羊毛繊維の諸性質(熱伝導率,吸湿性,毛管伝導度,撥水性等)が,乾燥地において,有用であることを,熱遮断能に及ぼす空気層の厚さ,被服のデザインと色が体感温度に与える影響,繊維の湿潤熱と水分率との関係などを通して概説する.
農業には水と土が不可欠であり,適切な利用と管理が重要である.人為的に水を供給する灌漑農業は生産性が高く,世界の食料安全保障において重要な役割を果たしてきた.しかし,水資源の不安定化や不適切な水管理による土壌の塩類化が進行しており,益々,水と土の適切な管理の重要性が増大している.乾燥・半乾燥地域である中央アジアに位置するウズベキスタン共和国は,ソ連時代であった1950年代からの大規模な灌漑開発により,綿花収量が飛躍的に向上した.しかし,過剰灌漑や排水の軽視による土壌の塩類化が進行し,長年,その被害に苦しめられている.本報では,ウズベキスタンでの綿花栽培と土壌塩類化について概説するとともに,国際農林水産業研究センターが灌漑排水に焦点を当てた現地での検証で得た知見を報告する.
養蚕は中国に起源をもち,ユーラシア大陸全域へと伝播した代表的な農業技術である.乾燥地ではカイコの営繭環境が良好となり,繭糸の繰糸が容易で高品質な生糸生産に適している.本稿では,養蚕の起源と伝播の歴史を概観するとともに,近年世界第3位の繭生産国となっているウズベキスタンの養蚕の現状を紹介する.さらに,日本の養蚕技術を応用した夏期の養蚕導入の試みと,その技術指導の実際について報告し,乾燥地における蚕糸業の可能性を考察する.
本稿は文化人類学的な物質文化研究の一例として,カザフ文様の動態を取り上げる.とりわけ,カザフ牧畜生活に欠かせないフェルトと文様の関係に着目する.これにより,「カザフ」文様の形成・変容において,必ずしも人の思想や精神が主体性をもっていたわけではなく,フェルトの性質や技法的制約,フェルトのもつ文化的意味合いなど,モノや環境がもつ多様な要素が大きな影響を与えてきた様子を示す.
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