小笠原諸島の崖地や崩壊地はアクセスが困難であったことから調査が実施されず,保全価値のある植物が多く生育する重要な生育立地であるのかどうか不明で,外来植物対策の必要性も明らかでなかった.本研究ではUAVを用いて崖地や崩壊地へ接近し,画像を撮影することでアクセス困難地に生育する植物相を把握した.画像判読の結果,合計100種が確認され,そのうち希少種は20種,外来種は33種であった.希少種や外来種がどのような環境に多く出現するのかを一般化線形モデルを用いて解析した.その結果,希少種数は少ない年間日射量の崖斜面や,冠頂部端(崖・崩壊地の上端と森林の移行部)で多く,外来種数は有人島や,隆起部(崩壊土砂の堆積地)に多かった.また,本研究で確認された種が崖地・崩壊地と森林林床,崖地と崩壊地では出現状況がどのように違うのかを把握するためにFisherの正確確率検定による比較をおこなった.崖地・崩壊地と森林林床の比較では希少種,外来種ともに大半の種が崖地・崩壊地で出現頻度が高い結果であった.崖地と崩壊地の比較では崖地において希少種,外来種ともに出現頻度の高い種が確認された.本研究により,小笠原諸島における崖地や崩壊地に生育する植物相が明らかになり,これらの場所が重要な生育地であることがわかった.