沙漠研究
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26 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著論文
  • 杜 明遠, 汪 万福, 米村 正一郎, 申 彦波, 真木 太一
    2016 年 26 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/22
    ジャーナル フリー

    2004年3月25日~4月15日に,中国敦煌の異なる地表面状態にある3つの地点において,ダスト濃度をダストパーティクルカウンターで測定した.3測定地点間の距離はそれぞれ約10 kmであり,各地域の地表面状態は,ゴビ(石礫)沙漠,耕作裸地,アルカリ性潅木地であった.3測定地点において風向,風速,気温等の各気象要素も測定した.ダストの収束/発散量の定量化は3地域からの水平ダスト輸送量(水平ダストフラックス)の算定法で行い,地域平均のダスト放出量を評価した.その結果,ゴビ沙漠では風が強いので,水平ダストフラックス(水平ダスト輸送量)は3地点間で最も高かったが,耕作裸地でのダスト濃度は3地点間で最も高かった.地域平均のダスト発生としては,風が耕作地からゴビ沙漠に吹くときにのみ評価されることが明らかになった.これは,農業活動が中国敦煌地域のダスト放出に重要な役割を果たしていることを示唆している.

  • 中山 正和, Ashqi HUSSEIN, Shwan Muhammed Bapir, 切岩 祥和, 鈴木 克己, 糠谷 明
    2016 年 26 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/22
    ジャーナル フリー

    イラク国北部のクルド自治政府内でトマト(Solanum lycopersicum L.)の作期拡大をはかるために,簡易閉鎖型苗生産システム(SCTPS)を開発し,トマトの冬期苗生産の可能性を検討した.SCTPSとは,断熱性の高いコンテナ内に家庭用エアコンを設置し,蛍光灯と循環扇,給液システムを備えた多段式の苗生産システムである.本試験では,SCTPSと灯油ストーブを備えたビニールハウスを用い,現在クルド地域で栽培されていない冬期のトマト苗生産の可能性を比較検討した.育苗ハウスの設置費用は1,440 USDだったのに対し,SCTPSの設置費用は7,479 USDであった.播種22日後のトマト苗の茎長はSCTPSでは6.2 cm,育苗ハウスでは4.0 cmだった.また,茎径はSCTPSでは2.1 mm,育苗ハウスは1.4 mm,展開葉数はSCTPSでは3.5枚,育苗ハウスは2.5枚とSCTPSのトマトは有意に大きく,SCTPSでは良質な苗を短期間で育苗可能であった.SCTPSでの1株あたりの消費電力量は0.15 kWhであり,その電力費用は0.0036 USDだった.育苗ハウスの灯油消費量は1株当たり0.19 Lであり,その費用は0.22 USDだった.この地域の冬期の気象データを基に暖房負荷を算出すると,SCTPSは18.0 MJžd-1,育苗ハウスでは492.8 MJžd-1だった.冬期のクルド地域でのSCTPSの利用は育苗ハウスよりも低いエネルギー消費量でトマト育苗を可能とし,当該地域を含めて環境制御装置の導入による生産性向上の効果が期待される.

資料・報告
  • 真木 太一, 守田 治, 鈴木 義則, 脇水 健次, 西山 浩司
    2016 年 26 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/22
    ジャーナル フリー

    伊豆諸島の三宅島・御蔵島・新島付近で,2013年12月15~16日に液体炭酸散布による人工降雨実験を実施した.その内の16日に新島東方海上で航空機から液体炭酸を対流雲に散布し,その風下の散布高度上下間で行った気象観測の解析結果は次のとおりである.

    厚さ約600 mの非常に薄い雲からでも散布15~20分後に航空機の窓に雨粒または雪・霰粒が衝突する状況が確認でき,また37分後までに航空機の窓から雨脚が目視・写真で確認できた.雲の幅は狭く薄い雲であったが,液体炭酸散布直後より雲が発達し,NNW-SSE方向の南北につながる雲の上に部分的に顕著な雲の発達が衛星画像でも確認できた.その発達した雲から降雨となって落下したために部分的に衰退した雲の状況が衛星画像で確認できた.さらには,人工衛星テラ・アクアの衛星画像からNNW-SSE方向の南北につながる雲の上に発生したNNE-SSW方向の3列の平行な雲の発達およびその後の消滅の状況がタイミングよく確認できた.今回の液体炭酸散布による人工降雨実験結果に加えて,これまでの実験結果を比較・総合すると,雲内下層付近の氷点下の対流雲に航空機搭載サイホン式ガスボンベから液体炭酸を約5 g/sで10分間以上,直接散布する方法が最適であることが分かった.また,人工降雨の干ばつ時での利用や乾燥地への応用の可能性について記述した.

