沙漠研究
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27 巻 , 1 号
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原著論文
  • -モンゴルにおける2009/2010年ゾド災害の場合-
    杜 春玲, 篠田 雅人, 小宮山 博, 尾崎 孝宏, 鈴木 康平
    2017 年 27 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル フリー

    モンゴル国では,乾燥かつ寒冷という厳しい気候ゆえに,基幹産業である遊牧がゾド災害(寒雪害)に繰り返し脅かされてきたが,家畜への被害は異常気象の条件が類似した近隣地域でも大きく異なる.本研究では,2009/2010年ゾドによる家畜被害に大きな違いが認められたOvorkhangi県のTaragt郡(家畜死亡率約71%)とNariinteel郡(家畜死亡率約15%)を対象に,その地域差をもたらした社会的要因を牧畜気象データ・社会経済統計データの解析と牧民へのインタビュー調査により解明することを目的とした.夏の降水量・冬の気温と積雪量からみると,Nariinteel郡のほうが厳しい気象条件であった.しかしながら,そこで家畜死が大きく抑えられた理由として,夏から冬へと季節順に以下の5点があげられた.(1)毎年行う季節移動の回数が多く,距離が長いこと,(2)夏に計測した過放牧率が比較的小さかったこと,(3)ゾドに備えて家畜販売や飼料の備蓄を積極的に実施したこと,(4)冬用の草地を確保するため冬営地への移動時期を遅らせたこと,(5)冬営地やゾドに対する避難場所として山地の比較的温暖な風下中腹斜面を利用したこと.まとめると,地域の自然状況・市場経済状況に基づいた能動的家畜管理はゾド被害を低減する有効な手段になりえると考えられた.

  • -赤峰市の末端行政レベルからの考察-
    永 海, 星野 仏方, ソリガ , 笹村 尚司, 梅垣 和幹, 那音太
    2017 年 27 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル フリー

    近年,内モンゴル自治区の沙漠化が深刻な問題になっている.その沙漠化の主な原因として,過剰な農地開発の影響が大きいといった研究成果が多く報告されている.しかし, 内モンゴル自治区における農地開発による沙漠化の先行研究では,内モンゴル全体,あるいはホルチン地域など広い地域を対象とした研究が多い.これらの研究は,農地がいつ,どこで,どのように開発されたのかが具体的に示されていない.よって,本研究の目的は,内モンゴル自治区半農半牧地域の末端行政地区である一つの村落を対象として,過去120年間の農地開発の経緯とその特徴を明らかにすることである.研究手法は,農地開発の経緯に関する聞き取り,土壌侵食の推定,村民委員会責任者の帳簿,家計簿など行政・歴史資料データの収集,および衛星画像の解析を組み合わせた.その結果,以下のことが明らかになった.①1960年代の農産物の販売と交換の禁止,食糧自給政策により,耕作地がこれまでの湖の周りの肥沃な土地から耕作に適さない丘陵地に広がり,村の総面積の約4.1%を占めるまでに拡大した;②1980年以降,地域政府の指導で,牧畜の生産性を上げるとされた採草地,人工牧草地など個人的用途の柵が作られたことにより,放牧地の開墾は村の総面積の約21.2%にまで及んだ;③2000年以降,灌漑設備,農業機械など農業技術の近代化,農業機械と耕地に対する補助金などの国家的支援により,防風林,経済林など生態環境を修復する目的のプロジェクト実施地の中で農地開発が進み,村の総面積の約43.4%までに拡大した.1980年代の牧畜の生産性を上げる名義的農地開発から2000年以降には生態環境を修復する目的の「新たな名義的農地開発」へと転換した;④作物の種類がアワ,モロコシ,キビなどの耐乾性作物からトウモロコシ,スイカ,ヒマワリなど大量の水を必要とする環境負荷の高い作物に転換した.それに伴い,天水農業から灌漑農業へと変わった.したがって,大規模な農地開発による課題は,①環境への負荷としては,土壌の侵食,地下水の枯渇,土壌の塩類集積化などが挙げられる;②住民への負荷としては,伝統遊牧文化の消失,土地使用権の転換過程で生じた土地を失った住民の収入の減少が挙げられる.中国政府は,草原の保護を強化するほかに,持続可能な農地を保有することを目的に,農地開発の適正化を図ることが早急に求められることと,過剰な農地開発の現状から,半農半牧地域で世帯当たり,または人口当たりの耕作面積を適正化する調整機能的制度が必要であると示唆された.

