医療情報学
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21 巻, 6 号
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原著
  • 松本 勉, 鳥越 恵治郎, 川路 茂保
    2001 年 21 巻 6 号 p. 367-381
    発行日: 2001年
    公開日: 2017/08/21
    ジャーナル フリー

     臨床分野での意志決定支援の自動化は,医師の判断の正確さ,客観性の向上や疾患の早期発見を支援するために重要な課題であると指摘されている.中でも臨床診断支援に関して種々の研究が行われているが,対象となる病態・疾患が少なく,一般内科診断支援に利用できているとは言えない.本論文では,医療タスクの分析と患者からの情報の構造化による医療のモデリング法を示し,診断が制御対象に相当する患者の同定とみなせることを指摘する.医師が診断を行うときの基本情報として,患者から取得する症状・所見と血液化学検査データが生体系の機能低下や障害を表す基本情報であるという点に着目した一般内科診断支援システムの構築について述べる.患者モデルと病態・疾患モデルの概念を述べてシステム同定(診断)アルゴリズムを提案し,実際に内科医療診断用に構築したシステムについて述べる.診断アルゴリズムは血液化学検査データの個人の基準値設定と症状・所見のそれぞれを病態・疾患別に重み係数を変えた線形結合和の計算処理を基本としている.システムはNEXTSTEP 3.3JのInterface Builderを利用し,Objective-C言語を用いて開発した.実行プログラムのファイルサイズは約4 MB程度となった.医学雑誌症例報告からのデータを利用した本システムの探索率は82.6%となった.早期診断への活用例と発症頻度の低い疾患の診断への活用例を症例により示す.これらの結果は,本手法の有効性,有用性を示している.

  • 堀尾 裕幸, 種村 光代, 川俣 和弥, 千葉 喜英, 名取 道也, 鈴森 薫
    2001 年 21 巻 6 号 p. 383-395
    発行日: 2001年
    公開日: 2017/08/21
    ジャーナル フリー

     日本における家族性遺伝性疾患解析のための情報・検体の集積分配ネットワーク構築を行うための情報システムを設計・開発し,WWW (World Wide Web)ベースで操作の容易なデータベースを実現した.登録されたメンバーは,このシステムにより全国レベルでの患者・検体情報の蓄積と検索を可能にした.ただし,個々の病的胎児および家族に関するプライバシーおよびDNA解析情報を扱うため,その設計と運用は文部科学省・厚生労働省・経済産業省の三省連名の「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」等に原則的に従うとともに,そのアクセスにはセキュリティに十分考慮した.ネットワークはISDN回線を使用し,サーバ側ではルータおよびデータベースでの2重のセキュリティチェックを行い,アクセスログの記録を残すことで不正アクセスの追跡を可能とした.平成13年6月30日現在,164名の患者と626検体がデータベースに登録されている.

  • 大内 東, 栗原 正仁, 三田村 保, 山本 雅人, 宮腰 昭男, 中川 俊男, 長澤 邦雄
    2001 年 21 巻 6 号 p. 397-405
    発行日: 2001年
    公開日: 2017/08/21
    ジャーナル フリー

     本論文では,郡市医師会における情報化の実態を把握するための指標を提案する.また,提案する方法を北海道郡市医師会に適用した結果について報告する.最初に,郡市医師会情報化の現状について,インフラストラクチュア (I),スキル (S),マインド (M)の3つの視点から調査を行い,データを収集する.次いで,この実態調査結果を基に,4つの情報化指標を提案する.すなわちISM指標,ISM±指標,l-u指標,l-u比指標である.最後に提案した指標の有効性と妥当性を示すために北海道医師会において実施された実例を示す.本研究成果は北海道郡市医師会のみならず日本全国の郡市医師会に対して適用可能である.

  • 山下 幸司, 寺尾 研二, 田中 正史, 河村 徹郎, 石渡 裕政, 岡野 昭夫, 藤澤 幸三, 長澤 亨
    2001 年 21 巻 6 号 p. 407-415
    発行日: 2001年
    公開日: 2017/08/21
    ジャーナル フリー

     急速な高齢化や在宅医療の推進という社会的背景とリハビリテーション(以下リハビリと略す)の専門家不足の状況等から,遠隔リハビリの必要性がますます増加していると考えられる.このような状況の中で,筆者らは1997年より,リハビリにおける手の機能測定を中心とした遠隔(在宅)リハビリを支援するシステムの研究開発を行ってきた.しかしこの遠隔リハビリ支援システムを試用した医師と療法士の評価として,一般的な遠隔リハビリ指導に利用することはできるが,厳密な回復度の評価には利用困難との指摘があった.

