本研究は,電子媒体(インターネットを含む)が関係した医療機関における患者の個人情報に関する事故の現状を明らかにすることを目的とした.そのため,2008年から2012年に報道・公表された事故について,情報セキュリティサイトや新聞記事データベースから記事を収集し分析した.結果として,186件の報道記事等が収集され,その内容から以下の現状が明らかになった.
1) 事故の起きた媒体は,USBメモリが47.0%ともっとも多かった.
2) 原因は,紛失と盗難で84.4%と大半を占めていた.
3) 事故は,院外・院内のあらゆる場所で発生し,媒体の院外への持ち出し理由は主に「研究・学習」,「業務継続」であった.
4) 医師を中心に,退職者を含むすべての職種が事故を起こしていた.
5) 漏えい(流出)につながっていた事故は10.8%と少ないが,媒体の19.0%にしかセキュリティが施されていなかった.
6) 病名が含まれていたケース,100人以上の個人情報が含まれていたケースが半数以上あった.
7) 47.3%の事故で病院のルールに対する違反が確認された.
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