短報
  • - JICA「タンザニア国ソコイネ農業大学地域開発センタープロジェクト」の分析から -
    乾 直樹
    2017 年 27 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル フリー

    1999年から5年間,JICAはタンザニアにて内発的な農村開発手法「SUAメソッド」の確立を目指した技術協力を実施した.それ以降,実施地域では住民主体のさまざまな活動が今日も継続している.その要因の把握を目的として,「つなぐ存在」をキーワードに当時のプロジェクト関係者への聞き取りを行った結果,多様な「つなぐ存在」が内発的発展に重要な役割を果たしていることがわかった.そして,活動の進展と共に,住民自身が主体的にエンパワーメントを果たし「つなぐ存在」は地域社会に取り込まれていった.

小特集原著論文:逼迫する乾燥地の水資源とその対策
  • -貯水池堆砂と地下水汚染を考える-
    入江 光輝
    2017 年 27 巻 1 号 p. 23-24
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル フリー
  • 入江 光輝
    2017 年 27 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル フリー

    貯水池(ダム湖)は水資源を安定的に蓄える施設として人間活動の多くを支える.乾燥地においても雨期の出水を適切に貯留して乾期の期間にも水資源が利用できるよう,貯水池が造られてきた.貯水池は水だけでなく,それに含まれる土砂の輸送も止め,その沈殿の結果,貯水容量が減少する.特に乾燥地では流域土砂生産量が多いため堆砂速度が大きく利用可能な水資源量の低下が著しい.本報では貯水池堆砂の対策について整理し,チュニジア国の貯水池を例に濁水の流動や堆積物の特性を精査して,それに適した取りうる対策について検討した.また,堆積物の有効利用により収入を得て浚渫費用負担を軽減することを検討してきているが,その有効利用方法として貯水池底泥を原料とした水質浄化システムの開発を提案し,現地の農村部で飲料用とされている地下水のフッ素汚染問題を解決していきたいと考えている.

  • 藤 正督, 高井 千加, 土本 順造, 入江 光輝, Jamila Tarhouni
    2017 年 27 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル フリー

    チュニジア国のような乾燥地の河川領域の貯水池は,水資源として利用される一方,植生被覆が少なく降雨時の土壌浸食が著しい.貯水池内に堆積した浮遊土は貯水容量を低下させる.また,同国地下水の一部は多量のフッ素を含み,フッ素症の多発が問題となっている.本研究はこれらの課題を解決すべく,チュニジア国のJoumine貯水池堆積土を用い,地下水に残存するフッ素除去を目的とした浄水フィルター用容器作製を試みた.X線回折結果から,堆積土成分はセラミックス原料として用いることができることを確認した.粒子が細かいため成形体の収縮が大きくなり,大型や複雑形状のセラミックス作製に利用することは難しいことがわかった.これはチュニジアで入手した粒子径50-100 μm程度の砂を30%程度混入することで解決できることを見出した.鋳込により成形体を得ることができたことから,大型機器を用いなくても中量産できることが確認できた.900℃,1時間以上の焼成で十分に焼き締まり止水することから,浄水フィルター用容器として十分に利用出来ることがわかった.また,900℃での焼成が可能であることから特別な設備を用いることなく焼成でき,貯水池オンサイトまたは近隣でのセラミックス作製の可能性を示すことができた.

