医療情報学
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32 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著-研究論文
  • 伊藤 豊
    2012 年 32 巻 4 号 p. 153-162
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
     歯科臨床において日常的な口内撮影X線画像(IO)標準化に向けた1策として,この分野での日本の標準規約であるJJ1017への本格的な適応をはかるため,その第一段階として本院の既存マスタを用いた試作を試みると共に,その作業課程で生じた問題点とその解決策について提案する.
     JJ1017の中で,撮影部位については小部位3桁+左右等1桁で表現することになっているが,オーダ自体が歯1本単位で発生することから,口腔内における萌出位置や欠損状態に応じた種々様々な組み合わせを現行の方式で処理することは難しい.このため部位情報については,既存の「125:歯」を用いることとし,その詳細内容について別途外部の歯牙部位詳細情報を参照することを提案する.また表示レイアウトに用いる情報は,JJ1017–16Mの6, 7桁目「拡張手技」およびJJ1017–16Sの19, 20桁目「特殊指示」の部分を用い,拡張手技部の2桁のコードで表示様式種別を表現し,特殊指示部の2桁部分で当該様式内での画像位置情報を格納することを提案する.
  • 中田 知廣, 山田 貴子, 田中 紘一
    2012 年 32 巻 4 号 p. 163-173
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
     成人生体肝移植医療では,肝炎などの多くの併存疾患や合併症を管理する必要があり,それらすべての診療内容を体系的に可視化することが困難であった.本研究は,診療の流れをプロセスで記述する患者状態適応型パスの記述形式を用いて,成人生体肝移植のレシピエント患者に対する診療内容を記述した.また,基本的な移植治療と並行して実施される診療業務の記述方法を新たに提示し,合併症を含めたレシピエント患者の診療内容を可視化した.
     海外医療機関の成人生体肝移植症例データ80件を用いて,可視化した診療内容の流れを検証した結果,97.5%の症例における患者状態の推移と差異がなかった.また,合併症については,生じていた12病態に対し10病態に関する診療内容を記載していた.本研究によって,合併症を含めた複雑な診療内容に対し,臨床で提供される治療と整合する診療プロセスの活用が可能となり,有益なデータの収集と評価に寄与することが示唆された.
原著-研究速報
  • 本間 聡起, 溝口 環, 木下 博之
    2012 年 32 巻 4 号 p. 175-187
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
     患者個人を遠隔地から診察する遠隔医療(テレケア)が普及しない一因に,医療者にとってテレケアで何が観察可能で,どのような機器を集めればよいのか不明瞭なことが挙げられる.エンジニア側にとっても,どのような構成要素のシステムを提案すればよいのか不明確である.そこでIPテレビ電話と市販で容易に入手可能な生体センサのデータ送信システムを組み合わせたテレケアシステムを構築し,その実用実験に参加した総合内科系3名の医師によるコンセンサス・カンファレンスから,頻度の高い33疾患と17兆候についてテレケアの適用の可否と備えるべき生体センサの種類について初診時と再診時に分けてリストを作成した.その結果,多くの疾患・病態でテレビ電話と生体センサによるモニタリングの両者か一方で再診の診療が可能と考えられた.再診患者のフォローアップ中に発生する新たな疾患・病態に対してもテレビ電話による問診などでスクリーニングが可能なものがあると考えられた.
  • 中村 敦
    2012 年 32 巻 4 号 p. 189-196
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
     【緒論】当院は,病床数373床の急性期病院で小児医療ならびに周産期医療には力を入れている.近年,近隣の急性期病院で小児科・産婦人科が閉鎖され当院の重要度が増してきた.
     【目的】自院の医療供給計画策定のために,他の病院の移転等の影響や人口動態の変化を考慮した来院患者数予測を行った.
     【方法】自院の外来を受診した患者の現住所から地域メッシュ統計を利用した診療科別来院患者マップを作成した.また,ハフモデルを応用して他の大規模病院の移転等が自院の来院患者数に及ぼす影響を予測した.これに加え,二次医療圏域の人口推計を行い自院の来院患者数の動向を予測した.
     【結果】地域メッシュ統計の利用により,外来患者の動向について,直感的に理解しやすい資料の作成ができた.また,ハフモデルによる予測についても現実に近い結果が得られた.
     【結論】医療圏域内での他病院の移転等に伴う受診動向の変化については,ハフモデルを応用することで短期的な予測が可能となる.
     また,このような大きなイベントを伴わない場合,人口動態を考慮して地域全体での医療供給計画策定に当たって有効な資料を提供することができる.
資料
  • 倉林 則之, 山﨑 竹視, 上田 郁奈代, 藤井 歩美, 武田 理宏, 松村 泰志
    2012 年 32 巻 4 号 p. 197-205
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
     診療記録には様々な「境界」が存在している.紙カルテでは科別管理や入院カルテの分冊が一般的であった.電子カルテではサブシステムごとの記録管理が典型である.これらの境界が多いほど目的の記録へのアクセスに手間がかかる.よって診療上は,すべての記録は論理的に1箇所で管理され,統一的な方法で閲覧できること(診療記録の統合管理)が望ましい.
     本研究の目的は,DACS(Document Archiving and Communication System)における診療記録文書の統合管理の有効性を検証することである.そのため,阪大病院で稼働中のDACSのシステムログを分析し,前述の境界を跨ぐ文書閲覧が実際にどの程度発生しているかを調べた.
     分析の結果,137,040個のアクセススレッド(医師による一連の文書閲覧の系列)が特定された.その42.2%が診療科の境界を跨ぐ閲覧,27.7%は入院の境界を跨ぐ閲覧,69.1%はサブシステムの境界を跨ぐ閲覧を含んでいた.これらは診療記録を統合管理することの有効性を示唆していると考えられる.
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