医療情報学
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30 巻, 6 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著-研究論文
  • 関口 祐子, 小林 隆司, 小山 博史
    2010 年 30 巻 6 号 p. 303-311
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
     目的:自治体間で乳がん検診施設の相互利用協定が締結され検診施設が相互利用化された場合の影響を,(1)対象者の最近隣検診施設までの距離,(2)検診施設までの距離の対象者間における公平性,(3)検診施設間の受診者の偏在性の有無について地理情報システム(geographic information system:以下,GIS)を用いて明らかにすることを目的とした.方法:東京都の島嶼地域を除く53自治体を調査対象とし,平成21年度乳がん検診の実施体制,検診実施施設の名称と所在地の住所,住民基本台帳を基にした平成21年1月1日現在の町丁目別の40歳以上の女性人口統計のデータセットを作成し,GISを用いて分析を行った.対象者の検診施設までの距離は対象者の居住地を各町丁目の人口重心を代表点であると仮定し,その代表点から最近隣の検診施設までの直線距離,距離の公平性については対象者間の距離のジニ係数,受診者の偏在性については検診施設ごとにその施設を最近隣とする対象者の人数の標準偏差とジニ係数を算出した.対象者が居住地の自治体が指定している検診施設へ受診するとした現状の場合をパターンA,対象者が都内全域の検診施設へ受診するとした相互利用化を想定した場合をパターンBとした.結果と考察:全対象者の24.2%が最近隣検診施設までの距離が2,908.9 mから1,640.5 mに短縮した.対象者全体で1人あたり307.4 m短縮した.対象者間の距離の不公平性を示すジニ係数はパターンAが0.383,パターンBが0.363であり,最近隣とする対象者数が多い上位3施設を除いては検診施設間の受診者の偏在性を示す標準偏差,ジニ係数に大きな違いは認められなかった.結論:乳がん検診において自治体が検診施設の相互利用協定を締結して検診施設が相互利用化された場合,対象者の検診施設までの距離の短縮,対象者間の検診施設までの距離の公平性の保持,検診施設間の受診者の偏在は現状以上には起こらないことが示唆された.
原著-研究速報
  • 谷川 雅俊, 早川 晶子, 森 義弘, 千早 正光, 内田 安彦, 成瀬 英典, 岩下 美喜雄, 山口 文恵, 十川 正吾, 横井 英人, ...
    2010 年 30 巻 6 号 p. 313-320
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
     著者らは,造影剤の製造販売後調査において,当該造影剤を投与された患者の各種情報とともにコンピュータ断層撮影画像(以下,CT画像)をDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格で電子的データとして収集し,一元的に集約管理するEDC(Electronic Data Capture)システムを開発した.本システムにおいてCT画像は,調査担当医師の所属する医療機関から遠隔医療ネットワークシステムを経由し,香川大学医学部附属病院の医療情報部(画像事務局)の医師宛にCT画像を送付され,ここで患者の個人情報のマスキング状況を確認した後にEDCシステムのデータサーバにアップロードされるという流れで収集された.その後,製薬企業ではこれらのCT画像を造影剤の造影効果の中央判定評価に用いた.本EDCシステムは,遠隔医療ネットワークシステムと連携することによってCT画像データを患者の各種情報と同時に迅速かつ効率的にデータのセキュリティと真正性を確保した上で収集し,症例データとの一元的管理と有効性評価への効率的利用を実現するものであり,医薬品の有用性評価における画像情報の二次利用を目的とした収集方法のモデルケースになるものと考えられた.
  • 徐 英哲, 小林 隆司, 中島 佐和子, 佐藤 康仁, 吉田 雅博, 山口 直人, 小山 博史
    2010 年 30 巻 6 号 p. 321-325
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
     【目的】Webユーザビリティ評価法を用いた初期臨床研修医向け鑑別診断学習支援用エキスパートシステムの評価.【方法】日本医療機能評価機構で公開されている初期研修医向け鑑別診断教育用エキスパートシステムを評価対象とし,評価者は鑑別診断に関する実地経験を有する臨床経験3年以上の医師とした.Webユーザビリティ評価法としてWebユーザビリティ評価スケール(WUS)を用い,鑑別診断学習支援機能に関する評価にはビジュアルアナログスケール(VAS)を独自に作成し,郵送調査法(無記名自記式)を行った.統計解析には,統計解析用ソフトウェアはSPSS(IBM, Armonk, NY)とR–VERSION 2.13.0を用いた.【結果】1)WUS開発に関する論文に報告されているWebサイト評価結果と比較して「好感度」「役立ち感」(p<0.01),「操作の分かりやすさ」「見やすさ」(p<0.05)は有意に低値であった.2)「慢性の咳」での「シミュレーションの結果が想定通りであるか」のVAS値において指導医と後期研修医との間,後期研修医と指導医以外の医師との間に統計学的有意差(p<0.05)を認めた.【考察】評価対象システムは,他のWebサイトのWUSよりも全体に低い傾向にありシステムの改善の必要性を認めた.ただ,本研究は調査方法が郵送自記式調査であり,調査対象者にWebアプリケーションの使用方法に対して十分な説明ができなかったことにも起因すると考えられた.【結論】WUSの初期臨床研修医向け鑑別診断学習用エキスパートシステム評価への有用性を認めた.ユーザビリティ評価法は,Web上のエキスパートシステムの設計上の課題を抽出できる可能性を有することが示唆された.
  • 三田 岳彦, 三上 史哲, 杉本 明生, 小田 浤, 三田 勝己, 岡田 美保子, 岡田 喜篤
    2010 年 30 巻 6 号 p. 327-335
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,肢体不自由児施設入所児182名を対象に運動障害および知的障害と活動・参加との関連を明らかにすることを目的とした.調査項目は「知的機能」と「運動機能」の2項目を大島の分類を用いて設定し,活動・参加の項目をWHO:国際生活機能分類(ICF)の分類項目から11項目を選択した.分析では順位相関分析を用いた.順位相関係数は活動・参加の全項目と知的機能あるいは運動機能との間に中度から強度の相関がみられ,相関の程度は知的機能の方が運動機能より高かった.また,これらの機能障害に加えて物理的環境や人的支援などの背景因子が活動・参加に促進的な効果をもつことが推察された.対象児の支援計画には特に知的機能障害に配慮する必要を示唆した.
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