  • 川上 智規, 宮崎 光, 今井 裕規, 小西 美咲
    2017 年 27 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル フリー

    スリランカならびにチュニジアにおいて井戸水中のフッ素濃度を調べた.その結果,WHOのガイドラインである1.5 mg/Lを超える井戸が存在し,斑状歯の健康被害が生じていることが明らかとなった.フッ素を除去する手段として,電解槽内に素焼板による隔膜を設置したうえで電解を行い,陰極槽に水酸化マグネシウムの沈殿を形成し,フッ素を共沈させる手法を提案した.スリランカの乾燥地帯やチュニジアの井戸水は硬度が高く,マグネシウムは原水に含まれているものを利用できるため,化学薬品は不要である.また,電解により発生する塩素を消毒に利用することができる.この装置をスリランカのアヌラーダプラに設置し,120 L/dayの流量で処理を行った結果,約67%のフッ素を除去することができた.残存したフッ素は電解装置の後段に設置した鳥骨炭フィルターで除去できた.

  • 袋布 昌幹, 藤田 沙也, 京角 早織, 豊嶋 剛司, 高松 さおり, 間中 淳, 入江 光輝
    2017 年 27 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル フリー

    本報では乾燥地における重要な環境問題の一つである地下水のフッ素汚染の対策を目指し,食品産業から発生する未利用資源である骨から得られる機能性資材のフッ素処理能力評価を行った.骨を用いた資材として,鶏骨を炭化した鶏骨炭(CBC),骨からゼラチンを取り出す際に発生するリン排水を処理して得られる第二リン酸カルシウム二水和物(DCPD)を対象とした.CBCは骨由来のリン酸カルシウムの一種である水酸アパタイト(HA)とコラーゲンが炭化した炭素分から構成されるが,その炭素分がフッ素除去に大きな影響を与えていることを示した.一方DCPDにおいては,炭酸カルシウムとのハイブリッド化により,従前の吸着材より多量のフッ化物イオンと反応して安定な鉱物であるフッ素アパタイト(FAp)を生成し,CBCと比べると重量比で10分の1,20分の1のコストと,高効率かつ低コストの水環境中のフッ化物イオンの処理が可能であることを示した.これらの結果を活用して,新しい処理資材の開発を通して乾燥地の水環境に貢献していきたい.

  • -乾燥地における硝酸態窒素測定を例として-
    間中 淳, 横田 優貴, 中村 尊, 古山 彰一, 袋布 昌幹, 入江 光輝
    2017 年 27 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル フリー

    本稿では,乾燥地における貴重な水資源の水質の簡便な管理技術を目指し,スマートフォンやタブレット等のスマートデバイスを測定装置とする比色分析法の開発および,その性能評価を行った.分析性能の評価としては,水質を示す指標の一つである硝酸態窒素とその比色分析法であるナフチルエチレンジアミン比色法を用いた.その結果,呈色に伴う色の濃淡を検知し,正確に濃度を表示することが確認できた.また,市販の簡易比色計測装置とほぼ同様の性能を持つことが分かった.さらに,本法は,計測装置の簡易化のみならず,端末のGPSや地図機能を利用することで,地図上に分析結果を表示させることができることから,これまでの携帯型装置にはない濃度分布を測定できる手法であった.これらの結果から,新しい水質検査技術の開発により乾燥地の水環境に貢献できることを期待したい.

  • 古山 彰一, 中村 尊, 小林 龍也, 藤島 政樹, 間中 淳, 入江 光輝
    2017 年 27 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル フリー

    広く一般的に普及しているスマートフォンを用いた水質調査用アプリケーションソフトウエアの開発を行った.スマートフォンは,カメラ,GPS,ネットワーク通信機能を有しており,水質調査用デバイスとして多くの可能性を有する機器であり,世界中で一般的に普及している特徴を活かし,水質調査データをこのデバイスで広く取得する事を目的とする.実現に際してソフトウェア開発が必要となるが,OSとしては世界的に一般的なAndroidを用いる.さらに一般人に普及し,広くデータ収集を行う事が目的になるため,簡易な水質調査方法が必要とされるが,これは色情報を用いた手法を開発する.本報では色情報からフッ素濃度を算出する方法,人工知能を用いた色情報の抽出手法らを中心に議論を行う.

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