医療情報学
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25 巻, 6 号
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第10回日本医療情報学会春季学術大会
基調講演
特別講演
シンポジウム 1
原著
  • 今井 健, 荒牧 英治, 梶野 正幸, 美代 賢吾, 大江 和彦
    2005 年 25 巻 6 号 p. 395-403
    発行日: 2005年
    公開日: 2015/07/17
    ジャーナル フリー
     近年オントロジーが注目されている.しかしこれを人手で構築・メンテナンスを行うのは困難であり,自然言語処理を用いた構築支援手法の確立が求められている.本研究では,電子内科教科書を用い,画像診断における「疾患」と「それに関係する所見」との対応を抽出する手法を提案する.まず,教科書中の画像診断に関する解説文に対し,用語間の係り受け依存木を抽出する.次に,各文節内の自立語に対して医学的な属性を付与し,画像診断の所見情報を構成する部分木をすべて抽出する.最後に教科書の見出し語となっている各疾患名に対し,画像診断において関係する所見を「肯定的/否定的」の別を伴い,部分木から抽出する.実験の結果124個の疾患名に対して関係する所見794個が抽出できた.また,抽出精度の評価実験により再現率66%,適合率95%を得た.今後同様の手法を専門分野教科書に適用することで,さらなる効率的な関係抽出を行える可能性が示唆されたので報告する.
  • 安永 晋, 川上 洋一, 笹井 浩介
    2005 年 25 巻 6 号 p. 405-412
    発行日: 2005年
    公開日: 2015/07/17
    ジャーナル フリー
     我々は,過去のレポートから医学的知識を抽出し,これを用いて入力支援情報を提示することが可能なレポーティングシステムの開発に取り組んでいる.このシステムでは,まず既存の自然文読影レポートを自然言語処理で構造化し,次に,部位・モダリティに応じて,構造化したデータの統計情報を利用して候補単語を入力支援情報として提示する.そして,ユーザーは提示された候補単語を選択することによって読影レポートを作成する.
     このシステムに用いる構造化処理として,形態素解析された自然文に「Support Vector Machine(SVM)」と呼ばれるアルゴリズムを適用し,単語に属性を付与するという手法による高精度な構造化処理の実現可能性について検討を行った.
     本論文では,まず過去のレポートからこの「SVM」を用いて「部位」「所見」などの「医学的知識」を抽出する技術の詳細と実験結果について述べ,次に「医学的知識」の抽出精度を高めるために「言い換え」を用いる手法の提案とその実験結果について述べる.
研究速報
技術ノート
  • 川上 洋一, 松村 泰志, 笹井 浩介, 安永 晋, 稲田 紘, 木内 貴弘, 黒田 知宏, 坂本 憲広, 竹村 匡正, 田中 博, 玉川 ...
    2005 年 25 巻 6 号 p. 421-429
    発行日: 2005年
    公開日: 2015/07/17
    ジャーナル フリー
     近年,セマンティックウェブ技術を医療支援に応用するための技術が注目されている.本研究では,過去の画像診断レポートから抽出された症例データをエレメント化し,RDF(Resource Description Framework)で関連づけた症例データベースから支援情報を提供することができるシステムの実現可能性を見極めることを目的とした.
     兵庫医科大学病院のMRIにおける脳血管障害のレポートを利用し,部位や基本所見,診断といったデータエレメントを抽出し,それぞれのデータエレメントを関連付けて症例データベースを構築した.その症例データベースから読影するレポートに応じた支援情報を適切に提供できるかについて過去のレポートから推定した結果,作成できるレポートの範囲およびレスポンスについて概ね満足できる見込みを得た.また構造化したデータモデルが胸部CRにも応用できることを大阪大学医学部附属病院のレポートから推定した.
解説
  • 阿部 明典, 小作 浩美, 相良 かおる, 桑原 教彰, 小暮 潔
    2005 年 25 巻 6 号 p. 431-441
    発行日: 2005年
    公開日: 2015/07/17
    ジャーナル フリー
     本論文では看護リスクマネージメントの重要性を示し,その計算機モデルを示し,その計算機モデルを実行するための看護オントロジ構築の必要性を説く.まず,看護リスクマネージメントの必要性を示し,看護アクシデント,インシデントを認知的観点から概観する.この認知的性質に基づき,我々は論理的に看護リスクマネージメントモデルを示す.これは,アブダクションであり,時間情報も扱うことができる.このモデルの実行には知識ベース等が必要であるが,その構築には看護オントロジを必要とする.本論文では,看護オントロジの自動構築の必要性を指摘し,その方針を示す.
