韓国では,2013年度から実施された無償保育改革により,0~5歳までの乳幼児の全所得階層へ保育料支援が行われている.この政策を実施するに至った背景は,世界で類を見ないほどに合計特殊出生率が低下したことにある.しかし,低出産対策として,保育料支援だけに大きく偏っている点からすると,出生率の回復よりも,経済の低成長と雇用の不安定による若年層への所得補填の意図が含まれているともいえる.なにより問題は財源の確保である.2000年代に財政分権改革が行われたにもかかわらず,自主財源の拡充が不十分である自治体財政では,既存の国庫補助金による保育料支援を急激に拡大することは難しい.結局,3~5歳の保育料支援を地方教育関連移転財源である地方教育財政交付金によって賄うことで,無償保育改革は完成した.しかし,地方教育財政交付金は内国税と連動しているため景気に左右されやすく,自治体によっては保育関連予算編成が難しいため地方債発行が急増する問題をもつ.長期的には財源圧迫により,無償保育予算編成の不安要素になりかねない.
本稿では,まずは,韓国の保育財政改革の導入過程を説明する.その上で,国庫補助事業である「0~2歳保育料」「養育手当」の自治体間における国費比率の妥当性を確認し,地方教育財政交付金により財源が充てられる「3~5歳保育料」がもつ財政不安定の問題点を明らかにし,日本の無償保育化改革への示唆点を提示する.
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