景観生態学
Online ISSN : 1884-6718
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22 巻 , 1 号
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特集「海浜植物群落の保全・復元に向けた取り組み-景観生態学からの展望」
原著論文
  • 千布 拓生, 日置 佳之
    原稿種別: 原著論文
    2017 年 22 巻 1 号 p. 11-32
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/08/31
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    大山隠岐国立公園奥大山地区を事例研究地として自然公園における生物多様性に配慮した植生計画の策定手法を検討した.本研究では,まず,自然公園法にもとづく現行の保護規制制度の課題として,①すぐれた自然景観を構成する生態系の概念が曖昧なため生物多様性が高い空間が必ずしも規制の強い地種に区分されるようにはなっていない点,②二次草原や二次林等の二次的自然の保全がゾーニングに直接的に反映されていない点,③特別地域内の3種類の地種区分が,林業と自然景観・生態系の維持・回復の関係を今後見直す上でむしろ障害となる可能性がある点,を指摘した.これを踏まえ,複数の評価軸を用いることにより,生物多様性に配慮した植生計画の策定方法を提言した.具体的には,縮尺1/5,000相当の現存植生図,明治時代から現在に至る土地被覆の変遷及び希少性の高い植物の分布図を基礎的データとして用い,「植生自然度」による評価に加え,戦後の4時期の空中写真の目視判読による「土地被覆の履歴」,植生が再生するまでの時間的な概念を取り入れた「再現困難度評価」,絶滅危惧種の生育密度の多寡を取り入れた「希少種の保全上重要な植物群落」による評価を行うことにより,自然環境の多面的評価を試み,それにもとづいて植生計画を提示した.現行の法定保護規制計画と本研究の植生計画を比較した結果,①植生自然度が高い場所と地種区分の間に齟齬が見られること,②特に草原及び湿原に希少種が集中分布しているにもかかわらず,その維持・保全に必要な植生管理が地種区分に位置付けられていないこと,③今後,主伐期を迎える人工林を,主伐後別の植生への転換を図るのか,再造林を行うかという将来計画が現状追認型のゾーニングでは考慮されていないこと,が明らかになった.また,自然公園のゾーニングに関する先行研究と比較を行ったところ,従来の研究では,概ね植生自然度が自然環境に関する評価軸として用いられてきたため,研究にもとづく新たなゾーニング案においても種の多様性は十分反映されていないこと,植生の再現困難度といった時間軸を取り入れた評価手法は見られず,自然環境の再生という課題があってもそれを計画に反映できていないことが明らかになった.今後は,本研究で提示した手順による植生計画立案方法や出来上がった植生計画の有効性について,客観的な評価を加えながら改善していくことが課題である.

調査研究報告
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