医療情報学
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25 巻, 4 号
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原著
  • 北山 久美子, 宇都 由美子, 東 サトエ
    2005 年 25 巻 4 号 p. 211-220
    発行日: 2005年
    公開日: 2015/07/17
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,在院日数短縮のインセンティブが働くDPC導入に伴う業務煩忙が,特定機能病院(以下A病院)に勤務する看護職員の職務満足度にどのような影響を与えたかを明らかにすることである.A病院の看護職員を対象に自記式質問紙調査を行い留め置き法により回収した.結果の解析は一元配置分散分析,スチューデントのt検定を用いた.DPCの影響を全く受けていない看護職員に比べ,DPCの影響を受けた看護職員の職務満足度が有意に低かった.職務満足度構成要素で比較しても「給料」,「医師-看護師間の関係」において,同様の結果を得た.DPC導入による在院日数短縮というインセンティブが働き,業務の煩忙をまねいていることが看護職員の満足度に負の影響を及ぼしていることが判明した.これらを適切に把握することが職場環境の改善につながると示唆された.
  • 馮 霞, 長谷川 泰洋, 宮治 眞
    2005 年 25 巻 4 号 p. 221-229
    発行日: 2005年
    公開日: 2015/07/17
    ジャーナル フリー
     電子カルテシステムの開発,構築には相当の人的,時間的資源を要する.とくに大学病院レベルにおける完全なペーパーレスを目指した全面的な電子カルテシステムの開発過程に関する効率性,効果性の検討はあまり見当たらない.2004年1月より稼動した名古屋市立大学病院の開発過程を事例として,1年3カ月に亘る経緯が詳述されている議事録の中から,詳細検討項目数,検討時間,出席人数,会議回数などの作業量を指標として,クラスター分析などによる統計学的手法を用いて定量的に分析した.その結果,電子カルテ作業部会,外来・病棟作業部会,看護作業部会など10の作業部会を診療に直接的に関わるグループ,診療に間接的に関わるグループ,専門性の高い技術・LANグループの3つのグループに大別して検討することの有用性が示された.各作業部会における重複検討項目を整理することで,総検討項目数(1,464項目)の18.0%,総検討時間(1219.5時間)の22.5%,総出席人数(5,424人)の25.3%,総会議回数(502回)の23.5%を削減できる可能性が示唆された.電子カルテシステム開発のこのような定量的な解析は,システム開発のあり方として効率性,効果性の面からも意義ある結果と思われた.
  • 堅田 千種, 今井 みはる, 野崎 一徳, 川本 昌幸, 前田 芳信, 島 優子, 大星 直樹, 玉川 裕夫
    2005 年 25 巻 4 号 p. 231-238
    発行日: 2005年
    公開日: 2015/07/17
    ジャーナル フリー
     管楽器奏者に口唇外傷予防を目的としたミュージックスプリントを装着すると,音色も変化することが知られており,我々の臨床でもしばしば経験しているが,音色変化を定量的に解析,評価した研究は少ない.そこで,プロのトランペット奏者の協力を得て,スプリント装着時と非装着時の音色を,音響解析による物理的比較,自然音の一対比較法による聴覚比較,そしてデジタルフィルタリング法を用いた合成音比較の3方法で比較した.
     物理的比較では,long-tone録音後に高速フーリエ変換を行い,スプリント装着時に高周波倍音成分の音圧が高くなっていることが示せた.聴覚比較では,音楽経験にかかわらずスプリント装着時の音をより好む被検者が多いことを明らかにできた.そして,低周波数部分を共通にし倍音成分のみを入れ替えた合成波形比較では,基音に対して13次から20次の倍音が,音色の好みに影響を与えていることを示せた.
解説
  • 花田 英輔, 工藤 孝人, 高杉 紳一郎, 加納 隆
    2005 年 25 巻 4 号 p. 239-247
    発行日: 2005年
    公開日: 2015/07/17
    ジャーナル フリー
     携帯電話は高い普及率を示しているが,一方で一律に電源断を求めている医療機関もまだ多い.患者や訪問者は医用電子機器,特に人工心臓ペースメーカに対する影響に関する情報が広く知られていることからそれに従っているが,中長期にわたって入院する患者にとっては通信手段の途絶を意味することから患者の心理面での負担になっている場合も見受けられる.
     本稿では,患者サービスの面から要望が強いが,これまでその安全性に関する情報不足から医療機関における使用の是非の判断が行われてこなかった携帯電話について,具体的な解禁例およびこれまでに得られた知見から,安全な導入に向けた注意点と手法を示す.
技術ノート
  • 渡辺 佳代, 山本 和子, 岡田 美保子, 高上 僚一
    2005 年 25 巻 4 号 p. 249-255
    発行日: 2005年
    公開日: 2015/07/17
    ジャーナル フリー
     川崎医療福祉大学医療情報学科では,医療現場の実情に対応し得る教育を目指し,平成13年から「電子カルテ・ラボ」システムの開発を進めてきた.本システムは,電子カルテシステムが導入された場合に,これを支援する人材に必要と考えられる知識・技能を,学生が演習を通じて習得することを目的としている.システムの機能は大きく1)電子カルテシステムを中心とした機能,2)学習支援機能,3)教材作成支援機能からなる.学習支援機能は,患者の動線に沿った画面から構成される.画面ごとに,学習目標,理解を助ける解説,各部門で行う業務システムによる入力演習,確認のための試験問題を用意している.本システムを演習で使用し,学生にアンケートを実施した結果,電子カルテシステムや病院の仕組みを学ぶ上で有用であることが示された.
  • 大垣内 多徳, 山下 芳範
    2005 年 25 巻 4 号 p. 257-263
    発行日: 2005年
    公開日: 2015/07/17
    ジャーナル フリー
     病院情報システムに大規模な改修を行うことなく,セキュリティを向上するための手法について検討を行った.その結果,病院端末に導入されているOSが持つ機能であるVirtual Private Network(VPN)機能を利用することにより,その実現が可能であることが示された.
     実際に,病院情報システム改修費用と比較して安価なサーバを導入することで,100 Mbps程度の帯域が確保できることが確認された.さらに通常の医療情報システムの応答性には,大きな影響を与えることなく利用が可能であることも確認した.
     今後の病院情報システムは院内LAN上であっても,その内容を保証するためにVPNあるいはIPsec等によるセキュリティ対策を行うことが必要であるものと考えられる.
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