小特集:乾燥地研究の動向と展望
  • 小島 紀徳
    2016 年 26 巻 1 号 p. 25-26
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/22
    ジャーナル フリー
  • 奥野 員敏
    2016 年 26 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/22
    ジャーナル フリー

    21世紀末には地球の平均気温は0.3-4.8℃の範囲で上昇すると予測されている.とりわけ,人間活動がこのまま継続され,温室効果ガスの排出削減対策が講じられない場合,21世紀末には地球の平均気温は2.6-4.8℃(平均3.7℃)上昇すると予測され,地球規模での温暖化は一層深刻化すると警告されている.温暖化は乾燥地の砂漠化を進行させ,農業生産に対して大きな影響を及ぼすことが懸念されている.また,国連による人口推移予測によると,現在70億の世界人口が2050年には96億人に達する.爆発的な人口増加を支えるためには,気候変動に適応可能な作物品種の開発が喫緊の課題である.本稿では,このような地球規模での気候変動に対応した作物育種分野における取組みの現状と将来展開について述べる.とくに,水稲の登熟期高温耐性育種と耐冷性育種,トウモロコシの湛水耐性育種,果樹育種,国際研究機関との連携による乾燥耐性分子育種および乾燥耐性ゲノム育種における最近の研究成果とともに,筆者らが取り組んだ関連研究の成果について紹介する.

  • - 論文の出版データベースより世界のトレンドを見る -
    辻本 壽, 伊藤 健彦
    2016 年 26 巻 1 号 p. 35-37
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/22
    ジャーナル フリー

    乾燥地科学研究の動向を見るため,Thomson Reuters社のWeb of Science文献データベースを基に,「乾燥地科学」,「穀物科学」の論文数の年次推移を調査した.その結果,データベースに搭載された総論文数が1991年から2014年の23年間に,2.3倍に増加していたのに対し,「乾燥地科学」の論文は7.3倍になり,この分野の論文が,急増したことが分かった.さらに,「穀物科学」に関する論文も増加し2.7倍であったが,この中で,「乾燥地科学」および「育種」をキーワードとして含むものは,10.7倍になり,乾燥地科学における穀物の育種が世界的に非常に重要な分野であることが明らかとなった.

  • 清水 克之
    2016 年 26 巻 1 号 p. 39-41
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/22
    ジャーナル フリー

    過去20年間に農業農村工学会が発行した会誌,論文集に掲載された海外,特に乾燥地に関する研究論文・報文を調査し,その研究動向をまとめた.その結果,論文集,学会誌に占める乾燥地に関連した研究論文・報文はそれぞれ全体の3%,4%であった.灌漑排水,用水管理,塩類集積に関する論文が多く,中国内陸部を研究対象地とした論文は1/3を占めた.農業農村工学に関わる研究者・技術者が様々な乾燥・半乾燥地域で活躍していることが示された.

  • 北村 義信
    2016 年 26 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/22
    ジャーナル フリー

    日本沙漠学会における乾燥地研究の動向について考察した.学会誌「沙漠研究」に掲載された論文のうち,近年展望論文の投稿数が著しく減少している.展望論文は,特定のテーマについて,新たな段階に研究をステップアップしていく上で重要な論文である.若手研究者の研究モチベーションを高揚させるためにも,このジャンルへの積極的な投稿が望まれる.とりわけ,本学会員の行う研究は直接・間接的に干ばつ対策,沙漠化対処につながるものであり,現場での適用のあり方を最終ゴールとして進めていく必要があることから,行政サイドや現地住民の理解を日頃より得ておくためにも,展望論文のかたちで整理しておくことは有意義である.また,国連の持続可能な開発目標(SDGs),沙漠化対処条約(CCD),アフリカ開発会議(TICAD)などの国際的流れを踏まえた行政サイドからの時宜に応じた投稿も期待される.

    原著論文は発刊とともに掲載件数は増加したが,最近10年間は減少傾向にある.これは憂慮すべき問題であり,若手学会員の積極的な投稿が望まれる.原著論文として掲載された論文について9つの研究領域ごとにその動向を概観した.

    日本沙漠学会は,文系・理系融合を基軸とする学際的な学会であり,この強みを活かした学際的研究活動を学会でまとまって進めることが大切である.

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