医療情報学
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30 巻, 4 号
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原著-研究論文
  • 鶴田 陽和, 福本 真理子, L Bax, 河野 彰夫, 森下 剛久
    2010 年 30 巻 4 号 p. 203-213
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
     造血幹細胞移植の前処置薬であるブスルファン(BU)は,投与量の過不足が治療結果に直結するため患者ごとに投与量を調節する必要があるが,患者間の体内動態の差が大きいため体重や体表面積などに基づいて投与量を算出することができない.よって,BUの血中濃度変化から個々の患者の体内動態を求める必要があるが,そのために頻回の採血を行うことは困難である.そこで,初回投与時の数回の採血データから個々の患者の血中濃度曲線下面積(AUC)など,治療方針の指標となる量を推定する方法(LSM)がいくつか提案されているが,その評価のために十分な症例数を得ることは容易ではない.
     そこでこの研究では,シミュレーションにより生成した模擬症例によりLSMを系統的に検証する方法を提案し,既存のLSMの問題点と適用可能な条件を明らかにする.次に,日本人患者で考え得る血中濃度変化をあらかじめ生成しておき,その中から測定値と最も合致するものを探索することによりAUCの推定を行う新しい推定方法を提案し,既存のLSMよりはるかに正確な推定ができることを示す.さらに,血中濃度の患者内誤差の経験分布関数に基づいて「LSMを用いて求めたAUC推定値」の分布を推定する方法と,その結果に基づいてブートストラップ信頼区間を構築する方法を提案する.
  • 仲野 俊成, 渡辺 淳, 竹花 一哉, 小山 武彦, 平井 正明, 佐藤 恵一, 田中 雅人
    2010 年 30 巻 4 号 p. 215-223
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
     【目的】事前予測に基づき,二基幹施設間波形情報共有必要性の程度およびMFER心電図の実用性について検証した.
     【方法】1,500台のHIS端末にViewerを搭載し,MFER波形情報リポジトリを介して両施設の波形情報を参照する方式とし,2009年1月より1年間,リポジトリへの全アクセス件数を調査した.あわせて端末管理台帳や電子カルテ記載等からの情報も確認した.
     【結果と考察】相互参照件数は約60∼70件/月であった.循環器系からのアクセスは開始後増加し,3カ月以降では全体の半数弱を占めた.他診療科からは30∼40件/月のアクセスがあり,多くは心・循環器疾患患者の担当医や指導医,循環器医から他科診療依頼によるものであった.合同医局端末群からは一定のアクセスがあり,半数はクリニカルクラークシップ学生によるものであった.調査後半からは診療部門や自施設データ参照での利用がみられた.以上のように,多岐に亘る活用シーンが明らかとなった.今後の標準波形プロトコルを用いた診療手順・手続きの標準化に際しては,これらの幅広い利用形態を考慮した業務ユースケースを検討する必要がある.
原著-研究速報
  • 飯原 なおみ, 桐野 豊, 原 量宏, 横井 英人, 上野 哲夫, 原田 顕徳, 中川 昌彦, 斎藤 幸夫, 森岡 慶, 尾形 優子
    2010 年 30 巻 4 号 p. 225-231
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
     病院と地域の薬局とを双方向に直接連携する電子処方せんネットワークシステムを開発した.開発したシステムは,香川県にある大学病院から地域の薬局へのデータセンターを介したインターネット経由の医療情報相互伝送である.薬局の薬剤師は,HPKI(Healthcare Public Key Infrastructure)のユーザ認証を用いて,データセンター内サーバに保存された,処方,病名,検査データ,医師コメントを確認でき,病院の医師らは,薬剤師が入力した,処方変更内容,後発医薬品名,副作用発現状況,薬剤師コメントを,電子カルテ端末から確認できる.このような病院の医師らと薬局の薬剤師との連携強化は,より有効で安全できめ細かな医療を可能とする.薬剤師のグループインタビューの結果から,システムの普及には,薬剤師の理解,医師・薬剤師の相互信頼,患者・社会の理解,が必要であることがわかった.
  • 大原 達美, 成清 哲也, 松村 一
    2010 年 30 巻 4 号 p. 233-239
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
     本院医療情報室では,2009年7月に「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第4版」を参考に,新型インフルエンザ(influenza A : H1N1)パンデミックに備えた業務継続計画(以下BCP)を策定した.同年11月に病院情報システム(HIS)と接続された1部門システムが故障し,1週間部門システムが使用できなくなる経験をしたことから,HISに接続される部門システム全体を視野に入れたBCPの見直しを図った.
     具体的には部門システムのBCP策定に向けて,①部門システムの範囲・機能調査,脆弱性調査,②フェーズ別対策の検討,③ケース別BCPへの展開,に分けて課題の抽出を行った.
     この結果,HISと部門システムとの情報システム全体のBCPの策定に際しては,①部門システムが設定する業務再開目標時間(RTO)にはビジネス・インパクト分析(BIA)を実施した上で明確にする,②フェーズ別対策では,システム脆弱性対策チェックシートを使用して共有認識を図る,③ケース別対策については,中長期的対策を視野に入れて策定を進める,との結論に至った.
資料
  • 山上 浩志, 廣川 博之
    2010 年 30 巻 4 号 p. 241-250
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
     2003年4月に始まったDPC(Diagnosis Procedure Combination)に基づく包括評価による入院医療費の定額支払い制度は,2010年7月1日時点で一般病院全体の18.0%に相当する1,391施設に適用されている.厚生労働省はこれら施設を対象にした「DPC導入の影響評価に係る調査」を通じて,DPC分類の精緻化,DPCごとの診療報酬点数の決定や病院係数の決定等を行うためのデータ収集を継続的に行っている.
     本稿では,この調査システムの運用前提になっている医療機関が行うべき提出データの連結可能匿名化について,ある都道府県内のDPC対象病院を対象に実施したアンケート調査に基づき,31.4%の施設が何ら匿名化せずにデータを提出している実態を報告する.更に,現行調査システムにおけるセキュリティ上の脆弱さと医療機関側で想定すべきリスクを指摘し,今後の調査システムのあり方について提言を述べる.
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