シンポジウム 2
原著
  • 鈴木 博道, 清水 昇, 足立 和夫
    2005 年 25 巻 6 号 p. 447-455
    発行日: 2005年
    公開日: 2015/07/17
    ジャーナル フリー
     セマンティックWebは,国際的なWeb技術の標準化団体であるW3C(World Wide Web Consortium)が中心となって標準化を進めている次世代Web技術である.セマンティックWebのオントロジ技術を用いることにより,概念の階層関係記述だけでなく複合概念記述や条件付概念記述など様々な概念間の関係を知識として記述し,維持管理することが可能である.本研究では,W3Cにより開発されたオントロジ記述言語であるOWL(Web Ontology Language)を用いて,「ICH国際医薬用語集日本語版バージョン5.1」(以下MedDRA/Jと略す)の内容を記述し直すことでMedDRA/Jをオントロジ化し,オントロジビューワ機能によりMedDRA/Jの意味を分かりやすく表示したり必要な情報を意味検索したり,またGUIエディタ機能による変更修正を行ったりするシステムの研究開発を行った.
  • 竹村 匡正, 黒田 嘉宏, 粂 直人, 岡本 和也, 堀 謙太, 中尾 恵, 黒田 知宏, 吉原 博幸
    2005 年 25 巻 6 号 p. 457-462
    発行日: 2005年
    公開日: 2015/07/17
    ジャーナル フリー
     医療における手術手技の教育は,教科書的な知識と今までの実践に基づく経験主義的な方法から,VR(Virtual Reality)技術を用いた仮想現実の環境下における実技を伴った教育へと変遷しつつある.一方,手術手技の知識ソースとして手術手順書がある.医師はこれらの情報を参考に知識を獲得する.これとVRシミュレータが組み合わさることで,明文化された知識と実技とが体得できる.
     手術手技の訓練としては,手術手順書を含めた言語的な知識とVRを用いた実技シミュレータを組み合わせることで,教科書的な知識と実技とが体得できると考えられる.ゆえに,教科書的な知識と実技が同時に学べることが望ましい.そのためには,ある手術を知識として表現するために,暗黙知を前提とした言語情報としての手術手順書とVR環境が共有できる概念構造,すなわちオントロジが必要になる.このオントロジを媒介として手術手順書からのVR環境に要件を提示することが可能になる.
     本論文では,手術手順に対して医用VR環境と手術手順書が共通にもつ概念構造を分析し,手術VRオントロジの構築を試みた.また,このオントロジを利用して,手術手順書を自然言語処理を用いて解析することで, VR環境が要請する要件を自動的に抽出し,VR環境を呼び出すことを試みた.
研究速報
  • 金子 周司, 藤田 信之
    2005 年 25 巻 6 号 p. 475-483
    発行日: 2005年
    公開日: 2015/07/17
    ジャーナル フリー
     生命科学および医学の教育研究を支援する目的で,筆者らは広範な生命科学の諸領域で使われる英語および日本語の専門用語を文献コーパスの定量的解析から抽出し,独自の対訳辞書をライフサイエンス辞書(LSD)として公開してきた.今回,テキストマイニング等に応用できるシソーラスへの発展を目標に,LSDで対訳と意味情報を定義した5万語の英語と5万語の日本語について文献情報による評価を行い,続いて,MeSHツリーとのマッピングによる体系化を試みた.主にPubMed抄録からなる英語コーパスをLSD収録語で解読できる割合は80%であった.MeSHツリーから得られた6.5万語のうち,LSDと一致したのは20%であったが, PubMed中に出現するMeSH termについては40%がカバーされていた.MeSHにないLSD収録語としては略語,名詞以外の品詞,未分類の学問分野の用語などが浮かび上がった.今回の解析から,我が国で今後,医療現場等で発生する大量のテキストをコンピュータで解析するためには新たな対訳シソーラスの必要性が示唆された.
特別解説
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