沙漠研究
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最新号
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原著論文
  • 鈴木 康平, 小長谷 有紀, 廣田 千恵子
    2024 年 34 巻 3 号 p. 79-91
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2024/12/30
    ジャーナル フリー

    モンゴル国では広域的な地形の複雑さや,狭い範囲の中での微地形の違い,南北方向での乾燥度の変化に応じて,植物群落の分布パターンが地域によって大きく異なっている.植生の複雑さに対応して,遊牧民たちの遊牧パターンも地域ごとに特徴的である.これらの遊牧パターンの多様性と植生との対応について理解を深めることは重要な課題である.本研究ではモンゴル国最西部に位置し,県の大部分が山岳地帯であるバヤンウルギー県で生活する遊牧民世帯が,各季節の宿営地としてどのような植生が広がる立地を重視しているのか,またどのような植物種を日帰り放牧における採食植物として重視しているのかを明らかにすることを目的とした.調査対象地域はトルボ郡,アルタイ郡,アルタンツゥグツ郡,サグサイ郡の4郡とした.2018年の7月下旬から8月上旬にかけて,各郡で生活する遊牧民世帯に聞き取りを実施した.それとともに実際に各季節宿営地を訪問し,周辺に分布する植物群落に関する情報と各植物群落において優占度の高い植物種を記録した.トルボ郡およびアルタイ郡に宿営する遊牧民世帯は,夏季の間は高標高域で宿営し,秋季および冬季に夏営地よりも低標高域で宿営していた.このような遊牧パターンは既存研究で報告されているアルタイ山中の基本的な遊牧パターンであると言える.一方で,アルタンツゥグツ郡の世帯では年間を通してほぼ同程度の標高で宿営しており,これはカヤツリグサ科スゲ属のCarex duriusculaが豊富に分布する放牧地を夏営地として利用することを重視していることによると考えられた.サグサイ郡で生活する遊牧民世帯は郡中心の近くで宿営しており,観光業を重視していることによると考えられた.本研究では様々な宿営地移動パターンが見られたが,共通していたのは,スゲ属植物をはじめとしたカヤツリグサ科の植物の優占する場所を夏営地としている点,干草の備蓄に力を入れている点,遊牧パターンの中に年ごとの状況を見て変えられる部分がある点であった.

  • 中尾 里菜, 木村 玲二, 杉浦 李果, 石井 孝佳
    2024 年 34 巻 3 号 p. 93-103
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2024/12/30
    ジャーナル フリー

    乾燥地は世界の陸地面積の41%を占め,20億人以上の人々が暮らしている.地球温暖化の進行は,乾燥地における干ばつや熱波などの異常気象の頻度を高め,コムギに代表される作物の生産性を低下させる.人口増加や気候変動に対する食料供給の安定した確保は緊急の課題であり,例えば,乾燥に強い品種を作るための育種研究が盛んに行われている.本研究では,乾燥地におけるコムギ育種の効果を継続的に評価することを目的として,分光反射と放射温度(群落面温度)の観測データを用いて,異なるコムギ品種(対照区とイネコムギ)間のフェノロジーと水分効率(moisture availability)を評価する方法を提示,検討した.正規化差植生指数は,Initial period,Crop development period,Heading period,Ripening periodで示される各生育期間を的確に再現していた.群落面温度と気温の差は,出穂日以降急激に減少することが示された.理由として,出穂による顕熱フラックスの減少と潜熱フラックスの増加が考えられる.水分効率の指標(コムギ水ストレス指標と衛星乾燥度指標)の季節変化は,正規化差植生指数の季節変化とよく一致した.しかしながら,衛星乾燥度指標は,水分効率の質的(季節)変化の傾向を追跡できるが,コムギ水ストレス指標ほど定量的なモニタリングには適さないことが分かった.各指標の結果を用い,異なるコムギ品種間のフェノタイピングを行うことを試みた.両区間で,正規化差植生指数の値やフェノロジー(各生長期間や出穂日)について,ほとんど差異は認められなかった.コムギ水ストレス指標による水分効率に関しては,Crop development periodからHeading periodにかけてイネコムギの方が低くなったが,特にRipening periodにおいてその低さが顕著であった.

短報
  • 鈴木 綾太, 鈴木 伸治, 齋藤 修平, ダヤ アデン, ファドモA マロウ
    2024 年 34 巻 3 号 p. 105-110
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2024/12/30
    ジャーナル フリー

    ジブチ共和国は年最高気温が40°Cを超え,降水量が年間で150 mm以下の乾燥した国である。ディキル地区の小流域で,17か所の井戸や湧水の地理座標,地下水位,水利用状況を調べた.半数はジブチ政府編纂のデータベースに記載があったものの,地理座標に誤差があった.残りは1990年代以降に設置された井戸であり,データベースに記載がなかった.水資源賦存量の評価に資するため,統合型水循環シミュレータGETFLOWSを用いて地下水位をシミュレートした.その結果,計算された地下水位は実測値と相関し,平方平均二乗誤差(RMSE)は9.4 mであった.

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