15種が確認された.データ解析では,種数・現存量を豊富に維持するには多様な大きさの河床材料と流速変化をもたらすカバーや瀬淵構造が重要であるという結果が得られた.聞き取り調査から,1960年代以前と比較すると現在では淵や河床の礫,河岸のカバーが消失しており,そうした環境を必要とするアユ(Plecoglossus altivelis altivelis),ウナギ(Anguilla japonica),ナマズ(Silurus asotus)等の減少が著しいということが明らかとなった.航空写真による判読から,流路形状は1960年代の圃場整備前と今日ではほとんど変化していないが,河岸に残存した河畔林面積が1/3に減少し,代わってコンクリ-ト護岸区間が10倍に増加した.この結果から,かつての里川にみられた多様な魚類相を再生するためには,明確な瀬淵構造とカバ-の供給源である河畔林,多様な大きさの河床材料の復元が重要であると考えられた.
  • 上原 裕世, 梶 光一, 吉田 剛司
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 20 巻 2 号 p. 131-142
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー
    シカの採食圧による林床植生構造の改変は,鳥類の群集構造に大きな影響を及ぼすとされる.しかし,鳥類の群集レベルへの影響の把握に留まっており,種レベルについて検証された知見は報告されていない.さらに国内では,シカによる林床植生の改変と鳥類種との関係性は明確に追究されてこなかった.そこで本研究では,エゾシカの高密度化により林床植生が衰退した森林景観を有する北海道の洞爺湖中島において,地上営巣型鳥類であるヤブサメの繁殖適応について明らかにした.まず,2010年に洞爺湖中島の森林性鳥類の種構成を把握するために,夏鳥の飛来期から育雛期を内包する4月から6月にかけてラインセンサス法を実施した.さらに2011年には4月15日から7月28日の105日間にわたり,島内に設定した10のコドラート(20m×20m)で早朝5時~5時30分の30分間において音声録音調査を行い,繁殖期のヤブサメの囀り傾向を記録した.また各コドラートに8箇所のサブコドラート(1m×1m,全80箇所)を設定して,4月中旬から7月下旬にかけて林床植生の調査を実施した.ラインセンサス調査では,研究対象地周辺の藪性鳥類の代表種であるウグイスなどが確認できず,藪を繁殖環境として好む鳥類種が少ないのに対し,地上営巣型のヤブサメが優占的に生息することが明らかとなった.音声録音調査では,合計525時間の録音音声より,11,021回のヤブサメの囀りを確認した.また林床植生の調査では,シカの過度の採食圧によって不嗜好性植物であるフッキソウとハンゴンソウが優占していた.ヤブサメの飛来・つがい形成期である5月上旬は,音声録音調査を実施した10のコドラート全てでヤブサメの囀りが確認されたが,6月上旬の育雛期には6のコドラートに減少した.囀りが確認されなくなった4のコドラートでは,他と比較して植生高および被度が季節とともに増加せず,裸地が多かった.一方の囀りが継続した6のコドラートでは,不嗜好性植物の生育により,最低でも20%以上の植生被度と20 cm以上の植生高が認められた.よって地上営巣型のヤブサメは,不嗜好性植物に依存して繁殖適地を判断し,シカが高密度化した環境に適応していることが明らかとなった.
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