医療情報学
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33 巻, 5 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著-研究論文
  • 仁藤 慎也, 藍原 雅一, 関 庸一
    2013 年 33 巻 5 号 p. 243-251
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/05
    ジャーナル フリー
     地域医療計画において適切な病床数を計画するには,将来の患者数を少ない誤差で推定することが不可欠である.このためには居住地域ごとにどのような患者がどの医療機関の受療を選択するかを明らかにすることが必要である.本研究では,この患者の受療選択の構造を大規模な地域医療情報(地域医療データバンク)から明らかにする一つの方法を提案する.患者が受療する病院を選ぶにあたっては,対象医療機関の効用のみならず,自宅から医療機関までの道のり距離の影響が大きな影響をもつと考えられる.また,後者の影響は性別,年齢階層といった患者属性によりその効果が異なってくると考えられる.そこで,これらの影響を患者の病院に対する効用として多項ロジットモデルにより定式化する.これを地域医療データバンクのレセプト情報から推定することにより,患者の医療機関選択確率を推定することが可能となる.ある県を推定事例として,地域医療データバンクから主要10病院のレセプトデータを抽出し,当該県におけるがん患者に関する効用モデルを推定した.推定されたモデルの係数より,どの病院からも距離が離れている患者は,規模が最大の大学病院を選択するなどの傾向があり,また,高年齢層は自宅近くの病院に行く確率が高いことが確認できた.医療機関における将来の患者シェアを性年齢ごとに明らかにすることができれば,これと将来の人口動態推計を合わせることで,医療機関ごとの患者数を推定できることとなる.
原著-研究速報
  • 衣川 龍, 前田 史篤, 田淵 昭雄, 岡田 美保子, 加藤 弘明, 山田 潤, 近藤 芳朗
    2013 年 33 巻 5 号 p. 253-265
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/05
    ジャーナル フリー
    【緒論】瞳孔視野測定検査は視野障害検出を目的とした視野検査の手法として近年注目されており,検査時に被検者の主観的応答と電極装着が不要な点で有用である.本研究では健常若年者の両眼114眼の測定時の記録データを利用し,瞳孔視野測定検査の所要時間の特性評価を行った.
    【方法】瞳孔視野測定検査の所要時間は,測定内で値が一定にはならない刺激提示間間隔を総和した値である.本研究ではこの刺激提示間間隔に着目し,解析を行った.
    【結果】検査の所要時間(5.6±1.5分)は,正規分布ではなく正に歪曲した分布であることが示された.刺激提示間間隔の変動係数が小さいほど検査の所要時間が短く,瞳孔視野のノイズ成分を示す縮瞳率偏差も小さくなる傾向が明らかにされた.
    【結論】本研究の方法論および解析結果は,検者と被検者の瞳孔視野測定検査の特性理解を促し,眼科臨床での実用化に向けて測定値の再現性を検討していく上でも重要な基礎資料になると考えられる.
春季学術大会論文
  • 畠山 豊, 宮野 伊知郎, 片岡 浩巳, 中島 典昭, 渡部 輝明, 奥原 義保
    2013 年 33 巻 5 号 p. 267-277
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/05
    ジャーナル フリー
     健康診断において被験者の問診項目情報も利用する解析を行う妥当性評価のために,問診項目の記述内容と健診における検査結果との関係性を解析した.問診情報は多数の項目(270項目)から構成されているため被験者ごとの記述特徴を直接的に抽出することは困難である.各被験者の生活習慣を潜在トピックとし,その条件下で回答パターンを確率モデルとして記述し,潜在的ディリクレ配分法によって各潜在トピックを抽出することにより,被験者群の問診特徴を自動で抽出する.4,381被験者に対し30トピックで分割し検査値分布の比較を行い,各群において検査項目(血糖値,TG,eGFR)が他の群と比較して差が存在している(p<0.05)場合,その検査値に対応した問診項目回答パターンであることを示した.この解析結果は,診断時における主訴や病歴情報と同様に,被験者の状態を把握するために問診情報が重要な判断基準として利用可能であることをデータに基づき示した.
資料
  • 近藤 泰三, 長谷川 篤美
    2013 年 33 巻 5 号 p. 279-291
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/12/05
    ジャーナル フリー
     東日本大震災により全県に及ぶ甚大な被害を被った3県(岩手,宮城,福島)の病院で100床以上の病床を持ち,かつ,医療情報システムを利用しオーダエントリもしくは電子カルテ運用を行っている病院に宛て医療情報システムの被災状況アンケートを送付し回収した.回収率は66%,回収数は55病院であった.津波被害がなければ,病院建物に損傷があっても病院全体が業務遂行不能になることはなく,サーバ自体の損傷も軽微であった.データベースも損傷なく維持されていた.ネットワーク自体も損傷した建物を除き維持されていた.しかし,医療情報システム運用可能な病院でも,非常電源装置の不安定作動,サーバ室の空調への非常電源未接続,ネットワークの末端スイッチへの非常電源未接続等により,約60%の病院では震災後早期の医療情報システム使用が困難であった.今後業務継続計画(BCP)として医療情報システムが災害後早期に使用できる環境整備が重要であり,データベース損失に備えた遠隔バックアップを早急に考慮すべきである.
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