医療情報学
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35 巻, 4 号
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原著-研究論文
  • 財間 達也, 村上 旬平, 三浦 研爾, 菅野 亜紀, 高岡 裕, 森崎 市治郎
    2015 年 35 巻 4 号 p. 151-156
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/21
    ジャーナル フリー
     視覚障害のある人に対する医療情報の提供は,情報格差の縮小に関する課題の一つである.歯科診療に関する情報の多くは文書で患者に提供されており,視覚障害のある人が通常の説明文書を読解するのは困難である.さらに昨年,「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が成立し,今後,同法にある「合理的な配慮」の具体化を求められることが予想される.したがって,視覚障害のある人への歯科医療における情報保障体制の構築は急務である.今回,歯科診療情報を点字と触図によって簡便に提供できるシステムを構築し,実運用を開始したので報告する.
  • 土井 俊祐, 井出 博生, 井上 崇, 北山 裕子, 西出 朱美, 中村 利仁, 藤田 伸輔, 鈴木 隆弘, 高林 克日己
    2015 年 35 巻 4 号 p. 157-166
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/21
    ジャーナル フリー
     急速に高齢化が進む首都圏においては,医療機関が充実しているにもかかわらず,今後近隣の病院を受診できない事態が想定される.そこで本研究では,交通解析に基づく患者受療圏モデルにより,患者が通院できる範囲を考慮した上で将来の医療の需給バランスを推計する手法を検討した.方法として,1都3県の500 mメッシュごとに,国勢調査人口と各政府統計から2040年までの病院への入院患者数を推計した.病院までの移動時間は車で60分以内としてシミュレートし,患者数と各病院の病床数と比較した.結果として,2020年以降病床数の不足するメッシュが発生し,東京を中心に広がっていくことが示された.また,平均在院日数等のパラメータを変化させ需要超過の推移を見たところ,需要超過量の減少傾向を地理的・経時的に見ることができたことから,本研究により医療需要の急増に備える対策を検討する上で,具体的な目標値を提供することに期待できる.
資料
  • 渡辺 浩, 木村 通男, 川口 一大, 大江 和彦
    2015 年 35 巻 4 号 p. 167-175
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/21
    ジャーナル フリー
     米国民間団体コモンウェルス・ファンドが2009年に行った医療ITのベンチマーク調査を用いて,アンケート方式により病院のITシステム利活用実態を探った.ある条件下の患者のリスト作成業務はDWHの普及のためか電子的に作成できる施設が全体の6-7割と比較的多く認めた.しかし,治験や定期接種などの患者アラートシステムなどは電子的実装率が低かった.投薬後の有害事象の発見報告のプロセスの有無を問う質問ではほとんどの病院ではそのプロセスを持たないか,あっても改善が必要であることがわかった.オーダリングシステムや電子カルテの普及率は海外に比べて著しく高いにもかかわらず,患者本位の仕組みに乏しいことが明らかになった.これからの病院情報システムの方向性として患者本位の仕組みを目指すことが必要と思われた.電子メールを普段の診療に利用しているかとの問に対しては,ほとんどの診療担当医師らは使っていないとのことであった.
  • 渡辺 浩, 木村 通男, 川口 一大, 大江 和彦
    2015 年 35 巻 4 号 p. 177-187
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/21
    ジャーナル フリー
     アンケートにより診療情報の提供すべき範囲を探った.紹介元より送られた処方歴や検体検査結果は3カ月前まで目を通すのがピーク,画像情報は1年前までがピークであった.その中で自院での再検査を不要としたのは検体検査結果では半月,画像検査では半月から1カ月以内の検査分がある場合であった.電子カルテの公開機能などにおいて,紹介元患者の診療記事にまで目を通す割合は3割未満であった.今回「郵送配布回収による静岡県内病院担当宛」と「WEBフォームによる医療情報学会(以後JAMIと略す)会員医師宛」の2グループを対象としたため,対象者のIT習熟度や施設の電子カルテ化の程度により一部の回答に解離は認められたが,ほとんどの質問に対しては大きな差は認められなかった.膨大な診療情報を提供しても実際の外来業務の範囲では受け入れられない可能性が多くあることが明らかになった.今後は必要十分な範囲での提供,レポート系の帳票の供給が適切と思われる.
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