医療情報学
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22 巻, 6 号
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原著
  • 永田 宏, 田中 博
    2002 年 22 巻 6 号 p. 445-452
    発行日: 2002年
    公開日: 2017/08/14
    ジャーナル フリー

     電子カルテの普及には診療点数によって医療施設にインセンティブを与えることが有効と考えられる.医療情報システムに間接的に関連する診療報酬としては,X線写真のデジタル映像化処理加算がある.そこで厚生労働省の統計データを用いて1986年から2000年までのデジタル映像化件数の推移を調査したところ,1996年を境に急速にデジタル化が進展していることが明らかになった.これは同年の診療点数の増額と,前年のデジタルファイリングフォーマットの標準化が大きく寄与していると考えられる.また毎年のデジタル加算による診療報酬の総額と,一方医用画像ネットワークシステムの市場規模には強い相関関係があり,医療施設がデジタル加算を原資としてシステムの導入を行っていることが強く示唆された.電子カルテの普及のためには,X線写真のデジタル化をモデルとした取り組みが有効であると考えられる.

  • 冠木 雅子, 松村 泰志, 笹垣 三千宏, 祐延 良治, 山口 和也, 郡 清子, 中西 省三, 吉村 英明, 鳴海 善文, 中村 仁信, ...
    2002 年 22 巻 6 号 p. 453-464
    発行日: 2002年
    公開日: 2017/08/14
    ジャーナル フリー

     オーダリングシステムは,診療現場から各検査部門への情報伝達と医事請求処理の自動化を基本的な目的としているが,放射線検査のうち,特殊検査については,発生源入力が不完全であり,医事課で会計情報処理のための入力を必要としていた.今回,特殊検査部門についても発生源入力による会計処理の自動化に挑戦した.本論文では,現状の到達点,問題点を報告する.

     主治医が登録したオーダ情報は,放射線部情報システムに伝送され,放射線部では,オーダされた行為を保険請求行為に置き換える作業と,薬剤,特殊材料,フィルム等の実績を入力する作業を行う.登録されたデータは,医事システムに伝送され会計計算が行われる.本システムの導入により,放射線技師は紙運用に比べ記録が容易になったと評価し,放射線部管理者は実績の集計作業が軽減したと評価した.医事課では,特殊検査のうち20.4%,全放射線部検査のうち1.4%に部分的な修正作業が残ったが,業務量が減少し,外来会計の待ち時間が短縮したと評価した.本システムは,医事請求処理の負担が軽減したことに加え,正しい実施記録が電子カルテ上に残ること,これにより実績評価がより正確に行えることに意義がある.

  • 木村 映善
    2002 年 22 巻 6 号 p. 465-474
    発行日: 2002年
    公開日: 2017/08/14
    ジャーナル フリー

     愛媛県において医療情報スーパーハイウェーおよび愛媛県医師会を中心として医療情報ネットワークおよびORCAネットワーク(日本医師会が推進する電子レセコンのネットワーク)の基盤を構築した.VPN関連の技術の進歩は著しく,定義に混乱が見られないようにVPN関連技術と接続形態の類型化と定義を行った.現在の通信環境の多様性,制約について検討し,それらの条件を包括して解決する方法論を考案した.すなわち動的IP,NAPTの制約を解決できるようにIPsecをUDPでカプセル化すること,DNSルーティングによるDNSサーバの動的切替,ネットワークアドレスの衝突回避のためのIPsecトンネルへのNAPT適用とアドレス割当てである.その結果,愛媛県ではVPNの導入がスムーズに進み,医療情報ネットワーク構築の促進をもたらす結果となった.

資料
  • 真野 俊樹, 水野 智, 山内 一信, 小林 慎
    2002 年 22 巻 6 号 p. 475-481
    発行日: 2002年
    公開日: 2017/08/14
    ジャーナル フリー

     近年,消費者(患者)が自分たちの服用する薬剤や薬剤情報についての関心が高くなっているが,その実態についての報告は少ない.一般消費者の薬剤あるいは薬剤情報に対する現状を明らかにする目的で,薬剤および薬剤情報について2種類のアンケート調査を行った.

     調査1は,首都30 km圏において調査対象を満15歳から65歳の一般男女個人とした.抽出方法は住民基本台帳より層化2段抽出とし,調査方法は調査員の訪問による質問紙の留め置き調査とした.実施期間は平成13年6月28日から7月11日,対象は1,665人である.調査1では,薬剤情報についての消費者のとらえ方,薬剤情報の希望入手先を明らかにした.

     調査2は,一般消費者対象にアンケートを男性409人,女性422人に実施したもので,PL顆粒(処方用感冒薬),バイアグラ(処方用インポテンス改善剤),パブロン(市販用感冒薬)の使用経験,認知,認知方法の違いを明らかにした.

     消費者は医療・薬剤情報を必要としているが,現行ではそれが正しく提供され,解釈されているとは限らない.その意味で適切な情報提供が望まれる.その手段として,医療機関からの情報提供をもっと積極的に行うべき必要性が示された.

  • 藤井 秀明, 入野 了士, 栗原 幸男
    2002 年 22 巻 6 号 p. 483-490
    発行日: 2002年
    公開日: 2017/08/14
    ジャーナル フリー

     保健・医療・福祉分野におけるIT化の促進と証拠に基づいた保健・医療・福祉計画の立案・実践が重要な国策となっており,これらの分野の専門職者がIT能力を身に付ける必要性が生じてきている.しかし,これまで保健分野については具体的にどのようなIT能力が必要であるかの調査が実施されていなかった.そこで,先進的に情報化に取り組んでいる市町村の保健課・保健センターで,具体的にどのようなIT能力が保健師に必要とされているかを調査した.また,保健師養成の主体が看護系四年制大学に移りつつある状況を踏まえ,看護系四年制大学の地域看護学および情報系科目担当教員に対して,市町村の保健師に求められているIT能力を大学教育のどのレベルで修得させるべきと考えているかの意識調査を同時に行った.その結果,市町村保健師に求められているIT能力のうち,基本的なIT能力(コンピュータ・リテラシおよび基礎的な情報リテラシ)については大学教育において修得できる状況にあるが,実践的なIT能力(情報システムの知識と管理・運用の能力,事業計画・評価のための統計処理能力)については卒後教育を含めても修得することが困難な状況にあることが明らかになった.このことは,市町村の保健・福祉業務でのIT活用の推進には,市町村保健師が実践的なIT能力を身に付ける機会を確保する必要があることを示している.

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