医療情報学
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32 巻, 1 号
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原著-研究速報
  • 森川 富昭, 玉木 悠, 田木 真和, 青木 雅美, 井内 伸一, 中山 陽太郎
    2012 年 32 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/01/09
    ジャーナル フリー
     日本国の医療機関ではITシステムが広く利用されており,医療情報が急増するとともにその利活用が課題となっている.医療情報の利活用に必要な要件として「大規模データ処理」が挙げられる.大規模データ処理には,①様々な医療機関からのデータの収集と保存,②永続的に増加するデータの利活用を可能にするシステム拡張性の確保,③大量データ処理のためのセキュリティ確保,が必要である.
     これらの要件を考慮し,キーバリュー・ストア型データベースCassandraおよび分散処理システムHadoopを活用したクラウドシステムのアーキテクチャを設計,構築した.Cassandraを用いることで,検索性能は,データ量増大による速度低下を押さえつつ,既存RDBMSと比較して充分な性能を示した.また,初期構築コストもデータ容量拡張性を確保しつつ,約63%~66%削減することができた.
     大規模データ処理において従来よりも高い持続可能性を持つアーキテクチャを実現したので報告する.
春季学術大会論文
  • 荒川 迪生, 川出 靖彦, 吉田 麗己, 山北 宜由, 遠渡 豊寛, 宮治 眞, 加藤 憲, 吉田 達彦
    2012 年 32 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/01/09
    ジャーナル フリー
     電子機器の発達により,診療情報の収集,保管は向上したが,情報は依然として冗長,断片化している.診療情報の垂直的観点(初診時からの全経過),水平的観点(患者,かかりつけ医等間の情報共有)を基に,診療の標準化・体系化と情報の共有化による医療の質の向上が望まれる.初診時からの診療情報を概括し,全経過概括(以下年刊サマリー)として A4 判 1 ページ内の様式を考案し,毎年更新した.年刊サマリーは診療録と患者の健康管理手帳とに貼付した.作成年刊サマリーは2011年で約500名分であった.診療の修正,補強が充実し,診療の質や合理性が向上し,患者–かかりつけ医間のコミュニケーションが改善した.対診医,院内スタッフには,診療情報を迅速に概括的に把握できたとの評価を得た.年刊サマリーを通常業務とし,それを患者も常に携帯することにより,診療の質向上,患者中心のコミュニケーション向上が示唆された.
  • 山根 佑太, 堀 謙太, 黒田 知宏, 大星 直樹
    2012 年 32 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/01/09
    ジャーナル フリー
     遠隔医療では伝送される情報が医療の質を左右する.先行研究で遠隔医療のための統合情報伝送制御が提案されているが,棄却制御を基本としている.本研究では,JPEG 2000規格を応用した,棄却制御で画質・解像度が制御できる映像伝送システムを開発する.JPEG 2000のデータはヘッダ部とデータ部に大別される.データ部は色成分,解像度レベル,画質レベル(レイヤ)で分けられる複数のパケットで構成される.伝送が中断しても受信したパケットだけである程度の画像を再構成できる.本研究ではヘッダと各パケットを棄却制御の単位とすることで,画質・解像度を棄却制御で操作する仕組みを実現する.本研究ではPC上で提案システムを試作し,棄却制御による画質・解像度の制御が可能であることを確認した.また,棄却制御によるフレームレートの変化はなく.データ量については低いレイヤではあまり変化がないことを確認した.
  • 小林 利彦, 木村 通男
    2012 年 32 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/01/09
    ジャーナル フリー
     病院内には医療情報が数多く存在するが,デジタル入力された患者基本情報,病名,検査結果,画像,処方歴等ですら有効活用されていない.実際,病床稼働率や平均在院日数,診療単価といった医事課からの報告と,レセプトおよび厚労省に提出するDPC関連情報等の作成で終わっている施設も多い.今回,当院で医療情報の二次活用に利用しているIBARS(医療事務システム),girasol(DPC分析ソフト),D☆D(標準化データの検索ソフト)に関して,その有用性を検証した.IBARSは請求項目の分析には有用だが,データの抽出時間に難がある.girasolでは臨床指標の可視化やGISとのリンクは容易だが,検査結果は含まれず,入院患者のみが対象という制限もある.D☆Dは,検査結果を含む指標分析や薬害事例の抽出に有用だが,検索ロジックに関して一定のスキルが必要である.各病院に潜在するデータベースの有効活用が期待される.
資料
  • 新實 夕香理, 太田 勝正
    2012 年 32 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/01/09
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,電子カルテの情報を共有する範囲を変えること,そのために電子カルテ画面の表示を一部非表示にすることについての看護師の認識を明らかにすることである.カルテの画面サンプルを提示し,4つの情報項目群について,群単位もしくは含まれる項目単位で画面表示を一部非表示にすることに対して,業務の支障を考慮した受け入れの可否を調査した.415名(回収率58.7%,有効回答率96.1%)のうち,「患者の意向に沿って患者情報を非表示にするという考え方」に39.0%が賛成した.非表示の方法は,59.3%が項目単位,32.7%が群単位での非表示を希望した.ただし,直ちに参照が必要になった場合の表示方法として,49.4%がワンクリックの一括表示,41.2%が項目単位の表示を希望した.表示・非表示を設定する職種範囲の決め方は,33.3%が職種単位と答えた.患者の意向に対応したカルテ画面の一部非表示にある程度の賛同が得られ,その実現に向けた検討の必要性が示唆された.
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