     そこで,リハビリ訓練の関節可動域を計測し定量的なデータとして捉えることができれば,回復の評価データになると考え,訓練中のモニター画像から計測を試みた.実験結果より,関節可動域を検出できることが明らかとなった.今後,さらに誤差を改善すれば,遠隔(在宅)リハビリ訓練において回復度の評価にも用いることができ,遠隔(在宅)リハビリ指導にとって有効な支援技法になると考えられる.

技術ノート
  • 森 正人, 北野 真由美, 堀野 誠人, 西田 慎一郎, 玉利 敏夫, 細羽 実, 湊 小太郎
    2001 年 21 巻 6 号 p. 417-424
    発行日: 2001年
    公開日: 2017/08/21
    ジャーナル フリー

     実際の健診センターを対象とした総合的な医用画像管理システムに対して,セキュリティ通信機能を実装し,この機能の導入が及ぼすユーザインタフェースへの影響を作業担当者へのアンケートに基づいて評価した.セキュリティを付加したシステムでは,装置間相互認証のためにシステムの通信処理量は約2倍に増加するが,ICカードによる鍵の管理と並行処理の工夫によって,利用者からみた主観的な評価では,ユーザインタフェースへの影響を皆無にできることを示した.また,このアンケートによって,マウスとアイコンによるGUIだけでは素早い操作には対応できないことや,操作の単純化が引き起こす操作習得の困難さなどの問題点が明確になり,システムの改善に資するとことができた.

  • 中山 均, 伊藤 豊, 中村 太保, 武塙 晃, 内藤 智浩, 櫻井 恒太郎
    2001 年 21 巻 6 号 p. 425-434
    発行日: 2001年
    公開日: 2017/08/21
    ジャーナル フリー

     今日,病院情報システムに搭載する医科用の標準病名集はいくつか入手可能であるが,歯科用のものはまだ十分なものがないのが現状である.通常の標準病名集では歯牙・口腔関係の詳細な病名の細分類が不足している上,関連する奇形,炎症,腫瘍性疾患等の病名が疾患分類全体の中に広く散在しており,歯科医療機関での効率的な使用を困難にしている.そこで我々は,歯科用の国際標準疾病分類体系であるICD-DAのコード構造を利用して「MEDIS標準病名集」から歯牙・口腔関連病名を抽出することを試みた.さらに大阪大学歯学部附属病院で使用中の病名マスタの提供を受け,これらを統合し相互に比較照合して各レコードの内容を検討した.これらの検討作業の結果は,医科と整合性を保った歯科用標準病名集整備のための有用かつ基礎的な資料となると我々は考えている.

資料
  • 寺島 朝子, 町田 絵里, 山形 真一, 望月 眞弓, 佐藤 信範, 上田 志朗
    2001 年 21 巻 6 号 p. 435-443
    発行日: 2001年
    公開日: 2017/08/21
    ジャーナル フリー

     近年,情報技術の急速な普及により臨床でインターネット (IN)を活用することが一般的になったが,Web上の情報は規制や評価がされておらず,INの二次資料提供ツールとしての有用性は明らかでない.そこでINを用いた専門的な医療情報の収集を通してINの利便性と信頼性について検討した.調査は「高齢心筋梗塞患者に対する薬物治療」の指針づくりを想定し,6種類の検索エンジン (SE)で4種類の検索語の論理積検索を実行し得られたサイトについて行った.その結果SE,検索語ともに吟味したにも関わらず検索結果にはノイズが多く,再現性にも問題があった.さらに利用者が情報の信頼性を判断する際に必要な,サイトの「制作者」「情報根拠」「作成・改訂年月日」「問い合わせ先」の4項目のいずれかの明示がないサイトが75%を占め,4項目を満たした医療情報提供サイトは全体の10%に満たなかった.以上から少なくとも専門的な医療情報の収集においてINの利便性はまだ低く,情報の信頼性を判断することも困難な場合が多いので,臨床ではこの事実を理解した上でのIN利用が必要と考えられた.

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