医療情報学
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23 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 山下 幸司, 河村 徹郎, 石渡 裕政, 佐藤 明俊, 岡野 昭夫, 藤澤 幸三, 長澤 亨
    2003 年 23 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 2003年
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー

     筆者らは,遠隔リハビリテーションの訓練モニター像から画像解析により関節可動域を計測するシステムを開発してきた.このシステムを健常者に適応し療法士の要求を満たす性能を得たものの,実患者については,手に拘縮が起きた像のため,誤差が大きくなる等の課題が明らかとなった.

     このため実患者の症例に対して高い精度で計測できるように,クラスター分析時に検出する軸について検討を加えてきた.そして従来は手の関節可動域を基本軸と移動軸の2軸で計測していたが,このたび解剖学的に妥当である3軸を検出し計測する方法を考案した.これによるシステムを実際の橈骨遠位端骨折患者9名の計測に適用し,2軸モデルによる計測データと3軸モデルによる計測データを統計的に比較した.

     その結果,3軸モデルによる方法で,実患者に関して従来の2軸モデルに比べ,より精度高く定量データとして計測できることが判明した.これにより新しいシステムが,実患者のリハビリ訓練指導に使えることが明らかとなった.

  • 永澤 直樹, 北岡 義国, 永岡 宏朋, 中山 良平, 遅 大雷, 高田 孝広, 山本 晧二
    2003 年 23 巻 2 号 p. 127-136
    発行日: 2003年
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー

     多くの学会での論文の投稿およびその査読は紙ベースで行われており,投稿から査読そして掲載までの時間がかかることや,事務局での作業が多いなどの問題があった.これらの問題を解決する方法として,オンラインの論文投稿査読システムを構築した.システムはServer Side Scriptで設計し,利用者ごと (著者,管理者,編集委員,査読者)に4つのサブシステムで構成されている.本システムの特徴は,利用者にとって不必要な機能を極力排除し,最もシンプルな形でデザインされているところにある.

     また各種の連絡にe-mailを利用して,郵送によるコストやタイムロスを減少させた.

     その結果,例えば医療情報学会シンポジウム2001と2002で使用したところ,システム運用前のものと比べて編集期間を約1ヶ月短縮していることがわかった.

     本稿は作成したシステムの紹介と,その評価に関する論文である.

研究速報
  • 大橋 久美子, 五味 悠一郎, 岡田 伊佐男, 渡辺 守, 坂本 直哉, 永田 宏, 田中 博
    2003 年 23 巻 2 号 p. 137-144
    発行日: 2003年
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー

     近年のブロードバンド化に伴い,高精細動画伝送システムが開発され,医療への応用が可能になりつつある.そこで本研究では,DV over IP方式を用いた動画伝送システムが内視鏡遠隔診断に応用可能かどうかを検証する目的で通信実験を行った.武蔵野赤十字病院から東京医科歯科大学医学部附属病院に4例の大腸疾患の内視鏡検査画像を超高速インターネット(JGN)を使ってリアルタイム伝送し,専門医が診断と評価を行った.その結果,伝送による画質の劣化や伝送遅延はほとんど観測されず,今回の4例に関しては診断が十分可能であることが実証された.汎用性や利用性に関しても利用者の良好な満足度が得られた.今後症例を増やして,DV over IPの内視鏡遠隔診断への利用に関して,適用範囲や費用対効果を明らかにしていきたい.

  • 岡田 修, 大星 直樹
    2003 年 23 巻 2 号 p. 145-151
    発行日: 2003年
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー

     医療の効率化と質の向上を目指し,診療プロセス管理手法としてのクリニカルパス(以下パス)が多くの医療施設に導入され活用されている.パスの作成と運用はそれぞれの医療施設が個別に工夫して進めているのが現状であり,その記述法や用語は施設によって異なるものが用いられている.パスは当該疾患に関する各医療施設の診療プロセスのエッセンスであり,異なる医療施設間でパスを相互比較する手法を開発することは,近年その必要性が問われている医療の質評価の点から重要である.本研究では,パスの相互比較における指標のひとつである薬剤費に注目し,パスにおける与薬行為をXML化することによって薬剤費相互比較システムを開発した.これはパスから抽出した投与医薬品名や投与数量等の情報を薬価データベースと照合することにより,当該疾患パスの薬剤費の医療施設間比較を定量的かつ自動的に行うことを可能にするものである.

技術ノート
  • 坂田 洋, 前田 剛司
    2003 年 23 巻 2 号 p. 153-158
    発行日: 2003年
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー

     医薬品には副作用回避のために投与開始から一定の期間に検査が必要な薬剤や,投与中は定期的に血液検査等が必要な薬剤が存在する.また,投与薬剤の効果を調査することは,今日の医療経済を鑑みた場合,より安価でより効果的な治療を行うためにも重要な点となる.近年,これらの課題に対応するために電子カルテで蓄積されたデータを利用して,データウエアハウスやデータマイニングの手法を用いて対応するシステムが開発されている.当院ではオーダリングシステムから薬剤部に受信した処方・注射情報と臨床検査情報を利用して,投薬時に必要な臨床検査の実施状況や投薬日数を調査するシステムを開発した.これによりさらなる医薬品適正使用の推進が可能となった.本システムは広く普及しているオーダリングシステムから部門に送信されるデータを利用するシステムであるため,比較的容易に処方適正化や処方情報の解析に寄与すると考える.

  • 吉村 明伸, 紀ノ定 保臣, 梅本 敬夫, 白鳥 義宗, 白木 由香, 中島 義憲
    2003 年 23 巻 2 号 p. 159-164
    発行日: 2003年
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー

     病院情報システム内に分散管理されていた各種医療情報を一元管理することで,診療支援や病院経営支援に有用な情報を提供するシステムを開発した.各種医療情報をJapan DynasystemsのCachéサーバに蓄積させ,データウェアハウスを構築し,1入院単位で診療行為歴がWeb形式で参照できるシステムを開発した.また,Cachéサーバ内にあるデータをMicrosoft SQL Server 2000にアップサイジングし,SQL Server 2000内の分析ツールであるAnalysis Servicesによって,多次元分析が可能となるシステム(キューブ)を開発した.Web形式で参照できるシステムでは,患者番号や病名等の検索条件を入力するとその該当患者の診療行為歴が容易に参照できた.そして,多次元分析が可能なシステムでは,Microsoft Excelのピボットテーブルを用いて,複雑な条件設定においても容易に分析が可能であった.本稿では,上記システムの仕組みと評価,さらに今後の開発性と将来性について報告する.

  • 青木 由美, 沖 紘子, 岩崎 理香, 開原 成允, 大原 信, 藤森 春樹
    2003 年 23 巻 2 号 p. 165-173
    発行日: 2003年
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー

     医療の効率化が叫ばれる中で,医療機関では客観的なデータに基づいて合理的な経営をすることが必要とされている.本研究では「レセプト電算処理システム」による診療報酬請求データを利用して,医療機関の経営分析がどこまで可能か,さらにどのようなデータを補足すれば,どこまで分析が可能かという観点を含めて実際にシステムを開発して,研究を行った.この結果,医療機関に負担なしで,自動的に経営の指標として十分利用に耐えうる有用な情報が得られ,経営分析の基礎として,この方法は有用であるとの結論に達した.

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